大橋おおはし新太郎しんたろう

おおはし しんたろう 大橋おおはし 新太郎しんたろう
大橋おおはし新太郎しんたろう
生誕せいたん	(1863-09-11) 1863年ねん9月11日にち 新潟にいがた県けん長岡ながおか市し本町ほんまち一いち丁目ちょうめ
死没しぼつ	(1944-05-05) 1944年ねん5月5日にち（80歳さい没ぼつ） 東京とうきょう市し麹町こうじまち区く三番さんばん町まち（自邸じてい）
墓地ぼち	護国寺ごこくじ（東京とうきょう都と文京ぶんきょう区く）
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん校こう	長岡ながおか洋ひろし学校がっこう・新潟にいがた師範しはん学校がっこう講習こうしゅう所しょ・同人どうじん社しゃ
職業しょくぎょう	出版しゅっぱん者しゃ、実業じつぎょう家か
著名ちょめいな実績じっせき	博文ひろぶみ館かん・共同印刷きょうどういんさつ・東京とうきょう堂どう創業そうぎょう
配偶はいぐう者しゃ	大橋おおはし須磨子すまこ(元もと芸妓げいぎ)
子供こども	大橋おおはし進一しんいち（長男ちょうなん）ほか多数たすう
親おや	大橋おおはし佐平さへい、松子まつこ

大橋おおはし 新太郎しんたろう（おおはし しんたろう、文久ぶんきゅう3年ねん7月がつ29日にち（1863年ねん9月11日にち） - 1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）5月5日にち）は、明治めいじ時代じだいから昭和しょうわ時代じだいにかけての実業じつぎょう家か・政治せいじ家か。父ちちの大橋おおはし佐平さへいとともに博文ひろぶみ館かんを創業そうぎょうし、明治めいじ・大正たいしょう時代じだいの出版しゅっぱん界かいの王者おうじゃとなり、印刷いんさつから販売はんばいまで手てがける出版しゅっぱんコンツェルンを構築こうちくした。また。衆議院しゅうぎいん議員ぎいん・貴族きぞく院いん議員ぎいんにも選えらばれたほか、日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ会長かいちょうを務つとめた。

人物じんぶつ

父ちちの大橋おおはし佐平さへいは越後えちご長岡ながおかの開明かいめい的てきな商人しょうにんで、出版しゅっぱん・新聞しんぶんなどの情報じょうほう産業さんぎょうにいち早はやく着目ちゃくもくし、新潟にいがた県けんから東京とうきょうに進出しんしゅつして近代きんだい出版しゅっぱん業ぎょうの先駆せんく者しゃとなった。

博文ひろぶみ館かんは、佐平さへいと新太郎しんたろうの父子ふしが協力きょうりょくして創立そうりつした出版しゅっぱん社しゃで、日にち清しん戦争せんそう・日にち露ろ戦争せんそうなどの報道ほうどうによって爆発ばくはつ的てきな利益りえきを得えるとともに、尾崎おざき紅葉こうようを盟主めいしゅとする硯友社けんゆうしゃの文学ぶんがく運動うんどうに「文芸ぶんげい倶楽部くらぶ」などの発表はっぴょうの場ばを提供ていきょうすることによって当時とうじの文壇ぶんだんの首脳しゅのう部ぶを手中しゅちゅうに収おさめた。また大衆たいしゅうが必要ひつようとする実用じつよう的てきな知識ちしきを集あつめた百科全書ひゃっかぜんしょや、日本にっぽんの古典こてん文学ぶんがく作品さくひんに新あらたな注釈ちゅうしゃくを施ほどこした活字かつじ本ほんなど、さまざまな分野ぶんやにわたる膨大ぼうだいな刊行かんこう物ぶつを廉価れんかで販売はんばいし、近代きんだい出版しゅっぱん界かいでゆるぎない地位ちいをき上ずきあげた。

新太郎しんたろうは、父ちちの出版しゅっぱん事業じぎょうを継承けいしょうするだけでなく、印刷いんさつ（共同印刷きょうどういんさつ）から取次とりつぎ・小売こうり（東京とうきょう堂どう）にわたるコンッエルンを構築こうちくし、さらに各種かくしゅの製造せいぞう業ぎょう・エネルギー事業じぎょう・交通こうつう事業じぎょうの新しん会社かいしゃの設立せつりつに積極せっきょく的てきに関与かんよし、国会こっかい議員ぎいんとなって活動かつどうしながら財界ざいかいの発展はってんに尽つくした。一方いっぽう、共同印刷きょうどういんさつ社内しゃないでは、労働ろうどう争議そうぎが頻発ひんぱつし、1926年ねんには共同印刷きょうどういんさつ争議そうぎとして歴史れきしに刻きざまれる大だい事件じけんに発展はってんし、新太郎しんたろうはその対応たいおうに苦慮くりょした。

父ちち佐平さへいの遺志いしを継ついで建設けんせつした私設しせつ大橋おおはし図書館としょかんは、誰だれでも簡単かんたんに利用りようできる図書館としょかんとして東京とうきょう市民しみんに親したしまれた。また金沢かなざわ（横浜よこはま市し金沢かなざわ区く）の別荘べっそうに隣接りんせつする称名寺しょうみょうじが荒廃こうはいしていることを悲かなしみ、多大ただいな寄進きしんを行おこなって境内けいだいの整備せいびに尽つくすとともに、神奈川かながわ県知事けんちじ池田いけだ宏ひろしの要請ようせいによって、称名寺しょうみょうじ境内けいだいに設立せつりつされた神奈川かながわ県立けんりつ金沢かなざわ文庫ぶんこの建設けんせつ資金しきんの半額はんがくを提供ていきょうするなど、文化ぶんか的てきな公共こうきょう事業じぎょうへ私財しざいの投入とうにゅうをいとわなかったことは、今いまなお高たかく評価ひょうかされている。

大正たいしょう時代じだい以降いこう、新太郎しんたろうは財界ざいかい活動かつどうに主力しゅりょくを置おき、出版しゅっぱん活動かつどうは子弟していにほとんど委任いにんしたため、円本えんもとブームにも乗のりそこね、講談社こうだんしゃや岩波書店いわなみしょてんなどの志こころざしや目的もくてきを高たかく掲かかげた後続こうぞく出版しゅっぱん社しゃに押おされて、売うり切きり制せいの廉価れんか大量たいりょう販売はんばいによって一世いっせいを風靡ふうびした博文ひろぶみ館かんのやり方かたは時代遅じだいおくれとなり、出版しゅっぱん界かいにおける地位ちいは低落ていらくした。戦争せんそう中ちゅうに新太郎しんたろうが没ぼっし、後継こうけい体制たいせいが固かたまらないうちに敗戦はいせんとなり、財閥ざいばつ解体かいたい令れいによって大橋おおはしコンツェルンも分割ぶんかつされ、博文ひろぶみ館かんは消滅しょうめつした。戦後せんご、需要じゅようの高たかかった「博文ひろぶみ館かん日記にっき」を主おもに刊行かんこうするために、共同印刷きょうどういんさつの一角いっかくで博文ひろぶみ館かん新しん社しゃが再建さいけんされ、今日きょうに名跡みょうせきをつないでいる。

経歴けいれき

• 文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん） - 越後えちご国こく古志こし郡ぐん長岡ながおか城しろ下した（現げん新潟にいがた県けん長岡ながおか市し本町ほんまち一いち丁目ちょうめ）で生うまれる
• 明治めいじ4年ねん（1871年ねん） - 長岡ながおか小学校しょうがっこう入学にゅうがく
• 明治めいじ5年ねん（1872年ねん） - 長岡ながおか洋ひろし学校がっこう入学にゅうがく
• 1875年ねん - 新潟にいがた師範しはん学校がっこう（現在げんざいの新潟大学にいがただいがく）講習こうしゅう所しょ入学にゅうがく
• 1876年ねん - 父ちち佐平さへいとともに上京じょうきょうし、中村なかむら正直まさなおが開ひらいた同人どうじん社しゃに入学にゅうがくし、少年しょうねん寮りょうに入はいる
• 1879年ねん - 父ちち佐平さへい、新潟にいがたで書籍しょせき販売はんばい業ぎょうを始はじめ、新太郎しんたろうも従事じゅうじして県内けんないを巡回じゅんかい
• 1887年ねん - 父ちち佐平さへい、東京とうきょうに博文ひろぶみ館かんを創業そうぎょう。新太郎しんたろうも多数たすうの雑誌ざっしの創刊そうかんと出版しゅっぱん事業じぎょうを展開てんかいする
• 1892年ねん - 日本橋にほんばし区く本町ほんまち三さん丁目ちょうめに本社ほんしゃを設置せっち
• 1895年ねん - 「文芸ぶんげい倶楽部くらぶ」・「太陽たいよう」・「少年しょうねん世界せかい」の三さん大だい雑誌ざっしを創刊そうかん
• 1896年ねん - 初はじめて「博文ひろぶみ館かん日記にっき」を創刊そうかん
• 1897年ねん - 1884年ねんから連つれ添そった妻つまのやま子こ（旧姓きゅうせい柳沢やぎさわ）を離縁りえん、須磨子すまこ（川越かわごえ町まち、横田よこた準之助じゅんのすけ養女ようじょ）と再婚さいこん
• 1898年ねん - 東京瓦斯とうきょうがす専務せんむ取締役とりしまりやくとなる
• 1899年ねん - 小石川こいしかわ区く久ひさ堅けん町まちに博はく進しん社しゃ工場こうじょうを新設しんせつ（1925年ねんに共同印刷きょうどういんさつとなる）
• 1901年ねん - 父ちち佐平さへい没ぼつ。遺志いしにより、翌年よくねん麹町こうじまち区く上うえ六番ろくばん町まち（現げん、千代田ちよだ区く三番さんばん町まち）の自邸じてい内ないに大橋おおはし図書館としょかんを設置せっち
• 1902年ねん - 衆議院しゅうぎいん議員ぎいんに当選とうせん
• 1903年ねん - 王子製紙おうじせいしの取締役とりしまりやくに就任しゅうにん
• 1908年ねん - 欧米おうべい視察しさつ旅行りょこう
• 1912年ねん - 日本鋼管にほんこうかんの取締役とりしまりやくに就任しゅうにん
• 1915年ねん - 京きょう城じょう電気でんき会社かいしゃの社長しゃちょうに就任しゅうにん
• 1920年ねん - 株式会社かぶしきがいしゃ大橋おおはし本店ほんてんを創立そうりつし、頭取とうどりとなる
• 1921年ねん - 日本にっぽん勧業かんぎょう銀行ぎんこうの参与さんよ理事りじに就任しゅうにん
• 1924年ねん - 博文ひろぶみ館かん印刷所いんさつしょでストライキ発生はっせい
• 1926年ねん - 関東大震災かんとうだいしんさいで全焼ぜんしょうした大橋おおはし図書館としょかんを九段下くだんしたに新築しんちく移転いてん。貴族きぞく院いん議員ぎいんに勅みことのり選せん
• 1927年ねん - 朝鮮ちょうせん無煙炭むえんたん会社かいしゃ・東京とうきょう電燈でんとう会社かいしゃ・理化学りかがく興業こうぎょう会社かいしゃの取締役とりしまりやくに就任しゅうにん。「太陽たいよう」終おわり刊かん
• 1928年ねん - 南朝鮮みなみちょうせん鉄道てつどう会社かいしゃ・日本航空にほんこうくう輸送ゆそう会社かいしゃの取締役とりしまりやくに就任しゅうにん
• 1930年ねん - 新太郎しんたろうの半額はんがく出資しゅっしによって、神奈川かながわ県立けんりつ金沢かなざわ文庫ぶんこが称名寺しょうみょうじ境内けいだいに完成かんせい
• 1933年ねん - 日本石油にほんせきゆ会社かいしゃ相談役そうだんやく・大だい日本にっぽん麦酒びーるの取締役とりしまりやく会長かいちょうに就任しゅうにん。「文芸ぶんげい倶楽部くらぶ」・「少年しょうねん世界せかい」終おわり刊かん
• 1934年ねん - 勲くん四よん等とうに叙じょせられる
• 1935年ねん - 日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ会長かいちょうに就任しゅうにん
• 1936年ねん - 日本にっぽん硝子がらす会社かいしゃ取締役とりしまりやく会長かいちょうに就任しゅうにん
• 1941年ねん - 正せい五ご位いに叙じょせられる
• 1944年ねん - 5月5日にち午後ごご11時じ15分ふん、麹こうじ町まち区く三番さんばん町まち22番地ばんちの本邸ほんていで死去しきょ。法名ほうみょう：永楽えいらく院いん殿どの松まつ雲くも道どう翁おう大だい居士こじ。5月9日にち築地つきじ本願寺ほんがんじにて葬儀そうぎ、小石川こいしかわ護国寺ごこくじに埋葬まいそう。

栄典えいてん

• 1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）11月10日にち - 紀元きげん二に千せん六ろく百ひゃく年ねん祝典しゅくてん記念きねん章あきら

主おもな刊行かんこう雑誌ざっし

• 「日本にっぽん之の少年しょうねん」（1889年ねん）
• 「江戸えど会誌かいし」（1889年ねん）
• 「太陽たいよう」（1895年ねん）
• 「少年しょうねん世界せかい」（1895年ねん）
• 「文芸ぶんげい倶楽部くらぶ」（1895年ねん）
• 「中学ちゅうがく世界せかい」（1898年ねん）
• 「幼年ようねん世界せかい」（1900年ねん）
• 「女おんな学がく世界せかい」（1901年ねん）
• 「写真しゃしん画が報ほう」・「幼年ようねん画が報ほう」・「少女しょうじょ世界せかい」・「文章ぶんしょう世界せかい」〔田山たやま花袋かたい主おも編へん〕（1906年ねん）
• 「英語えいご世界せかい」・「数学すうがく世界せかい」（1907年ねん）
• 「冒険ぼうけん世界せかい」〔押川おしかわ春浪しゅんろう主おも編へん〕（1908年ねん）
• 「演芸えんげい倶楽部くらぶ」・「婦女ふじょ画が報ほう」（1912年ねん）
• 「講談こうだん雑誌ざっし」・「家庭かてい雑誌ざっし」（1915年ねん）
• 「探偵たんてい小説しょうせつ」（1931年ねん）
• 「新しん少年しょうねん」（1935年ねん）

主おもな出版しゅっぱん物ぶつ・シリーズ物ぶつ

• 『日本にっぽん文学ぶんがく全書ぜんしょ』・『日本にっぽん歌学かがく全書ぜんしょ』（1890年ねん）
• 『温ゆたか知ち叢書そうしょ』・『日本にっぽん文庫ぶんこ』・『日本にっぽん歴史れきし読本とくほん』・『少年しょうねん文学ぶんがく』（1891年ねん）
• 『帝国ていこく文庫ぶんこ』（1893年ねん）
• 『日にち清しん戦争せんそう実記じっき』（1894年ねん）
• 『一葉いちよう全集ぜんしゅう』（1897年ねん）
• 『帝国ていこく百科全書ひゃっかぜんしょ』・『通俗つうぞく百科全書ひゃっかぜんしょ』・『日用にちよう百科全書ひゃっかぜんしょ』（1898年ねん）
• 『独歩どっぽ全集ぜんしゅう』（1910年ねん）

親族しんぞく

• 大橋おおはし佐平さへい - 父ちち、博文ひろぶみ館かん創業そうぎょう者しゃ。
• 大橋おおはし進一しんいち - 長男ちょうなん、第だい3代だい博文ひろぶみ館主かんしゅ。
• 金子かねこ豊子とよこ - 五ご女じょ、金子かねこ武たけ麿まろ夫人ふじん。
• 大橋おおはし乙羽おとわ - 義弟ぎてい。

関連かんれん文献ぶんけん

• 坪谷つぼや善四郎ぜんしろう『大橋おおはし新太郎しんたろう伝でん』 博文ひろぶみ館かん新しん社しゃ（1985年ねん、1937年ねん成なり稿こう）
• 坪谷つぼや善四郎ぜんしろう『大橋おおはし図書館としょかん四よん十じゅう年ねん史し』 博文ひろぶみ館かん（1942年ねん）
• 坪谷つぼや善四郎ぜんしろう『大橋おおはし佐平さへい翁おう伝つたえ』 博文ひろぶみ館かん（1932年ねん、1974年ねんに増補ぞうほ改訂かいてい版ばんが栗田くりた出版しゅっぱん会かいから刊行かんこう）

関連かんれん項目こうもく

• 硯友社けんゆうしゃ
• 金色きんいろ夜叉やしゃ - 「金色きんいろ夜叉やしゃ」の貫ぬき一いちのライバル「富山とみやま唯ゆい継つぎ」のモデル。妻つまの須磨すまは貫一かんいちを裏切うらぎる「鴫しぎ沢さわ宮みや(お宮みや)」のモデル。

外部がいぶリンク

• 経済けいざい（学がく）あれこれ～経済けいざい現象げんしょうおよび政策せいさくに関かんする意見いけん・断だん想そう・批判ひはん
• 広報こうほうよこはま・金沢かなざわ区く版ばん2013年ねん7月がつ号ごう　金沢かなざわ偉人いじん伝でん～大橋おおはし新太郎しんたろう
• 『社しゃ史しと伝記でんきにみる日本にっぽんの実業じつぎょう家か～人物じんぶつデータと文献ぶんけん案内あんない』神奈川かながわ県立けんりつ図書館としょかん・神奈川かながわ県立けんりつ川崎かわさき図書館としょかん編へん