エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック

エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック
Étienne Bonnot de Condillac

コンディヤック
生誕せいたん	(1714-09-30) 1714年ねん9月30日にち フランス王国おうこく・グルノーブル
死没しぼつ	(1780-08-03) 1780年ねん8月がつ3日にち（65歳さい没ぼつ） フランス王国おうこく・ロワレ県けんライイ＝アン＝ヴァル
時代じだい	18世紀せいきの哲学てつがく
地域ちいき	西洋せいよう哲学てつがく
学派がくは	啓蒙けいもう思想しそう、経験けいけん論ろん、感覚かんかく論ろん
研究けんきゅう分野ぶんや	形而上学けいじじょうがく、認識にんしき論ろん 心理しんり学がく、心しんの哲学てつがく
影響えいきょうを受うけた人物じんぶつ ジョン・ロックなど
影響えいきょうを与あたえた人物じんぶつ 観念かんねん学派がくは、フランス・スピリチュアリスム

エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック（Étienne Bonnot de Condillac、1714年ねん9月30日にち - 1780年ねん8月がつ3日にち）は、フランスの哲学てつがく者しゃ、聖職せいしょく者しゃである。先行せんこう世代せだいのジョン・ロックに影響えいきょうを受うけて主おもに認識にんしき論ろんにおける研究けんきゅうを行おこない、経験けいけん論ろん的てき認識にんしき論ろんを発展はってんさせた。

生涯しょうがい

コンディヤックは1714年ねん、グルノーブルにて法服ほうふく貴族きぞくガブリエル・ボノとその妻つまカトリーヌの第だい七なな子し、末すえっ子ことして生うまれた。ちなみにその年としはマルブランシュが死しんだ年としでもある。歴史れきし家かガブリエル・ボノ・ドゥ・マブリはコンディヤックの長兄ちょうけいである。なお、マブリだとかコンディヤックというのは父ちちの購入こうにゅうした所領しょりょうの地名ちめいである。

コンディヤックは視力しりょくが弱よわかったため書物しょもつから遠とおざけられ、12歳さいまで文字もじを読よめなかったようである。1726年ねん秋あきに父ちちの死しに伴ともないリヨンで司法しほう長官ちょうかんの役職やくしょくにあった長兄ちょうけいのもとに引ひき取とられ、1733年ねんまでイエズス会かいのコレージュで哲学てつがく、神学しんがく、ラテン語らてんごなどを学まなび、1733年ねん10月にパリに出でてサン・シュルピス神学校しんがっこうとソルボンヌ大学そるぼんぬだいがくで本格ほんかく的てきな勉強べんきょうを始はじめた。その後ご1741年ねんに司祭しさいに叙じょ階かいされた。しかし、彼かれは神学しんがくより哲学てつがくや数学すうがくや自然しぜん学がくの研究けんきゅうに熱中ねっちゅうし、社交しゃこう界かい、サロンに入いり浸びたってジャン＝ジャック・ルソー、ドゥニ・ディドロ、ベルナール・フォントネル、ジャン・ル・ロン・ダランベールなどの思想家しそうかや学者がくしゃたちと交まじわり、一いち度どしかミサを行おこなわなかったという。コンディヤックに深ふかい影響えいきょうを与あたえた。1746年ねんに発表はっぴょうした処女しょじょ作さく『人間にんげん認識にんしき起源きげん論ろん』を皮切かわきりに彼かれは『体系たいけい論ろん』、『感覚かんかく論ろん』、『動物どうぶつ論ろん』など次々つぎつぎに作品さくひんを発表はっぴょうした。1752年ねん、フォントネルと共ともにベルリン王立おうりつアカデミー会員かいいんに選出せんしゅつされる。1758年ねん、44歳さいになろうというコンディヤックはパルマ公国こうこくの公子こうしの家庭かてい教師きょうしに招聘しょうへいされ、1767年ねんまでルイ15世せいの孫まごに当あたる公子きみこフェルディナンドを教おしえた。1767年ねんに家庭かてい教師きょうしの職しょくを辞じし、コンディヤックはパリに帰かえった。その頃ころには彼かれの名声めいせいは非常ひじょうに高たかまっており、翌年よくねんアカデミー・フランセーズ会員かいいんに選出せんしゅつされた。1773年ねんにヴォージャンシーに城しろ館かんを購入こうにゅうし、そこで『教程きょうてい』、『通商つうしょうと政府せいふ』、『論理ろんり学がく』、『計算けいさんの言語げんご』の執筆しっぴつに勤いそしんだ。1780年ねん8月がつ3日にち、コンディヤックは65歳さいで死去しきょした。葬儀そうぎは生前せいぜんの意思いしどおりひっそりと行おこなわれた。

思想しそう

コンディヤックはジョン・ロックから決定的けっていてきな影響えいきょうを受うけ、感覚かんかくに重点じゅうてんを置おいた感覚かんかく論ろん、経験けいけん論ろん哲学てつがくを展開てんかいした。彼かれは「分析ぶんせき」という手法しゅほうを重要じゅうよう視しし、観念かんねんを分析ぶんせきし、それを再さい構成こうせいすることによって観念かんねんをきちんと理解りかいし、明確めいかく化かすることによって誤あやまりや無用むようの論争ろんそうを解消かいしょうできるとした。細部さいぶの違ちがいはあれどこのような観念かんねんを明確めいかく化かすることによって誤あやまりや論争ろんそうを解消かいしょうできるという発想はっそうもまたロックから受うけ継ついだものである。

また、彼かれの記号きごうと分析ぶんせきに関かんする発想はっそうを範はんとしてアントワーヌ・ラヴォアジエは化学かがく記号きごうの整理せいりを行おこなった（化学かがく革命かくめい）。つまり、これまで統一とういつ感かんがない呼よばれ方かたをしていた元素げんそをH、Oなどのように記号きごう化かし、それらを組くみ合あわせることによって化合かごう物ぶつを構成こうせいし、式しきに著あらわす。そして、あたかも数式すうしきを操作そうさするかのように（コンディヤックは計算けいさんを思考しこうのモデルとしていた）その式しきや記号きごうを操作そうさする。この方法ほうほうならば、実際じっさいに実験じっけんをせずとも記号きごう操作そうさのみによって実験じっけん結果けっかを知しることができる。

影響えいきょう

コンディヤックの思想しそうはデステュット・ド・トラシー、カバニスなどフランス学士がくし院いん設立せつりつに尽力じんりょくした観念かんねん学がく派はと呼よばれる哲学てつがく者しゃたちに決定的けっていてきな影響えいきょうを与あたえ、彼かれらはコンディヤックの観念かんねんの分解ぶんかいと再さい構成こうせいのやり方かたでの学がくの再編さいへんを目論もくろんだ。また、メーヌ・ド・ビランはコンディヤックからの影響えいきょうを受うけて哲学てつがくを開始かいししたが、後のちにコンディヤックとの対決たいけつから自身じしんの哲学てつがくを練ねり上あげ、フランス・スピリチュアリスムの祖そとなった。

著作ちょさく

• 1746, Essai sur l'origine des connaissances humaines
  • 『人間にんげん認識にんしき起源きげん論ろん』、古こ茂田しげた宏ひろし訳やく、岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ 上下じょうげ〉、1994年ねん
• 1749, Traité des systèmes （『体系たいけい論ろん』）
• 1754, Traité des sensations（『感覚かんかく論ろん』）
  • 「感覚かんかく論ろん」、加藤かとう周一しゅういち、三宅みやけ徳いさお嘉よしみ訳わけ、創つく元もと社しゃ〈哲学てつがく叢書そうしょ 上下じょうげ〉、1948年ねん。絶版ぜっぱん
• 1755, Traité des animaux（『動物どうぶつ論ろん』） - ビュフォンの『自然しぜん史し』（『Histoire naturelle』）への批判ひはん
  • 『動物どうぶつ論ろん　デカルトとビュフォン氏しの見解けんかいに関かんする批判ひはん的てき考察こうさつを踏ふまえた、動物どうぶつの基本きほん的てき諸しょ能力のうりょくを解明かいめいする試こころみ』
    　古こ茂田しげた宏ひろし訳やく、法政大学ほうせいだいがく出版しゅっぱん局きょく〈叢書そうしょ・ウニベルシタス〉、2011年ねん
• 1775, Cours d'études（『教程きょうてい』） - パルマ公国こうこくの公子こうしのために書かいた教科書きょうかしょ（「文法ぶんぽう」、「書かく技術ぎじゅつ」、「考かんがえる技術ぎじゅつ」、「歴史れきし」からなる）
• 1776, Le Commerce et le gouvernement considérés relativement l'un à l'autre （『通商つうしょうと政府せいふ』）
• 1780, La Logique ou l'art de penser（『論理ろんり学がく』）
  • 『論理ろんり学がく　考かんがえる技術ぎじゅつの初歩しょほ』、山口やまぐち裕之ひろゆき訳やく、講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2016年ねん - ポーランド政府せいふの依頼いらいによる論理ろんり学がくの教科書きょうかしょ
• 1798, La Langue des calculs（『計算けいさんの言語げんご』） - 未完みかん

ネット公開こうかいされているテクスト(フランス語ふらんすご)

• 『人間にんげん認識にんしき起源きげん論ろん』：“Essai sur l’origine des connaissances humaines” (PDF). 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 『体系たいけい論ろん』：“Traité des systèmes”. 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 『感覚かんかく論ろん』：“TRAITÉ DES SENSATIONS” (PDF). 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 『動物どうぶつ論ろん』：“Traité des animaux” (PDF). 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 『教程きょうてい』：http://visualiseur.bnf.fr/Visualiseur?Destination=Gallica&O=NUMM-87989
• 『通商つうしょうと政府せいふ』：“Le commerce et le gouvernement (1776)” (PDF). 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
• 『論理ろんり学がく　考かんがえる技術ぎじゅつの初歩しょほ』：
  1.“La logique, ou, Les premiers développement de l'art de penser”. 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。
  2.“La logique, ou, Les premiers développement de l'art de penser (text版ばん)”. 2015年ねん8月がつ24日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん

• 古こ茂田しげた宏ひろし訳わけ『人間にんげん認識にんしき起源きげん論ろん』、岩波いわなみ文庫ぶんこ（上下じょうげ）、1994年ねん
• 山口やまぐち裕之ひろゆき『コンディヤックの思想しそう―哲学てつがくと科学かがくのはざまで』、勁草書房しょぼう、2002年ねん

アカデミー・フランセーズのコンディヤック座席ざせき番号ばんごう

前任ぜんにん ピエール＝ジョゼフ・トゥリエ・ドリヴェ

アカデミー・フランセーズ 席次せきじ31 第だい4代だい：1768年ねん - 1780年ねん

後任こうにん ルイ＝エリザベト・ド・ラ・ヴェルニュ・トレッサン

関連かんれん項目こうもく

• ジョン・ロック
• 人間にんげん知性ちせい論ろん
• 経験けいけん論ろん
• 観念かんねん学がく
• 啓蒙けいもう思想しそう
• モリヌークス問題もんだい