2019年 ねん の世界 せかい 各国 かっこく のインフレ
インフレーション (英語 えいご : inflation )とは、一定 いってい 期間 きかん にわたって物価 ぶっか の水準 すいじゅん が上昇 じょうしょう し続 つづ けることである[1] [2] [3] [4] 。略称 りゃくしょう としてインフレ とも呼 よ び、日本語 にほんご では通貨 つうか 膨張 ぼうちょう (つうかぼうちょう)とも呼 よ ぶ[5] 。経済 けいざい 学 がく において物価 ぶっか が上昇 じょうしょう すると、1単位 たんい の通貨 つうか で購入 こうにゅう できる財 ざい やサービスの数 かず が減 へ る。その結果 けっか 、インフレーションは1単位 たんい の通貨 つうか あたりの購買 こうばい 力 りょく の低下 ていか 、つまり経済 けいざい における交換 こうかん 手段 しゅだん や会計 かいけい 単位 たんい の実質 じっしつ 的 てき な価値 かち の低下 ていか を反映 はんえい する[6] [7] 。対義語 たいぎご はデフレーション であり、財 ざい やサービスの一般 いっぱん 的 てき な価格 かかく 水準 すいじゅん が持続 じぞく 的 てき に低下 ていか することである。インフレーションの一般 いっぱん 的 てき な指標 しひょう はインフレ率 りつ で、物価 ぶっか (通常 つうじょう は消費 しょうひ 者 しゃ 物価 ぶっか 指数 しすう )の長期 ちょうき 的 てき な変化 へんか 率 りつ を年率 ねんりつ 換算 かんさん したものである。
経済 けいざい 学者 がくしゃ は、非常 ひじょう に高 たか いインフレ率 りつ やハイパーインフレーション は有害 ゆうがい であり、マネーサプライ の過剰 かじょう な増加 ぞうか が原因 げんいん であると考 かんが えている[8] 。一方 いっぽう 、低 てい ・中 ちゅう 程度 ていど のインフレ率 りつ を決定 けってい づける要因 よういん については、より多様 たよう な見解 けんかい がある。低 てい ・中 ちゅう 程度 ていど のインフレは、財 ざい ・サービスに対 たい する実質 じっしつ 的 てき な需要 じゅよう の変動 へんどう や、物資 ぶっし が不足 ふそく しているときなどの供給 きょうきゅう 可能 かのう 量 りょう の変化 へんか に起因 きいん すると考 かんが えられる[9] 。しかし、長期 ちょうき 的 てき に持続 じぞく するインフレは、マネーサプライが経済 けいざい 成長 せいちょう 率 りつ を上回 うわまわ るスピードで増加 ぞうか することによって起 お こるというのが共通 きょうつう の見解 けんかい である[10] [11] 。
インフレは、経済 けいざい に様々 さまざま な良 よ い影響 えいきょう と悪 わる い影響 えいきょう を与 あた える。インフレの負 まけ の影響 えいきょう としては、お金 かね を保有 ほゆう することによる機会 きかい 費用 ひよう の増加 ぞうか 、将来 しょうらい のインフレに対 たい する不 ふ 確実 かくじつ 性 せい による投資 とうし や貯蓄 ちょちく の抑制 よくせい 、さらにインフレが急速 きゅうそく に進 すす んだ場合 ばあい には、消費 しょうひ 者 しゃ が将来 しょうらい の価格 かかく 上昇 じょうしょう を懸念 けねん して買 か いだめを始 はじ め、商品 しょうひん が不足 ふそく することなどが挙 あ げられる。ポジティブな効果 こうか としては、名目 めいもく 硬直 こうちょく 性 せい による失業 しつぎょう 率 りつ の低下 ていか 、中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう の金融 きんゆう 政策 せいさく の自由 じゆう 度 ど の拡大 かくだい 、お金 かね をため込 こ むのではなく融資 ゆうし や投資 とうし を促 うなが すこと、デフレに伴 ともな う非 ひ 効率 こうりつ 性 せい の回避 かいひ などが挙 あ げられる。
今日 きょう 、大半 たいはん のエコノミストは、低位 ていい で安定 あんてい したインフレ率 りつ を支持 しじ している[12] 。インフレ率 りつ が低 ひく い(ゼロやマイナスではなく)と、景気 けいき 後退 こうたい の際 さい に労働 ろうどう 市場 いちば の調整 ちょうせい が迅速 じんそく に行 おこな われるため、景気 けいき 後退 こうたい の深刻 しんこく さが軽減 けいげん され、流動 りゅうどう 性 せい の罠 わな によって金融 きんゆう 政策 せいさく が経済 けいざい を安定 あんてい させることができなくなるリスクが軽減 けいげん されるのである。インフレ率 りつ を低 ひく く安定 あんてい 的 てき に維持 いじ する任務 にんむ は、通常 つうじょう 、金融 きんゆう 当局 とうきょく に与 あた えられている。一般 いっぱん 的 てき に、これらの金融 きんゆう 当局 とうきょく は中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう であり、金利 きんり の設定 せってい 、公開 こうかい 市場 いちば 操作 そうさ 、銀行 ぎんこう の預金 よきん 準備 じゅんび 率 りつ の設定 せってい を通 つう じて金融 きんゆう 政策 せいさく をコントロールする。
実物 じつぶつ 的 てき 要因 よういん [ 編集 へんしゅう ]
100兆 ちょう ジンバブエ ・ドル紙幣 しへい 。ジンバブエの紙幣 しへい
戦争 せんそう や産業 さんぎょう 構造 こうぞう 破壊 はかい により、供給 きょうきゅう が需要 じゅよう を大幅 おおはば に下回 したまわ ることによって発生 はっせい するインフレーション。第 だい 二 に 次 じ 大戦 たいせん 終戦 しゅうせん 後 ご の日本 にっぽん では、1945年 ねん の水準 すいじゅん からみて1949年 ねん までに約 やく 70倍 ばい (約 やく 6900 %)というハイパーインフレーション [注釈 ちゅうしゃく 1] となった[13] 。
また、ジンバブエ では、政策 せいさく により白人 はくじん 農家 のうか が国外 こくがい に追 お い出 だ され農業 のうぎょう 構造 こうぞう が破壊 はかい されたところに旱魃 かんばつ が追 お い討 う ちをかけたことにより極度 きょくど の物 もの 不足 ふそく が発生 はっせい 、最終 さいしゅう 的 てき に2億 おく 3000万 まん %という超 ちょう ハイパーインフレーションとなった[14] 。
需要 じゅよう 側 がわ に原因 げんいん があるインフレーションで、需要 じゅよう 超過 ちょうか インフレーション (需要 じゅよう 牽引 けんいん 型 がた インフレーション、ディマンドプル・インフレーション、demand-pull inflation)とも呼 よ ばれる。需要 じゅよう の増大 ぞうだい (需要 じゅよう 曲線 きょくせん の上方 かみがた シフト)により、価格 かかく が高 たか くても購買 こうばい 意欲 いよく が衰 おとろ えないので物価 ぶっか は上昇 じょうしょう する。この場合 ばあい 、供給 きょうきゅう 曲線 きょくせん が垂直 すいちょく である(すなわち価格 かかく の変動 へんどう によって供給 きょうきゅう 量 りょう が変化 へんか しない)場合 ばあい を除 のぞ いて景気 けいき はよくなる。
1973年 ねん から1975年 ねん にかけての日本 にっぽん のインフレ要因 よういん は、オイルショック に注目 ちゅうもく が集 あつ まるが、変動 へんどう 相場 そうば 制 せい 移行 いこう 直前 ちょくぜん の短資 たんし 流入 りゅうにゅう による過剰 かじょう 流動 りゅうどう 性 せい 、「列島 れっとう 改造 かいぞう ブーム」による過剰 かじょう な建設 けんせつ 需要 じゅよう も大 おお きな要因 よういん である[要 よう 出典 しゅってん ] 。
供給 きょうきゅう 曲線 きょくせん の上方 かみがた シフトに原因 げんいん があるインフレで、原価 げんか 上昇 じょうしょう インフレーション (コストプッシュ・インフレーション、cost-push inflation)とも呼 よ ばれる。多 おお くの場合 ばあい 、景気 けいき が悪化 あっか しスタグフレーション か、それに近 ちか い状態 じょうたい になる。通常 つうじょう 為替 かわせ レート が下落 げらく すると、輸入 ゆにゅう 物価 ぶっか が上昇 じょうしょう してインフレを引 ひ き起 お こすと同時 どうじ に、企業 きぎょう が抱 かか える外貨 がいか 建 だ ての債務 さいむ の返済 へんさい 負担 ふたん が膨 ふく らむ[15] 。
原価 げんか 上昇 じょうしょう は総 そう 供給 きょうきゅう が上方 かみがた にシフトするので、実質 じっしつ GDP は減少 げんしょう する[16] 。一方 いっぽう で、需要 じゅよう 超過 ちょうか は総 そう 需要 じゅよう が上 うえ にシフトするので、実質 じっしつ GDPは増加 ぞうか する[16] 。つまり、実質 じっしつ GDPの動 うご きで原価 げんか 上昇 じょうしょう か需要 じゅよう 超過 ちょうか かは判別 はんべつ できる[16] 。景気 けいき の過熱 かねつ によって物価 ぶっか が上昇 じょうしょう しているのかどうかを判断 はんだん するには、消費 しょうひ 者 しゃ 物価 ぶっか 指数 しすう ではなくGDPデフレーター を見 み なければならない[17] 。
原価 げんか インフレーション(コストインフレーション)
賃金 ちんぎん ・材料 ざいりょう 等 とう の高騰 こうとう によって発生 はっせい する。原油 げんゆ 価格 かかく の高騰 こうとう によるインフレーションや消費 しょうひ 増税 ぞうぜい によるスタグフレーションが典型 てんけい 的 てき な例 れい である。
構造 こうぞう インフレーション
産業 さんぎょう によって成長 せいちょう に格差 かくさ がある場合 ばあい 、生産 せいさん 性 せい の低 ひく い産業 さんぎょう の物価 ぶっか が高 たか くなり発生 はっせい する。例 たと えば効率 こうりつ の良 よ い製造 せいぞう 業 ぎょう で生産 せいさん 性 せい が上 あ がり賃金 ちんぎん が上昇 じょうしょう したとする。これに影響 えいきょう を受 う けてサービス業 ぎょう で生産 せいさん 性 せい 向上 こうじょう 以上 いじょう に賃金 ちんぎん が上昇 じょうしょう するとサービス料 りょう を上 あ げざるを得 え なくなるため、インフレーションを招 まね く。
輸出 ゆしゅつ インフレーション
輸出 ゆしゅつ の増大 ぞうだい により発生 はっせい する。企業 きぎょう が製品 せいひん を輸出 ゆしゅつ に振 ふ り向 む けたことにより、国内 こくない 市場 いちば 向 む けの供給 きょうきゅう 量 りょう が結果 けっか 的 てき に減 へ って発生 はっせい する。幕末 ばくまつ 期 き に生糸 きいと などの輸出 ゆしゅつ が急増 きゅうぞう し、インフレーションが発生 はっせい している。このパターンは乗数 じょうすう 効果 こうか で総 そう 需要 じゅよう が増大 ぞうだい しているため、需要 じゅよう インフレの側面 そくめん もある。
輸入 ゆにゅう インフレーション
他国 たこく の輸入 ゆにゅう を通 つう じて国外 こくがい のインフレーションが国内 こくない に影響 えいきょう し発生 はっせい する。例 たと えば穀物 こくもつ を輸入 ゆにゅう していた国 くに が、輸出 ゆしゅつ 元 もと の国 くに の内需 ないじゅ が増加 ぞうか したり輸出 ゆしゅつ 元 もと が他 た の需要 じゅよう 国 こく へ輸出 ゆしゅつ を振 ふ り分 わ けた場合 ばあい などに穀物 こくもつ の輸入 ゆにゅう が減少 げんしょう し、穀物 こくもつ 価格 かかく が上昇 じょうしょう するといった具合 ぐあい である。実際 じっさい に中国 ちゅうごく が穀物 こくもつ 純 じゅん 輸入 ゆにゅう 国 こく に転 てん じた際 さい 、トウモロコシ市場 いちば で価格 かかく 急騰 きゅうとう が起 お きたことがある。
キャッチアップインフレーション
賃金 ちんぎん や物価 ぶっか 統制 とうせい を行 おこな っている体制 たいせい が、市場 いちば 経済 けいざい に移行 いこう する際 さい に発生 はっせい することが多 おお い。米国 べいこく および日本 にっぽん で1970年代 ねんだい にかけて発生 はっせい した。欧州 おうしゅう では冷戦 れいせん の終結 しゅうけつ および欧州 おうしゅう 中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう (ECB)拡大 かくだい による東欧 とうおう 諸国 しょこく の自由 じゆう 主義 しゅぎ 諸国 しょこく への経済 けいざい 統合 とうごう により、低 てい 賃金 ちんぎん 諸国 しょこく での賃金 ちんぎん ・サービス価格 かかく の上昇 じょうしょう によるキャッチアップインフレが発生 はっせい している[18] 。
貨幣 かへい 的 てき 要因 よういん [ 編集 へんしゅう ]
貨幣 かへい の供給 きょうきゅう 量 りょう が増 ふ えることによって発生 はっせい する。貨幣 かへい の供給 きょうきゅう 増加 ぞうか は、他 た のあらゆる財 ざい ・サービスに対 たい する貨幣 かへい の相対 そうたい 価値 かち を低下 ていか させるが、これはインフレーションそのものである。さらに、貨幣 かへい の供給 きょうきゅう 増加 ぞうか は貨幣 かへい に対 たい する債券 さいけん の相対 そうたい 価値 かち を高 たか めることになり名目 めいもく 金利 きんり を低下 ていか させる。このため通常 つうじょう は投資 とうし が増大 ぞうだい し、需要 じゅよう 増大 ぞうだい をもたらす。そのプロセスが最終 さいしゅう 的 てき に、需要 じゅよう インフレに帰結 きけつ することでもインフレーションに結 むす びつく。公開 こうかい 市場 いちば 操作 そうさ などの中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう による通常 つうじょう の貨幣 かへい 供給 きょうきゅう 調節 ちょうせつ 以外 いがい に、貨幣 かへい の供給 きょうきゅう が増 ふ える特段 とくだん の理由 りゆう がある場合 ばあい には、「財政 ざいせい インフレ」「信用 しんよう インフレ」「為替 かわせ インフレ」などと呼 よ んで区分 くぶん けることもある。
財政 ざいせい インフレーション
政府 せいふ の発行 はっこう した公債 こうさい を中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう が引 ひ き受 う けること(財政 ざいせい ファイナンス、マネタイゼーション)により、貨幣 かへい の供給 きょうきゅう が増加 ぞうか して発生 はっせい するインフレーション[19] 。金融 きんゆう 政策 せいさく を経由 けいゆ した効果 こうか に加 くわ えて、財政 ざいせい 政策 せいさく による有効 ゆうこう 需要 じゅよう 創出 そうしゅつ 効果 こうか によって需要 じゅよう インフレも発生 はっせい する。
信用 しんよう インフレーション
市中 しちゅう 銀行 ぎんこう が貸付 かしつけ や信用 しんよう 保証 ほしょう を増加 ぞうか させることによって信用 しんよう 貨幣 かへい の供給 きょうきゅう 量 りょう が増大 ぞうだい することから発生 はっせい するインフレーション。
為替 かわせ インフレーション
外国 がいこく 為替 かわせ 市場 いちば を経由 けいゆ して通貨 つうか が大量 たいりょう に供給 きょうきゅう されることで発生 はっせい するインフレーション。戦前 せんぜん の金 かね 解禁 かいきん における「為替 かわせ インフレーション論争 ろんそう 」を特 とく に指 さ す場合 ばあい もある[20] [21] [22] [23] 。なお、当時 とうじ は固定 こてい 相場 そうば 制 せい であり、現在 げんざい の変動 へんどう 相場 そうば 制 せい とは、外国 がいこく 為替 かわせ 市場 いちば の動 うご きが貨幣 かへい 供給 きょうきゅう 量 りょう に与 あた える影響 えいきょう が異 こと なることに留意 りゅうい が必要 ひつよう である。
クリーピングインフレーション
ゆるやかに進 すす むインフレーション。インフレ率 りつ は年数 ねんすう %で、好 こう 況 きょう 期 き に見 み られる。経済 けいざい が健全 けんぜん に成長 せいちょう していると見 み なされ、望 のぞ ましい状態 じょうたい と言 い われることが多 おお い。「マイルド・インフレ」とも呼 よ ばれる。
ギャロッピングインフレーション
早足 はやあし に進 すす むインフレーション。馬 うま の早足 はやあし を表 あらわ す「ギャロップ」から。インフレ率 りつ は年率 ねんりつ 10%超 ちょう -数 すう 十 じゅう %程度 ていど を指 さ すことが多 おお い。スタグフレーションに伴 ともな って生 しょう じることがある。
ハイパーインフレーション
経済 けいざい への影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
インフレは名目 めいもく 所得 しょとく が一定 いってい の人 ひと にとって損 そん であるが、その人 ひと を雇 やと う側 がわ にとってはその分 ぶん 得 とく となる[24] 。
賃金 ちんぎん も物価 ぶっか の上昇 じょうしょう に伴 ともな って上昇 じょうしょう するが、物価 ぶっか に比 くら べると調整 ちょうせい に遅 おく れをとるため、実質 じっしつ 賃金 ちんぎん が下 さ がり、雇用 こよう を増 ふ やしやすくするので失業 しつぎょう 率 りつ は下 さ がる(フィリップス曲線 きょくせん )[25] [26] 。実質 じっしつ GDPが増 ふ えるディマンド・プル型 がた では雇用 こよう は増加 ぞうか し、実質 じっしつ GDPが減少 げんしょう するコスト・プッシュ型 がた では雇用 こよう は減 へ る[27] 。
経済 けいざい 学者 がくしゃ のスティーヴン・ランズバーグ は、ロバート・ルーカスの理論 りろん を挙 あ げ「インフレは人々 ひとびと を騙 だま して失業 しつぎょう 者 しゃ に職 しょく を受 う け入 い れさせ、雇用 こよう 者 しゃ には労働 ろうどう 者 しゃ を雇 やと わせる。政府 せいふ はインフレが続 つづ けばそれに伴 ともな って高 たか い雇用 こよう が続 つづ くことに気 き づき、インフレ率 りつ を自動的 じどうてき に操作 そうさ しようと決 き める。労働 ろうどう 者 しゃ と雇用 こよう 者 しゃ は政府 せいふ の意図 いと に気 き づき、騙 だま されなくなる。インフレと失業 しつぎょう の相関 そうかん 関係 かんけい が切 き れたのは、政府 せいふ がそれを利用 りよう しようとしたからである」と指摘 してき している[28] 。ランズバーグは「『インフレ』が人々 ひとびと を働 はたら かせるのではなく、『予想 よそう しなかった』インフレが人々 ひとびと を働 はたら かせる。完全 かんぜん に予想 よそう されたインフレの下 した では、失業 しつぎょう 者 しゃ は就業 しゅうぎょう しない。完全 かんぜん に予想 よそう されたインフレは誰 だれ の行動 こうどう にも影響 えいきょう を与 あた えない」と指摘 してき している[29] 。
予想 よそう 外 がい のインフレは、値打 ねう ちの下 さ がった通貨 つうか で借金 しゃっきん を返済 へんさい する借 か り手 て にとって得 とく となるが、返済 へんさい を受 う け取 と る貸 か し手 て にとっては損 そん となる[24] 。物価 ぶっか 上昇 じょうしょう 率 りつ が預金 よきん 金利 きんり を上回 うわまわ ると預貯金 よちょきん の価値 かち を実質 じっしつ 的 てき に引 ひ き下 さ げる。物価 ぶっか 上昇 じょうしょう 率 りつ が貸出 かしだし 金利 きんり を上回 うわまわ った場合 ばあい 、インフレにより実質 じっしつ 的 てき な負債 ふさい の価値 かち が下 さ がり、その結果 けっか 実質 じっしつ 的 てき な返済 へんさい 負担 ふたん が減 へ る(住宅 じゅうたく ローンなど)。
インフレ率 りつ 上昇 じょうしょう 自体 じたい は、個人 こじん 消費 しょうひ を底上 そこあ げする効果 こうか がある[30] 。期待 きたい インフレ率 りつ が高 たか まり実質 じっしつ 金利 きんり が低下 ていか した場合 ばあい には、消費 しょうひ が増大 ぞうだい する[30] 。ただし、インフレ率 りつ が過度 かど に高 たか まった場合 ばあい には将来 しょうらい の予測 よそく が困難 こんなん になり、不 ふ 確実 かくじつ 性 せい を高 たか めることから消費 しょうひ や投資 とうし は停滞 ていたい する。
経済 けいざい 学者 がくしゃ の原田 はらだ 泰 やすし 、大和総研 だいわそうけん は「高 こう インフレは、人々 ひとびと の実質 じっしつ 所得 しょとく を低下 ていか させ、自国 じこく 通貨 つうか 建 だ ての資産 しさん 価値 かち を低下 ていか させる[31] 」「ハイパーインフレは、一物 いちもつ 一 いち 価 か の法則 ほうそく から為替 かわせ レートを暴落 ぼうらく させ、資本 しほん の対外 たいがい 逃避 とうひ などを引 ひ き起 お こす[32] 」と指摘 してき している。
経済 けいざい 学者 がくしゃ の伊東 いとう 光晴 みつはる は「人々 ひとびと の期待 きたい は多様 たよう であり、物価 ぶっか が上 あ がれば、生活 せいかつ を切 き り詰 つ める人 ひと もいるかもしれない。低 てい 金利 きんり で設備 せつび 投資 とうし が増 ふ えるかというと、過去 かこ に経済企画庁 けいざいきかくちょう の企業 きぎょう 行動 こうどう 調査 ちょうさ は否定 ひてい 的 てき な調査 ちょうさ 結果 けっか を出 だ している」と指摘 してき している[33] 。
S・ランズバーグ は「インフレの真 しん の経済 けいざい コストは、人々 ひとびと がインフレを回避 かいひ するためにコストの高 たか い行動 こうどう に走 はし り、その行動 こうどう が誰 だれ の得 とく にもならないことである」と指摘 してき している[34] 。
経済 けいざい 学者 がくしゃ の岩田 いわた 規久男 きくお は「インフレによって物価 ぶっか が上昇 じょうしょう しても、それ以上 いじょう に賃金 ちんぎん が上 あ がり実質 じっしつ 所得 しょとく が増 ふ えれば、生活 せいかつ は豊 ゆた かとなる」と指摘 してき している[35] 。岩田 いわた は「人々 ひとびと の生活 せいかつ を安定 あんてい させるためには、できるだけ低 ひく い水準 すいじゅん のインフレ率 りつ を維持 いじ しなければならない」と指摘 してき している[36] 。岩田 いわた は「安定 あんてい 的 てき な経済 けいざい 成長 せいちょう ・雇用 こよう を達成 たっせい するという意味 いみ においての物価 ぶっか の安定 あんてい とは、過去 かこ の各国 かっこく の経験 けいけん から、インフレ率 りつ が中期 ちゅうき 的 てき に2-3%程度 ていど の推移 すいい のことを意味 いみ する」と指摘 してき している[37] 。
経済 けいざい 学者 がくしゃ の高橋 たかはし 洋一 よういち は「3-5%のインフレ率 りつ はマイルド・インフレーションの範囲 はんい であり、一 いち 国 こく 経済 けいざい にとって問題 もんだい とならないというのがコンセンサスとなっている」と指摘 してき している[38] 。経済 けいざい 学者 がくしゃ の竹中 たけなか 平蔵 へいぞう は「『物価 ぶっか は毎年 まいとし 1-2%くらい上 あ がるのが自然 しぜん でよい』というのが、世界 せかい の専門 せんもん 家 か のコンセンサスである。5%を上回 うわまわ る物価 ぶっか 上昇 じょうしょう はよくない」と指摘 してき し[39] 、また竹中 たけなか は「理想 りそう は、物価 ぶっか 上昇 じょうしょう 率 りつ をゼロから数 かず %程度 ていど の範囲 はんい で安定 あんてい させることである」とも指摘 してき している[40] 。
経済 けいざい 学者 がくしゃ の若田部 わかたべ 昌 あきら 澄 きよし は「ハイパーインフレの例 れい を俟つまでもなく、インフレ率 りつ が2ケタ以上 いじょう に高 たか くなるのは経済 けいざい に悪影響 あくえいきょう をおよぼす。おそらく5%を超 こ えると望 のぞ ましくないだろう」と指摘 してき している[41] 。
経済 けいざい 学者 がくしゃ のJ・E・スティグリッツ は「インフレに過大 かだい な関心 かんしん を注 そそ ぐあまり、一部 いちぶ の国 くに の中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう は、金融 きんゆう 市場 いちば で起 お きている状況 じょうきょう に無頓着 むとんじゃく になってしまった。資産 しさん バブルが無 む 制約 せいやく にふくらんでいくのを中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう が放置 ほうち することにより経済 けいざい が負担 ふたん するコストに比 くら べれば、緩 ゆる やかなインフレによるコストなど微々 びび たるものにすぎない」と述 の べている[42] 。
インフレの阻止 そし や解消 かいしょう のため様々 さまざま な対策 たいさく が行 おこな われている。
中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう の政策 せいさく 金利 きんり の引 ひ き上 あ げ
金利 きんり の引 ひ き上 あ げによる通貨 つうか 高 だか [43]
中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう の公開 こうかい 市場 いちば 操作 そうさ による資金 しきん 吸収 きゅうしゅう オペレーション
中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう の預金 よきん 準備 じゅんび 率 りつ 引 ひ き上 あ げ操作 そうさ
中央 ちゅうおう 銀行 ぎんこう の新 しん 通貨 つうか 発行 はっこう と預金 よきん 封鎖 ふうさ にともなう新 しん 通貨 つうか への切 き り替 か え
政府 せいふ が財政 ざいせい 支出 ししゅつ を削減 さくげん
政府 せいふ が増税 ぞうぜい をして消費 しょうひ を抑 おさ える
インフレターゲット (物価 ぶっか 水準 すいじゅん 目標 もくひょう )
インフレーションのアレゴリー (幕末 ばくまつ 、1868年 ねん より前 まえ )
記録 きろく に残 のこ る世界 せかい 最古 さいこ のインフレーションはマケドニア王国 おうこく のアレクサンドロス3世 せい の死去 しきょ 直後 ちょくご 、紀元前 きげんぜん 323年 ねん のことであると言 い われている[44] 。マサチュ まさちゅ ーセッツ工科大学 せっつこうかだいがく 教授 きょうじゅ ピーター・テミンの研究 けんきゅう によると、当時 とうじ のバビロニア には既 すで に市場 いちば 経済 けいざい があり、農産物 のうさんぶつ の供給 きょうきゅう 不足 ふそく などに対 たい してアケメネス朝 あさ など征服 せいふく 地 ち から接収 せっしゅう してもたらされた過剰 かじょう な財宝 ざいほう (主 おも に銀 ぎん )の在庫 ざいこ がある中 なか で、大王 だいおう の死 し によって人々 ひとびと の不安 ふあん 感 かん が増大 ぞうだい したことが引 ひ き金 がね となって、インフレーションが発生 はっせい した[44] 。
軍人 ぐんじん 皇帝 こうてい 時代 じだい の古代 こだい ローマ では兵士 へいし への給与 きゅうよ を増 ふ やす必要 ひつよう に迫 せま られ銀貨 ぎんか の改悪 かいあく を繰 く り返 かえ した結果 けっか 、インフレーションが起 お こり市民 しみん 生活 せいかつ に影響 えいきょう が出 で てていた。ディオクレティアヌス は通貨 つうか 改革 かいかく を敢行 かんこう したが効果 こうか が無 な かったため、301年 ねん に物品 ぶっぴん やサービスの最高 さいこう 価格 かかく を定 さだ めた勅 みことのり 令 れい 『最高 さいこう 価格 かかく 令 れい 』を出 だ した。これらは実施 じっし された形跡 けいせき が無 な く効果 こうか は薄 うす かったとされるが、日 にち 用品 ようひん の価格 かかく や各 かく 職業 しょくぎょう の給与 きゅうよ が詳細 しょうさい に定 さだ められており、現代 げんだい では貴重 きちょう な歴史 れきし 資料 しりょう となっている[45] 。
フランシスコ・ピサロ によるインカ帝国 ていこく 征服 せいふく 後 ご 、ポトシ 銀山 ぎんざん などから大量 たいりょう の金銀 きんぎん がスペイン に運 はこ ばれた。1521年 ねん から1660年 ねん までの間 あいだ にスペインに運 はこ ばれた金銀 きんぎん の量 りょう は金 かね 200トン、銀 ぎん 1.8万 まん トンと言 い われる。これらの金銀 きんぎん は主 おも に貨幣 かへい となったため、欧州 おうしゅう 全域 ぜんいき で貨幣 かへい 価値 かち が3分 ぶん の1になった。つまり物価 ぶっか が3倍 ばい になるインフレが起 お こったわけで、これを「価格 かかく 革命 かくめい 」と言 い った。貨幣 かへい 供給 きょうきゅう により商 しょう 工業 こうぎょう の発展 はってん が起 お こり、地代 じだい の減少 げんしょう のために封建 ほうけん 領主 りょうしゅ 層 そう が没落 ぼつらく するなどの社会 しゃかい 的 てき 変化 へんか をもたらした。
ロシア革命 かくめい 後 のち にウラジーミル・レーニン 率 ひき いるボリシェヴィキ政権 せいけん が誕生 たんじょう したが、共産 きょうさん 主義 しゅぎ 化 か のための諸 しょ 政策 せいさく (穀物 こくもつ の強制 きょうせい 徴発 ちょうはつ ・産業 さんぎょう の国有 こくゆう 化 か 等 とう )で、ロシアはハイパーインフレに陥 おちい り、ルーブルの価値 かち は第 だい 一 いち 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 前 まえ の500億 おく 分 ぶん の1になった[46] (ソビエト初期 しょき のハイパーインフレ (英語 えいご 版 ばん ) も参照 さんしょう )。経済 けいざい 学者 がくしゃ ジョン・メイナード・ケインズ によれば、レーニンはこのインフレについて「資本 しほん 主義 しゅぎ を破壊 はかい する最善 さいぜん の方法 ほうほう は、通貨 つうか を堕落 だらく させることだ。政府 せいふ はインフレを継続 けいぞく することで、密 ひそ かに、気 き づかれることなく、国民 こくみん の富 とみ のうち、かなりの部分 ぶぶん を没収 ぼっしゅう できる。」と述 の べたという[47] 。その後 ご ルーブルは、1924年 ねん 4月 がつ までに3回 かい のデノミが行 おこな われ、ロシアのインフレは沈静 ちんせい 化 か した[46] 。
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国 くに 単位 たんい でのインフレの他 ほか に、地域 ちいき 単位 たんい 、都市 とし 単位 たんい でインフレ現象 げんしょう が起 お きることがある。
1324年 ねん 、メッカ 巡礼 じゅんれい に向 む かったマンサ・ムーサ は、富 とみ を知 し らしめるために道中 どうちゅう のカイロ で黄金 おうごん をばら撒 ま いたことから金 きむ 相場 そうば が暴落 ぼうらく し、10年 ねん 以上 いじょう の間 あいだ エジプト周辺 しゅうへん でインフレーションが続 つづ いたといわれる[48] 。12年 ねん 後 ご の記述 きじゅつ では、エジプトでの金 かね の価格 かかく は1ミスカール (英語 えいご 版 ばん ) (4.25グラム)の金 かね は25ディルハム 以上 いじょう であったが、マンサ・ムーサが訪 おとず れてからは下落 げらく し、1ミスカルの金 かね は22ディルハムを下回 したまわ ったとされる。
現代 げんだい 的 てき に問題 もんだい になっているのは、国際 こくさい 連合 れんごう 平和 へいわ 維持 いじ 活動 かつどう (Peace-Keeping Operations:PKO)に伴 ともな うインフレーションである[要 よう 出典 しゅってん ] 。紛争 ふんそう 地域 ちいき の停戦 ていせん 後 ご 、平和 へいわ 維持 いじ のために派遣 はけん される各国 かっこく の部隊 ぶたい は、経済 けいざい が疲弊 ひへい している所 ところ に急 きゅう に現 あらわ れる富裕 ふゆう 層 そう と同 おな じである。そのため、駐屯 ちゅうとん 地 ち の周辺 しゅうへん では、部隊 ぶたい が調達 ちょうたつ する生活 せいかつ 物資 ぶっし ・食料 しょくりょう 品 ひん を中心 ちゅうしん に価格 かかく 上昇 じょうしょう が起 お きてインフレとなり、紛争 ふんそう で困窮 こんきゅう した周辺 しゅうへん 住民 じゅうみん の生活 せいかつ を圧迫 あっぱく する。対策 たいさく として部隊 ぶたい 員 いん の駐屯 ちゅうとん 地 ち 外 がい での購買 こうばい 活動 かつどう 抑制 よくせい が行 おこな われており、PKO部隊 ぶたい は価格 かかく 維持 いじ 活動 かつどう (Price Keeping Operation)も同時 どうじ に行 い っていることになる。
日本 にっぽん では、明治 めいじ 以降 いこう の資本 しほん 主義 しゅぎ 経済 けいざい 化 か の下 した で局地 きょくち 的 てき なインフレが見 み られた。農業 のうぎょう 地域 ちいき や未開拓 みかいたく 地域 ちいき (北海道 ほっかいどう )に工業 こうぎょう ・鉱業 こうぎょう ・巨 きょ 大物 おおもの 流 りゅう 施設 しせつ (港湾 こうわん )が出来 でき ると、急激 きゅうげき な資本 しほん 投下 とうか と人口 じんこう の急増 きゅうぞう (都市 とし 化 か )とが発生 はっせい し、生活 せいかつ 物資 ぶっし の必要 ひつよう から局地 きょくち 的 てき なインフレが起 お きた。そのため、物価 ぶっか 安定 あんてい を目的 もくてき に日本銀行 にっぽんぎんこう の支店 してん や出張所 しゅっちょうしょ が置 お かれた。日銀 にちぎん の支店 してん ・出張所 しゅっちょうしょ の開設 かいせつ 場所 ばしょ や開設 かいせつ 時期 じき は、その地域 ちいき での経済 けいざい 活動 かつどう に伴 ともな う局地 きょくち 的 てき インフレ懸念 けねん と密接 みっせつ に関係 かんけい している[要 よう 出典 しゅってん ] 。
期待 きたい インフレ率 りつ (予想 よそう インフレ率 りつ )やブレーク・イーブン・インフレ率 りつ (損益 そんえき 分岐 ぶんき インフレ率 りつ )に関 かん しては期待 きたい インフレ率 りつ を参照 さんしょう 。
^ ただし伊藤 いとう はCagan (1956)によるハイパーインフレーションの定義 ていぎ に依拠 いきょ せずに「ハイパー・インフレ」と記述 きじゅつ していることに注意 ちゅうい 。
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