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公務員職権濫用罪 - Wikipedia

公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい

職権しょっけん濫用らんようから転送てんそう

公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい(こうむいんしょっけんらんようざい)は、刑法けいほう193じょう規定きていされている「汚職おしょくつみ」(刑法けいほう25しょう)にふくまれる犯罪はんざい類型るいけいであり、公務員こうむいんがその職権しょっけん濫用らんようして、ひと義務ぎむのないことをおこなわせ、また権利けんり行使こうし妨害ぼうがいする行為こうい内容ないようとする。

公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい
法律ほうりつ条文じょうぶん 刑法けいほう193じょう
保護ほご法益ほうえき 公務こうむ公正こうせい個人こじん身体しんたい自由じゆう
主体しゅたい 国家こっか公務員こうむいん地方ちほう公務員こうむいん特別とくべつしょく公務員こうむいんみなし公務員こうむいん真正しんしょう身分みぶんはん
客体かくたい ひと
実行じっこう行為こうい 職権しょっけん濫用らんようして、ひと義務ぎむのないことをおこなわせ、また権利けんり行使こうし妨害ぼうがいする行為こうい
主観しゅかん 故意こいはん
結果けっか 結果けっかおかせ侵害しんがいはん
実行じっこう着手ちゃくしゅ -
既遂きすい時期じき ひと義務ぎむのないことをおこなわされ、また権利けんり行使こうし妨害ぼうがいされた時点じてん
法定ほうていけい 2ねん以下いか懲役ちょうえきまた禁錮きんこ
未遂みすい予備よび なし
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概要がいよう

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ほんざいは、刑法けいほう193じょう以下いか規定きていされている、公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようして職務しょくむおこなさいに、ひと義務ぎむのないことをおこなわせ、また権利けんり行使こうし妨害ぼうがいしたとき(作為さくいによるものをふくむ)にわれることになる犯罪はんざいである(※公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようであっても、これらの権利けんり侵害しんがいともなわない場合ばあいはこのつみには該当がいとうしない)。公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようつみ保護ほご法益ほうえきには、公務こうむ公正こうせいさにたいする信用しんようという国家こっかてき法益ほうえきと、権利けんり侵害しんがいをされた相手方あいてがた権利けんりという個人こじんてき法益ほうえきとの両面りょうめんがあるとされているが、刑法けいほう学界がっかいにおいては、個人こじんてき法益ほうえき側面そくめん重視じゅうしされる傾向けいこうにある。

また、公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようつみは、犯罪はんざい性質せいしつじょう検察官けんさつかん起訴きそ不当ふとうおこた場合ばあいしょうじる可能かのうせいたかいため、検察官けんさつかん起訴きそ独占どくせん主義しゅぎ例外れいがいとして、裁判所さいばんしょ決定けっていにより審判しんぱんする手続てつづきであるじゅん起訴きそ手続てつづき適用てきようされる(刑事けいじ訴訟そしょうほう262じょう)。ただし、被疑ひぎしゃ身分みぶん警察けいさつ職員しょくいん検察けんさつ職員しょくいんよう刑事けいじ行政ぎょうせい関係かんけいしゃである必要ひつようはなく、該当がいとうする権利けんり侵害しんがい公務員こうむいん該当がいとうしゃみなし公務員こうむいんとして職務しょくむおこなっているものふくむ)によりおこなわれているためにわれたほんざい起訴きそ処分しょぶんとなった場合ばあいは、すべてがづけ審判しんぱん手続てつづきを適用てきようされうる。

なお、「ひと義務ぎむのないことをおこなわせ、また権利けんり行使こうし妨害ぼうがい」することおこなわれていない公務員こうむいんによる職権しょっけん濫用らんようについては、つみにより責任せきにんわれうる(たとえば地方ちほう公務員こうむいんほう国家こっか公務員こうむいんほうにおける罰則ばっそくとう。また刑事けいじばつとはべつにこれらのほうによる懲戒ちょうかい処分しょぶんもあること留意りゅうい)。

職権しょっけん濫用らんよう」の意義いぎ

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職権しょっけん濫用らんよう」とは、公務員こうむいんが、その一般いっぱんてき職務しょくむ権限けんげん職権しょっけん)にぞくする事項じこうにつき、職権しょっけん行使こうし仮託かたくして「実質じっしつてき具体ぐたいてき違法いほう不当ふとう行為こうい」をすることをいう。

ここで、ほんざいにおける「職権しょっけん」は、かならずしも法律ほうりつじょう強制きょうせいりょくともなうものであることをようせず、それが濫用らんようされた場合ばあい実態じったいとして、職権しょっけん行使こうし相手方あいてがた義務ぎむのないことをおこなわせたり、またおこなうべき権利けんり妨害ぼうがいするにりる権限けんげんであれば十分じゅうぶんであるとされる[1]。(※ただし、ほんざいは、具体ぐたいてき権利けんり侵害しんがいについてをばっするざいであるので、たん違法いほう不当ふとうというだけでは成立せいりつしないこと注意ちゅうい。)

一般いっぱんてき職務しょくむ権限けんげんぞくさない事項じこうにつきじん義務ぎむのないことをおこなわせた場合ばあいとうは、強要きょうようざい問題もんだいとなる。

正当せいとう行為こうい」との関係かんけい

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刑法けいほう35じょう正当せいとう行為こうい)では「法令ほうれいまた正当せいとう業務ぎょうむによる行為こういは、ばっしない。」という記述きじゅつがあるが、公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようとなる行為こういは、そのすべてが、国家こっか公務員こうむいんほうおよ地方ちほう公務員こうむいんほう基本きほんとして、行政ぎょうせい機関きかんにおいてあつかわれる法令ほうれい訓令くんれい通達つうたつおよ通知つうちひとし違反いはんするものとなるものである。

ぎゃくに、それらの法令ほうれいもとづいての正当せいとう行為こういとして保護ほご可能かのう範疇はんちゅうはいるのに相当そうとうする妥当だとう適切てきせつ行為こういであれば、公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい成立せいりつい(ただし、法令ほうれいとう法律ほうりつ日本国にっぽんこく憲法けんぽうはんしている場合ばあいについては成立せいりついとはえない。)。

法定ほうていけい

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法定ほうていけいは、2ねん以下いか懲役ちょうえきまた禁錮きんこである。

特殊とくしゅ類型るいけい

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弁護士べんごし綱紀こうきみだれにかんする弁護士べんごしかい綱紀こうき委員いいんかい委員いいん刑法けいほうにおける公務員こうむいん)への処分しょぶん

公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんよう行為こうい内容ないようとする犯罪はんざいは、刑法けいほう193じょう公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい以外いがいにも刑法けいほうその法律ほうりつ規定きていされている。

刑法けいほうにおける公務員こうむいんによる職権しょっけん濫用らんよう特殊とくしゅ類型るいけい

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特別とくべつ公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい刑法けいほう194じょう
裁判さいばん検察けんさつしくは警察けいさつ職務しょくむおこなものまたはこれらの職務しょくむ補助ほじょするものがその職権しょっけん濫用らんようして、ひと逮捕たいほし、また監禁かんきんしたときは、6月以上いじょう10ねん以下いか懲役ちょうえきまた禁錮きんこしょせられる。
特別とくべつ公務員こうむいん暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃくざい刑法けいほう195じょう
裁判さいばん検察けんさつしくは警察けいさつ職務しょくむおこなものまたはこれらの職務しょくむ補助ほじょするものが、その職務しょくむおこなうにたり、被告人ひこくにん被疑ひぎしゃそのものたいして暴行ぼうこうまた陵辱りょうじょくしくはしいたげ行為こういをしたときは、7ねん以下いか懲役ちょうえきまた禁錮きんこしょせられる(刑法けいほう195じょう1こう)。また、法令ほうれいにより拘禁こうきんされたもの看守かんしゅまた護送ごそうするものがその拘禁こうきんされたものたいして暴行ぼうこうまた陵辱りょうじょくしくはしいたげ行為こういをしたときも、だい1こうつみ同様どうようである(刑法けいほう195じょう2こう)。
特別とくべつ公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようとう致死傷ちししょうざい刑法けいほう196じょう
刑法けいほう194じょうまたは195じょう犯罪はんざいおかし、よってひと死傷ししょうさせたものは、傷害しょうがいつみ比較ひかくして、おもけいにより処断しょだんされる(結果けっかてき加重かじゅうはん)。すなわち、致傷ちしょうについては職権しょっけん濫用らんようざいまた暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃくざい傷害しょうがいざい法定ほうていけいくらべ、致死ちしについては職権しょっけん濫用らんようざいまた暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃくざい傷害しょうがい致死ちしざい法定ほうていけいくらべ、下限かげん上限じょうげんともにおもいほうをえらぶということである。具体ぐたいてきには、職権しょっけん濫用らんよう致傷ちしょう拘禁こうきんしゃへの暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃく致傷ちしょう場合ばあいは「6がつ以上いじょう15ねん以下いか懲役ちょうえき」、その暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃく致傷ちしょう場合ばあいは「1がつ以上いじょう15ねん以下いか懲役ちょうえき」であるが、職権しょっけん濫用らんよう致死ちし暴行ぼうこう陵虐りょうぎゃく致死ちし場合ばあいは「3ねん以上いじょう有期ゆうき懲役ちょうえき」となり、裁判さいばんいん裁判さいばん対象たいしょうとなる。

特別とくべつ刑法けいほうにおける公務員こうむいんによる職権しょっけん濫用らんよう特殊とくしゅ類型るいけい

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公安こうあん調査官ちょうさかん警察けいさつ職員しょくいん職権しょっけん濫用らんよう行為こういにつき、破壊はかい活動かつどう防止ぼうしほう45じょう差別さべつ大量たいりょう殺人さつじん行為こういおこなった団体だんたい規制きせいかんする法律ほうりつ42じょう・43じょう犯罪はんざい捜査そうさのための通信つうしん傍受ぼうじゅかんする法律ほうりつ30じょう規定きていがある。罰則ばっそくは3ねん以下いか懲役ちょうえきまた禁錮きんこ規定きていされている。

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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関連かんれん項目こうもく

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