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アルタイル (月面げつめん着陸ちゃくりく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルタイル

月面げつめん着陸ちゃくりくしたアルタイルの想像そうぞう(NASA)
詳細しょうさい
使用しよう目的もくてき 月面げつめん着陸ちゃくりく
定員ていいん 4めい
しょもと
全高ぜんこう 9.7 m (32 ft)
直径ちょっけい 7.5 m (25 ft)
着陸ちゃくりくあし間隔かんかく 14.8 m (49 ft)
体積たいせき 31.8 m3 (1,120 cu ft)
重量じゅうりょう
うえ昇段しょうだん 10,809 kg (23,830 lb)
下降かこうだん 35,055 kg (77,283 lb)
そう重量じゅうりょう 45,864 kg (101,113 lb)
ロケットエンジン[1]
姿勢しせい制御せいぎょようロケット 445N
離陸りりくよう推進すいしんシステム
液体えきたい酸素さんそ/液体えきたい水素すいそRL-10派生はせいがたロケット1
44.5kN
着陸ちゃくりくよう推進すいしんシステム
液体えきたい酸素さんそ/液体えきたい水素すいそRL-10派生はせいがたロケット4
66.7kN
性能せいのう
最長さいちょう宇宙うちゅう滞在たいざい期間きかん 7にち月面げつめん短期たんき滞在たいざい飛行ひこう 210日とおか以上いじょう月面げつめん長期ちょうき滞在たいざい飛行ひこう
到達とうたつてん 月面げつめん

アルタイル表象ひょうしょう
アルタイル

アルタイルまたはアルテア (Altair)、旧称きゅうしょう月面げつめん接近せっきん区画くかくは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくNASAコンステレーション計画けいかく使用しようすることを構想こうそうしていた、つき着陸ちゃくりくようランダーである。どう計画けいかくは、2019ねんまでに宇宙うちゅう飛行ひこうつき着陸ちゃくりくさせることを目標もくひょうにしていた。

アルタイルは月面げつめん短期たんき滞在たいざい長期ちょうき滞在たいざいなどの飛行ひこう使用しようされるはずだったが[2]2010ねん2がつ1にちオバマ大統領だいとうりょう2011ねん予算よさんでコンステレーション計画けいかく中止ちゅうしする意向いこう表明ひょうめいした[3]

名称めいしょう[編集へんしゅう]

2007ねん12月13にち、NASAは計画けいかくちゅうであった月面げつめん接近せっきん区画くかく(Lunar Surface Access Module, LSAM)の名称めいしょうを、わし(Aquila)にある北半球きたはんきゅうで12番目ばんめあかるいほしにちなんで「アルタイル(Altair)」とすることを発表はっぴょうした。「Aquila(アクイラ)」はラテン語らてんごわし意味いみし、アポロ11ごう史上しじょうはつ有人ゆうじん月面げつめん着陸ちゃくりく達成たっせいした着陸ちゃくりくせんイーグルごうにも関連かんれんしている。また「Altair」というかたり自体じたいアラビアの「الطائر(al-ṭā'ir)」がラテン語らてんごしたもので、「わし」「とり」「そらぶもの」を意味いみしている[4]

「アルタイル」を発表はっぴょうするまえは、NASAは様々さまざま候補こうほめい検討けんとうしていたと報告ほうこくされている[5][6]

詳細しょうさい[編集へんしゅう]

コンステレーション計画けいかく中止ちゅうし決定けっていするまで、アルタイルについては概念的がいねんてき企画きかく検討けんとうされている段階だんかいで、実機じっきは1製造せいぞうされていなかった。計画けいかくでは、2018ねん月面げつめん着陸ちゃくりく目指めざしていた[7]

アルタイルはアポロのつき着陸ちゃくりくせん(LM)と同様どうよう段式だんしきとすることが構想こうそうされていた。このうち下降かこうだんには燃料ねんりょう電力でんりょく飛行ひこう呼吸こきゅうよう酸素さんそなどの消耗しょうもうひんだい部分ぶぶん搭載とうさいされ、うえ昇段しょうだんには飛行ひこう搭乗とうじょうし、生命せいめい維持いじ装置そうち上昇じょうしょうようロケットおよびその燃料ねんりょうなどが搭載とうさいされる計画けいかくだった。船室せんしつ形状けいじょうはLMのような円筒えんとうがたである。当初とうしょはアポロのとき同様どうよう、その角張かくばった外観がいかんにもかかわらず円筒えんとうよこきにされる予定よていだったが、のちたてきに変更へんこうされた[よう出典しゅってん]。アポロとちがうのは定員ていいんが2めいから4めいへと倍増ばいぞうしていることで、飛行ひこう月面げつめん滞在たいざいしているあいだ無人むじんオリオン宇宙船うちゅうせんつき周回しゅうかい軌道きどうじょうにとどまることになっていた。

またアルタイルは地球ちきゅうはなれて(宇宙うちゅう空間くうかんあるいは月面げつめんじょうで)210日間にちかんにわたって活動かつどうすることができ[8]、アポロ応用おうよう計画けいかく企画きかくされたような無人むじん月面げつめん補給ほきゅう基地きちとして稼働かどうすることも可能かのうとなる予定よていだった[8]

アルタイルは、以下いかのようなみっつのことなる使用しよう方法ほうほう選択せんたくすることができるとされていた[8]

  1. 有人ゆうじん短期たんき月面げつめん滞在たいざい月面げつめんでのふねがい活動かつどうおこなう)
  2. 有人ゆうじん長期ちょうき月面げつめん滞在たいざい飛行ひこう月面げつめんりず、船内せんないにとどまったまま)
  3. 無人むじん補給ほきゅう月面げつめんに15トン以上いじょう物資ぶっしはこぶことが可能かのう

LMとおなじように、アルタイルには母船ぼせんのオリオンからの移乗いじょうようと、月面げつめん活動かつどうよう箇所かしょのハッチがもうけられている。ただしLMとはちがい、アルタイルの月面げつめん活動かつどうようのハッチはスペースシャトル国際こくさい宇宙うちゅうステーション(International Space Station, ISS)に使用しようされているような、気密きみつしつったじゅう構造こうぞうになっている。船室せんしつ宇宙うちゅう空間くうかんあいだ気密きみつしつもうけることで、飛行ひこう宇宙うちゅうふく着脱ちゃくだつするさい月面げつめんから機器きき悪影響あくえいきょうあたえるおそれのある微細びさい粒子りゅうし船内せんないむことをふせぎ、船室せんしつ気圧きあつたもつことを可能かのうにしている[よう出典しゅってん]。アポロの場合ばあいふねがい活動かつどうをするさい船室せんしつ全体ぜんたい減圧げんあつされたが、ハッチをじゅう構造こうぞうにしておけば、かり宇宙うちゅうふく故障こしょうするような事態じたい発生はっせいしても飛行ひこうすみやかに船内せんないもどることができるし、また飛行ひこうたちも7日間にちかんにわたる月面げつめん滞在たいざいおこなふねがい活動かつどう犠牲ぎせいにすることなく、任務にんむ完遂かんすいすることができる。また気密きみつしつ下降かこうだん設置せっちされるので、もしふねがい活動かつどうともなわない長期ちょうき月面げつめん滞在たいざいだけをおこな場合ばあいには、最初さいしょからりつけないでおくこともできる。

ようロケットのアレスV搭載とうさいできる貨物かもつ寸法すんぽう直径ちょっけい10m以内いないたかさ14.9m以下いかまっているので、その規格きかくわせるべくあしめるようになっている。

また船内せんないにはISSやロシアソユーズ宇宙船うちゅうせん使用しようされているような小型こがたのトイレや、アポロ計画けいかくであったような「こおりついた」食事しょくじをなくすための加熱かねつレーザー誘導ゆうどうしきの(レーダー補助ほじょつき)距離きょり測定そくてい発展はってんがた無人むじんがつ周回しゅうかい衛星えいせい収集しゅうしゅうしたデータを使用しようするシステム、グラス・コックピットボーイング787のものをもとにしてオリオン宇宙船うちゅうせんのために特別とくべつ開発かいはつされたコンピューターシステムなどが搭載とうさいされている。

ロケットエンジン[編集へんしゅう]

アルタイルのロケットエンジンの燃料ねんりょうには、下降かこうだんには現行げんこうきょく低温ていおん推進すいしんざいが、うえ昇段しょうだんには常温じょうおん保存ほぞん可能かのう自己じこ着火ちゃっかせい推進すいしんざい使用しようされる予定よていであった。アポロのつき着陸ちゃくりくせんでは、コンピューターについてもロケットの燃焼ねんしょうシステムについても、当時とうじにおける最高さいこう技術ぎじゅつ結集けっしゅうされた。ロケットにかんしては、上昇じょうしょう下降かこうだんとも点火てんか装置そうち必要ひつようとしないわせただけで着火ちゃっかする燃料ねんりょうシステムを採用さいようし、長期間ちょうきかん保存ほぞん可能かのうとした。低温ていおんしきにするにしても常温じょうおんしきにするにしても、アポロのLMと同様どうよう燃料ねんりょう供給きょうきゅうにはおおくのロケットに使つかわれているような故障こしょうしやすいポンプではなく、こうあつヘリウムガスを使用しようする必要ひつようがある。

また宇宙船うちゅうせんは(つきの)赤道せきどう沿うような軌道きどうや、ぎゃくたか傾斜けいしゃかく軌道きどうからでも、北極ほっきょく南極なんきょく地域ちいき着陸ちゃくりくできるような能力のうりょく必要ひつようとされる。アルタイルはオリオンとドッキングしたままがつかうが、オリオンに搭載とうさいされているエアロジェットしゃせいAJ-10ロケットの推力すいりょくとその燃料ねんりょうりょうでは、全体ぜんたいつき周回しゅうかい軌道きどう投入とうにゅうさせるには不十分ふじゅうぶんなのである(無人むじんのアルタイルを月面げつめん着陸ちゃくりくさせるときでも条件じょうけんきびしい)。下降かこうだんには、液体えきたい水素すいそ液体えきたい酸素さんそ燃料ねんりょうとするRL-10エンジン(現在げんざいでもデルタIV上段じょうだんロケットや、アトラスだいだんセントールなどに使つかわれている)の改良かいりょうがた使用しようする。うえ昇段しょうだんにはオリオンと同様どうようAJ-10が1だけ搭載とうさいされる。

当初とうしょNASAは、うえ昇段しょうだんには液体えきたい酸素さんそ液化えきかメタン(LCH4)のわせを採用さいようしたがっていた。将来しょうらいてき火星かせい飛行ひこうでは、搭乗とうじょういん火星かせい表面ひょうめん長期ちょうきにわたって生活せいかつする可能かのうせいがある。そのさいかぎにぎるのが、サバティエ反応はんのうである。ニッケル触媒しょくばいとして水素すいそ二酸化炭素にさんかたんそ高温こうおんだかあつ状態じょうたいけば、メタンとみず生成せいせいされる。これをサバティエ反応はんのうぶ。この方式ほうしき使つかえば、熱源ねつげん触媒しょくばいさえ地球ちきゅうからってけば、火星かせいにあるCO2水素すいそ使つかって燃料ねんりょう呼吸こきゅうよう酸素さんそなども調達ちょうたつできるのである(酸素さんそみず電気でんき分解ぶんかいすることでられる)。しかしながらコストが増大ぞうだいしたことやメタンロケットにかんする技術ぎじゅつ成熟せいじゅくだったことから、NASAは従来じゅうらいきょく低温ていおん推進すいしんざい自己じこ着火ちゃっかせい推進すいしんざい採用さいようせざるをなかった。しかしながら将来しょうらいてき恒久こうきゅう月面げつめん基地きちきずかれる段階だんかいになれば、アルタイルの改良かいりょうがたにはメタンロケットが使用しようされるはずである。

軌道きどうじょうでの接合せつごう[編集へんしゅう]

アレスV重量じゅうりょう運搬うんぱんロケットの2だんである地球ちきゅう離脱りだつステージ(Earth Departure Stage, EDS)によってアルタイルは地球ちきゅう周回しゅうかいてい軌道きどう投入とうにゅうされる。そのあとオリオン宇宙船うちゅうせんアレスIおな軌道きどう投入とうにゅうされる。両者りょうしゃてい軌道きどうじょうランデブーとドッキングをしたのち一体いったいとなってつきへとかうのである。無人むじんのアルタイルがつき場合ばあい、オリオン宇宙船うちゅうせんは、EDSが(アポロの『待機たいき軌道きどう』とおなじように)てい軌道きどうで1かい噴射ふんしゃをするのと、地球ちきゅう離脱りだつするためのかい噴射ふんしゃをするあいだ点検てんけんけることになっている。

本部ほんぶおよび開発かいはつ[編集へんしゅう]

アルタイルの開発かいはつは、ジョンソン宇宙うちゅうセンター(Johnson Space Center, JSC)に本部ほんぶく「コンステレーションがつ着陸ちゃくりく計画けいかくしつ」がおこなっていた。JSCはアポロ計画けいかく参加さんかした宇宙うちゅう飛行ひこう関連かんれん企業きぎょう大学だいがくなどの協力きょうりょくけながら、宇宙船うちゅうせん構造こうぞう開発かいはつ担当たんとうする。機体きたいふくあい構造こうぞう様々さまざま形態けいたい研究けんきゅう開発かいはつするための模型もけい使つかっての実験じっけんなども、JSCによっておこなわれる予定よていだった。アポロ計画けいかくつき着陸ちゃくりくせん開発かいはつ担当たんとうしたノースロップ・グラマンしゃも、宇宙船うちゅうせん基本きほんてき設計せっけい概念がいねん担当たんとうする企業きぎょうとして契約けいやくしていた[9]

後継こうけい計画けいかく[編集へんしゅう]

コンステレーション計画けいかく後継こうけいアルテミス計画けいかくでは、つき着陸ちゃくりくせん開発かいはつ運用うんようは、2021ねん4がつ17にち、NASAによりスペースX選定せんていされた[10][11]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ NASA's Exploration Systems Architecture Study”. nasa.gov. 2007ねん11月13にち閲覧えつらん
  2. ^ Lunar Orbit Insertion Targeting and Associated Outbound Mission Design for Lunar Sortie Missions”. NASA. 2010ねん5がつ7にち閲覧えつらん
  3. ^ http://www.nasa.gov/pdf/420990main_FY_201_%20Budget_Overview_1_Feb_2010.pdf
  4. ^ NASA names next-gen lunar lander Altair”. collectspace.com. 2008ねん2がつ6にち閲覧えつらん
  5. ^ NASA to name moonlander after Greek goddess Artemis”. flightglobal.com. 2006ねん10がつ3にち閲覧えつらん
  6. ^ NASA lunar lander design plans revealed”. flightglobal.com. 2007ねん7がつ17にち閲覧えつらん
  7. ^ NASA Chooses "Altair" as Name for Astronauts' Lunar Lander”. NASA (2007ねん12月18にち). 2010ねん5がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c NASA (2009ねん). “Constellation Accomplishments”. NASA. 2009ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  9. ^ Northrop Grumman Helps NASA Shape Plans for Affordable Lunar Lander”. irconnect.com. 2007ねん7がつ17にち閲覧えつらん
  10. ^ Brown, Katherine (2021ねん4がつ16にち). “NASA Picks SpaceX to Land Next Americans on Moon”. NASA. 2021ねん4がつ19にち閲覧えつらん
  11. ^ NASA、月面げつめん着陸ちゃくりくせん開発かいはつにスペースX選定せんてい写真しゃしん=AP)”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん (2021ねん4がつ17にち). 2021ねん4がつ19にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]