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頭部外傷 - Wikipedia

頭部とうぶ外傷がいしょう(とうぶがいしょう、えい: head injuryどく: Kopftrauma)は、頭部とうぶ外力がいりょくくわわって損傷そんしょうしょうじた状態じょうたい総称そうしょうである。外傷がいしょうせいのう損傷そんしょう続発ぞくはつさせることもすくなくなく、発生はっせい段階だんかいからこれをともなうこともある。

頭部とうぶ外傷がいしょう
概要がいよう
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 S00.0S09
ICD-9-CM 800-879
eMedicine neuro/153
Patient UK 頭部とうぶ外傷がいしょう
MeSH D006259
1933ねんオーストラリアクリケット選手せんしゅバート・オールドフィールドテストマッチなか頭蓋骨ずがいこつ骨折こっせつ発生はっせい

概要がいよう

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外傷がいしょう開放かいほうせい閉鎖へいさせいけられ、いずれも部位ぶいによって頭皮とうひ頭蓋骨ずがいこつ頭蓋とうがいないけられるが、頭蓋とうがいないとくのうたいする損傷そんしょう程度ていどもっと重視じゅうしされる。外力がいりょくのうあたえる損傷そんしょう成立せいりつじょには様々さまざまなものがあり、代表だいひょうてきなものとしては以下いかとおりである。

直撃ちょくげき損傷そんしょう

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ぜん頭部とうぶ衝撃しょうげきけた場合ばあい直下ちょっかぜん頭部とうぶにはあつによる直撃ちょくげき損傷そんしょう発生はっせいし、反対はんたいがわ後頭部こうとうぶではかげあつしょうじてほねのうあいだ空洞くうどう気胞きほう形成けいせい崩壊ほうかいによりはん損傷そんしょう発生はっせいする。一方いっぽう、これらのなかあいだ部位ぶいでは外力がいりょく均一きんいつつたわることにより剪断損傷そんしょう発生はっせいする

打撃だげき部位ぶいにおいてほねたわみ inbending をしょうじ、のう圧迫あっぱく損傷そんしょうする。とく小児しょうにではほねやわらかいので inbending injury をしょうじやすい。またほねのう実質じっしつではかたさがことなるために、ほね内面ないめんのう打撃だげきする。このような状況じょうきょう衝撃しょうげき部位ぶい直下ちょっかしょうじるのう挫傷ざしょう直撃ちょくげき損傷そんしょう直接ちょくせつ損傷そんしょう)coup injury という。

ぜん頭部とうぶ外力がいりょく作用さようした場合ばあいには直撃ちょくげき損傷そんしょうによるどうがわ挫傷ざしょうしょうじやすく、おも前頭葉ぜんとうよう底面ていめんがわあたま前部ぜんぶなどが損傷そんしょうける。また、がわ頭部とうぶもしくは頭頂とうちょう外力がいりょく作用さようした場合ばあいにも、直撃ちょくげき損傷そんしょうによりどうがわがわあたま外側そとがわ下面かめん損傷そんしょうされることがおおい。

はん損傷そんしょう

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はん損傷そんしょう contrecoup injury は、反動はんどう損傷そんしょうえい:counter blow、どく:Gegenstoß, Gegenschlag)ともいい、間接かんせつせい振盪しんとうのことである。頭蓋とうがい膀胱ぼうこうなど、液体えきたいふく器官きかん様々さまざま外力がいりょくによる衝撃しょうげき作用さようした場合ばあい直接ちょくせつ外力がいりょくくわわったとは反対はんたいがわ損傷そんしょうけることをいう。頭部とうぶつよ外力がいりょくくわわると、のうつよちから一方いっぽう進行しんこうし、頭蓋骨ずがいこつ内面ないめん衝突しょうとつ、その反動はんどうにより反対はんたい方向ほうこうもどされ、たいがわ頭蓋骨ずがいこつ衝突しょうとつして損傷そんしょうける。外力がいりょくによる直接的ちょくせつてきのう損傷そんしょう直撃ちょくげき損傷そんしょう)にくわえ、加速かそくされた外力がいりょく頭部とうぶくわわると、外力がいりょく反対はんたいがわ頭蓋骨ずがいこつのうとのあいだ間隙かんげきしょうじ、かげあつこることによりのう組織そしき損傷そんしょうしょうじる。そのためはん衝 contre-coup による損傷そんしょうは、直撃ちょくげき coup による損傷そんしょうよりおおきくなるとされる。

のうしつのう脊髄せきずいえきたされているため、衝撃しょうげきけた瞬間しゅんかんのう実質じっしつ頭蓋骨ずがいこつ移動いどうする速度そくどおくれて移動いどうし、打撃だげき部位ぶい反対はんたいがわにはかげあつしょうじる。外力がいりょくけた部位ぶい直下ちょっか周辺しゅうへんでは圧縮あっしゅくあつにより損傷そんしょうしょうじるのにたいし、たいがわでは伸展しんてんかげあつにより頭蓋骨ずがいこつのうとのあいだ空洞くうどう現象げんしょうしょうじ、瞬間しゅんかんてき真空しんくうちか状態じょうたいになる。このかげあつ気胞きほう cavity を形成けいせいするが、もとあつもどり、気胞きほう崩壊ほうかいするときのう挫傷ざしょうしょうじる(cavitation theory; Gross)。このような状況じょうきょう衝撃しょうげき反対はんたいがわしょうじるのう挫傷ざしょうはん損傷そんしょうである。

後頭部こうとうぶ外力がいりょく作用さようした場合ばあいには、受傷じゅしょう直下ちょっか直撃ちょくげき損傷そんしょうしょうじることはすくなく、はん損傷そんしょうによるたいがわ挫傷ざしょうしょうじやすい。おも前頭葉ぜんとうよう底面ていめんがわあたま前部ぜんぶなどがはん損傷そんしょうける。

剪断損傷そんしょう

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頭蓋とうがいない均一きんいつ構造こうぞうではなく、ほねかたまくはいしろしつはくただしのうしつ大脳だいのうがまなど不連続ふれんぞくであり、のう実質じっしつない一様いちようではない。これにより衝撃しょうげきたいしてかく部分ぶぶん相対そうたいてき運動うんどうあいだにずれ作用さよう shearing がしょうじる。直撃ちょくげき部位ぶいはん衝部とのあいだでは、のうたいする外力がいりょくつたわりかたちがいにより一種いっしゅのねじれのちから、剪断りょく作用さようして構築こうちくのずれがこり、神経しんけいじくさく伸長しんちょうもしくはだんきれする瀰漫びまんせいじくさく損傷そんしょう Diffuse Axonal Injury(DAI)、また剪断変形へんけいなどがしょうじる。一般いっぱんのう頭蓋とうがいないあつ均一きんいつ上昇じょうしょうにはかなりの程度ていどえうるが、shearing にたいしては非常ひじょうよわいとされている。この状況じょうきょうしょうじるのう挫傷ざしょうを剪断損傷そんしょう shearing injury という。

血管けっかん麻痺まひほか

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外力がいりょくくわわったのうひょう毛細血管もうさいけっかん血管けっかん麻痺まひ vasoparalysis とばれる血管けっかん運動うんどう神経しんけい麻痺まひ状態じょうたいおちいると、りゅう停滞ていたい血管けっかんそと漏出ろうしゅつこし、これがのうないてんじょう出血しゅっけつしょう出血しゅっけつ原因げんいんになるとされる。さらに、打撃だげき瞬間しゅんかんしょうじる脳幹のうかんのうそこ動脈どうみゃく穿ほじどおりえだとのずれ neurovascular friction をてんじょう出血しゅっけつしょう出血しゅっけつ原因げんいんとするかんがえもある。このほか頭蓋骨ずがいこつ構造こうぞう解剖かいぼうがくてき特徴とくちょうから、前頭葉ぜんとうよう底面ていめんがわあたま尖端せんたんめんには局所きょくしょてき損傷そんしょうしょうじやすい。

頭部とうぶ外傷がいしょう発生はっせいしたときには全身ぜんしん状態じょうたい頭部とうぶ損傷そんしょう程度ていど把握はあくし、重症じゅうしょう症例しょうれいでは呼吸こきゅう管理かんり静脈じょうみゃく確保かくほのち意識いしき障害しょうがい把握はあくおこなう。その程度ていどしめ基準きじゅんとして国際こくさいてきGlasgow Coma Scale(GCS)がもちいられ、日本にっぽんではおもJapan Coma Scale(JCS)がもちいられている。

外傷がいしょうかたによっては、つぎのようなものを発生はっせいすることがある。

荒木あらき分類ぶんるい

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頭部とうぶ外傷がいしょう臨床りんしょうてき分類ぶんるいとしては荒木あらき分類ぶんるい Araki's clinical classification of head injury がひろもちいられる。これは1954ねん荒木あらき千里せんり発表はっぴょうしたもので、頭部とうぶ外傷がいしょう臨床りんしょう症状しょうじょうのみにより以下いかの4つにけた簡便かんべん実用じつようてき分類ぶんるいほうである。

だい1がた単純たんじゅんがた 意識いしき障害しょうがい神経しんけい症候しょうこうなどのう症状しょうじょうまったともなわない。
だい2がた脳震盪のうしんとうかた 意識いしき障害しょうがい一過いっかせいのものとしてこり、受傷じゅしょう6時間じかん以内いないおおくは2時間じかん以内いない)に消失しょうしつする。のう局所きょくしょ症状しょうじょうはないが、頭痛ずつう嘔吐おうとめまいなどは短時日たんじじつつづくことがある。
だい3がたのう挫傷ざしょうがた 意識いしき障害しょうがい受傷じゅしょう6時間じかん以上いじょう持続じぞくする。もしくはのう損傷そんしょうしめ局所きょくしょ症候しょうこうがある。
だい4がた頭蓋とうがいない出血しゅっけつかた 意識いしき清明せいめい意識いしき障害しょうがい急激きゅうげき増悪ぞうあくする。もしくは意識いしき障害しょうがい進行しんこうしてのう圧迫あっぱく神経症しんけいしょうじょう出現しゅつげん憎悪ぞうおし、のうヘルニア徴候ちょうこうしめす。

頭部とうぶ外傷がいしょう後遺症こういしょう

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頭部とうぶ外傷がいしょうけたのち、3週間しゅうかん以上いじょう経過けいかした慢性まんせいはいってから発症はっしょう、もしくは3週間しゅうかん以上いじょうってものこ症候しょうこう頭部とうぶ外傷がいしょう後遺症こういしょうえい:posttraumatic cerebral symptom、どく:posttraumatisches Hirnsymptom)という。

通常つうじょう狭義きょうぎに、器質きしつてき変化へんか明確めいかくでなく自覚じかく症状しょうじょうのみのものをす。この場合ばあい頭部とうぶ外傷がいしょう後遺症こういしょう症状しょうじょうは、つぎのように分類ぶんるいされる。

神経しんけい衰弱すいじゃくよう症状しょうじょう 頭痛ずつう、めまい、嘔気不眠ふみん記憶きおくりょく低下ていか全身ぜんしん倦怠けんたいなど。
内分泌ないぶんぴつ症状しょうじょう 性欲せいよく減退げんたい月経げっけい異常いじょう体重たいじゅう減少げんしょうてい血圧けつあつなど。
自律じりつ神経しんけい症状しょうじょう 不整脈ふせいみゃく発汗はっかん異常いじょう蕁麻疹じんましんなど。
神経症しんけいしょう診断しんだんされる症状しょうじょう 症例しょうれいによる。

このうち神経症しんけいしょうとされるもの以外いがいでは軽度けいどのう萎縮いしゅくとくあいだのう萎縮いしゅくみとめられることがあるが、症状しょうじょうとの直接ちょくせつかかわりについては結論けつろんできないことがおおい。

 
頭部とうぶ外傷がいしょう後遺症こういしょうとしての外傷がいしょうせいてんかんの30年間ねんかん累積るいせき発生はっせいりつ重症じゅうしょうおうじて3つのグループにけられ、みぎけて、より深刻しんこくたか病態びょうたい発生はっせいしめす (2006ねん動物どうぶつモデル)[1]

一方いっぽう広義こうぎには肉眼にくがんてき病変びょうへんあきらかな器質きしつてき疾患しっかんふくめることもある。その場合ばあい器質きしつてき変化へんかあきらかなものとしては、頭蓋骨ずがいこつ骨折こっせつ陥没かんぼつ骨折こっせつ進行しんこうせい頭蓋とうがい骨折こっせつなど)、ずいえき脳症のうしょう骨髄こつづいえんかたまくがい膿瘍のうようかたまく膿瘍のうようのう膿瘍のうようずいまくえん、頸動みゃく海綿かいめん静脈じょうみゃくほら瘻、外傷がいしょうせい動脈どうみゃくこぶ外傷がいしょうせい動静どうせいみゃく瘻、頭蓋とうがい内外ないがい血管けっかん閉塞へいそくしょうあたま血腫けっしゅ慢性まんせいかたまく血腫けっしゅ脳神経のうしんけい障害しょうがいのう挫傷ざしょう精神せいしん障害しょうがい知能ちのう障害しょうがい外傷がいしょうせいてんかんなどがある。

外傷がいしょうせいてんかん

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外傷がいしょうせいてんかん(えいtraumatic epilepsyどく:traumatische Epilepsie)は、頭部とうぶ外傷がいしょうのちにてんかん発作ほっさこすものである。通常つうじょう、てんかん発作ほっさ国際こくさい分類ぶんるい(International League Against Epilepsy, ILAE、1981ねん)でいう「部分ぶぶん焦点しょうてん局所きょくしょ発作ほっさ」があらわれる。外傷がいしょう部位ぶい程度ていどによりことなるが、閉鎖へいさせい外傷がいしょう場合ばあいには3 - 5%、開放かいほうせい外傷がいしょう場合ばあいには30 - 50%がのちにてんかん発作ほっさこすとされ、このうち1ねんまでにやく半分はんぶんが、2ねんまでに4ぶんの3が発症はっしょうする。発症はっしょう脳波のうは検査けんさでは90%に焦点しょうてんせい異常いじょうみとめられるが、外傷がいしょう予測よそく段階だんかい脳波のうは所見しょけんでは、全般ぜんぱんせいじょなみしめ場合ばあいには2%、全般ぜんぱんせいとげしめ場合ばあいには30%の割合わりあいで、てんかん発作ほっさ発現はつげん可能かのうせいがあるとされる。

外傷がいしょうせい視神経ししんけい損傷そんしょう

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閉鎖へいさせい頭部とうぶ外傷がいしょうによって視神経ししんけい損傷そんしょうされることがあり、これを外傷がいしょうせい視神経ししんけい損傷そんしょう optic nerve injury, traumatic optic nerve injury という。この場合ばあい受傷じゅしょう部位ぶいはほぼ例外れいがいなく眼窩がんかうえ外側そとがわえんである。実験じっけんてき研究けんきゅうでは、この部位ぶい衝撃しょうげきくわえると視神経ししんけいかんじょうかべつよいひずみをしょうじ、このひずみが視神経ししんけい挫傷ざしょうこすとされる。視神経ししんけいかんじょうかべうすほね形成けいせいされているため、視神経ししんけいかん骨折こっせつたばかん骨折こっせつ)optic canal fracture をともなうこともおおいが必発ではない。視神経ししんけいかんじょうかべほね骨折こっせつによってへんしたことにより視野しや欠損けっそんしょうじている場合ばあいには、視神経ししんけいかん開放かいほうじゅつおこなうと改善かいぜんすることもあるが、視力しりょく障害しょうがい顕著けんちょ場合ばあいには効果こうかのぞみにくい。このようなれいでは受傷じゅしょう挫傷ざしょう程度ていどによってまる。

視神経ししんけい損傷そんしょうによる視力しりょく低下ていかを、視神経ししんけいかん骨折こっせつ存在そんざいするためととらえるならば早期そうき視神経ししんけいかん開放かいほうじゅつおこなうが、これとはべつかいたちせい外力がいりょく浮腫ふしゅ出血しゅっけつおも因子いんしととらえるならば消炎しょうえん療法りょうほう主体しゅたいとなる。3週間しゅうかん程度ていど経過けいか観察かんさつにおいて改善かいぜんがなければ開放かいほうじゅつおこなうというかんがえもあり、視神経ししんけいかん骨折こっせつたいする視神経ししんけいかん開放かいほうじゅつ適応てきおう時期じきかんしての統一とういつてき見解けんかいはない。

手術しゅじゅつ以外いがい治療ちりょうほうとしては、受傷じゅしょう早期そうきステロイド使用しようし、のち血行けっこう改善かいぜん目的もくてきどうがわほしじょう神経しんけいせつブロックこう単位たんいのビタミンBの投与とうよなどがこころみられる。

視神経ししんけいかん開放かいほうじゅつ

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視神経ししんけいかん開放かいほうじゅつえい:unroofing of optic canal、どく:Entdechung des Optikuskanals)は、視神経ししんけい管内かんない視神経ししんけいたいする圧迫あっぱく解除かいじょ視神経ししんけい浮腫ふしゅ腫瘍しゅようなどにたいする減圧げんあつ目的もくてきとする視神経ししんけいかんかんかべ除去じょきょ手術しゅじゅつである。けい前頭まえがしらひらきあたまじゅつによりぜん頭蓋とうがい窩を視神経ししんけいかんじょうかべ除去じょきょ開放かいほうする方法ほうほうと、はながいもしくはけいはなてきふるいこつほら視神経ししんけい管内かんないかべ除去じょきょする方法ほうほうとがある。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  0. 『南山みなみやまどう 医学いがくだい辞典じてん南山みなみやまどう 2006ねん3がつ10日とおか発行はっこう ISBN 978-4-525-01029-4

  1. ^ Asla Pitkänen, Tracy K. Mcintosh(February 1, 2006). "Animal Models of Post-Traumatic Epilepsy" Journal of Neurotrauma 23(2): 241-261; doi:10.1089/neu.2006.23.241
    A Population-Based Study of Seizures after Traumatic Brain Injuries John F. Annegers, Ph.D., W. Allen Hauser, M.D., Sharon P. Coan, M.S., and Walter A. Rocca, M.D., M.P.H. NEJM. Volume 338. January 1, 1998. Number 1.