スパロー (ミサイル)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
AIM-7 スパロー

スパロー(Sparrow)は、レイセオンしゃせいなか射程しゃていそら対空たいくうミサイルアメリカぐんにおける制式せいしきめいAIM-7で、誘導ゆうどうにはセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式ほうしき採用さいようしており、視程していがい射程しゃてい(BVR)が可能かのうである。なお、スパローとはスズメ、もしくはスズメぞくする鳥類ちょうるい全般ぜんぱん

アメリカ空軍くうぐん海軍かいぐん日本にっぽん航空こうくう自衛隊じえいたいなど、西側にしがわ諸国しょこく空軍くうぐん中心ちゅうしんとした軍事ぐんじ組織そしきひろ使用しようされるが、現在げんざいではAIM-120 AMRAAM99しきそら対空たいくう誘導ゆうどうだんなどといった、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導ゆうどう方式ほうしき可能かのう新型しんがたそら対空たいくうミサイルへの更新こうしんすすんでいる。

開発かいはつ経緯けいい[編集へんしゅう]

アメリカ海軍かいぐんだい世界せかい大戦たいせん末期まっきした「5インチロケットだんHVARをビームライディング方式ほうしき誘導ゆうどうするそら対空たいくう兵器へいき」という要求ようきゅうはしはっし、1946ねん5がつにプロジェクトホットショットのもとでテネシーしゅうブリストルのスペリージャイロスコープしゃに「1,000〜6,000フィート(305〜1830 m)の射程しゃていでマッハ1の目標もくひょう撃墜げきついできる」兵器へいき提案ていあん要求ようきゅうされた。よく1947ねん3がつ、スペリージャイロスコープしゃはHVARの直径ちょっけい5インチのたまたいでは要求ようきゅうたせないとして、直径ちょっけい8インチのたまたい推奨すいしょうし(これはのちのスパローのすべてのバリエーションで共通きょうつうである)、海軍かいぐんはこれをれ、同年どうねん5がつ開発かいはつ契約けいやくむすばれたが、スペリーしゃ開発かいはつ指導しどう専念せんねんし、実際じっさい製造せいぞうはダグラス・エアクラフトしゃ下請したうけとなった。スパローと命名めいめいされたのは7がつのことである。「ドイツのジェット戦闘せんとうおよ日本にっぽんぐん特攻とっこう対策たいさくそら対空たいくう兵器へいきとして開発かいはつ開始かいしされた」との主張しゅちょうもあるが、開発かいはつされた目的もくてきはドイツせいR4Mそら対空たいくうロケットがそうであったように大型おおがた大型おおがた爆撃ばくげきへの対策たいさくであり、構想こうそうされた時点じてんですでに敗戦はいせん直前ちょくぜんでそれらをたないドイツや日本にっぽん無関係むかんけいである。

1948ねん1がつからポイントマグーでの試験しけんはじまり、1951ねん1がつ、AAM-N-2 スパローとして制式せいしき採用さいようまり、同時どうじに1000はつ発注はっちゅうされた。しかし当時とうじ電子でんし技術ぎじゅつ限界げんかいから初期しょき生産せいさんされたもの1951ねん生産せいさん開始かいしから1953ねん実験じっけんまでただのいち目標もくひょう命中めいちゅうすることかった。

誘導ゆうどう方式ほうしきをアクティブ誘導ゆうどう方式ほうしき変更へんこうするなどコンセプトを一新いっしんしたAAM-N-2A(1952ねんにAAM-N-3に変更へんこう)スパローIIがダグラス・エアクラフトで開発かいはつされたが、1956ねんにキャンセルされた。1951ねんからレイセオンがセミアクティブ誘導ゆうどう方式ほうしきによるAAM-N-6スパローIIIの開発かいはつはじまり、1958ねん8がつから配備はいびはじまった。

F-4Cに装備そうびされたAIM-7F

ベトナム戦争せんそうにおいては、アメリカ空軍くうぐん主力しゅりょく戦闘せんとうF-4しゅへいそうとして使用しようされた。 しかし

  • 熱帯ねったいにおける電子でんし機器きき信頼しんらいせい低下ていかこった
  • アメリカ海軍かいぐん航空こうくう母艦ぼかん甲板かんぱんでミサイルにフィンをけるさい粗末そまつあつかいをしたため部品ぶひん損傷そんしょうさせていた
  • 2-3かい飛行ひこうに1点検てんけん必要ひつようだったのにもかかわらず、20かい以上いじょう飛行ひこうをしていたのに1点検てんけん実施じっししていなかった
  • 攻撃こうげき対象たいしょう小型こがた機動きどうせいたか戦闘せんとうであった
  • アメリカ海軍かいぐんのF-4が味方みかたのF-4をあやま撃墜げきついし、目視もくしがい戦闘せんとう禁止きんしされたことで、発射はっしゃ大半たいはん最低さいてい射程しゃてい以下いかだった

などの問題もんだいにより[よう出典しゅってん]命中めいちゅうりつ非常ひじょうわるく、実質じっしついちわり程度ていどであった。

F-14がまだ量産りょうさん先行せんこうがた試験しけん飛行ひこうおこなっていた1973ねん6がつ20日はつか、ポイントマグー海軍かいぐん基地きち配備はいびされていた3試験しけんのうち1がスパローを発射はっしゃしたところ、命中めいちゅうする事故じここして墜落ついらくした。

湾岸わんがん戦争せんそうにおいては、電子でんし機器きき発達はったつやベトナム戦争せんそうでの教訓きょうくんもあってたか命中めいちゅうりつとなり、イラク軍機ぐんき多数たすう撃墜げきついしている。

型式けいしき[編集へんしゅう]

AIM-7AスパローI
1951ねん制式せいしきされた型式けいしきスペリーしゃ開発かいはつした。誘導ゆうどう方式ほうしきはビーム・ライディングしき誘導ゆうどう方式ほうしきからくる命中めいちゅうりつわるさから、後述こうじゅつのAIM-7Bが開発かいはつされた。名称めいしょう時期じきによってわっており、1947ねん開発かいはつ当初とうしょはKAS-1やAAM-2とばれていた。また、1951ねん制式せいしきから1962ねん9がつ命名めいめい規則きそく変更へんこうまでAAM-N-2とばれていた。ダグラスしゃせい新型しんがたがスパローIIと命名めいめいされたさいにスパローIとなった。
AIM-7BスパローII
AIM-7Aの誘導ゆうどう方式ほうしきをアクティブレーダーしき変更へんこうした形式けいしきダグラスしゃ開発かいはつした。発射はっしゃ試験しけんおこなわれたものの制式せいしきされず1956ねん開発かいはつ中止ちゅうしとなった。1962ねん9がつ命名めいめい規則きそく変更へんこうまでAAM-N-3とばれていた。
AIM-7CスパローIII
誘導ゆうどう方式ほうしきをセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)にえた型式けいしき現在げんざいのスパローの基礎きそとなったタイプ。レイセオンが1951ねんから開発かいはつおこない1958ねん実用じつようされた。1962ねん9がつ命名めいめい規則きそく変更へんこうまでAAM-N-6とばれていた。
AIM-7Dスパロー(AIM-110)
液体えきたい燃料ねんりょうモーターを使用しようした型式けいしき。1962ねん9がつ命名めいめい規則きそく変更へんこうまでAAM-N-6a(末尾まつびのaは大文字おおもじではなく小文字こもじ三軍さんぐん統一とういつ名称めいしょうになる以前いぜん空軍くうぐんではAIM-101)とばれていた
AIM-7E
ロケットモーターを液体えきたい燃料ねんりょうから固体こたい燃料ねんりょう変更へんこうした型式けいしき。1963ねんから生産せいさん開始かいしされた。1962ねん9がつ命名めいめい規則きそく変更へんこうまでAAM-N-6bとばれていた。
AIM-7E-2
機動きどうせい向上こうじょうさせ、最小さいしょう交戦こうせん範囲はんいせまくした型式けいしき
AIM-7F
1972ねん1がつから開発かいはつ開始かいし製造せいぞう1975ねんから
制御せいぎょをソリッドステートして小型こがたし、そのぶんロケットモーターを大型おおがたして射程しゃてい延長えんちょうしたもの。モノパルス・ホーミング・ヘッドの採用さいようによりFCSようのパルス・ドップラー・レーダーでも誘導ゆうどう可能かのうとなった。
AIM-7G
AIM-7Fの誘導ゆうどう装置そうち改良かいりょうした型式けいしき試作しさくのみ。
AIM-7H
AIM-7Gの誘導ゆうどう装置そうち改良かいりょうした型式けいしき試作しさくのみ。
AIM-7M
AIM-7Mの模擬もぎだん
新型しんがたシーカーを搭載とうさいしてECCM能力のうりょく信頼しんらいせい向上こうじょうさせたもの、信管しんかん改良かいりょう弾頭だんとう変更へんこう破壊はかいりょくたかめている。
AIM-7P
F-15Cから発射はっしゃされたAIM-7P
1990ねんから生産せいさん開始かいしされた型式けいしき小型こがた目標もくひょうたいする迎撃げいげき能力のうりょく向上こうじょうさせるため信管しんかん改良かいりょうしている。また、ブロック2からは中間ちゅうかんアップデートようのデータリンク受信じゅしん搭載とうさいされなかあいだコースでのアップデートが可能かのうとなった。
AIM-7R
シーカーをモノパルスレーダーと赤外線せきがいせんふくごうがた変更へんこうした型式けいしき新型しんがた信管しんかん採用さいよう処理しょり能力のうりょく向上こうじょう、ECCM能力のうりょく強化きょうかまれていた。
1990年代ねんだいはじめから開発かいはつされ、1993ねんには試射ししゃおこなわれたが、1996ねん計画けいかく中止ちゅうしとなった。

派生はせいがた[編集へんしゅう]

RIM-7 シースパロー
AIM-7をベースに開発かいはつされたセミアクティブレーダーホーミング方式ほうしきかん防空ぼうくうミサイル
AGM-45 シュライク
AIM-7Cのたまたいたいレーダーようシーカー・ヘッドを搭載とうさいしたたいレーダーミサイル
スカイフラッシュ
BAeしゃ開発かいはつしたAIM-7Eの発展はってんがた内部ないぶ回路かいろ系統けいとう改良かいりょう低空ていくう目標もくひょう対処たいしょ能力のうりょくECCM能力のうりょく向上こうじょうさせている。イギリスイタリアサウジアラビアスウェーデンの4カ国かこく運用うんようしていた。
アスピーデ
AIM-7E-2をベースにイタリア開発かいはつしたそら対空たいくうミサイル。シースパローのようかん対空たいくうミサイルや、対空たいくうミサイルひとし派生はせいがた存在そんざいする。またアクティブレーダーホーミング方式ほうしき改良かいりょうがた計画けいかくされたが中止ちゅうしされている。

採用さいようこく[編集へんしゅう]

仕様しよう[編集へんしゅう]

しょもとひょう
AIM-7A
(AAM-N-2)
AIM-7B
(AAM-N-3)
AIM-7C AIM-7E AIM-7F AIM-7M/P
全長ぜんちょう 3.74m 3.85m 3.66m
直径ちょっけい 0.203m
つばさはば 前部ぜんぶ)0.94m
後部こうぶ)0.88m
前部ぜんぶ)1.02m
後部こうぶ不明ふめい
前部ぜんぶ)1.02m
後部こうぶ)0.81m
重量じゅうりょう 143kg 176kg 172kg 197kg 231 kg
推進すいしんシステム エアロジェット
1.8KS7800 固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター
ロケットダイン
Mk.38/Mk.52 固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター
ハーキュリーズ
Mk.58 デュアル推進すいしん固体こたい燃料ねんりょうロケットモーター
射程しゃてい 10km 7km 11km 30km 70km
飛翔ひしょう速度そくど M2.5 M4
弾頭だんとう 20kg弾頭だんとう 30kg MK38 39kg Mk.71 40kg WDU-27/B

登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]

映画えいが[編集へんしゅう]

ガメラ2 レギオン襲来しゅうらい
だい201飛行ひこうたい所属しょぞくF-15J津軽海峡つがるかいきょう上空じょうくう巨大きょだいレギオン迎撃げいげきする場面ばめんにて、スパローの発射はっしゃシーンが使用しようされている。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京とうきょうSOS
冒頭ぼうとうにて、スクランブル発進はっしんした百里基地ひゃくりきち所属しょぞくのF-15Jに搭載とうさいされたものがモスラたいして使用しようされるが、鱗粉りんぷんチャフわりになったために命中めいちゅうしなかった。

アニメ[編集へんしゅう]

ルパンさんせいVSめい探偵たんていコナン THE MOVIE
航空こうくう自衛隊じえいたいF-15J搭載とうさいされたものが、ルパンさんせい江戸川えどがわコナンたちがるアランの輸送ゆそうたいして1はつ使用しようされるが、輸送ゆそう発射はっしゃした迎撃げいげきチャフ妨害ぼうがいされ、命中めいちゅうせずにわる。

小説しょうせつ[編集へんしゅう]

アイドル防衛ぼうえいたいハミングバード
主人公しゅじんこうたちが搭乗とうじょうするF-4 ファントムII搭載とうさいされている。冒頭ぼうとうでは「高価こうかAAMはぶらさげているだけでじついちったことがない」とっているが、のち日本にっぽん領空りょうくう侵犯しんぱんした所属しょぞく不明ふめいMiG-31 フォックス ハウンドたいして使用しようし、2撃墜げきついする。
亡国ぼうこくのイージス
百里基地ひゃくりきちだい204飛行ひこうたい所属しょぞくF-15J搭載とうさいされたものが、反乱はんらんこした架空かくうはたかぜがたミサイル護衛ごえいかんいそかぜ」にたいして使用しようされかけるが、発射はっしゃ直前ちょくぜんに「いそかぜ」のSM-2ERによる迎撃げいげきったために攻撃こうげきおこなえなかった。なおスパローをたいかん攻撃こうげき使用しようすることは、可能かのうではあるものの現実げんじつてきではない。

ゲーム[編集へんしゅう]

Wargame Red Dragon
NATO陣営じんえい各種かくしゅ航空機こうくうき武装ぶそうとしてAIM-7E・AIM-7F・AIM-7Mが登場とうじょうする。
エースコンバットシリーズ
エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー以降いこう作品さくひん登場とうじょうする特殊とくしゅへいそう「SAAM」(セミアクティブそら対空たいくうミサイル)のCGモデルのひとつとして登場とうじょうする。
コール オブ デューティ ゴースト
架空かくう空母くうぼ「カロライナ」の搭載とうさい兵器へいきとして登場とうじょうY-8改造かいぞうガンシップへの攻撃こうげき使用しようされる。
だい戦略せんりゃくシリーズ
西側にしがわ諸国しょこく戦闘せんとうユニットのそら対空たいくうミサイル装備そうびとして登場とうじょう
War Thunder
西側にしがわ諸国しょこく戦闘せんとう追加ついか武装ぶそうとしてCがた、Dがた、Eがた、E-2がた、Fがた、Mがた、スカイフラッシュ、アスピーデが装備そうび可能かのう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

どう世代せだい他国たこくせいそら対空たいくうミサイル

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]