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ターボ・ユニオン RB199

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
RB199. ひだり前方ぜんぽう空気くうきこうにつながり、みぎ排気はいきこう排気はいきこう上下じょうげの2まいいたぎゃく噴射ふんしゃ装置そうち

ターボ・ユニオン RB199英語えいご: Turbo-Union RB199)は、ターボ・ユニオンしゃ製造せいぞうするていバイパスのターボファンエンジンである[ちゅう 1]ヨーロッパ国際こくさい共同きょうどう開発かいはつされたマルチロールであるトーネード IDSのために開発かいはつされたエンジンであり、また電子でんし戦機せんきかたのトーネードECRや要撃ようげきかたトーネード ADVでも採用さいようされた。

来歴らいれき

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ほん開発かいはつは、1967ねんイギリスブリストル・シドレーしゃ着手ちゃくしゅしたM45Gターボファンエンジン発展はってんがた研究けんきゅう起源きげんとする[2]。M45Gは、イギリスとフランス可変かへんつばさ共同きょうどう開発かいはつ計画けいかくAFVG)にたいして提案ていあんされていたものであった[2]。AFVG計画けいかく自体じたい要求ようきゅう差異さいなどのために空中くうちゅう分解ぶんかいしたが、この時期じき西にしドイツなどもF-104後継こうけいとなるマルチロール共同きょうどう開発かいはつするためのMRCA(Multi Role Combat Aircraft計画けいかくすすめており、イギリスもこちらに合流ごうりゅうすることになった[1]

そして、MRCA計画けいかくたいしてイギリスのブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション(BAC)が提案ていあんした設計せっけいにおいて、エンジンとして採用さいようされていたのがほんである[1]。これにたいし、西にしドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームではプラット・アンド・ホイットニー TF30使用しようする設計せっけい提案ていあんしており、1969ねん1がつには、両者りょうしゃともにMRCAの要求ようきゅう達成たっせいできることが確認かくにんされた[1]。またこのほか、おなじくプラット・アンド・ホイットニー開発かいはつするJTF22とJTF16、GE・アビエーションのGE1/10も俎上そじょうせられていた[2]

RB199はロールス・ロイスしゃブリストル・エンジン部門ぶもん設計せっけいもとづいており、この時点じてんではまだ実機じっきがなかったものの、1969ねん9がつ4にち、これを採用さいようするという最終さいしゅう決定けってい批准ひじゅんされた[1]ほん量産りょうさんはヨーロッパでおこなわれたエンジン生産せいさん計画けいかくとしては最大さいだい規模きぼのものであることから、これに先立さきだつ6がつ1にちには、関係かんけい各社かくしゃ合弁ごうべん事業じぎょうとして、製造せいぞう担当たんとうするターボ・ユニオンしゃがイギリスに設立せつりつされた[1][ちゅう 1]

1971ねん9月27にちには、ブリストルにおいて、最初さいしょのエンジンの試運転しうんてんおこなわれた[3]。MRCA計画けいかくでは、機体きたいとエンジンが並行へいこうして開発かいはつされていたことから、機体きたいすすむそら先駆さきがけてエンジンの飛行ひこう試験しけんおこなうため、アブロ バルカン改造かいぞうしたテストベッド製作せいさくされた[3]。このテストベッドでは、胴体どうたいにMRCAの胴体どうたい右舷うげんがわエアインテーク設置せっちされており、1973ねん4がつより試験しけん開始かいしした[3]。また1974ねん7がつには、MRCAの試作しさく1号機ごうきはつ飛行ひこうした[3]。そして1976ねん3月、MRCAの量産りょうさん承認しょうにんされるとともに、「トーネード」の名称めいしょうあたえられた[4]

設計せっけい

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基本きほん構成こうせい

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ほんロールス・ロイス ペガサスをベースとしている[5]圧縮あっしゅくじくしきで、ペガサスでは2じくしきだったのにたい[6]ほんは3じくしきとなっているが、ながさは極力きょくりょくおさえられている[5]。なお3じくしきターボファンエンジンは、ロッキード L-1011 トライスターけのロールス・ロイス RB211実用じつようされたものであり、てい燃費ねんぴてい騒音そうおんなどの特性とくせいから民間みんかんでは好評こうひょうで、その開発かいはつつづいてトレントいたっているが、軍用ぐんようではこれらの特性とくせいにあまりおもきをおいておらず、整備せいび煩雑はんざつさや信頼しんらいせいわるさもあって、評価ひょうかたかくなかった[2]

3だん低圧ていあつ圧縮あっしゅくは2だんタービン、3だんなかあつ圧縮あっしゅくおよび6だんこうあつ圧縮あっしゅくはそれぞれ1だんのタービンで駆動くどうされる[5]燃焼ねんしょうはアニュラがたである[5]じく速度そくど最大さいだいドライ推力すいりょく)は12,000 rpm低圧ていあつ)、16,000 rpm(ちゅうあつ)、18,000 rpm(高圧こうあつ)である[5]

ほんていバイパスであり、ファンのそう空気くうき流量りゅうりょうはコアのそう流量りゅうりょうよりわずかにおお程度ていど(バイパスやく1:1)で、たかいタービン温度おんどこう圧縮あっしゅく(23:1)のわせにより、リヒートしない場合ばあい燃料ねんりょう消費しょうひ良好りょうこうにしている[5]。リヒートを使用しようする場合ばあい、ノズルの直径ちょっけいはセッティングの状況じょうきょうおうじて最適さいてき効率こうりつるように自動じどう調整ちょうせいされる[5]。またみじか滑走かっそうでの運用うんよう想定そうていして、ノズル部分ぶぶん外側そとがわには制動せいどうようぎゃく噴射ふんしゃ装置そうち装備そうびしており、そのバケットは1びょう以下いか展開てんかいできる[5]

しょもと性能せいのう (Mk.101)

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しょもと

  • 最大さいだい直径ちょっけい: 34.0インチ (860 mm)
  • 全長ぜんちょう: 126インチ (3,200 mm)
  • ドライ重量じゅうりょう: 1,983ポンド (899 kg)
  • そう流量りゅうりょう: 毎秒まいびょう154.2ポンド (69.9 kg)
  • バイパス: 1:1
  • 全体ぜんたい圧縮あっしゅく: 23.1
  • 1だんあたりの平均へいきん圧縮あっしゅく: 1.30:1

性能せいのう

  • 最大さいだいドライ推力すいりょく: 8,000重量じゅうりょうポンド (36 kN)
  • 最大さいだいリヒート推力すいりょく: 16,000重量じゅうりょうポンド (71 kN)
  • 推力すいりょく重量じゅうりょう(ドライ): 4.03
  • 推力すいりょく重量じゅうりょう(リヒート): 8.06
  • ねつ比率ひりつ(ドライ): 51.9
  • ねつ比率ひりつ(リヒート): 103.8

派生はせいがた

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RB199-34R Mk.101
最初さいしょ生産せいさんがたエンジンで、トーネード IDS初期しょきがたよう推力すいりょく:38.7 kN(ドライ)/ 66.01 kN(リヒート使用しよう[2]
RB199-34R Mk.103
トーネード IDSようのパワーアップがた推力すいりょく:38.7 kN(ドライ)/ 71.2 kN(リヒート使用しよう[2]
RB199-34R Mk.104
トーネード F3よう推力すいりょく:40.5 kN(ドライ)/ 73.5 kN(リヒート使用しよう[2]
RB199-34R Mk.105
トーネード ECRようであり、またのちにIDSのおおくもこちらにかわそうした。推力すいりょく:42.5 kN(ドライ)/ 74.3 kN(リヒート使用しよう[2]

運用うんよう

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湾岸わんがん戦争せんそうイラク戦争せんそうにおけるトーネードの活躍かつやく反映はんえいして、イギリス空軍くうぐんドイツ空軍くうぐんドイツ海軍かいぐん・サウジアラビア空軍くうぐんイタリア空軍くうぐんにおいて総計そうけい700まん飛行ひこう時間じかん以上いじょう運用うんよう実績じっせきがある[7]

RB199-34R Mk.104の派生はせいがたであるMk.104Eは、タイフーン試作しさく搭載とうさいされ、本来ほんらいのエンジンであるEJ200はいるまでのあいだ使用しようされた[2]

なお、日本にっぽんFS-X初期しょきあんにおいて、搭載とうさいエンジンとしてPW1120F404/F2J1とともに検討けんとうされていた[8]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ a b ターボ・ユニオンしゃ持株もちかぶ比率ひりつは、ロールス・ロイスしゃとMTUミュンヘンしゃげんMTUエアロ・エンジンズ)がそれぞれ40パーセント、フィアット・アヴィオ(げんアヴィオしゃが20パーセントとされた[1]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f Mason 1989, pp. 26–34.
  2. ^ a b c d e f g h i 青木あおき 2013, pp. 30–31.
  3. ^ a b c d Mason 1989, pp. 37–44.
  4. ^ Mason 1989, pp. 55–57.
  5. ^ a b c d e f g h Mason 1989, pp. 197–204.
  6. ^ 石澤いしざわ 2005.
  7. ^ Rolls-Royce plc (2021ねん). “RB199 – Rolls-Royce”. 2021ねん9がつ18にち閲覧えつらん
  8. ^ “Propulsion”. Flight International Magazine: 23. (1986ねん3がつ15にち). オリジナルの2016ねん3がつ7にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160307221752/https://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1986/1986%20-%200567.html. 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Mason, Francis K.『トーネード―全天候ぜんてんこう戦闘せんとう攻撃こうげき青木あおきけん (わけ)、はら書房しょぼう〈メカニックブックス〉、1989ねん原著げんちょ1986ねん)。ISBN 978-4562020102 
  • 青木あおきけん『パナビア トーネード』イカロス出版いかろすしゅっぱん世界せかい〉、2013ねんISBN 978-4863207844 
  • 石澤いしざわ和彦かずひこ「V/STOLの具現ぐげんしゃ ロールスロイス“ペガサス”」『世界せかい傑作けっさく No.111 ハリアー / シーハリアー』ぶん林堂はやしどう、2005ねん、90-95ぺーじISBN 978-4893191274 

関連かんれん項目こうもく

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