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ロールス・ロイス RB211

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ロールス・ロイス RB211
ロールス・ロイス RB211
要目ようもく一覧いちらん
種類しゅるい ターボファンエンジン
製造せいぞうこく イギリスの旗 イギリス
製造せいぞう会社かいしゃ ロールス・ロイス・ホールディングス
最初さいしょ運転うんてん 1969ねん
おも搭載とうさい ロッキード L-1011 トライスター
ボーイング747-SP
ボーイング747-200
ボーイング747-400
ボーイング757
ボーイング767
ツポレフ Tu-204
形式けいしき 3じくしき ターボファンエンジン
バイパス5.0)
全長ぜんちょう 119.4 in (3,030 mm)
ファンの直径ちょっけい 84.8 in (2,150 mm)
重量じゅうりょう 9,195 lb (4,171 kg)
圧縮あっしゅく じくりゅうしき
推力すいりょく 42,000 lbf (190 kN)
RB211-22を搭載とうさいするロッキード L-1011がた

ロールス・ロイス RB211は、ロールス・ロイス生産せいさんする推力すいりょく37,400から60,600重量じゅうりょうポンド(166から270KN)のこうバイパスターボファンエンジンである。原型げんけい1972ねん運航うんこう開始かいししたロッキード L-1011 トライスターけに開発かいはつされ、当初とうしょ同機どうきのみに使用しようされた。開発かいはつ段階だんかいで、採用さいようしたふくごうざいせいのファンブレードHyfilがバードストライク試験しけん合格ごうかくできず、やりなおしの必要ひつようしょうじたことによる開発かいはつ高騰こうとうのためロールス・ロイス・リミテッド破産はさんし、救済きゅうさいのためイギリス政府せいふ国有こくゆうするにいたった。このRB211は世界せかいはじめて実用じつようされた3じくしきターボファンエンジンで、国際こくさい民間みんかん航空機こうくうきようエンジン市場いちばていシェアにとどまっていたロールス・ロイスを主要しゅようエンジンメーカーに成長せいちょうさせる原動力げんどうりょくとなった[1]派生はせいがたボーイング747ボーイング757ボーイング767ロシアツポレフ Tu-204搭載とうさいされたほか発電はつでんようにも使用しようされている。

RB211は、1990年代ねんだい後継こうけい機種きしゅであるトレントファミリーにわった[1]

歴史れきし[編集へんしゅう]

背景はいけい[編集へんしゅう]

1966ねんアメリカン航空こうくう座席ざせきあたりの費用ひようていコストな新型しんがたたん中距離ちゅうきょり旅客機りょかくき導入どうにゅうする予定よていがあることを発表はっぴょうした。アメリカン航空こうくう双発そうはつさがしていたが、航空機こうくうきメーカーにとって新型しんがた旅客機りょかくき開発かいはつ正当せいとうするためにはさらにもういちしゃ同型どうけい導入どうにゅう計画けいかくする航空こうくう会社かいしゃ必要ひつようだった。イースタン航空こうくう同様どうよう興味きょうみしめしたが、洋上ようじょう飛行ひこうする路線ろせんのために航続こうぞく距離きょりなが機体きたい必要ひつようとしていた。当時とうじ、この用途ようとには冗長じょうちょうせいたせるためにさんはつ必要ひつようだった。航空こうくう会社かいしゃさんはつ賛同さんどうした。ロッキードダグラスはこの要望ようぼうこたえるべく、それぞれ、L-1011DC-10開発かいはつあんとしてしめした。両方りょうほうともやく300にんりのワイドボディー、2通路つうろ大陸たいりくあいだ横断おうだん飛行ひこう可能かのうちょう航続こうぞく距離きょりさんはつという類似るいじした機体きたいあんであった。

両機りょうきあんとも新型しんがたエンジン必要ひつようであった。予定よていされたエンジンは、当時とうじ開発かいはつすすみつつあった燃費ねんぴく、騒音そうおんすくないターボファンエンジンだった。ロールス・ロイスは当時とうじ推力すいりょく45,000 lbf (200 kN)きゅうの3じくしきだかバイパスターボファンエンジンRB178ホーカー・シドレー トライデントのエンジンかわ装用そうよう開発かいはつちゅうだった。これはのちエアバスA300けに推力すいりょく47,500 lbf (211 kN)を発揮はっきするRB207開発かいはつ発展はってんしたが、RB211計画けいかくすすめるために中止ちゅうしとなった。 一方いっぽう、ロールス・ロイスは同様どうようこう効率こうりつの3じくしきターボファンエンジン開発かいはつおこなっていた。 この構成こうせい同軸どうじくのタービンが低圧ていあつちゅうあつこうあつの3つあり、それぞれがことなる回転かいてんすう圧縮あっしゅく駆動くどうする。従来じゅうらいの2じくしきくらべて構造こうぞう複雑ふくざつになるため製造せいぞう整備せいび複雑ふくざつにはなるものの、かくだん圧縮あっしゅく回転かいてんすう最適さいてきされるため全長ぜんちょう短縮たんしゅくできコンパクトにおさまり、剛性ごうせいたかめることができる。当時とうじ複数ふくすう設計せっけいあん開発かいはつちゅうRB203ばれるロールス・ロイス スペイかわそう目的もくてきとした推力すいりょく10,000 lbf (44 kN)の設計せっけいあんもあった。

設計せっけい完了かんりょう[編集へんしゅう]

1967ねん6月23にち、ロールス・ロイスはロッキードL-1011たいしてRB211-06を提案ていあんした。しんエンジンは推力すいりょくが33,260lbf(147,900N)で、当時とうじ開発かいはつちゅうだったRB207のこうバイパス設計せっけいとRB203の3じく設計せっけいわせたものであった[2]。ファンブレードの素材そざいにはロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント開発かいはつしたまったあたらしい技術ぎじゅつである炭素たんそ繊維せんいせいHyfil採用さいようした。これははがねせいファンブレードよりも大幅おおはば軽量けいりょうできるため、RB211は当時とうじ競合きょうごうするどのエンジンよりも推力すいりょく重量じゅうりょうすぐれることが期待きたいされた。エンジンにこういったしん機軸きじくむには時間じかんようするであろうことは予想よそうしつつも、ロールス・ロイスはRB211を1971ねん運航うんこう開始かいしすること了承りょうしょうした[3]。 ロッキードは新型しんがたエンジンによってライバルである類似るいじのDC-10にたいして明確めいかく優位ゆういてるとかんがえていた。しかし、ダグラス同様どうようにロールス・ロイスにDC-10へ搭載とうさいするエンジンの仕様しよう提示ていじもとめており、1967ねん10がつにロールス・ロイスは推力すいりょく35,400 lbf (157 kN)のRB211-10を提案ていあんした。機体きたいメーカーであるロッキードとダグラス、エンジンメーカーであるロールス・ロイス、ゼネラル・エレクトリックおよびプラット・アンド・ホイットニーあいだ同様どうように、主要しゅようアメリカ航空こうくう会社かいしゃあいだでもはげしい交渉こうしょうつづいた。

この交渉こうしょうつうじて、エンジン価格かかく値下ねさげされる一方いっぽうで、要求ようきゅう推力すいりょくはどんどん上昇じょうしょうしていった。1968ねん初頭しょとうにロールス・ロイスは推力すいりょく40,600 lbf (181 kN)のRB211-18を提案ていあんした。最終さいしゅうてきに1968ねん3月29にちにロッキードは94のトライスターを受注じゅちゅうし、ロールス・ロイスにRB211-22 エンジンを150発注はっちゅうしたと発表はっぴょうした[3][ちゅう 1]

RB211-22 シリーズ[編集へんしゅう]

開発かいはつ試験しけん[編集へんしゅう]

RB211はだい推力すいりょくの3じくしきという複雑ふくざつさのため、開発かいはつおよび試験しけん長期間ちょうきかんようした。1969ねんあき時点じてんで、ロールス・ロイスは当初とうしょ予定よていしていた性能せいのうがなかなか保証ほしょうできずに苦心くしんしていた。当初とうしょ見込みこみよりもエンジンおもくなり、推力すいりょく不十分ふじゅうぶんで、燃料ねんりょう消費しょうひりょう大幅おおはば超過ちょうかしていた。この状況じょうきょう1970ねん5月にしん開発かいはつふくごうざいせいファンブレードHyfil最終さいしゅうかつさい重要じゅうようであるバードストライク試験しけん合格ごうかくできなかったことでさらに悪化あっかした[ちゅう 2]。ロールス・ロイスはしん機軸きじくであるHyfilの開発かいはつ難航なんこうしたときの保険ほけんとしてチタンせいファンブレードを並行へいこうして開発かいはつしていたが、これは開発かいはつ余計よけいにかかるうえ採用さいようするとさらにエンジン重量じゅうりょう増加ぞうかすることをも意味いみしていた。チタンせいファンブレードの成型せいけい工程こうていにおいてチタン特有とくゆう技術ぎじゅつてき問題もんだいつかったことでさらに開発かいはつはさらに高騰こうとうした。

1970ねん9月、ロールス・ロイスはイギリス政府せいふにRB211の開発かいはつ当初とうしょ見込みこみの1おく7,030まんポンドから2ばいちかくにえ、さらにエンジンの推定すいてい生産せいさん費用ひようはエンジン売価ばいか230,375ポンドを上回うわまわることを報告ほうこくしている[3]計画けいかく危機ききてき状況じょうきょうおちい[4]、ロッキードにたいする開発かいはつ遅延ちえん違約いやくきん支払しはらいもしょうじたことから経営けいえいじょうきょう急速きゅうそく悪化あっかしていった。

破産はさん余波よは[編集へんしゅう]

1971ねん1がつついにロールス・ロイスは債務さいむ超過ちょうかおちいり、1971ねん2がつ4にち管財かんざいじん管理かんりにおかれた[ちゅう 3]。 これによりL-1011 トライスター計画けいかく深刻しんこく危機ききおちいった。

RB211の開発かいはつはイギリスの国家こっか戦略せんりゃくにおいてきわめて重要じゅうようであったことから、これを完遂かんすいするために保守党ほしゅとうエドワード・ヒース政権せいけんはロールス・ロイスの国有こくゆう決定けっていした。

ロッキード民間みんかん航空機こうくうき部門ぶもんではていシェアにまり、経営けいえい体質たいしつ脆弱ぜいじゃくだったため、ロッキードはL-1011計画けいかく完了かんりょうするための融資ゆうしけるにあたって、銀行ぎんこうからアメリカ政府せいふによる債務さいむ保証ほしょうもとめられる状態じょうたいだった[ちゅう 4]一部いちぶ反対はんたいにもかかわらず、アメリカ政府せいふ債務さいむ保証ほしょう提供ていきょうした[5]。1971ねん5がつ、"ロールス・ロイス(1971)リミテッド"とばれるしん会社かいしゃ管財かんざいじんからロールス・ロイスの資産しさん買収ばいしゅうし、まもなくロッキードとあらたな契約けいやく締結ていけつした。しん契約けいやくでは納入のうにゅう遅延ちえん違約いやくきん帳消ちょうけしとすることがさだめられ、エンジン単体たんたい価格かかくも110,000ポンド値上ねあげされた。

会社かいしゃすくうために任命にんめいされたしん会長かいちょうケネス・キースすで退職たいしょくしていたスタンリー・フッカーをロールス・ロイスへもどした。 フッカーはRB211-22の問題もんだい解決かいけつするために、技術ぎじゅつ監督かんとくとして退職たいしょくしゃ構成こうせいされたチームをひきいた。エンジンは当初とうしょ予定よていより1ねんおくれの1972ねん4がつ14にち最終さいしゅうてき認証にんしょう取得しゅとく[6]、トライスターは1972ねん4がつ26にちイースタン航空こうくう運航うんこう開始かいしした。この功績こうせきによりフッカーには1974ねんナイト授与じゅよされた。

これら一連いちれん出来事できごとによるRB211の開発かいはつ遅延ちえんは、L-1011の就航しゅうこうおくれにつながった。ロッキードはライバルのDC-10にさきされてしまったため、L-1011の販売はんばい不振ふしんわってしまう。

RB211の信頼しんらいせいは、エンジンの性能せいのう要件ようけん満足まんぞくすること開発かいはつ重点じゅうてんかれていたこともあって、運用うんよう初期しょきには期待きたいされたたほどくなかった。初期しょき納入のうにゅうされたRB211-22は、の-22Bよりもていかくげられていた。しかし、運航うんこう開始かいしからすう年間ねんかん改良かいりょう計画けいかくでかなり問題もんだい改善かいぜんされ、それ以降いこう信頼しんらいせいたかいエンジンとして成熟せいじゅくしている。

RB211-524 シリーズ[編集へんしゅう]

L-1011けに開発かいはつしたものの、L-1011の販売はんばい低調ていちょうであったために機種きしゅへの採用さいよう目指めざしてRB211の推力すいりょく増強ぞうきょうするさい設計せっけいおこなった。フッカはファンとちゅうあつ圧縮あっしゅくさい設計せっけいして推力すいりょくを50,000 lbf (220 kN)に増強ぞうきょうした。あたらしいエンジンはRB211-524という型名かためいあたえられ、あたらしいL-1011の派生はせい機種きしゅ同様どうようボーイング747搭載とうさいされること期待きたいされた。

1960年代ねんだい、ロールス・ロイスはボーイングしゃにRB211をんだが、成功せいこうしなかった。しかし、-524は性能せいのう向上こうじょうしており燃費ねんぴく、ボーイングしゃ当初とうしょ747のエンジンとして選定せんていしたプラット・アンド・ホイットニーしゃJT9D充分じゅうぶん対抗たいこうでき、747の航続こうぞく距離きょりばせることから、1973ねんにはRB211-524を747-200の選択肢せんたくしくわえる合意ごういむすばれた。ブリティッシュ・エアウェイズはこのわせを発注はっちゅうし、1977ねんから就航しゅうこうさせた。これに自信じしんたロールス・ロイスは-524の開発かいはつ継続けいぞくし、-524Cでは推力すいりょくを51,500 lbf (229 kN)まで増強ぞうきょうし、さらに1981ねん認証にんしょう取得しゅとくした-524Dでは53,000 lbf (240 kN)まで増強ぞうきょうした。 カンタス航空かんたすこうくうキャセイパシフィック航空こうくうカーゴルックス航空こうくうみなみアフリカ航空こうくう採用さいようした。ボーイングがより大型おおがた747-400計画けいかくしたときにはさら推力すいりょく必要ひつようでロールス・ロイスは推力すいりょく58,000 lbf (260 kN)の-524Gや、はつFADEC搭載とうさい機種きしゅである推力すいりょく60,600 lbf (270 kN)の-524Hを開発かいはつしておうじた[ちゅう 5]。-524Hは同様どうようボーイング767のエンジンのだい3の選択肢せんたくしとして提案ていあんされ、1990ねん2がつからブリティッシュ・エアウェイズ就航しゅうこう開始かいしした。

ロールス・ロイスでは後継こうけいトレントエンジンの開発かいはつすすめていたが、そのなかでトレント700で強化きょうかされたこうあつ圧縮あっしゅくが-524Gと-524Hに適用てきよう可能かのうであることをいだした。トレント700のこうあつ圧縮あっしゅく適用てきようした派生はせい機種きしゅはそれぞれ-524G-Tと-524H-Tとばれ、軽量けいりょう燃費ねんぴ向上こうじょう排出はいしゅつぶつ低減ていげんされた[7]既存きそんの-524G/H エンジンを強化きょうかされた-T仕様しよう改良かいりょうすることもでき、複数ふくすう航空こうくう会社かいしゃ実施じっししている[8]

-524は開発かいはつ当時とうじよりもますます信頼しんらいせい向上こうじょう[9]、767に搭載とうさいされる-524Hは1993ねんに180分間ふんかんETOPS認定にんてい取得しゅとくした。

RB211-535 シリーズ[編集へんしゅう]

アイスランド航空こうくうのボーイング757-300に搭載とうさいされた RB211-535E4B
アメリカン航空こうくうのボーイング757

当初とうしょボーイング757けに開発かいはつされた。現在げんざいではロシアせいツポレフTu-204などにも使用しようされている。

1970年代ねんだいなかば、ボーイングだい成功せいこうおさめた727代替だいたいする双発そうはつ開発かいはつ模索もさくしていた。この機体きたいは150-200せききゅうで、ロールス・ロイスは必要ひつよう推力すいりょく37,400 lbf (166 kN)をすためにRB211のファン直径ちょっけい縮小しゅくしょうし、ちゅうあつ圧縮あっしゅくの1だん削除さくじょしたあらたな派生はせい機種きしゅRB211-535を開発かいはつした。1978ねん8がつ31にちイースタン航空こうくうブリティッシュ・エアウェイズは-535を搭載とうさいしたボーイング757の発注はっちゅう発表はっぴょうした。1983ねん1がつから就航しゅうこうしたRB211-535Cは、ロールス・ロイスの供給きょうきゅうするエンジンはじめてボーイングせい航空機こうくうき搭載とうさいされた事例じれいとなった。

しかし、1978ねんプラット・アンド・ホイットニーPW2000開発かいはつはじめ、その派生はせい機種きしゅのPW2037は-535Cよりも燃費ねんぴが8%すぐれていると主張しゅちょうした。ボーイングはロールス・ロイスにたいして757けにより競争きょうそうりょくのあるエンジンを供給きょうきゅうするようせまり、これをけてより先進せんしんてきな-524のこうあつもとにした推力すいりょく40,100 lbf (178 kN)のRB211-535E4が1984ねん10月から就航しゅうこうした。PW2037ほどこう効率こうりつではなかったが、信頼しんらいせいたかしずかなエンジンとなった。はじめて幅広はばひろファンを搭載とうさいしたことでこう効率こうりつてい騒音そうおんされ、バードストライクなどの異物いぶつへのたいせいたかまった。このため、-535Cが搭載とうさいされた機体きたい生産せいさん少数しょうすうまり、大半たいはん機体きたいは-535Eが搭載とうさいされた。

おそらく-535Eにおいてもっと重要じゅうよう発注はっちゅうは、てい騒音そうおん発注はっちゅうとなった1988ねん5月のアメリカン航空こうくうによる757 50発注はっちゅうである。これは、トライスター以来いらい、ロールス・ロイスがアメリカ航空こうくう会社かいしゃからけたはじめての重要じゅうよう発注はっちゅうで、そのの757の販売はんばいにおいて-535E4搭載とうさい主流しゅりゅうになるきっかけでもあった。

エア・インターナショナル報告ほうこくによれば、アメリカン航空こうくうが757のエンジンとして-535E4を選定せんていしたこと発表はっぴょうしたさいにはロールス・ロイスとボーイングの双方そうほう歓迎かんげいしたという。

757の認証にんしょう取得しゅとく、-535E4はロシアのツポレフTu-204提案ていあんされ、1992ねんから就航しゅうこうした。これは、ロシアせい旅客機りょかくき西側にしがわのエンジンが供給きょうきゅうされたはつ事例じれいとなった[10]。また、ボーイングはB-52HばくげきTF33 8を-535E4 4かわそうする提案ていあんおこなったが、最終さいしゅうてきにはF130 8かわそうされることとなった[11][12]1990年代ねんだいすえにはトレントのために開発かいはつされた技術ぎじゅつ導入どうにゅうすることでさらなる改良かいりょうはかられ、エンジンの排出はいしゅつぶつ性能せいのう向上こうじょうした[13]

-535E4は非常ひじょう信頼しんらいせいたかいエンジンで[14]1990ねんに-535E4搭載とうさいの757がETOPS-180の認定にんてい取得しゅとくした。

産業さんぎょうよう RB211[編集へんしゅう]

ロールス・ロイスが-22の開発かいはつ当時とうじ発電はつでんよう簡単かんたん実現じつげんできると予想よそうされ、1974ねん産業さんぎょうようRB211の計画けいかく提案ていあんされた。-524が完成かんせいするとまもなく強化きょうかされた産業さんぎょうようRB211はRB211-24として指定していされた。発電はつでんすうねんがかりで開発かいはつされ[15]現在げんざいでも25.2-32MWの規模きぼ機種きしゅ販売はんばいされている[16][17]大半たいはん外洋がいよう石油せきゆやガスの掘削くっさくリグやガス製造せいぞうぎょうなどで使用しようされる[18]

産業さんぎょうようであるRB211-GzeroはRT-56とRT-62出力しゅつりょくタービンを使用しようする既存きそん産業さんぎょうようRB211-Cと産業さんぎょうようRB211-G ガス発生はっせい装置そうち運転うんてん温度おんどげることで10%ていかく向上こうじょうする。更新こうしん定期ていきてき分解ぶんかい整備せいび既存きそん設備せつび最小限さいしょうげん改修かいしゅうにより、実現じつげん可能かのう費用ひようたい効果こうかすぐれる。中間ちゅうかん圧縮あっしゅくつばさ交換こうかん出力しゅつりょくタービンの整流せいりゅうつばさ交換こうかんすることでもたらされる[19]

船舶せんぱくよう WR-21[編集へんしゅう]

先進せんしんてきな25MWきゅうWR-21は、中間ちゅうかん冷却れいきゃく(ICR)をそなえた船舶せんぱくようガスタービンである。

仕様しよう[編集へんしゅう]

3つのシリーズに分類ぶんるいされる。

RB211-22 シリーズ[編集へんしゅう]

  • 3じくしき バイパス 5.0
  • たんだん 幅広はばひろファン
  • 7だん ちゅうあつ圧縮あっしゅく
  • 6だん だかあつ圧縮あっしゅく
  • シングルしきアンニュラーしき燃焼ねんしょう 18燃焼ねんしょう装置そうち
  • たんだん だかあつタービン
  • たんだん ちゅうあつタービン
  • 3だん 低圧ていあつタービン

RB211-524 シリーズ[編集へんしゅう]

RB211-524Gを搭載とうさいしたボーイング747-400ブリティッシュ・エアウェイズ
  • 3じくしき バイパス 4.3-4.1
  • たんだん 幅広はばひろファン
  • 7だん ちゅうあつ圧縮あっしゅく
  • 6だん だかあつ圧縮あっしゅく
  • シングルしきアンニュラーしき燃焼ねんしょう 18燃焼ねんしょう装置そうち(G/H-Tようは24
  • たんだん だかあつタービン
  • たんだん ちゅうあつタービン
  • 3だん 低圧ていあつタービン

RB211-535 シリーズ[編集へんしゅう]

  • 3じくしき バイパス 4.3-4.4
  • たんだん 幅広はばひろファン
  • 6だん ちゅうあつ圧縮あっしゅく
  • 6だん だかあつ圧縮あっしゅく
  • シングルしきアンニュラーしき燃焼ねんしょう 18燃焼ねんしょう装置そうち(E4よう後期こうきがたは24
  • たんだん だかあつタービン
  • たんだん ちゅうあつタービン
  • 3だん 低圧ていあつタービン

ちゅうあつ圧縮あっしゅくだんらした特徴とくちょう同様どうように-535E4はスナバーをそなえない幅広はばひろのファンブレードをそなえた最初さいしょエンジンでもあり[ちゅう 6]、ファンの効率こうりつたかめられている。同様どうようによりチタンせいこうあつ圧縮あっしゅく炭素たんそけいふくごうざいをエンジンナセルに採用さいようするなど、先進せんしんてき材料ざいりょう採用さいようすること特徴とくちょうである。後期こうきがたのエンジンでは強化きょうかがたの-524に(FADECなど)いくつかの機能きのうれられた。

一覧いちらん[編集へんしゅう]

RB211 エンジンファミリー: 明細めいさい[20]
形式けいしき 静止せいし推力すいりょく(lbf/kN) 基本きほん重量じゅうりょう(lb/kg) 全長ぜんちょう(in/cm) ファン直径ちょっけい(in/m) 運用うんよう開始かいしねん 搭載とうさい
RB211-22B 42,000 lbf (190 kN) 9,195 lb (4,171 kg) 119.4 in (303 cm) 84.8/2.15 1972 ロッキード L-1011-1, ロッキード L-1011-100
RB211-524B2 50,000 lbf (220 kN) 9,814 lb (4,452 kg) 119.4 in (303 cm) 84.8/2.15 1977 ボーイング 747-100, ボーイング 747-200, ボーイング 747SP
RB211-524B4 53,000 lbf (240 kN) 9,814 lb (4,452 kg) 122.3 in (311 cm) 85.8/2.18 1981 ロッキード L-1011-250, ロッキード L-1011-500
RB211-524C2 51,500 lbf (229 kN) 9,859 lb (4,472 kg) 119.4 in (303 cm) 84.8/2.15 1980 ボーイング 747-200, ボーイング 747SP
RB211-524D4 53,000 lbf (240 kN) 9,874 lb (4,479 kg) 122.3 in (311 cm) 85.8/2.18 1981 ボーイング747-200, ボーイング 747-300, ボーイング 747SP
RB211-524D4-B 53,000 lbf (240 kN) 9,874 lb (4,479 kg) 122.3 in (311 cm) 85.8/2.18 1981 ボーイング 747-200, ボーイング 747-300
RB211-524G 58,000 lbf (260 kN) 9,670 lb (4,390 kg) 125 in (320 cm) 86.3/2.19 1989 ボーイング 747-400
RB211-524H 60,600 lbf (270 kN) 9,670 lb (4,390 kg) 125 in (320 cm) 86.3/2.19 1990 ボーイング 747-400, ボーイング 767-300
RB211-524G-T 58,000 lbf (260 kN) 9,470 lb (4,300 kg) 125 in (320 cm) 86.3/2.19 1998 ボーイング 747-400, ボーイング 747-400F
RB211-524H-T 60,600 lbf (270 kN) 9,470 lb (4,300 kg) 125 in (320 cm) 86.3/2.19 1998 ボーイング 747-400, ボーイング 747-400F, ボーイング 767-300
RB211-535C 37,400 lbf (166 kN) 7,294 lb (3,309 kg) 118.5 in (301 cm) 73.2/1.86 1983 ボーイング 757-200
RB211-535E4 40,100 lbf (178 kN) 7,264 lb (3,295 kg) 117.9 in (299 cm) 74.1/1.88 1984 ボーイング 757-200, ボーイング 757-300, ツポレフ Tu-204
RB211-535E4B 43,100 lbf (192 kN) 7,264 lb (3,295 kg) 117.9 in (299 cm) 74.1/1.88 1989 ボーイング 757-200, ボーイング 757-300, ツポレフ Tu-204

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ダグラスとDC-10のローンチカスタマーであるアメリカン航空こうくうユナイテッド航空こうくうゼネラル・エレクトリック CF6をDC-10ようエンジンに選定せんていした。プラット・アンド・ホイットニー JT9D後期こうきがた搭載とうさいされた
  2. ^ チキン・ガンにより鶏肉とりにく高速こうそく回転かいてんちゅうのファンブレードにぶつけるバードストライク試験しけんは、現在げんざいでも連邦れんぽう航空局こうくうきょく基準きじゅん航空こうくうようエンジンの認定にんてい必須ひっすである
  3. ^ 一般いっぱんてきにロールス・ロイスは1971ねん破産はさんしたといわれるが、この場合ばあい、『管財かんざいじん管理かんりはいった』という表現ひょうげんほう適切てきせつである。イギリスにおいては個人こじんとパートナーのみが破産はさんでき、法人ほうじん破産はさんみとめられていない
  4. ^ もし、より体質たいしつ脆弱ぜいじゃくなロッキードの計画けいかく失敗しっぱいした場合ばあい、RB211の市場いちば消滅しょうめつすること予想よそうされた
  5. ^ FADECはのちGEプラット・アンド・ホイットニーのエンジンにもそなえられた。
  6. ^ スナバー(または clapper)ははばせまいファンブレードの振動しんどうおさえる装置そうち費用ひよう低減ていげん効果こうかすぐれる。中空なかぞら幅広はばひろファンブレードはより安定あんていでスナバーは不要ふようである

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b How to Build a Jet Engine (Television production). BBC. 2010.
  2. ^ Rolls-Royce. “Three Shaft Engine Design”. 2006ねん10がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c Pugh, Peter (2001). The Magic of a Name. Icon Books. ISBN 1840462841 
  4. ^ “Red Ink at Rolls-Royce”. Time. (1970ねん11月23にち). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,943345,00.html 2007ねん1がつ6にち閲覧えつらん 
  5. ^ “New Life for TriStar”. Time. (1971ねん5がつ17にち). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,944387,00.html 2007ねん1がつ6にち閲覧えつらん 
  6. ^ (PDF) Type Certificate Data Sheet A23WE, Revision 18. FAA. (25 October 2001). http://www.airweb.faa.gov/Regulatory_and_Guidance_library/rgMakeModel.nsf/0/d9b97593c2f5b57b86256b35005d599a/$FILE/a23we.pdf 2007ねん1がつ14にち閲覧えつらん. 
  7. ^ “Rolls-Royce standardises on hybrid RB211 after entry success”. Flight International. (1998ねん5がつ6にち). http://www.flightglobal.com/articles/1998/05/06/36700/rolls-royce-standardises-on-hybrid-rb211-after-entry.html 2007ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん 
  8. ^ “Cathay will re-engine entire 747-400 fleet”. Flight International. (1997ねん8がつ27にち). http://www.flightglobal.com/articles/1997/08/27/14777/cathay-will-re-engine-entire-747-400-fleet.html 2007ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん 
  9. ^ Rolls-Royce. “1904-2004 A Century of Innovation in 100 Facts”. 2006ねん10がつ19にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん
  10. ^ “Tupolev - Tu-204-120”. Flight International. http://www.flightglobal.com/Directory/Detail.aspx?aircraftCategory=CommercialAircraft&manufacturerType=CommercialAircraft&navigationItemId=389&aircraftId=62&manufacturer=3026&keyword=&searchMode=Manufacturer&units=Imperial 2007ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん 
  11. ^ “「成層圏せいそうけん要塞ようさい」の異名いみょうべいB-52戦略せんりゃく爆撃ばくげき 2050ねん以降いこうぶため新型しんがたエンジンへ”. りものニュース. (2021ねん9がつ26にち). https://trafficnews.jp/post/111101 2021ねん9がつ26にち閲覧えつらん 
  12. ^ べい空軍くうぐん、B-52しんエンジンにF130選定せんてい ロールス・ロイスが受注じゅちゅう - AviationWire・2021ねん9がつ28にち
  13. ^ “R-R prepares combustor for low-emissions test”. Flight International. (1998ねん8がつ8にち). http://www.flightglobal.com/articles/1998/08/05/40358/r-r-prepares-combustor-for-low-emissions-test.html 2007ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん 
  14. ^ Rolls-Royce. “RB211-535 Description”. 2006ねん12月29にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん1がつ21にち閲覧えつらん
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  16. ^ Rolls-Royce. “Energy Product Areas”. 2007ねん1がつ21にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん1がつ25にち閲覧えつらん
  17. ^ Industrial RB211–Gzero Gas Turbines
  18. ^ Rolls-Royce. “RB211 Experience”. 2006ねん11月2にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん1がつ25にち閲覧えつらん
  19. ^ Gas Turbine Industrial RB211
  20. ^ (PDF) Rolls-Royce media pack. ロールス・ロイス・ホールディングス. オリジナルの2007ねん10がつ23にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071023084910/http://www.rolls-royce.com/media/packs/200702-civilaerospace.pdf 2008ねん1がつ26にち閲覧えつらん. 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • ジョン ニューハウス ちょ航空機こうくうき産業さんぎょう研究けんきゅうグループ やく『スポーティーゲーム―国際こくさいビジネス戦争せんそう内幕うちまく學生がくせいしゃ、1988ねん12月。ISBN 978-4311600142 
  • 坂出さかいでけん『イギリス航空機こうくうき産業さんぎょうと「帝国ていこく終焉しゅうえん軍事ぐんじ産業さんぎょう基盤きばんえいべい生産せいさん提携ていけい有斐閣ゆうひかく、2010ねんISBN 4641163618 
  • 坂出さかいでけん「プロジェクト・キャンセルをめぐるべいえい航空機こうくうき生産せいさん連携れんけい形成けいせい」『アメリカ経済けいざい研究けんきゅうだい2ごう、2003ねん9がつ 
  • 坂出さかいでけん「ワイドボディ旅客機りょかくき開発かいはつをめぐるべいえい航空機こうくうき生産せいさん連携れんけい展開てんかい (1967-1969ねん)」だい8ごう、2009ねん10がつ 
  • 坂出さかいでけん救済きゅうさい(Bail Out)か、み(Bail In)か?-ロウルズ‐ロイスしゃ・ロッキードしゃ救済きゅうさいをめぐるべいえい関係かんけいだい45かんだい1ごう、2010ねん6がつ 
  • Gunston, Bill. Development of Piston Aero Engines. Cambridge, England. Patrick Stephens Limited, 2006. ISBN 0-7509-4478-1
  • John,Newhouse. The Sporty Game: The High-Risk Competitive Business of Making and Selling Commercial Airliners 1982. ISBN 978-0394514475

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]