安全あんぜんデータシート

安全あんぜんデータシート（あんぜんデータシート、英えい: Safety Data Sheet、略称りゃくしょう SDS）とは、危険きけん性せいまたは有害ゆうがい性せいのおそれがある化学かがく物質ぶっしつを含ふくむ製品せいひんを他たの事業じぎょう者しゃに譲渡じょうとまたは、提供ていきょうする際さいに、対象たいしょう化学かがく物質ぶっしつ等とうの性状せいじょうや取とり扱あつかいに関かんする情報じょうほうを提供ていきょうするための文書ぶんしょ。

有害ゆうがい物質ぶっしつの取とり扱あつかいとそのガイダンス、組成そせいおよび特性とくせいに関かんする情報じょうほうの文書ぶんしょ

有害ゆうがい物質ぶっしつに関かんする関連かんれん情報じょうほう、属性ぞくせい、および取とり扱あつかい手順てじゅんを提供ていきょうするアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの文書ぶんしょ

国際こくさい的てきには国際こくさい連合れんごうの化学かがく品ひんの分類ぶんるいおよび表示ひょうじに関かんする世界せかい調和ちょうわシステム(GHS)や ISO11014 で標準ひょうじゅん化かされている。

目的もくてき

化学かがく物質ぶっしつ等ひとしを適正てきせいに使用しよう、管理かんりするには、その人体じんたいや環境かんきょうへの有害ゆうがい性せい、危険きけん性せいについて認識にんしきし、適切てきせつな取とり扱あつかいをすることが必要ひつようであるが、そのためには情報じょうほうが不可欠ふかけつである。化学かがく物質ぶっしつを製造せいぞうや輸入ゆにゅうする事業じぎょう者しゃなど譲渡じょうと・提供ていきょうする事業じぎょう者しゃは、化学かがく物質ぶっしつの使用しよう事業じぎょう者しゃや輸送ゆそう・保管ほかん事業じぎょう者しゃなどに比較的ひかくてきして情報じょうほうを入手にゅうしゅしやすいが、これらの情報じょうほうは、取引とりひきの際さいに積極せっきょく的てきに提供ていきょうされにくい性質せいしつを有ゆうすることから、危険きけん性せい有害ゆうがい性せいのおそれがある化学かがく物質ぶっしつ等とうについては、自主じしゅ管理かんりに必要ひつようとなる情報じょうほうが確実かくじつに伝つたえられるようにすることを目的もくてきに、統一とういつした様式ようしきで提供ていきょうするように法令ほうれいで義務付ぎむづけられている。

日本にっぽんのSDS

日本にっぽんでは、GHS関係かんけい省庁しょうちょう連絡れんらく会議かいぎ により法ほう規制きせい等とうのGHSへの対応たいおうを行おこなっている。導入どうにゅう当初とうしょはJIS Z 7250で定義ていぎされた化学かがく物質ぶっしつ等とう安全あんぜんデータシート(かがくぶっしつとうあんぜんデータシート、英えい: Material Safety Data Sheet、略称りゃくしょう MSDS)と呼よばれていたが、2012年ねん4月がつに、JIS Z 7250とJIS Z 7251を統合とうごうしてJIS Z 7253が制定せいていされた際さいに国連こくれん GHS化学かがく品ひんの分類ぶんるいおよび表示ひょうじに関かんする世界せかい調和ちょうわシステム で規定きていされている略称りゃくしょうのSDSに変更へんこうされた。

対象たいしょう化学かがく物質ぶっしつ

日本にっぽんでは、毒物どくぶつ及および劇げき物ぶつ取締とりしまり法ほうおよび施行しこう令れいで指定していされている毒物どくぶつや劇げき物ぶつ（日本にっぽんの毒物どくぶつ一覧いちらん、日本にっぽんの劇げき物ぶつ一覧いちらんを参照さんしょう。）の全すべて、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほうおよび施行しこう令れいで指定していされた通知つうち対象たいしょう物ぶつ（名称めいしょう等とうを通知つうちすべき危険きけん物ぶつ及および有害ゆうがい物ぶつ）、特定とくてい化学かがく物質ぶっしつの環境かんきょうへの排出はいしゅつ量りょうの把握はあく等とう及および管理かんりの改善かいぜんの促進そくしんに関かんする法律ほうりつ（化学かがく物質ぶっしつ排出はいしゅつ把握はあく管理かんり促進そくしん法ほう、PRTR法ほう、化か管かん法ほうとも呼よばれる）の指定してい化学かがく物質ぶっしつを1%以上いじょう（ただし、特定とくてい第だい一種いっしゅ指定してい化学かがく物質ぶっしつは0.1%以上いじょう）含有がんゆうする製品せいひんを事業じぎょう者しゃ間あいだで譲渡じょうと・提供ていきょうするときに、事前じぜんまたは同時どうじにSDSの提供ていきょうが義務ぎむ化かされている。媒体ばいたいは文書ぶんしょ、磁気じきディスクによるものとし、受領じゅりょう者しゃ側がわの承諾しょうだくがあれば、ファクシミリ、電子でんしメール、譲渡じょうと提供ていきょう者しゃの管理かんり下かにあるWebページへの掲載けいさいも可能かのうである。また、内容ないように変更へんこうが生しょうじた場合ばあいも速すみやかに変更へんこう後ごの内容ないようで提供ていきょうするように努つとめるよう規定きていされている。

また、あわせて化学かがく物質ぶっしつの容器ようきにもGHS対応たいおうの絵え表示ひょうじや注意ちゅうい喚起かんき語ご、措置そちの概略がいりゃくが記載きさいされたラベルの貼付ちょうふが規定きていされている。

労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう（第だい57条じょうの2）に基もとづく通知つうち対象たいしょう物ぶつは、2021年ねん1月がつ1日にち現在げんざいで674物質ぶっしつある。

PRTR法ほうに基もとづく政令せいれいで定さだめられている物質ぶっしつは、2014年ねん末まつ現在げんざい、第だい一種いっしゅ指定してい化学かがく物質ぶっしつが462物質ぶっしつ [1]、第だい二に種しゅ指定してい化学かがく物質ぶっしつが100物質ぶっしつ [2]、合計ごうけい562物質ぶっしつである。この第だい一種いっしゅと第だい二に種しゅは有害ゆうがい性せいではなく、流通りゅうつう量りょうの違ちがいによっている。扱あつかい数量すうりょうに関かかわらずSDSの提供ていきょうが必要ひつよう。

なお、上述じょうじゅつの法ほうでSDSの提供ていきょうが義務付ぎむづけられないケースは各かく法律ほうりつで異ことなっており、注意ちゅういが必要ひつようである。例たとえば、PRTR法ほうでは次つぎのような場合ばあいは対象たいしょうとならない（施行しこう令れい第だい5条じょう、第だい6条じょう参照さんしょう）。

• 指定してい化学かがく物質ぶっしつの含有がんゆう率りつが指定していの値ねより小ちいさいもの。
• 固形こけい物ぶつであり、使用しよう時じにも固形こけい物ぶつ以外いがいの形状けいじょう（粉こな体たい、顆粒かりゅうや液体えきたい）とならない（管かん、板いた、組立くみたて部品ぶひんなど）
• 密封みっぷうされた状態じょうたいで使用しようされるもの（バッテリー、コンデンサなど）
• 一般いっぱん消費しょうひ者しゃ用ようの製品せいひん（家庭かてい用よう洗剤せんざい、殺虫さっちゅう剤ざいなど）
• 再生さいせい資源しげん（空あき缶かん、金属きんぞくくずなど）

記載きさい内容ないよう

• 日本工業規格にほんこうぎょうきかく（JIS Z 7253:2019「GHSに基もとづく化学かがく品ひんの危険きけん有害ゆうがい性せい情報じょうほうの伝達でんたつ方法ほうほう−ラベル，作業場さぎょうば内ないの表示ひょうじ及および安全あんぜんデータシート（SDS）」[3]）で標準ひょうじゅん化かされている記載きさい内容ないよう。化か管かん法ほうで、これに適合てきごうした記載きさいを努つとめるように規定きていされている。純じゅん物質ぶっしつについては2012年ねん6月がつ1日にちから施行しこうされているが、混合こんごう物ぶつについては2015年ねん4月がつ1日にちに施行しこうされた。
  1. 製品せいひん及および会社かいしゃ情報じょうほう - 製品せいひん名称めいしょう、SDSを提供ていきょうする事業じぎょう者しゃの名称めいしょう、住所じゅうしょ及および連絡れんらく先さき
  2. 危険きけん有害ゆうがい性せいの要約ようやく - GHS対応たいおうの絵え表示ひょうじや注意ちゅうい喚起かんき語ごを使用しよう
  3. 組成そせい、成分せいぶん情報じょうほう - 含有がんゆうする指定してい化学かがく物質ぶっしつの名称めいしょう、指定してい化学かがく物質ぶっしつの種別しゅべつ、含有がんゆう率りつ（有効ゆうこう数字すうじ2桁けた）
  4. 応急おうきゅう措置そち
  5. 火災かさい時じの措置そち
  6. 漏出ろうしゅつ時じの措置そち
  7. 取扱とりあつかい及および保管ほかん上じょうの注意ちゅうい
  8. 暴露ばくろ防止ぼうし及および人ひとに対たいする保護ほご措置そち
  9. 物理ぶつり的てき及および化学かがく的てき性質せいしつ
  10. 安定あんてい性せい及および反応はんのう性せい
  11. 有害ゆうがい性せい情報じょうほう
  12. 環境かんきょう影響えいきょう情報じょうほう
  13. 廃棄はいき上じょうの注意ちゅうい
  14. 輸送ゆそう上じょうの注意ちゅうい
  15. 適用てきよう法令ほうれい
  16. その他たの情報じょうほう

2006年ねん12月からは、SDSにもGHS対応たいおうの絵え表示ひょうじ（包装ほうそうラベルに示しめすものと同おなじもの）を付つける事ことが求もとめられるようになった（危険きけん有害ゆうがい性せいの要約ようやく）。なお、約やく3000物質ぶっしつについては、GHSに基もとづく政府せいふ分類ぶんるいを、厚生こうせい労働省ろうどうしょう・環境省かんきょうしょう、独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん製品せいひん評価ひょうか技術ぎじゅつ基盤きばん機構きこう（NITE）でも公開こうかいしている。

欧州おうしゅう連合れんごうのSDS

欧州おうしゅう連合れんごう（EU）では欧州おうしゅう化学かがく物質ぶっしつ庁ちょう（ECHA）のREACH規則きそくでSDSを規定きていしている。

米国べいこくのSDS

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい標準ひょうじゅんの連邦れんぽう規則きそくCRF1920:1200 App DでSDSを規定きていしている。

米国べいこく国家こっか規格きかく協会きょうかい（ANSI Z400、1/Z 129.1-2010）「職場しょくばの危険きけん有害ゆうがい化学かがく品ひんにおける危険きけん有害ゆうがい性せい評価ひょうか、安全あんぜん性せいデータシート及および安全あんぜんラベルの作成さくせい」を参照さんしょう。

中国ちゅうごくのSDS

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは、1998年ねんに国家こっか規格きかくGB/T 17519-1998『化学かがく品ひん安全あんぜん資料集しりょうしゅう』で作成さくせいが標準ひょうじゅん化かされ、MSDSまたはCSDSと称しょうされていたが、2003年ねんに「化学かがく品ひん安全あんぜん技術ぎじゅつ説明せつめい書しょ（SDS）」に統一とういつされ、2008年ねんにはGHS対応たいおうとなった。現在げんざい、作成さくせい方法ほうほうや記載きさい内容ないようは、欧米おうべい日本にっぽんの規格きかくを参照さんしょうして2013年ねんに作成さくせい、改訂かいていされた、GB/T 17519-2013『化学かがく品ひん安全あんぜん技術ぎじゅつ説明せつめい書しょ編へん写うつし指南しなん』により規定きていされている。

台湾たいわんのSDS

中華民国ちゅうかみんこくでは、従来じゅうらい『物質ぶっしつ安全あんぜん資料しりょう表ひょう（MSDS）』と称しょうしていたが、2014年ねん12月11日にちより改正かいせい『毒性どくせい化学かがく物質ぶっしつ標示ひょうじ及および安全あんぜん資料しりょう表ひょう管理かんり弁べん法ほう』によって『安全あんぜん資料しりょう表ひょう（SDS）』と改称かいしょうされた。

MSDSplus

日本にっぽんのアーティクルマネジメント推進すいしん協議きょうぎ会かい（JAMP）が推奨すいしょうする製品せいひん含有がんゆう化学かがく物質ぶっしつ情報じょうほうを伝達でんたつするための基本きほん的てきな情報じょうほう伝達でんたつシート。製品せいひん中ちゅうに含有がんゆうされる成分せいぶんが規定きていを受うける「法規ほうき等とうの名称めいしょう」、管理かんり対象たいしょう物質ぶっしつの「含有がんゆう有無うむ」、「物質ぶっしつ名めい」、「CAS番号ばんごう」、「濃度のうど」などの情報じょうほうに関かんして、SDSの作成さくせい規定きていから外はずれる微量びりょう含有がんゆう物質ぶっしつの情報じょうほうについても補足ほそく、伝達でんたつするための資料しりょう。作成さくせいのためのソフトウェアが用意よういされていたが、chemSHERPAへの移行いこうに伴ともない2018年ねん1月がつの更新こうしんをもって2018年ねん6月がつ末まつに公開こうかい終了しゅうりょうとなっている。

関連かんれん項目こうもく

• 化学かがく品ひんの分類ぶんるいおよび表示ひょうじに関かんする世界せかい調和ちょうわシステム（GHS）
• 毒物どくぶつ及および劇げき物ぶつ取締とりしまり法ほう
  • 日本にっぽんの毒物どくぶつ一覧いちらん
  • 日本にっぽんの劇げき物ぶつ一覧いちらん
• 労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう
• 特定とくてい化学かがく物質ぶっしつの環境かんきょうへの排出はいしゅつ量りょうの把握はあく等とう及および管理かんりの改善かいぜんの促進そくしんに関かんする法律ほうりつ（PRTR法ほう）
• 国際こくさい化学かがく物質ぶっしつ安全あんぜん性せいカード(ICSC)

外部がいぶリンク

• 化か管かん法ほうSDS制度せいど - 経済けいざい産業さんぎょう省しょう
• SDS検索けんさく - 日本にっぽん試薬しやく協会きょうかい
• GHSとは - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• 安衛やすえ法ほう名称めいしょう公表こうひょう化学かがく物質ぶっしつ等とう - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• GHS対応たいおうモデルラベル・モデルSDS情報じょうほう - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう