ロールス・ロイスダーウェント

ダーウェント（Derwent ）は、1940年代ねんだい中盤ちゅうばんの英国えいこくのターボジェットエンジン。

概要がいよう

原型げんけいは、フランク・ホイットルのパワージェッツが基本きほん設計せっけいを手掛てがけた W.2 (Whittle Supercharger Type 2) を、生産せいさん委託いたく先さきのローバーが独自どくじ改良かいりょうした W.2B/26 (B.26)。

ホイットルのオリジナルは実戦じっせんに耐たえる状態じょうたいではなく、後のちにランドローバー開発かいはつ主任しゅにんとして知しられるモーリス・ウィルクスらローバーの技術ぎじゅつ陣じんが大幅おおはばな設計せっけい変更へんこうに着手ちゃくしゅしたところ、頑迷がんめいなホイットルが激怒げきどし、両者りょうしゃの対立たいりつは剣呑けんのんなものになった。

経験けいけん論ろんに固執こしつするホイットルとの軋轢あつれきに嫌気いやけが差さしたローバーは、W.2B プロジェクトに関かんする一切いっさいを、かねてからジェットエンジンに興味きょうみを示しめしていたロールス・ロイスに工場こうじょう・人員じんいんごと譲渡じょうとし、航空機こうくうきレシプロエンジン用よう機械きかい式しき過か給きゅう器きのスペシャリスト、スタンリー・フッカーらのチームが W.2B の開発かいはつを引ひき継ついだが、何なにかと介入かいにゅうしたがるホイットルには相変あいかわらず手てを焼やいたと言いわれている。

先さきにローバーで開発かいはつの進すすんでいた W.2B/23 (B.23) をウェランドの名なで量産りょうさん化かし、英えい初はつのジェット戦闘せんとう機きグロスターミーティアF.1 を進すすむ空そらさせたロールス・ロイスは、続つづいてローバーとホイットルの反目はんもくの直接ちょくせつ原因げんいんになった、改あらため設計せっけい型がた W.2B/26 (B.26) 案あんの実用じつよう化かに着手ちゃくしゅした。これが後のちにダーウェントと呼よばれる物ものになる。

この W.2B/26 (B.26) は、一足ひとあし先さきに実用じつよう化か段階だんかいに達たっしていたハルフォード H.1（後ごのデ・ハビランドゴブリン）と同様どうように、全長ぜんちょう短縮たんしゅくのためウェランドまで用もちいられて来きた反転はんてん式しき燃焼ねんしょう器きを廃はいし、噴流ふんりゅうを迂回うかいさせずタービンに直接ちょくせつ当あてる標準ひょうじゅん的てきな方式ほうしきに改あらため、蒸発じょうはつ管かん式しき予よ燃もえ装置そうちからルーカス・インダストリーズ（Lucas Industries ）の燃料ねんりょう直ちょく噴器に換かわ装そうしたもので、当該とうがい改良かいりょうにより推力すいりょく・安定あんてい性せい共ともに大幅おおはばに向上こうじょうし、また構造こうぞうが簡素かんそ化かされ製作せいさく容易よういにもなって、習作しゅうさく色しょくの強つよいウェランドと直ただちに代替だいたいした。

ダーウェントの成功せいこうに自信じしんを深ふかめたロールス・ロイスは、アマチュア的てきで不安定ふあんていかつ発展はってん性せいが見込みこめない W.2 の基本きほん設計せっけいを離はなれ、更さらにホイットルへの特許とっきょ料りょう支払しはらい回避かいひも兼かねて、白紙はくしの状態じょうたいから設計せっけいし直なおした次つぎ作さくニーンで、遠心えんしん圧縮あっしゅく式しきターボジェットエンジンの一ひとつの完成かんせい形がたを打うち立たてる。

これらロールス・ロイス製せいジェットエンジンの殆ほとんどにイングランドを流ながれる河川かせん名なの愛称あいしょうが与あたえられている理由りゆうについては、ウェランドの項こうを参照さんしょうされたい。

各種かくしゅ型がた

ダーウェント Mk.I - 最初さいしょの量産りょうさん型がた、推力すいりょく8.9kN (920kg)
ダーウェント Mk.II - 推力すいりょく向上こうじょう型がた、9.8kN (1015kg)
ダーウェント Mk.III - 主翼しゅよくの境界きょうかい層そうコントロール用ように外部がいぶへ負ふ圧あつを取とり出だせるようにした物もの、試作しさくのみ
ダーウェント Mk.IV - 推力すいりょく向上こうじょう最終さいしゅう型がた、10.7kN (1100kg)
ダーウェント Mk.V - ミーティア搭載とうさい用ように特製とくせいされたニーンの縮小しゅくしょう版ばんで、ダーウェントの名なが付ついているが別物べつもの。
- 推力すいりょく15.6 kN (1600 kg)で、ミーティア改造かいぞう機きによる速度そくど記録きろく挑戦ちょうせん（1945年ねん 11月7日にち、975km/h）時じには、短時間たんじかん推力すいりょく18,5kN(1900kg)にまで増力ぞうりょくされた。
- 1947年ねん、ダーウェント5はニーンとともに、時ときのアトリー労働党ろうどうとう政権せいけんによってソビエト連邦れんぽうに供与きょうよされた結果けっか、前者ぜんしゃはクリーモフ RD-500 に、後者こうしゃは同どう RD-45 に化ばけ、更さらに RD-45 の発展はってん型がた VK-1 はミグ15 戦闘せんとう機き等ひとしに搭載とうさいされて、皮肉ひにくな事ことに西側にしがわに対たいして大おおきな脅威きょういを齎もたらした。
- 1949年ねんにはレシプロ輸送ゆそう機きをダーウェント5の4発はつ化かしたアブロチューダー 8、並ならびにアブロ・カナダ C-102 ジェットライナーを進すすむ空そらさせ、前者ぜんしゃはアブロアシュトン（英語えいご版ばん）に発展はってんしたが、何いずれも試作しさくのみで終おわった。
ダーウェント Mk.VIII - Mk.V の発展はってん型がた、最さい多数たすう生産せいさん、与あずか圧あつコックピット／防ぼう氷ごおり用ように外部がいぶへ抽出ちゅうしゅつ空気くうきを取とり出だせるようにした物もの
ロールス・ロイストレント（初代しょだい） - ダーウェント Mk.II をターボプロップ化かしたもの。YS-11 にも採用さいようされた後のちのベストセラー、ダート開発かいはつに繋つながった。

参考さんこう

Bridgman, L, (ed.) Jane's fighting aircraft of World War II. London: Crescent, 1998. ISBN 0-517-67964-7

外部がいぶリンク