クリーモフ VK-1

クリーモフ VK-1は、ソ連それんで実用じつよう化かした初期しょきのターボジェットエンジン。名目めいもく上じょうヴラジーミル・ヤーコヴレヴィチ・クリーモフ設計せっけい局きょくで開発かいはつされ、GAZ 116工場こうじょうで生産せいさんされた。中国ちゅうごくでもWP-5としてライセンス生産せいさんされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

「クリーモフ RD-500」も参照さんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん終結しゅうけつ後ご、アメリカのペーパークリップ作戦さくせんに対抗たいこうしてソ連それんは多数たすうのドイツ人じん技術ぎじゅつ者しゃや仕掛しかけ品ひんのエンジンを鹵獲ろかくしたが、敗戦はいせん直前ちょくぜんにドイツで生産せいさんされた物ものの品質ひんしつは劣悪れつあくだった反面はんめん、技術ぎじゅつ的てきには余あまりに高度こうどだったため、当とう分野ぶんやで後発こうはつ国こくであるソ連それんの参考さんこうにはなり難がたかった。^[1]

折おりしも冷戦れいせん本格ほんかく化か前まえの翌よく1946年ねん、イギリスで成立せいりつしたクレメント・アトリー労働党ろうどうとう政権せいけんが、ソ連それんとの友好ゆうこう関係かんけいを改善かいぜんする事ことに熱心ねっしんだった事ことから、最さい新鋭しんえいターボジェットであるロールス・ロイスニーン40基き（35基きとも）と、縮小しゅくしょう版ばんのダーウェント Mk.V 25基きの輸出ゆしゅつを承認しょうにんしたことが、ソ連それんにとって福音ふくいんとなった。

これらは間まもなくドイツ人じん技術ぎじゅつ者しゃの主導しゅどうでリバースエンジニアリングされ、ダーウェント Mk.V のデッドコピー機き RD-500 と、同おなじくニーンの複製ふくせいである RD-45 の生産せいさんが1947年ねんに着手ちゃくしゅされた。

RD-45 は比較的ひかくてき単純たんじゅんな構造こうぞうであったが、当時とうじのソ連それんの技術ぎじゅつ的てきな経験けいけん不足ふそくと材料ざいりょうにより開発かいはつは難航なんこうした。量産りょうさんするために改良かいりょうされたVK-1ではオリジナルのニーンとは異ことなり、燃焼ねんしょう器きとタービンが大型おおがた化かされ、気流きりゅうが改善かいぜんされた。ソ連それんは金属きんぞく材料ざいりょうの問題もんだいを解決かいけつするためにロールスロイスの工場こうじょうを見学けんがくした時ときに"特別とくべつ仕様しよう"の靴くつを履はいて床ゆかに落おちていた金属きんぞくの屑くずを回収かいしゅうしてそれを後あとで分析ぶんせきした。

最初さいしょは RD-45 として後のちに金属きんぞく材料ざいりょうの問題もんだいによりソビエトの技術ぎじゅつ者しゃの開発かいはつによってわずかに再さい設計せっけいされ(金属きんぞく材料ざいりょうも近ちかい)複製ふくせいが行おこなわれ、後のちに VK-1 として量産りょうさんされ、MiG-15に搭載とうさいされた。更さらに VK-1F は、ソ連それんからの技術ぎじゅつ供与きょうよでロールス・ロイスに無断むだんのまま中国ちゅうごくでも生産せいさんされ、^[2]中国ちゅうごく製せいの MiG-17 である殲撃五ご型がた（J-5）に搭載とうさいされた。1958年ねんに北京ぺきん市しを訪おとずれた同社どうしゃの副ふく社長しゃちょうホィットニー・ウィラード・ストレート（Whitney Willard Straight）は、この事実じじつを目撃もくげきし、同社どうしゃはソ連それん政府せいふに対たいし2億おく700万まんポンドのライセンス料りょうを請求せいきゅうしたが、徒労とろうに終おわった。

初期しょきには信頼しんらい性せいに問題もんだいを抱かかえていたが、これを搭載とうさいした MiG-15 の出現しゅつげんは皮肉ひにくな事ことに西側にしがわにとって深刻しんこくな脅威きょういを与あたえ、朝鮮ちょうせん戦争せんそうにおいて連合れんごう国こく側がわを苦くるしめた。

VK-1F はアフターバーナー付つきで、ロールス・ロイステイに相当そうとうする。

遠心えんしん圧縮あっしゅく式しきターボジェットエンジンは構造こうぞうが単純たんじゅんで、早期そうきの戦力せんりょく化かに即そくした反面はんめん、機械きかい的てき限界げんかいから性能せいのう向上こうじょうの余地よちがほとんど残のこされておらず、また大だい径みちなため機体きたい設計せっけい上じょう障害しょうがいになることなどから、軸じく流りゅう圧縮あっしゅく式しきターボジェットエンジンに取とって代かわられた。

諸しょ元もと (VK-1)[編集へんしゅう]

全長ぜんちょう：2,600 mm (102 in)
直径ちょっけい：1,300 mm (51 in)
重量じゅうりょう：872 kg (1,395 lb)
推力すいりょく：26.5 kN (5,955 lbf)
燃料ねんりょう消費しょうひ率りつ：109.1 kg/(kN·h) (1.07 lb/(lbf·h))
推力すいりょく重量じゅうりょう比ひ：41.4 N/kg (4.27:1)

搭載とうさい機き[編集へんしゅう]

VK-1はMiG-15に続つづき、MiG-17やIl-28にも搭載とうさいされた。また、ロシアの空港くうこうでは融雪ゆうせつ車しゃに本ほんジェットエンジンを取とり付つけたものが運用うんようされている^[3]。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、ソビエト連邦れんぽうはすぐにドイツの第だい一いち世代せだいのユモ004とBMW003ジェットエンジンのコピーを製造せいぞうした。それらは先進せんしん的てきな設計せっけいであると同時どうじに戦時せんじ中ちゅうだったのでドイツは希少きしょう金属きんぞく類るいの入手にゅうしゅが限かぎられていた為ために耐久たいきゅう性せいに乏とぼしかった。
^ Gunston 1989, p.90.
^ ロシアの空港くうこうで活躍かつやくするジェット融雪ゆうせつ車しゃ

文献ぶんけん[編集へんしゅう]

Gunston, Bill. World Encyclopedia of Aero Engines. Cambridge, England. Patrick Stephens Limited, 1989. ISBN 1-85260-163-9

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

[1] 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、ソビエト連邦れんぽうはすぐにドイツの第だい一いち世代せだいのユモ004とBMW003ジェットエンジンのコピーを製造せいぞうした。それらは先進せんしん的てきな設計せっけいであると同時どうじに戦時せんじ中ちゅうだったのでドイツは希少きしょう金属きんぞく類るいの入手にゅうしゅが限かぎられていた為ために耐久たいきゅう性せいに乏とぼしかった。

[2] Gunston 1989, p.90.

[3] ロシアの空港くうこうで活躍かつやくするジェット融雪ゆうせつ車しゃ

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