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サプレッサー

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
各種かくしゅ銃器じゅうきけられたサプレッサー
サプレッサーをけた猟銃りょうじゅうつハンター
サプレッサーをけたライフルの射撃しゃげき

サプレッサーえい: Suppressor:“抑制よくせいするもの”、“抑制よくせい”の)は、じゅう発射はっしゃおん閃光せんこう軽減けいげんするために銃身じゅうしん先端せんたんけるつつじょう装置そうち総称そうしょうである。

サプレッサーには、発射はっしゃおん抑制よくせいおも目的もくてきとするサウンド・サプレッサー(サイレンサー)や、発射はっしゃえん抑制よくせいおも目的もくてきとするフラッシュサプレッサー(フラッシュハイダー)などがあるが、ここではサウンド・サプレッサーについて記述きじゅつする。

ほんこうでは、とくことわりのないかぎり「サウンド・サプレッサー」をたんに「サプレッサー」と記述きじゅつする。

名称めいしょう[編集へんしゅう]

これらの装置そうち呼称こしょう複数ふくすうられる。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける法的ほうてき用語ようごとしては、おもサイレンサー(Silencer)がもちいられる。たとえば、26 U.S.C. § 5845ではサイレンサーとして言及げんきゅうされ、合衆国がっしゅうこく法典ほうてんだい18へんだい921じょう 18 U.S.C. § 921では用語ようごファイアアーム・サイレンサー(firearm silencer)およびファイアアーム・マフラー(firearm muffler)をつぎのように定義ていぎする。

用語ようご「ファイアアーム・サイレンサー」および「ファイアアーム・マフラー」は、携行けいこう火器かき銃声じゅうせい消音しょうおんげんおん抑制よくせいする装置そうちであり、また、ファイアアーム・サイレンサーあるいはファイアアーム・マフラーのて・製造せいぞう目的もくてきとして設計せっけいさい設計せっけいされた任意にんい部品ぶひんわせ、およびそのようなて・製造せいぞうでの使用しようのみを目的もくてきとした部品ぶひんふくむ。[ちゅう 1]

また、ハイラム・パーシー・マキシムみずからが設計せっけいした最初さいしょ銃器じゅうきよう消音しょうおん名称めいしょうとしてサイレンサーをもちいた[1]

このたね装置そうち呼称こしょうとしてサプレッサーなるかたりはじめて使つかわれたのは、1985ねん7がつ23にち取得しゅとくされたアメリカ特許とっきょだい4530417ごう銃器じゅうきなどのマズルブラストを低減ていげんする抑制よくせい(suppressor)」においてであった[2]。2010年代ねんだいはいると、全米ぜんべいライフル協会きょうかいなどのアメリカのじゅう所持しょじしゃ団体だんたいは、「サイレンサー」という言葉ことばはあたかも銃声じゅうせい完全かんぜんすものであるという誤解ごかいあたえうるとして、サプレッサーという表現ひょうげん普及ふきゅううったえた。一方いっぽうじゅう規制きせい厳格げんかくもとめる勢力せいりょくでは、これを消音しょうおん危険きけんせい誤魔化ごまか言葉ことばあそびにぎないと批判ひはんした[3]

イギリスでは、サウンド・モデレーター(sound moderators)という呼称こしょうひろ使つかわれる[1]

日本にっぽん防衛ぼうえいしょうでは、『防衛ぼうえいしょう規格きかく 火器かき用語ようごしょう火器かき)』において、silencerまたはgun silencerに相当そうとうする用語ようごとして消音しょうおんげ、「銃口じゅうこう装置そうち一種いっしゅで,しょう火器かき銃口じゅうこう装着そうちゃくして,発射はっしゃおん減少げんしょうさせるための装置そうち」と定義ていぎしている[4]

概要がいよう[編集へんしゅう]

ヨーロッパにおける所持しょじ規制きせい状況じょうきょう(2021ねん時点じてん
  規制きせい
  じゅう所有しょゆうしゃ合法ごうほうてき所有しょゆう狩猟しゅりょう、スポーツ、護身ごしんなど理由りゆうわず)
  特別とくべつ許可きょかもと所有しょゆう
  所有しょゆうきんじられている
  不明ふめい
アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく各州かくしゅうにおける所持しょじ規制きせい状況じょうきょう(2017ねん時点じてん
  合法ごうほう
  合法ごうほう狩猟しゅりょう目的もくてき使用しよう禁止きんし
  違法いほう

発射はっしゃやく燃焼ねんしょうして発生はっせいしたこうあつのガスが弾丸だんがんとも銃口じゅうこうから放出ほうしゅつされるさい急激きゅうげき減圧げんあつにともなって甲高かんだか破裂はれつおんしょうじる(マズルブラスト)。サプレッサーは、その内部ないぶにバッフルやワイプで区切くぎられた多数たすう空気くうきしつもうけ、ガスを空気くうき室内しつない拡散かくさんさせ、徐々じょじょ冷却れいきゃくしつつ圧力あつりょくげてから外部がいぶ放出ほうしゅつすることで、これを軽減けいげんする。銃声じゅうせい発砲はっぽうえん抑制よくせいは、射手しゃしゅ聴覚ちょうかく視覚しかく保護ほごという観点かんてんからも重視じゅうしされ、ヨーロッパ諸国しょこくでは民生みんせいよう猟銃りょうじゅうやスポーツライフルにけられることもおお[1]

しばしば誤解ごかいされるが、サプレッサーによる消音しょうおん効果こうかは「銃声じゅうせい完全かんぜんす」ほどのものではない。音速おんそく以上いじょう弾丸だんがんぶと衝撃波しょうげきはによっておおきなおと発生はっせいするが、サプレッサーのみでこれを抑制よくせいすることは困難こんなんである。たとえば、一般いっぱんてきな5.56mm仕様しようのAR-15ライフルようサプレッサーの消音しょうおん効果こうかは30-35dB程度ていどわれており、165-170dBでしべる程度ていど銃声じゅうせいを135dBでしべる程度ていどまで抑制よくせいできる。これは手持てもしきそぎがん作動さどうおんどう程度ていどで、アメリカの労働ろうどう安全あんぜん衛生局えいせいきょく英語えいごばん(OSHA)が苦痛くつう恒久こうきゅうてき聴覚ちょうかく障害しょうがいこすおそれがある騒音そうおん基準きじゅんとしてさだめた140dBでしべるをわずかに下回したまわ[1]音速おんそくたまもちいると衝撃波しょうげきはによるおと抑制よくせいすることができるが、それでも弾丸だんがん風切かざきおんのこ[5]。また自動じどうじゅう場合ばあい、サプレッサーで銃声じゅうせい低減ていげんさせるのとえに、じゅう作動さどうする機械きかいおん際立きわだつようになる場合ばあいがある。マイクでサプレッサーの有無うむ比較ひかくする録音ろくおん(サプレッサーしの銃声じゅうせいわせてマイクのゲインを調整ちょうせいする。)をおこなうと、サプレッサーのあるおと非常ひじょうちいさく収録しゅうろくされるが、前述ぜんじゅつとお絶対ぜったいてき音量おんりょうおおきい。

サプレッサーで銃声じゅうせい完全かんぜんせるという誤解ごかいひろまったのは、ハリウッド映画えいがなどでおこなわれる演出えんしゅつくわえ、最初さいしょのサプレッサーを開発かいはつしたマキシムしゃのカタログにおいて性能せいのう誇張こちょうした宣伝せんでん文句もんくがしばしば使つかわれたことにも原因げんいんがあるとわれている[6]前述ぜんじゅつとおりマイクで収録しゅうろくした結果けっか誤解ごかい原因げんいんでもある。

ねつつと消音しょうおん効果こうか悪影響あくえいきょうるため、みず専用せんよう冷却れいきゃくざいれると消音しょうおん効果こうかたかまるものもある[5]

一般いっぱんてきに、サプレッサーをけるとガスが十分じゅうぶん外部がいぶへと放出ほうしゅつされず、銃身じゅうしんないあつ通常つうじょうよりもたかくなる。自動じどうじゅうのうち、規制きせいなどガスあつ調整ちょうせいする構造こうぞうそなえないものは、必要ひつよう以上いじょうのガスが流入りゅうにゅうし、動作どうさ不良ふりょうこすことがある。火薬かやくえカスなどもじゅう内部ないぶまりやすくなり、頻繁ひんぱん清掃せいそう必要ひつようになる[5]。また射手しゃしゅもどるガスのりょうえる場合ばあいがある。

アメリカでは娯楽ごらく目的もくてき射撃しゃげき銃声じゅうせいへの曝露ばくろ騒音そうおんせい難聴なんちょうおも原因げんいんともわれている。アメリカ疾病しっぺい予防よぼう管理かんりセンターでは屋外おくがい射撃しゃげきじょうにおけるの騒音そうおん暴露ばくろレベルを評価ひょうかしたうえ聴覚ちょうかく保護ほごのためサプレッサーの使用しよう推奨すいしょうする報告ほうこくを2011ねんっている[6]。サプレッサーは1934ねん連邦れんぽう火器かきほう英語えいごばん(NFA)によって所持しょじ規制きせいされる。所持しょじ使用しよう禁止きんしされているしゅう一部いちぶあるが、それ以外いがい地域ちいきでは所定しょてい手数料てすうりょう支払しはらいおよび申請しんせい審査しんさ手続てつづきをれば、一般人いっぱんじんでも合法ごうほうてきにサプレッサーを所持しょじすることがみとめられる[1]。NFAがさだめる200ドルという譲渡じょうとぜいは、1934ねん時点じてんではきわめて高額こうがくだったが、やがてインフレーション影響えいきょうかならずしもせないほどのがくではなくなった。このこともアメリカ国内こくないでの普及ふきゅう後押あとおしした[7]。アメリカサプレッサー協会きょうかい(American Suppressor Association)のように、所持しょじ禁止きんしされているしゅうにて合法ごうほうもとめている団体だんたいもある[6]

リボルバーとサプレッサー[編集へんしゅう]

サプレッサーをけたリボルバーでの射撃しゃげき銃口じゅうこうだけではなくシリンダーとバレルの隙間すきまからおおきくガスがれている

一般いっぱんてき回転かいてんしき拳銃けんじゅう(リボルバー)は、シリンダーとバレルの隙間すきまから燃焼ねんしょうガスが発射はっしゃおんとなるため、銃口じゅうこうにサプレッサーを装着そうちゃくしても効果こうかかぎられている。しかし、消音しょうおんされたリボルバーのれいがないわけではない。

ロシアのナガン・リボルバーは、じゃく装弾そうだん使用しよう想定そうていし、射撃しゃげきにこの隙間すきまふさぎガスれをふせ構造こうぞうれられている。これにより、サプレッサーをければ一定いってい消音しょうおん効果こうかることができた。OTs-38英語えいごばんは、PSSピストル同様どうよう特殊とくしゅ形状けいじょう薬莢やっきょうもっ消音しょうおん効果こうか実現じつげんした7.62mmx42mmだんもちいる消音しょうおんリボルバーである。ベトナム戦争せんそう最中さいちゅうの1966ねんアメリカ陸軍りくぐんトンネルラッツ英語えいごばんでは、じゃく装弾そうだんともにサプレッサーきの.38口径こうけいリボルバーが少数しょうすうもちいられた。この.38リボルバーはしずかおんせいひくかったので、1969ねんにはこれにわるせいおん特殊とくしゅ用途ようとリボルバー(Quiet Special Purpose Revolver, QSPR)が開発かいはつされた。QSPRはS&W M29をベースに、特殊とくしゅ薬莢やっきょうそなえるきわめてじゃくそう散弾さんだん発射はっしゃするよう改造かいぞうされたもので、銃声じゅうせい非常ひじょうちいさかった。少数しょうすう特殊とくしゅ部隊ぶたいによって使つかわれたとわれている。1990年代ねんだいナイツアーマメントは、スターム・ルガー スーパー・レッドホーク改造かいぞうし、特殊とくしゅだんもちいる短距離たんきょり射撃しゃげきよう消音しょうおんじゅう試作しさくした[8]

歴史れきし[編集へんしゅう]

ハイラム・パーシー・マキシム
マキシムしきサプレッサー

それ以前いぜんにもいくつかの設計せっけいこころみられていたが、最初さいしょ実用じつようてきなサプレッサーは、アメリカのハイラム・パーシー・マキシムが1900年代ねんだい発明はつめいしたとわれている。かれマキシム機関きかんじゅう開発かいはつしゃとしてられるハイラム・スティーブンス・マキシム息子むすこである。マキシムは様々さまざま分野ぶんや発明はつめいおこなったが、銃器じゅうきようおよび産業さんぎょうよう消音しょうおん発明はつめいとくにそのられたことから、のちに「シーッ!博士はかせ」(Dr. Shush!)とも通称つうしょうされた[9]

ハイラム・パーシー・マキシムがサプレッサーの開発かいはつしたのは1905ねんごろで、後年こうねんかれ自身じしんかたったところによれば、風呂場ふろばみずうずいてながれていくのをて、銃口じゅうこうから放出ほうしゅつされる発射はっしゃガスにもみずのようにうずかせれば、十分じゅうぶん圧力あつりょく緩和かんわし、破裂はれつおんしょうじることをけられるのではないかとひらめいたのだという。マキシムは射撃しゃげき愛好あいこうであったが、銃声じゅうせい周囲しゅうい迷惑めいわくをかけてしまうことになやんでおり、これを解決かいけつするためにサプレッサーの開発かいはつ着手ちゃくしゅしたのである。

マキシムは1908ねん6がつ26にち最初さいしょ特許とっきょ出願しゅつがんし、翌年よくねん3がつみとめられた[10][11]

最初さいしょ試作しさくされたモデルは、バルブとオフセットチャンバーをわせ、銃口じゅうこうからの発射はっしゃガスをれ、これにうずかせて圧力あつりょく緩和かんわおこなうものだった。1908ねん6がつには改良かいりょうしたモデルについて特許とっきょ申請しんせいおこない、1909ねん3がつみとめられた[12]。1909ねんしきでは、湾曲わんきょくしたブレードをわせ、複数ふくすううずつく仕組しくみになっていた。サプレッサーはマキシム・サイレントファイアアームズしゃ(Maxim Silent Firearms Company)から販売はんばいされ、同社どうしゃのちにマキシム・サイレンサーしゃ(Maxim Silencer Company)に改称かいしょうされた。

1909ねんしき.22LRだんもちいるピストルの銃声じゅうせい最大さいだい30dBでしべる程度ていどおさえることができたが、発射はっしゃガスによって過熱かねつしやすく、少数しょうすう製造せいぞうにとどまった。1910ねんしきでは設計せっけい簡素かんそされたうえ照準しょうじゅんさえぎらないように、チャンバーがしたがわせられていた。1910ねんしきは1909ねんしきより消音しょうおん効果こうかひくく、.22LRだんもちいるピストルの銃声じゅうせい最大さいだい25dBでしべる程度ていどおさえることができた。清掃せいそう困難こんなんなどの欠点けってんもあったが、商業しょうぎょうてき成功せいこうおさめ、.22LRだんから.45ACPだんまで、幅広はばひろ口径こうけいのモデルが販売はんばいされた。のちはねわりにスプレッダー(ストレートバッフル)をんだモデルも設計せっけいされた。これらのサプレッサーは通信つうしん販売はんばいによって購入こうにゅうすることができた。民生みんせいよう銃器じゅうきのオプションパーツとしては比較的ひかくてき高価こうかで、たとえば.22LRだんようでは5ドル(2023ねん時点じてんの$170と同等どうとう)、だい口径こうけいようでは7ドル(2023ねん時点じてんの$237と同等どうとう)であった。

マキシムしきサプレッサーの成功せいこうけ、1910年代ねんだいには多数たすうのサプレッサーの設計せっけいこころみられた。しかし、1934ねん連邦れんぽう火器かきほう英語えいごばん(NFA)において、議会ぎかいではほとんど言及げんきゅうされなかったにもかかわらず、サプレッサーの所持しょじ非常ひじょう高額こうがく手数料てすうりょうされたことで、市場いちばでの流通りゅうつうはほぼたれることとなった。また、このときだい多数たすう処分しょぶんされたため、1930年代ねんだい以前いぜんのサプレッサーの現存げんそんひんきわめてすくない[13]。NFAのさだめるところによれば、商業しょうぎょうてき目的もくてきしゅうさかいえたサプレッサーには200ドル(2023ねん時点じてんの$4,555と同等どうとう)の譲渡じょうとぜいされるとされる。また、世界せかい恐慌きょうこうしたにあって、サプレッサーを悪用あくようした密猟みつりょうえることが危惧きぐされたともわれている[7]

ぐん用品ようひんとして[編集へんしゅう]

アメリカ陸軍りくぐんは、1908ねん時点じてんすでにサプレッサーに関心かんしんっていたものの、当時とうじ主力しゅりょく歩兵ほへいじゅうであるスプリングフィールドM1903けた場合ばあいえるほどのガスの流出りゅうしゅつ銃剣じゅうけんとの併用へいよう困難こんなんさといった問題もんだいがあるとして採用さいよう見送みおくっていた。しかし、1910ねんにはおおくの欠点けってん改善かいぜんされたとして、市場いちばからのサプレッサーの調達ちょうたつ着手ちゃくしゅした。陸軍りくぐんじゅうしゅ学校がっこうでも24にん兵士へいしにサプレッサーきM1903を配備はいびする実験じっけんおこなわれ、銃声じゅうせいおよび発砲はっぽうえん大幅おおはば軽減けいげんみとめられ、号令ごうれいこえやすくなるので斉射せいしゃ統制とうせいがしやすくなること、また夜戦やせんおこなさいには潜在せんざいてき優位ゆういになりうることが報告ほうこくされた[10]

1912ねん、マキシムはぐん用品ようひん市場いちばへの参入さんにゅうのため、M1903小銃しょうじゅうようサプレッサーの設計せっけい着手ちゃくしゅした。マキシムは官給かんきゅうようサプレッサーとして1912ねんしきと1915ねんしきの2種類しゅるい設計せっけいし、これらをガバメント・サイレンサー(Government Silencer)としょうした。マキシムはこのサプレッサーが狙撃そげき歩哨ほしょう排除はいじょ訓練くんれんなど様々さまざま場面ばめん活用かつようしうるとかんがえていた。また、当時とうじ射撃しゃげきれていない都市とし出身しゅっしん入隊にゅうたいしゃ陸軍りくぐんえており、サプレッサーで銃声じゅうせい反動はんどう軽減けいげんすれば、かれらの訓練くんれん容易よういになるとされた。

陸軍りくぐんではマキシムしきくわえ、民生みんせい市場いちばにおける有力ゆうりょく競合きょうごう製品せいひんであったムーアしきサプレッサーがテストされた。ロバート・A・ムーア(Robert A. Moore)は1910ねん最初さいしょのサプレッサーの特許とっきょ取得しゅとくしており、マキシムとの比較ひかく試験しけんもちいられたのは1912ねんあらたに設計せっけいしたモデルだった。ムーアしき着剣ちゃっけん装置そうち利用りようしてけられるが、サプレッサー自体じたいにも着剣ちゃっけん装置そうちもうけられており、銃剣じゅうけんとの併用へいよう可能かのうだった。1912ねん7がつスプリングフィールド造兵ぞうへいしょう報告ほうこくによれば、銃声じゅうせい反動はんどう発砲はっぽうえん抑制よくせい効果こうかはほぼ同等どうとうだったが、ムーアしき清掃せいそう整備せいび容易ようい射撃しゃげき精度せいどすぐれていた一方いっぽう、マキシムしき頑丈がんじょう長時間ちょうじかん速射そくしゃにもえることができたという。その陸軍りくぐんにおける狙撃そげき手向たむ配備はいび想定そうていした実地じっち試験しけんのため、それぞれが100ずつ購入こうにゅうされた。1916ねんから配備はいびはじまり、パンチョ・ビリャ遠征えんせい英語えいごばんでも少数しょうすう狙撃そげきしゅによって使用しようされた。

マキシムしきサプレッサーはメキシコ、みなみアメリカ、中国ちゅうごく日本にっぽん、イギリス、フランス、ベルギー、ロシア、ドイツなどに輸出ゆしゅつされた。だいいち世界せかい大戦たいせんではアメリカのほかドイツやイギリスの狙撃そげきへいによって少数しょうすうのマキシムしきサプレッサーが使用しようされたことがられる。戦後せんごぐん用品ようひんとして注目ちゅうもくされることもなくなっていたが、だい世界せかい大戦たいせんころにはマキシムが想定そうていしたような訓練くんれん用途ようとではなく、様々さまざま秘密ひみつ任務にんむへの投入とうにゅう想定そうていしたサプレッサーの開発かいはつおこなわれることになる[13]たとえば、イギリスせいデ・リーズル カービン(デ・ライル カービン)およびウェルロッド、アメリカせいハイスタンダード HDMは、いずれも一体いったいがたのサプレッサーをそなえたきわめてしずかおんせいすぐれる消音しょうおんじゅうであり、えいべい特殊とくしゅ部隊ぶたい秘密ひみつ任務にんむ担当たんとう部局ぶきょくによって使用しようされた。

アメリカ海兵かいへいたいでは、2015ねんからはじまったしょう火器かき近代きんだい計画けいかくかんする研究けんきゅう一環いっかんとして、小銃しょうじゅう分隊ぶんたいへのサプレッサーの配備はいびおこなった。これはとく屋内おくない戦闘せんとうなどで、けたたましい銃声じゅうせい方向ほうこう感覚かんかくうしなわせたり、口頭こうとうでのコミュニケーションを阻害そがいする問題もんだい解決かいけつこころみた実験じっけんであった[14]。この実験じっけんのち分隊ぶんたい/小隊しょうたいないでコミュニケーションの改善かいぜんられたほか、難聴なんちょう予防よぼうにもつながるなど、肯定こうていてきなフィードバックがおおかったため、2020ねんにはかく小銃しょうじゅう(M4、M27、M4A1)ようのサプレッサーの配備はいびがよりひろ範囲はんいはじまった。また、一体いったいがたのサプレッサーをそなえた小銃しょうじゅう開発かいはつ検討けんとうされていた[15]。2020ねん後半こうはんから、こうした用途ようとのためにナイツアーマメントせいQDSS NT4サプレッサーの調達ちょうたつすすめられている[10]

アメリカ陸軍りくぐんでも海兵かいへいたい同様どうよう実験じっけんが2005ねんからおこなわれており、その結果けっか反映はんえいした次世代じせだい分隊ぶんたい火器かきプログラム(NGSWP)では、設計せっけい要件ようけんにサプレッサーのけがふくまれていた。そのため、2022ねん採用さいよう決定けっていしたXM5およびXM250は、アメリカ陸軍りくぐん制式せいしき装備そうびとしてははじめて標準ひょうじゅんてきにサプレッサーがけられることになった。このサプレッサーには、銃声じゅうせいおよび発砲はっぽうえん軽減けいげんくわえ、有害ゆうがい発射はっしゃガスの射手しゃしゅへのもどしの軽減けいげんという効果こうか期待きたいされている[10]

構造こうぞう[編集へんしゅう]

サプレッサーにはおおきくけて、銃口じゅうこう装着そうちゃくして使用しようする「マズル・タイプ」とじゅう本体ほんたい内蔵ないぞうされる「インテグラル・タイプ」の2種類しゅるい存在そんざいする。

マズルタイプ[編集へんしゅう]

バッフル4そうしき可動かどうしきチャンバーかたちのサプレッサーのしき
カービンライフルにけられたサプレッサーのしき
チャンバーないに13プラスチックせいバッフルがけられている。これらのバッフルは交互こうご角度かくどたせることによりげんおん効果こうかられる。13部品ぶひんそれぞれが交換こうかんしき
Mk.22通称つうしょう“ハッシュパピー”)にけられたサプレッサーのしき

銃口じゅうこう(マズル)にサプレッサーを装着そうちゃくして使用しようする。サプレッサーと銃身じゅうしん接続せつぞくは、おおきくけてサプレッサーがわネジを銃身じゅうしんられたネジにめこむ[ちゅう 2]ものと、銃身じゅうしん先端せんたんもうけたラグ(突起とっき)やフラッシュサプレッサーあわせて装着そうちゃくするクイック・デタッチャブルしきの2つがある。

ネジしき脱着だっちゃく時間じかんがかかるものの、しっかりと固定こていしやすい。また、ネジの規格きかくがある程度ていど共通きょうつうされており、ひとつのサプレッサーを複数ふくすうことなる種類しゅるいじゅう装着そうちゃくすることができる場合ばあいおおい。ただし、銃身じゅうしん外側そとがわにネジをるので、サプレッサーを装着そうちゃくしていないときはプロテクター[ちゅう 3]装着そうちゃくしておかないとネジが破損はそんする危険きけんがある。銃身じゅうしんのネジが破損はそんすればサプレッサーを装着そうちゃくすることができなくなる。クイック・デタッチャブルしきぎゃく素早すばや脱着だっちゃくできるが、銃身じゅうしんとしっかり固定こていさせるには、たか工作こうさく精度せいど要求ようきゅうされる。また、銃身じゅうしん先端せんたんのラグはじゅうによってことなり、現在げんざいでは共通きょうつうされていないので、事実じじつじょうその種類しゅるいじゅう専用せんようのサプレッサーとなる。

どちらの場合ばあいでも工作こうさく精度せいどわるかったり、まさしくけていなかったりしてサプレッサーのじく銃身じゅうしんじくがずれると、発射はっしゃ弾丸だんがんがサプレッサー内部ないぶ接触せっしょくするバッフルストライク原因げんいんとなる場合ばあいがある。これが発生はっせいするとサプレッサーは破損はそんして弾丸だんがん予期よきせぬ方向ほうこうぶほか、フルオート射撃しゃげきではサプレッサーの破裂はれつまねき、射手しゃしゅ重傷じゅうしょう危険きけんせいもある。

原理げんりじょう、サプレッサー装着そうちゃく装着そうちゃくよりも銃身じゅうしんないあつ(バックプレッシャー)がたかまるため、イングラムM11などのストレートブローバック方式ほうしきでは、連射れんしゃ速度そくど向上こうじょうすることがある[ちゅう 4]

バッフルのあな弾丸だんがん直径ちょっけいちかければちかいほど消音しょうおん効果こうかたかまるため、銃口じゅうこうとの接続せつぞくとバッフルにはたか工作こうさく精度せいどもとめられる。空気くうきしつ内部ないぶ空間くうかんには金網かなあみ円筒えんとうじょうまるめたものやグラスウールなどがつめられることもある。ふる形式けいしきでは「バッフル」ではなく「ワイプ」というフェルトのようなぬの中心ちゅうしんはいったシャッターをつものもあった。ワイプとして、中心ちゅうしんしょうあなけられた円盤えんばんじょうのゴムばんもちいられる製品せいひんもある。ワイプはくぐける弾丸だんがんによって磨耗まもうするため、使用しよう回数かいすうがせいぜいやく30-50はつ程度ていどで、命中めいちゅう精度せいど大幅おおはば悪化あっかする。ただし、ワイプが消耗しょうもうするまでの最初さいしょすうはつは、ワイプによって空気くうきしつがほぼ密閉みっぺいされるので消音しょうおん効果こうかたかい。20世紀せいきすえにはアメリカが特殊とくしゅ樹脂じゅしもちいた消音しょうおん効果こうかたかいサプレッサーを開発かいはつしている[17]

また、アメリカではサプレッサーを修理しゅうりするさいBATFE(アルコール・タバコ・火器かきおよ爆発ばくはつぶつ取締とりしまりきょく)の許可きょか必要ひつようがあり、ワイプしきサプレッサーの修理しゅうりには許可きょか申請しんせいから半年はんとし以上いじょう[ちゅう 5]かかることもおおいため、民間みんかんようのワイプしきはほぼ完全かんぜん姿すがたしている。

自動じどうしき拳銃けんじゅうのうち、S&W M39派生はせいがたS&W Mk.22 Mod0(通称つうしょうハッシュパピー)や中国ちゅうごくほろこえ手槍てやりなどは、自動じどう装填そうてん機構きこううごかなくすることで消音しょうおん効果こうかをよりたかめ、機械きかいてき作動さどうおん発生はっせいけることもできる。この場合ばあい一発いっぱつつごとにゆうそこき、手動しゅどうつぎだん装填そうてんおこなうことになる。自動じどう装填そうてん機構きこうかしたままサプレッサーを使用しようする場合ばあいショートリコイル機構きこう悪影響あくえいきょうをおよぼすおそれがある[ちゅう 6][よう出典しゅってん]ため、軽量けいりょうなサプレッサーを使つかうか、ストレートブローバックしきじゅう使つかう。

20世紀せいきすえ-21世紀せいきにかけてH&K MARK 23や、SIG SAUER P226 Elite Dark TBのようなティルトバレルのショートリコイル形式けいしきでありながら、サプレッサーの使用しよう前提ぜんていとした設計せっけいのモデルも発表はっぴょうされている。このようなモデルではサプレッサーを装着そうちゃくしても照準しょうじゅん使つかえるように、通常つうじょうのモデルよりもたか照準しょうじゅん装着そうちゃくしている。

インテグラルタイプ[編集へんしゅう]

インテグラルタイプサプレッサーを装備そうびしたたん機関きかんじゅう(H&K MP5SD3)
インテグラルタイプサプレッサーをそなえるK7携行けいこうした韓国かんこく陸軍りくぐん兵士へいし

サプレッサーがじゅう本体ほんたい一体化いったいかした設計せっけいである。一般いっぱんてきにマズルタイプよりも消音しょうおん効果こうかたかく、じゅう全体ぜんたいのバランスがよい。おおくの設計せっけいでは銃身じゅうしんさきだけでなく銃身じゅうしん全体ぜんたいかこむようにサプレッサーが装着そうちゃくされている。サプレッサーにつつまれた銃身じゅうしんにはちいさなあながいくつもあけられており、銃口じゅうこうだけでなく銃身じゅうしんあなからも発射はっしゃガスをサプレッサーのなか拡散かくさんさせることによって、消音しょうおん効果こうかをよりたかめている。これによって必然ひつぜんてき銃口じゅうこう初速しょそく低下ていかし、高速こうそくだんをそのまま使つかっても音速おんそく減速げんそくさせられる利点りてんがあるが、弾丸だんがん威力いりょく低下ていかする欠点けってんもある。

たとえばインテグラルタイプのたん機関きかんじゅうとして有名ゆうめいH&K MP5SD場合ばあい銃身じゅうしん根本こんぽん円周えんしゅうじょう複数ふくすうしょうあなけられており、発射はっしゃされた弾丸だんがん銃身じゅうしんはいってすぐにガスあつげるよう設計せっけいされており、115グレインまたは124グレインの通常つうじょうだんちょう音速おんそく弾薬だんやく)の使用しよう前提ぜんていにしている。147グレインの音速おんそくだん使用しようすることもできるものの、このように弾頭だんとう重量じゅうりょうかる音速おんそくだん発射はっしゃ急激きゅうげき速度そくど低下ていかするため、マンストッピングパワー不足ふそく指摘してきされている[18]

インテグラルタイプを採用さいようした拳銃けんじゅうとして、中国ちゅうごくせいほろこえ手槍てやり(ウェイションショウチアン)という拳銃けんじゅう存在そんざいする。弾頭だんとうみどりいろられた専用せんようの7.65mm音速おんそく特殊とくしゅだん使用しようするもので、64しきと67しき存在そんざいするが、それぞれ発射はっしゃおんは124.4dBでしべると122.5dBでしべるで、実際じっさいには相当そうとううるさい拳銃けんじゅうだったとされる。このほか、だい世界せかい大戦たいせんなかイギリス開発かいはつした「ウェルロッド」では、9x19mmだん使用しようするMk1と、.32ACPだん使用しようするMk2が存在そんざいし、Mk2は最高さいこうで35dBでしべるという消音しょうおん効果こうかがあったが、サプレッサーがワイプしきのため、命中めいちゅう精度せいど低下ていかしていた。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 原文げんぶん:"The terms “firearm silencer” and “firearm muffler” mean any device for silencing, muffling, or diminishing the report of a portable firearm, including any combination of parts, designed or redesigned, and intended for use in assembling or fabricating a firearm silencer or firearm muffler, and any part intended only for use in such assembly or fabrication."
  2. ^ 玩具おもちゃなかには、銃身じゅうしん内側うちがわにネジをり、サプレッサーをそれにねじむものがあるが、実物じつぶつぎゃくで、銃身じゅうしん外側そとがわにネジを
  3. ^ ようするにナットのこと。ただし、通常つうじょうの6かくではなく、うすいパイプじょうで、外側そとがわすべめのみぞられていることがおお
  4. ^ 月刊げっかん Gun』2007ねん5がつごうにておこなわれた実験じっけんでは、SWD M-11/9mmにサプレッサーをけると、連射れんしゃ速度そくどが23%上昇じょうしょうしたという結果けっかている[16]
  5. ^ 許可きょか申請しんせいこういつまでに許可きょかしなければならないか、というまりはなく、たとえば係官かかりかんいそがしければなかなか許可きょかりない[よう出典しゅってん]。また、申請しんせいには手数料てすうりょう必要ひつようである
  6. ^ とくおおくのハンドガンで採用さいようされている、スライドが後退こうたいすると銃身じゅうしんうえく「ティルトバレル機構きこう」にたいして影響えいきょうおおきい。プロップアップワルサーP38ベレッタM92もちいられるような銃身じゅうしん後退こうたいする機構きこう)ではティルトバレルよりも作動さどうしやすい

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e The Truth About Suppressors”. America's 1st Freedom. 2020ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  2. ^ US 4530417 
  3. ^ Gun lobby seeks to calm fears about silencers”. The Hill (2017ねん5がつ29にち). 2024ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  4. ^ 防衛ぼうえいしょう規格きかく 火器かき用語ようごしょう火器かき” (PDF). 防衛ぼうえいしょう (2009ねん5がつ13にち). 2020ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c Suppressor Basics”. Shooting Illustrated. 2020ねん3がつ18にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c Silencer or Suppressor? Here Are The Facts”. SmallArmsReview.com. 2023ねん6がつ4にち閲覧えつらん
  7. ^ a b History of the Sound Suppressor”. The Armory Life. 2024ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  8. ^ Can You Put a Silencer on a Revolver?”. Guns.com. 2021ねん10がつ24にち閲覧えつらん
  9. ^ Throwback Thursday: Dr. Shush!”. American Rifleman. 2020ねん3がつ18にち閲覧えつらん
  10. ^ a b c d NGSW: The US Army’s First Suppressed Service Rifle & Some History”. The Armourers Bench. 2022ねん5がつ8にち閲覧えつらん
  11. ^ US 916885 
  12. ^ US 916885A 
  13. ^ a b Silencers, the U.S. Army and the NFA: The Early History of Suppressors”. SmallArmsReview.com. 2020ねん3がつ2にち閲覧えつらん
  14. ^ Marines unveil plan to modernize their small arms arsenal”. Marine Corps Times. 2021ねん5がつ31にち閲覧えつらん
  15. ^ Marine Corps to start widespread distribution of suppressors”. Marine Corps Times. 2021ねん5がつ31にち閲覧えつらん
  16. ^ 月刊げっかん Gun』2007ねん5がつごう 「アメリカマシンガン事情じじょう14・お財布さいふフレンドリーな庶民しょみんのサブマシンガン MAC/M10,M11 後編こうへん記者きしゃ:Etsuo Morohoshi 国際こくさい出版しゅっぱん 2007ねん
  17. ^ 月刊げっかん『Gun』2009ねん 2がつごう「ナイツ・ベレッタM92FSサイレンサー・ピストル」 ぶんゆか雅美まさみ 国際こくさい出版しゅっぱん 2009ねん
  18. ^ トンプソン 2019, pp. 36–38.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • トンプソン, リーロイ『MP5サブマシンガン』ゆか 雅美まさみ (監修かんしゅう), 加藤かとうたかし (翻訳ほんやく)、並木なみき書房しょぼうOsprey Weapon Series〉、2019ねんISBN 978-4890633821 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

特殊とくしゅ作戦さくせんよう