ギンネム

ギンネム
分類ぶんるい（APG III）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots 階級かいきゅうなし : コア真正しんせい双そう子葉しよう類るい core eudicots 階級かいきゅうなし : バラ類るい rosids 階級かいきゅうなし : マメ類るい fabids 目め : マメ目め Fabales 科か : マメ科か Fabaceae 亜あ科か : ネムノキ亜あ科か Mimosoideae 属ぞく : ギンゴウカン属ぞく Leucaena 種たね : ギンネム L. leucocephala
学名がくめい
Leucaena leucocephala (Lam.) de Wit
英名えいめい
Lead tree

Leucaena leucocephala

ギンネムまたはギンゴウカン（銀ぎん合歓ごうかん、Leucaena leucocephala）はマメ科かネムノキ亜あ科かの落葉らくよう低木ていぼく。和名わみょうはネムノキに似にて、白しろい花はなを咲さかす様子ようすを雅語がご的てきに表現ひょうげんしたところから。

分布ぶんぷ

中南米ちゅうなんべいが原産地げんさんちだが、世界中せかいじゅうに移植いしょくされ現在げんざい世界せかいのあらゆる熱帯ねったい、亜熱帯あねったいのアルカリ土壌どじょう地帯ちたいに繁茂はんもしている。

日本にっぽん国内こくないには小笠原諸島おがさわらしょとうと沖縄おきなわ県けんに人為じんい移入いにゅうされ、その後ご野外やがいに逸出いっしゅつして帰化きかした。近年きんねんは南みなみ九州きゅうしゅうまで分布ぶんぷを拡大かくだいしているようである。

生態せいたい

オジギソウやネムノキも属ぞくするネムノキ亜あ科かに分類ぶんるいされ、両りょう種たねの特徴とくちょうである鳥とりの羽はねのような葉は(羽はね状じょう複葉ふくよう)を持もつ。樹き高だかは日本にっぽんに定着ていちゃくした種たねは1-5mと低ひくめに留とまるが、品種ひんしゅによっては10m程度ていどまで高たかくなる。花はなはほぼ通年つうねん開花かいかし、両りょう種たねのそれ(頭あたま状じょう花序かじょ)に似にるが若干じゃっかん小ちいさく色いろが白しろい。大おおきさといい色しょくといい、耳掻みみかきに付ついている梵天ぼんてんに酷似こくじする。果実かじつは細長ほそながく扁平へんぺいな豆まめ果はてで、風ふうなどに吹ふかれて落下らっかし散布さんぷされる。

日当ひあたりの良よいやや乾燥かんそうしたところを好このみ、かなり深ふかくに根ねを下おろす。その根ねから水みずを吸すい上あげるため旱魃かんばつに強つよく、また痩やせた土地とちも厭いとわない生命せいめい力りょくの強つよい木きである。

若葉わかばや芽めにミモシン (mimosine) という有毒ゆうどくアミノ酸あみのさんを含有がんゆうしているので、家畜かちくがこれらを摂取せっしゅし過すぎると脱毛だつもう、繁殖はんしょく障害しょうがい、成長せいちょう阻害そがいといった弊害へいがいが出でる。人ひとに対たいしても同様どうようで、小笠原諸島おがさわらしょとうに取とり残のこされた兵隊へいたいが本ほん種たねの種子しゅしを食たべ、全員ぜんいん残のこらず丸まるハゲになったという逸話いつわがある。ミモシンはアレロパシー物質ぶっしつとして、さらには本ほん種たねを食害しょくがいする昆虫こんちゅうに対たいする忌避きひ成分せいぶんとしても作用さようするが、ギンネムキジラミというヨコバイ亜あ目めキジラミ科かの昆虫こんちゅうはミモシンを分解ぶんかいする酵素こうそを有ゆうしているので、積極せっきょく的てきに本ほん種たねを食害しょくがいする強力きょうりょくな天敵てんてきとなっている。ギンネムキジラミの食害しょくがいにより、群生ぐんせいする本ほん種しゅが一斉いっせい枯死こしすることも珍めずらしくない。

外来がいらい種しゅ問題もんだい

導入どうにゅう

痩やせた土地とちでもすぐに繁茂はんもする本ほん種しゅは、当初とうしょ畑はたけの緑肥りょくひ、薪炭しんたん、家畜かちくの飼料しりょう、荒地あれちの緑化りょくか、土壌どじょう流出りゅうしゅつ防止ぼうし、など多た目的もくてきに有用ゆうような植物しょくぶつとして1862年ねんに小笠原諸島おがさわらしょとう、1910年ねん以降いこうに沖縄おきなわ県けんへ人為じんい的てきに移入いにゅうされた。

当初とうしょ沖縄おきなわ県けんでは、スリランカ産さん種しゅを導入どうにゅうし人手ひとでで管理かんりしていたが、太平洋戦争たいへいようせんそう後ごの混乱こんらん期きに放置ほうちされ、さらにその後ご農業のうぎょう形態けいたいの変革へんかく等とうにより上記じょうきの用途ようとで用もちいられることはなくなり野外やがいに逸出いっしゅつした。また沖縄おきなわ戦せんで焦土しょうどと化かした島しまの土壌どじょう流出りゅうしゅつ防止ぼうし用ようとして、米べい軍ぐんがハワイ産さん種しゅの種子しゅしを空中くうちゅう散布さんぷした事実じじつもある。小笠原諸島おがさわらしょとうでも、太平洋戦争たいへいようせんそう中ちゅうの全ぜん島民とうみん離島りとうを機きに島中しまなかにはびこった。1985年ねん以降いこう両りょう地域ちいきにギンネムキジラミが侵入しんにゅうしたことで勢いきおいを弱よわめつつあるが、いまだ在来ざいらいの固有こゆう植物しょくぶつに対たいして優勢ゆうせいにあることは変かわっていない。

野生やせい化かしたもの以外いがいに、園芸えんげい樹木じゅもくとして観賞かんしょう用ように栽培さいばいされているものもある。園芸えんげい品種ひんしゅは野生やせい化かしている品種ひんしゅに比較ひかくして花はながずっと大おおきい。野生やせい化かした本ほん種たねを指さす場合ばあいギンネムの名なで呼よばれ、園芸えんげい樹木じゅもくとしての本ほん種しゅはギンゴウカンの名なで呼よばれるようである。

影響えいきょう

マメ科かに近ちかい本ほん種しゅは根ねに空中くうちゅう窒素ちっそ固定こてい作用さようを有ゆうする根粒こんりゅう菌きんを共生きょうせいさせているため、貧ひん栄養えいようの状態じょうたいであっても極端きょくたんに成長せいちょうが早はやい。さらにアレロパシー物質ぶっしつのミモシンを分泌ぶんぴつするため、すぐさま本ほん種しゅのみで林はやしを形成けいせいして他た種たねを駆逐くちくし、本ほん来らいこういった場所ばしょにおいて優ゆう占うらない種しゅとなるべき当該とうがい地域ちいきの固有こゆう植物しょくぶつ群ぐんへの遷移せんいを疎外そがいしている。沖縄おきなわ県けんや小笠原諸島おがさわらしょとうでは、本ほん種たねの好このむ日当ひあたりの良よい空あき地ちや、耕作こうさく放棄ほうきされた田畑たはたは大抵たいてい本ほん種しゅに占拠せんきょされており、在来ざいらい固有こゆう種しゅの生育せいいくを阻害そがいしている。

世界せかいの侵略しんりゃく的てき外来がいらい種しゅワースト100リストの1種しゅに数かぞえられているほか、外来がいらい生物せいぶつ法ほうによって要注意ようちゅうい外来がいらい生物せいぶつに指定していされている。

人間にんげんとの関係かんけい

かつては多目的たもくてきに有用ゆうよう、と、期待きたいされ世界せかいの熱帯ねったい、亜熱帯あねったい地域ちいきにおいて積極せっきょく的てきに導入どうにゅうされてきた本ほん種しゅであるが、日本にっぽんにおいては生活せいかつ様式ようしきや農業のうぎょう形態けいたいの変革へんかくによって畑はたけの緑肥りょくひや薪炭しんたんといった用途ようとは無なくなり、ミモシンの問題もんだいがあるため家畜かちくの飼料しりょうにも使つかえず、現在げんざい役立やくだっているのは土壌どじょう流出りゅうしゅつ防止ぼうしと荒地あれちの緑化りょくか用ようぐらいである。

しかし短期間たんきかんで成長せいちょうしとめどなく増殖ぞうしょくする性質せいしつがあることから、そういった用途ようとに用もちいられることもなくなってきている。それに輪わをかけ同おなじく外来がいらい種しゅである本ほん種しゅの天敵てんてき、ギンネムキジラミが本ほん種たねの有用ゆうよう性せいをさらに毀損きそんしている。緑化りょくかや土壌どじょう流出りゅうしゅつ防止ぼうし用ようとして意図いと的てきに植うえ栽された本ほん種しゅが、キジラミの食害しょくがいにより一斉いっせい枯死こしして、一いち面めんが枯かれ木きで埋うめ尽つくされたり、傾斜地けいしゃちが崩壊ほうかいする危険きけん性せいが出でてきたからである。

だが近年きんねんになってミモシンを醗酵はっこう過程かていで除去じょきょする技術ぎじゅつが開発かいはつされ、それと同時どうじに本ほん種しゅに含ふくまれるカルシウム、カリウムといったミネラルやタンパク質たんぱくしつ、食物しょくもつ繊維せんいなどが注目ちゅうもくされるようになった。現在げんざい沖縄おきなわ県けんでは本ほん種たねを原料げんりょうに用もちいた茶ちゃなどの健康けんこう食品しょくひんが商品しょうひん化かされ、みやげ物もの屋やなどで販売はんばいされている。

なお本ほん種たねが単たん年度ねんどあたりに生産せいさんするバイオマス量りょうは、他たの植物しょくぶつに比較ひかくしてケタ違けたちがいであり、同様どうように過去かこに本ほん種たねが移入いにゅうされた東南とうなんアジアの開発途上国かいはつとじょうこくなどでは、本ほん種しゅの生産せいさんしたバイオマスを積極せっきょく的てきに利用りようしている例れいもある。