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エセエハ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
エセエハ
はなされるくに ボリビアの旗 ボリビア
ペルーの旗 ペルー
民族みんぞく エセエハぞく英語えいごばん
話者わしゃすう ボリビアに500にん、ペルーに230にん(Crevels 2007)[1]
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい ラテン文字もじ
言語げんごコード
ISO 639-3 ese
消滅しょうめつ危険きけん評価ひょうか
Definitely endangered (Moseley 2010)
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エセエハ(エセエハご、Ese Ejja、Ese'eha、Eseejja、Ese Eja、Ese Exa、Essejja; IPA: [eseʔexa][2])とは、ボリビアペルーにおいてはなされている言語げんごひとつである。

名称めいしょう

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チャマChama)というかたもあるが、これは話者わしゃであるエセエハぞくたいしてもちいられる蔑称べっしょうもとづくものである[2]。Lewis et al. (2015) には別名べつめいとして TiatinaguaHuarayoげられているが、カウフマン(2000)は「ティアティナワ」(Tiatinawa)を「ワカナワ」(Wakanawa)とおな方言ほうげんひとつとし、曖昧あいまい呼称こしょうである「ワラヨ」(Warayo)のスペインかたちGuarayoHuarayo としている。

系統けいとう

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Kaufman (1994) ではすで死語しごとなっているトロモナ英語えいごばん(Toromona)とともタカナ語族ごぞくチャマぐんという分類ぶんるいとされており、Lewis et al. (2015) もこれと同様どうようである。Hammarström (2016) では Pano-Tacanan の Tacanan、Takanik-Chamik という分類ぶんるいとされているが、いずれの資料しりょうにおいてもトロモナアラオナレイェサノ英語えいごばんタカナカビネーニャ英語えいごばんちか関係かんけいにあるというてん共通きょうつうしている。

方言ほうげん

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木村きむら(1988)はエセエハを、エセエハぞくのかつての居住きょじゅう区分くぶんもとづいて3種類しゅるい方言ほうげん分類ぶんるいすることが可能かのうであり、それぞれヒースかわ英語えいごばん(Heath)流域りゅういきのソネネ方言ほうげん(Sonene)、タンボパタがわ英語えいごばん(Tambopata)流域りゅういきのバワハ方言ほうげん(Bawaxa)、そしてマディディがわ英語えいごばん(Madidi)流域りゅういきのクエイアイ方言ほうげん(Kueiai)であるとしている。また、3つの方言ほうげんちがいは語彙ごいかんしてであり、語彙ごいちゅう一部いちぶ音素おんそられるものの、相互そうご理解りかい可能かのうなレベルにとどまっているともしている。

研究けんきゅう

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エセエハかんする資料しりょうとしてはSILのシューメーカー夫妻ふさい(Shoemakers)による文法ぶんぽうしょ(1967ねん)、青年せいねん海外かいがい協力きょうりょくたい人類じんるい学者がくしゃとしてエセエハぞく神話しんわのききとりをおこなった[3]木村きむら秀雄ひでおによる資料しりょう、Marine Vuillermet により博士はかせ論文ろんぶんとして発表はっぴょうされた文法ぶんぽうしょ(2012ねん)などが存在そんざいする。

おとろん

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分節ぶんせつ音素おんそ

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Shoemaker & Shoemaker (1967:209) はエセエハ音素おんそとして p、t、č、k、ˀ、b、d、kʷ、s、š、x、h、m、n、ñ、w、y、i、o、e、a をげている。

一方いっぽうKey (1968)[4]以下いかひょうのような子音しいん一覧いちらんげている。

p t č[5] k [] ʔ
ɓ [ʔɓ][6] ɗ [ʔɗ][7] kw [gw]
s [, θしーた] š [šy][8] x [xw] h[9]
m [mb, b[6]] n [nd, d[7], , l, nl] ñ
w [w] y

括弧かっこないおとあらわす。/ɓ//ɗ/ゆうごえにゅうやぶ閉鎖へいさおんである。 /w/語頭ごとう強調きょうちょう場合ばあいに on-glide fricative[訳語やくご疑問ぎもんてん] [w] となる[10]上表じょうひょうからはキー(Mary Ritchie Key)が [b][d] をそれぞれ m、n のおとていることがかるが、木村きむら(1988)は bei / meiてのひら〉や dobikianahe / nobikianaheんだ〉をいにしてアクセントのない b や d がそれぞれ m、n にちかづくものと理解りかいすることができ、反対はんたいにアクセントがある位置いちの m や n が b、d のように発音はつおんされることはないとしている。木村きむらはまた、/b//d/ はアクセントがある場合ばあい語頭ごとう文頭ぶんとうではそれぞれ ɓɗ発音はつおんされ、にゅうやぶおととならない場合ばあいにはそれぞれ m、n と混同こんどうされるとしている。

Key (1968)[4]語頭ごとう/ʔ/あらわれたり、かたりちゅう語末ごまつ/wo/ や /če/、/ča/、/ño/[11]られたり、/kwo/ がかたりのどこかにあらわれたりすることはないとしている。

ちょう分節ぶんせつ音素おんそ

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エセエハ発音はつおんについてはリズム関連かんれんしてべている資料しりょうがいくつかられる。

まず Key (1968)[4] はチャマ発音はつおんおおきなぶんストレス集合しゅうごうなかちいさなストレスの集合しゅうごうおさまっており、ちいさなストレスの集合しゅうごうかならず1つ以上いじょうだいいちきょうぜい場合ばあいにより1つかそれ以上いじょうあらわれるだいきょうぜいち、そのだいきょうぜいだいいちきょうぜいのある音節おんせつから1つばしのりょう音節おんせつあらわれるとしている。またおおきなストレスの集合しゅうごうなかにおいて、複数ふくすうあるちいさなストレスの集合しゅうごうのうちの1つがよりおもいストレスをびるとし、最後さいごから2番目ばんめ音節おんせつよりはじまる交互こうごのリズムがチャマにおいて顕著けんちょられるストレスのパターンであるとしている。Goedemans & van der Hulst (2013) はキーの記述きじゅつからエセエハのリズムを強弱きょうじゃくかくてきえい: trochaic)であると解釈かいしゃくしている。キーはさら名詞めいしのストレスパターンと動詞どうしのストレスパターンの性格せいかくちがいについてもれ、前者ぜんしゃ先述せんじゅつのリズムが基盤きばんとなり基本きほんてき語幹ごかん元々もともとゆうするストレスの位置いち音節おんせつのストレスパターン維持いじのために変化へんかするのにたいし、後者こうしゃ類別るいべつ接尾せつび付加ふかされた場合ばあいに2番目ばんめ音節おんせつにストレスがかれるものと最初さいしょ音節おんせつかれるものとにかれるとしている。

一方いっぽう木村きむら(1988)はピッチによるイントネーション強調きょうちょうされる単語たんごかれるストレスについてれ、この2つが多用たようされることでひびきがリズミカルなものとなり、系統けいとうてきちかおだやかな印象いんしょうのタカナやアラオナとは対照たいしょうてきであるむねべている。木村きむらげたピッチによるイントネーションのちがいの内訳うちわけ以下いかとおりである。

  1. 通常つうじょう叙述じょじゅつ: なか-だか-ひく
  2. ふし: なか-だか-なか
  3. 疑問ぎもん: なか-なか-こう
  4. 命令めいれい: なか-てい-ちゅうなか-だか-なか
  5. 応答おうとう: なか-てい-ていこう-てい-ひく

音節おんせつ構造こうぞう

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Key (1968)[4] はチャマ音節おんせつは 「(子音しいん)+ 母音ぼいん」からり、このわせにより母音ぼいんは6つまで連続れんぞくすることがゆるされるとしている。またもっと出現しゅつげん頻度ひんどたかわせは VCV であり、これに VV や CVV がつづき、その連続れんぞくする母音ぼいんかずえるにつれて頻度ひんどがっていくともしている。

文法ぶんぽう

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形態けいたいろん

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Dryer (2013a) は Shoemaker & Shoemaker (1967:passim) から、接辞せつじによる屈折くっせつ変化へんかはほとんどられないとする判断はんだんくだしている。しかし、まったくそうした屈折くっせつ変化へんかられないというわけではなく、後述こうじゅつするような時制じせい接尾せつびによる動詞どうし活用かつようられる。

動詞どうし

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時制じせい
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動詞どうし語幹ごかん時制じせいあらわ接尾せつび -ani現在げんざい進行しんこう))、-he未来みらい)、-nahe行為こうい過去かこ)、-poa状態じょうたい客観きゃっかん過去かこ)のうち最低さいていでも1つが付加ふかされた状態じょうたいあらわれる。また、左記さき接尾せつびのうち ani語幹ごかん-aわるものである場合ばあいにも長音ちょうおんこらず、主語しゅご三人称さんにんしょう場合ばあい-aniわりに -kani となる[12]

れい: ixiaべる〉

  • eya ixianiわたしべている〉
  • eya ixiaheわたしべるだろう〉
  • eya ixianaheわたしべた〉
  • eya ixiapoaわたしべていたのであった〉

-nahe についても主語しゅご三人称さんにんしょうである場合ばあい動詞どうし語幹ごかん時制じせい接尾せつびとのあいだ-ka-挿入そうにゅうされて -kanahe となる[13]-poa木村きむら(1988)によると日常にちじょう会話かいわにおいてよりも、むしろ神話しんわかたりにおいてもちいられる。そのさい -nahe-poaともあらわれる場合ばあいられ、また -ani-naheともあらわれる過去かこ進行しんこうがた存在そんざい確認かくにんされている。

使役しえき
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動詞どうし使役しえき意味いみくわえる場合ばあいは、動詞どうし語幹ごかんうしろに -mee をつける[12]

れい[14]:

  • kawi-mee xima ya
グロス: ねむる-caus neg すで
わけ: 「もうねむらせたわけではない」
  • dohoka-mee axa
グロス: はこばれる-caus neg
わけ: 「下流かりゅうかせなかった」
ふくあい動詞どうし
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木村きむら(1988)は nekiつ〉、aniすわる〉、haa寝転ねころぶ〉、sowaがる〉、okeがる〉といった動詞どうし語幹ごかんわせてあらたな動詞どうしつくり、様々さまざま動作どうさあらわすことが可能かのうであるとしている。Vuillermet (2012:627–628) では neki-ani- を posture verb[訳語やくご疑問ぎもんてん]sowa-、'oke- を path verb[訳語やくご疑問ぎもんてん]んでいる。

れい:

グロス: すわる-がる-imp
わけ: (っている状態じょうたいから)すわれ!
グロス: すわる-がる-imp
わけ: (ている状態じょうたいから)すわれ!
グロス: つ-がる-imp
わけ: て!
グロス: 寝転ねころぶ-がる
わけ: (すわっている状態じょうたいから)

名詞めいし

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Dryer (2013c) は Shoemaker & Shoemaker (1967:272–274) から、名詞めいしかんしてかくしめ接辞せつじなどのるいられないものとっている。

名詞めいし基本きほんてきe- という接頭せっとうともあらわれる[12]。Shoemaker & Shoemaker (1967:281) によると、この接頭せっとう名詞めいし語幹ごかんa-はじまるものである場合ばあい y- としてあらわれ、それ以外いがい場合ばあいe- としてあらわれる。

Dryer (2013b) は Shoemaker & Shoemaker (1967:252–255) より、 名詞めいし複数ふくすうあらわ要素ようそかたりであるとっている。Shoemaker & Shoemaker は変化へんか kʷaNA[16]木村きむら(1988)は kuanakianaあらわし、Vuillermet (2012:330) はせっ =kwana(や =kyana) としている。

代名詞だいめいし

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人称にんしょう代名詞だいめいし
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木村きむら(1988)による代名詞だいめいし以下いかとおりである。

一人称いちにんしょう 二人称ににんしょう 三人称さんにんしょう
語幹ごかん e- mi- o-
主格しゅかく/目的もくてきかく eya miya oya, owaya[17]
所有しょゆうかく ekʷe mike oha[18]

うえひょう主格しゅかく/目的もくてきかくくだりえる -ya木村きむら(1988)はききて注意ちゅういくための接尾せつびであり、代名詞だいめいし場合ばあい eyayamiyaya重複じゅうふくさせることも可能かのうであるとしている[19]

代名詞だいめいし複数ふくすうがた名詞めいし同様どうよう kuana付加ふかしてつく[12]

れい:

グロス: 1-pl
わけ: 「わたしたち」
  • eya kuana banahe mike naeʔya[12]
わけ: 「わたしたちはきみのおかあさんをた」

また、〈わたしたち〉にかんしてははながエセエハぞく一員いちいんである場合ばあいeseもち[21]eya kuanaわりにもちいることもできる[12]。エセエハ(Ese Exa)という名称めいしょうese仲間なかまおな部族ぶぞく構成こうせいいん〉と exa人間にんげん〉をならべたものである[12]

形容詞けいようし

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形容詞けいようし修飾しゅうしょくうしろにかれ、ぶん補語ほごとなる場合ばあいには kea+ 形容詞けいようしかたちとなる[12]Vuillermet (2012:325, passim) では叙述じょじゅつ形容詞けいようし接頭せっとうとして kya-分析ぶんせきされ、おおくの限定げんてい形容詞けいようしには対応たいおうする kya- 形容詞けいようし存在そんざいするものの、人間にんげん性格せいかくあらわ形容詞けいようしおおくは kya-かたちでしか存在そんざいしないとされている。

指示しじ

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指示しじとしては hikiO 〈この〉や peaの〉 などがられる[22]

疑問ぎもん

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疑問ぎもん以下いかとおりである。

意味いみ Shoemaker & Shoemaker (1967:225, 257, 276) 木村きむら(1988)
どこ …に〈位置いち ače ho, ae-kʷe-šai, ača-xa-šai, ača-kʷa-šai atʃeho
…へ〈方向ほうこう aheo
だれ aya aya または ae
だれ ahea
いくつ ače-wiso-šai atʃewiso
なに ae, hai atʃe[23]
いつ ače-šono-šai atʃeʃono
どうして apio-xi-šai apioxi または aʔa ʃai

数詞すうし

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数詞すうしoe〈1〉、beka 〈2〉の2つのみで、数詞すうしらしきものは oxañaすべて〉しか存在そんざいせず、3以降いこうかず左記さき数詞すうしやほかの種類しゅるいかたりわせることによりあらわす(れい: pea beka pee xima 〈3〉、含意がんいは「2になおもうひとつくわえる」; e beka pea pea ai 〈4〉、含意がんいは「2にべつの2でおおきく」; mei oe xi 〈5〉、含意がんいは「1つ」)[24]。ただこのかぞかた複雑ふくざつであるため、もともと日常にちじょうにおいてもそれほどもちいられてはいなかったとおもわれ、さらにエセエハぞくのスペイン話者わしゃ人口じんこう増加ぞうかにより oebekaoxañaのぞ数詞すうしすべてスペインから借用しゃくようしたものとなっている[12]Vuillermet (2012:339) は1や2すらもスペイン数詞すうしでいいあらわすようになりつつあることを、もっと保守ほしゅてき話者わしゃ一人ひとりによるれいまじえてべている。

変化へんか

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同意どうい否定ひてい
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Shoemaker & Shoemaker (1967:280) は変化へんかのうち「はい」をあらわすものとして eˀe、「いいえ」をあらわすものとして čo掲載けいさいしている。木村きむら(1988)もほぼこれらに相当そうとうする eʔetʃoげているが、木村きむら否定ひていについては tʃoもっと一般いっぱんてきなものと位置付いちづけたうえでよりつよtʃoxaさらつよtʃai、することをのぞまない行為こういがある場合ばあいbaki といった豊富ほうふ表現ひょうげんがあるむねべている。

統語とうごろん

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名詞めいしたいする接尾せつび/変化へんか/おけ
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木村きむら(1988)は「日本語にほんご助詞じょしにあたる接尾せつび」として -ha 〈…の〉、-ho 〈…に〉、-wasixe 〈…へ〉、-nixe 〈…とともに〉、-xi 〈…をゆうするもの〉、-ma 〈…をたぬもの〉をげている。これらの大半たいはんは Shoemaker & Shoemaker (1967:253–255) のれいにもられるが、かくれい対応たいおうする構造こうぞう図式ずしきが p. 252 にしめされており、そこでの品詞ひんしめいは「変化へんか)」(えい: particle (phrase))とされている。なお、Dryer (2013e) は おなじ p. 252 から名詞めいしたいしてはこうおけえい: postposition)がもちいられるとっている。

れい:

グロス: 1sg.poss-兄弟きょうだい-poss
わけ: 「わたし兄弟きょうだいの」
  • kʷeitaˀa sisi kʷana-ho[26]
グロス: かわ ちいさい pl-loc
わけ: 「ちいさなかわ(のなか)に」
グロス: リベラルタ-dir だから
わけ: 「リベラルタへ」
グロス: 食料しょくりょう-com-じつ
わけ: 「ものおおくある」
グロス: つま-priv-じつ
わけ: 「ひとおとこ
語順ごじゅん
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Dryer (2013f, g) は Shoemaker & Shoemaker (1967:252–253) からそれぞれ「所有しょゆうしゃ-所有しょゆうしゃ」、「名詞めいし-形容詞けいようし」の語順ごじゅん優勢ゆうせいであると解釈かいしゃくしている。木村きむら(1988)も形容詞けいようしについては修飾しゅうしょくのすぐうしろにるとべている。

れい[25]:

  • ekʷa-oˀi-ha
グロス: 1sg.poss-兄弟きょうだい-poss
わけ: 「わたし兄弟きょうだいの」
  • kʷeitata-sisi-biso nee-kʷana
グロス: 小川おがわ-ちいさい-ほそい とても-pl
わけ: 「いくつかのせま小川おがわ
副詞ふくしぶし
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副詞ふくしぶしふし接尾せつびまたは接尾せつび付加ふかすると成立せいりつする。目的もくてきあらわ-a 〈…するために〉や 時点じてんあらわ-ho 〈…するときに〉が存在そんざいする[12]

否定ひてい
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木村きむら(1988)は、否定ひていぶんつくるには動詞どうし語幹ごかんうしろに axa または xima をつければよいがそれにより時制じせい接尾せつび表示ひょうじされなくなり、また xima未来みらいのことをあらわ場合ばあいには使用しようできないとしている。否定ひていあらわ要素ようそについて Shoemaker & Shoemaker (1967:278) は axa を〈…ない〉(えい: not)、xima は〈まだ〉(えい: not yet)のこうおけえい: postpositive)とする区別くべつおこなっている。

命令めいれい
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命令めいれい動詞どうし語幹ごかんうしろに kʷe をつけてつく[12]

  • れい: kekʷa kʷe[28]
グロス: つらぬimp
わけ: 「ころせ」

否定ひてい命令めいれい文頭ぶんとうaʔa を、動詞どうし語幹ごかんうしろに xi をつけてつく[12]

  • れい: aˀa-miya ya-sowi-wowi xi[29]
グロス: proh-2sg foc-言葉ことば-おしえる neg.imp
わけ: 「きみ言葉ことばおしえるな」
ぶん語順ごじゅん
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Dryer (2013d) が Shoemaker & Shoemaker (1967:212–213) からり、また Lewis et al. (2015) が「類型るいけいろん」のらん明記めいきしているように、エセエハ語順ごじゅんSOVがたである。

アルファベット

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エセエハあらわアルファベット様々さまざまなものがこころみられてきた。まずSILの宣教師せんきょうしらが提唱ていしょうしたもの、いで1995ねんから96ねんあいだと2003ねんから04ねんあいだにボリビア政府せいふ主導しゅどう提唱ていしょうされたもの、2000ねんにペルーの言語げんご学者がくしゃチャバリア・メンドーサ(Chavarría Mendoza)によってまとめられた報告ほうこくしょえるもの、そして Vuillermet の2012ねん博士はかせ論文ろんぶんにおいて提唱ていしょうされたものである。このうちSILによるものはスペイン正書法せいしょほう基礎きそとされている。それぞれの内訳うちわけ以下いかとおりである[30]

IPA SIL ボリビア政府せいふ Chavarría Mendoza (2000) Vuillermet (2012)
1995–96 2003–2004
/ɓ̥/ b
/p/ p
/ɗ̥/ d
/t/ t
/k/ (a、oのまえで)c

(i、eのまえで)qu
k
/kw/ cu kw ku kw
/s/ s
/ʃ/ sh
/x/ jj j x
/h/ j h j
/tʃ/ ch
/m/ m
/n/ n
/ɲ/ ñ
/j/ y
/w/ hu w

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Lewis et al. (2015).
  2. ^ a b カウフマン(2000)。
  3. ^ PARTNER 国際こくさい協力きょうりょくキャリア総合そうごう情報じょうほうサイト”. 2017ねん2がつ10日とおか閲覧えつらん
  4. ^ a b c d なお、この典拠てんきょにおいては一貫いっかんして "Chama"(「チャマ」)の呼称こしょうもちいられている。
  5. ^ この音素おんそについてキーは「歯茎はぐきかた口蓋こうがいやぶおと」(えい: alveopalatal affricate)と明記めいきしている。木村きむら(1988)もクエイアイ方言ほうげん子音しいん音素おんそひとつとして /tʃ/げている。
  6. ^ a b 木村きむら(1988)がげているクエイアイ方言ほうげん子音しいん音素おんそひとつに /b/られる。
  7. ^ a b 木村きむら(1988)がげているクエイアイ方言ほうげん子音しいん音素おんそひとつに /d/られる。
  8. ^ 木村きむら(1988)がげているクエイアイ方言ほうげん子音しいん音素おんそひとつに /ʃ/られる。
  9. ^ 木村きむら(1988)がげているクエイアイ方言ほうげん子音しいん音素おんそなか対応たいおうするものはられない。
  10. ^ Key (1968).
  11. ^ ただし ño野生やせいのブタ〉というかたりれいげられている。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m 木村きむら(1988)。
  13. ^ 木村きむら(1988)。ただし、木村きむらoya pokinahe ʃibenatawasixeかれはリベラルタにった〉、oya poenahe kea kuahi nei neiかれ非常ひじょういそいでやってきた〉のように、この説明せつめいてはまらない例文れいぶんせている。Vuillermet (2012:241) は -ka他動詞たどうし行為こういしゃえい: agent)が三人称さんにんしょうである場合ばあいにはかずわずかならずつき、自動詞じどうし唯一ゆいいつてきこう三人称さんにんしょう複数ふくすうである場合ばあいには任意にんい付加ふかされるとしている。
  14. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:239).
  15. ^ a b c Vuillermet (2012:628).
  16. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:281–282) は変種へんしゅとして kianaれい: mi kianaきみたち〉)、naれい: o naかれら/ものたち〉)、kʷaれい: kekʷa kanahe kʷaかれらはつらぬいた〉)、kʷanaれい: dexa kʷanaおとこたち/人々ひとびと〉)の4つをしめしている。
  17. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:274) も同様どうようひょうせているが、このらんoYa としており、これはさらに p. 281 で oya ~ owaらぎがあるとされている。
  18. ^ 木村きむらはこの oha-ha名詞めいし所有しょゆうかくさせる接尾せつび同一どういつしている。一方いっぽう、Shoemaker & Shoemaker (1967:274) における同様どうようひょうにおいてこのらん空欄くうらんとされている。
  19. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:279, 281) は焦点しょうてんえい: focus)の変化へんか Ya存在そんざいしめし、ya と a のれがあるとしている。
  20. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:254).
  21. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:274).
  22. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:275). なお Vuillermet (2012:339) には〈の〉をあらわ数量すうりょうえい: qualifierpyaられる。
  23. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:276) において ače 単体たんたい意味いみは「どの」(えい: 'which')とされている。
  24. ^ 木村きむら(1988)。なお oxañaVuillermet (2012:339) では数量すうりょうあつかいとされている。また〈3〉、〈4〉、〈5〉の含意がんいについては Shoemaker & Shoemaker (1967:258) も参照さんしょう
  25. ^ a b Shoemaker & Shoemaker (1967:253).
  26. ^ a b c Shoemaker & Shoemaker (1967:255).
  27. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:255). なお、この例文れいぶんのグロスのとおり、シューメーカー夫妻ふさい-wasixe-nixe を2つの変化へんか分解ぶんかいしている。p. 259, 261, 279, 280 も参照さんしょう
  28. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:234).
  29. ^ Shoemaker & Shoemaker (1967:224).
  30. ^ Vuillermet (2012:143–149).

参考さんこう文献ぶんけん

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和書わしょ:

洋書ようしょ:

関連かんれん文献ぶんけん

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  • Chavarría Mendoza, M. C. (2000). (coordinadora) Informe de los Talleres de Lengua y Cultura Ese Eja. Communidades Nativas Baawaja, Palma Real y Sonene. Puerto Maldonado, Perú.
  • Crevels, M. (2007). "South America." In C. Moseley (ed.), Encyclopedia of the world's endangered languages, pp. 103–196. London: Routledge.
  • 木村きむら, 秀雄ひでお (1981). 「エセエハ関係かんけい名称めいしょう」 『社会しゃかい人類じんるいがく年報ねんぽう』VOL.9、53-81ぺーじ
  • Wyma, R. and Pitkin de Wyma, L. (1962). Ese'ejja y Castellano, Vocabularios Bolivianos, No.3, Instituto Lingüístico de Verano en colaboración con el Ministerio de Asuntos Campesinos y el Ministerio de Educación y Bellas Artes Oficilía Mayor de Cultura, Cochabamba, Bolivia.

外部がいぶリンク

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