くじらひげ

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くじらひげ

くじらひげ(くじらひげ)とは、ヒゲクジラ動物どうぶつ上顎じょうがくられる、繊維せんいいたじょうとなった器官きかんである。ひげばんともう。口腔こうくうない皮膚ひふがヒゲクジラるい独自どくじ変化へんかしたもので、ひげもうとは由来ゆらいことなる。濾過ろか摂食せっしょくのためのフィルターとしての役割やくわりつ。弾力だんりょくせいなどにすぐれることから、プラスチックなどの普及ふきゅう以前いぜんには各種かくしゅ工業こうぎょう素材そざい利用りようされ、捕鯨ほげい重要じゅうよう目的もくてきにもなった。

構造こうぞう

概説がいせつ

ヒゲクジラるい上顎じょうがくのうち、口蓋こうがい皮膚ひふ変化へんかした器官きかんである。ヒゲクジラるい濾過ろか摂食せっしょくおこな生物せいぶつであり、くじらひげはそのさいもちいるフィルターとして発達はったつした。組成そせい皮膚ひふ角質かくしつ組織そしきおなケラチンからなる。

上顎じょうがく左右さゆうれつをなし、それぞれ最大さいだいで300まい程度ていどえる。1まいくじらひげは、細長ほそなが三角形さんかっけいいたじょう器官きかんである。ちょうあたりのうち一方いっぽう多数たすうえたようになっているが、これはくじらひげのいたじょう組織そしき内部ないぶ構成こうせいする繊維せんいが、先端せんたん摩滅まめつともなってしてくることで形成けいせいされる。この繊維せんいたがいにかさなりい、えさをこしとる、あるいはふるいけるフィルターとして機能きのうする。つめなどとおなじく一生いっしょう伸長しんちょうつづき、先端せんたん摩滅まめつおぎなう。成長せいちょうともない、いた部分ぶぶん表面ひょうめんいちねんごとにしわしょうじるので、くじら年齢ねんれい調査ちょうさにももちいることができる。ただし、くじらひげの先端せんたん徐々じょじょけてしまうため、わかくじらにしか有効ゆうこうでない。

なお、中世ちゅうせいヨーロッパでは、ヒゲクジラがくちおおきくひらくとくじらひげが邪魔じゃまをしてくちじることができなくなり、んでしまうとかんがえられていた。

くじらしゅによる差異さい

すべてのヒゲクジラそなわった器官きかんであるが、種類しゅるいによってえさ生物せいぶつことなるのにあわせて、くじらひげの形状けいじょうことなっている。カイアシるいのような小型こがたプランクトンべることがおおいセミクジラセミクジラホッキョククジラは、2メートルをえるもっとながくじらひげをつ。繊維せんい非常ひじょうほそい。これにたいして、プランクトンでもネクトンちか性質せいしつオキアミまれしょうさかなべるナガスクジラシロナガスクジラなどでは、くじらひげはあまりながくなく、繊維せんいふと傾向けいこうがある。とくに、サンマなどの比較的ひかくてき大型おおがたさかなまでべるニタリクジラミンククジラなどは繊維せんいふと丈夫じょうぶである。ヨコエビナマコカニなどのベントスそこせい動物どうぶつ)を捕食ほしょくするコククジラでは、くじらひげはみじかかたい。

摂食せっしょく方法ほうほう

くじらひげによる具体ぐたいてき摂食せっしょく方法ほうほうは、大別たいべつすると「こしとりがた」と「みこみがた」にけられる。

こしとりがたは、くちけたまま獲物えもの群集ぐんしゅうした海域かいいきおよぎ、くち前面ぜんめんからはいってくる海水かいすいからえさ生物せいぶつ連続れんぞくてきにこしとる方法ほうほうである。ながくじらひげをつセミクジラなどがおこなう。ナガスクジラでも、比較的ひかくてきながくじらひげをつイワシクジラはこの方法ほうほう併用へいようするとかんがえられる。

みこみがたおもにナガスクジラおこない、くちおおきくけて獲物えものれにかって突進とっしん大量たいりょう海水かいすいごと口腔こうくうないふくむ。そして口内こうないふくんだ海水かいすいくじらひげの隙間すきまからし、獲物えものだけをくじらひげで口中くちじゅうのこ方法ほうほうである。ザトウクジラおこなう、集団しゅうだんしょうさかなかこんで水面すいめんみ、一斉いっせいにジャンプするようにむバブルネットフィーディングは有名ゆうめいである。

ベントスべるコククジラは特殊とくしゅで、海底かいていすなどろくち側面そくめんから海水かいすいごとみ、くじらひげでふるいにかけるようにこしてのこったえさ生物せいぶつべる。

素材そざいとしてのくじらひげ

加工かこうしやすい程度ていどかたさで、強度きょうどがあり、かるく、弾力だんりょくせいがあるなどのすぐれた性質せいしつがあるため、エンバばんともばれ、ふるくから様々さまざま製品せいひん素材そざいもちいられてきた。ふるれいとしては、せいくらいんくじらひげせい如意にょい宝物ほうもつとしておさめられている。とくにセミクジラのものは、ながくて非常ひじょう柔軟じゅうなんかつ弾力だんりょくがあることから重宝ちょうほうされ、結果けっかとしてセミクジラ乱獲らんかく一因いちいんともなった。その弾力だんりょくのある金属きんぞくせんやプラスチックが普及ふきゅうしたため、現在げんざいでは工芸こうげいてき用途ようとのぞいては需要じゅようほとんどない。

  • 釣竿つりざお - 日本にっぽんでは、弾力だんりょくせいかして釣竿つりざお先端せんたん部分ぶぶんもちいられる。現在げんざいでも一部いちぶ使用しようされている。
  • 衣服いふく - 整形せいけいようほねもちいる。西洋せいようではコルセットクリノリンなどの女性じょせいよう下着したぎやドレスの腰部ようぶ日本にっぽんではかみしもかたなど。
  • かさ - 西洋せいようではかさほねもちいた。
  • 扇子せんす - 日本にっぽんでは、扇子せんすようとしてもちいていた。
  • 呉服ごふくじゃく - 日本にっぽんでは着物きもの仕立した専用せんようのものさしの材料ざいりょうもちいた。鯨尺くじらじゃくともばれ、ながさの単位たんいとしてそののこっている。
  • ぜんまいばね - 江戸えど時代じだい日本にっぽんでぜんまいの材料ざいりょうとされた。からくり人形にんぎょうなどで使用しようされた。
  • 文楽ぶんらく人形にんぎょう - 操作そうささくもちいる。
  • ヴァイオリンのゆみ - スティックのせんもちいる。現在げんざいイミテーション(模造もぞうひん)もる。
  • その - くつべら、かぶと装飾そうしょくなど。

なお、特殊とくしゅ用途ようととして、日本にっぽんでは食用しょくようにももちいられたれいがある。わかいセミクジラのものを食用しょくようにしたほか、太平洋戦争たいへいようせんそうなか代用だいよう醤油じょうゆ原料げんりょうとしてもちいられた。

参考さんこう文献ぶんけん

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