ソクラテスの弁明
プラトンの (プラトン |
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ソクラテスの エウテュプロン - カルミデス ラケス - リュシス - イオン ヒッピアス ( |
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プロタゴラス - エウテュデモス ゴルギアス - クラテュロス メノン - メネクセノス |
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パルメニデス - テアイテトス |
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ソピステス - ティマイオス - クリティアス ピレボス - |
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アルキビアデスI - アルキビアデスII ヒッパルコス - クレイトポン - ミノス - エピノミス デモドコス - シシュポス エリュクシアス - アクシオコス アルキュオン - |
『ソクラテスの
歴史 的 背景 [編集 ]
ペロポネソス
ペロポネソス
この
構成 [編集 ]
登場 人物 [編集 ]
(
時代 ・場面 設定 [編集 ]
特徴 [編集 ]
プラトンの
内容 [編集 ]
ソクラテスに
あらすじ[編集 ]
ソクラテスは、
アテナイの
そして、それにふさわしい
詳細 [編集 ]
導入 [編集 ]
- 1.
告発 者 は素晴 らしい弁論 を行 ったが、そこには真実 が全 く無 いこと、自身 は演説 もうまくないし、裁判 にも不慣 れなこと、言葉 遣 いではなく内容 が真実 であるかどうかのみに注意 を払 ってほしい、など。
二 種類 の弾劾 者 [編集 ]
「旧 い弾劾 者 」のい分 の否定 [編集 ]
- 2.
自身 に対 する二 種類 の弾劾 者 の区別 。すなわち、風聞 を撒 き散 らすアリストパネス及 び顔 の見 えない大衆 (旧 い弾劾 者 )と、今回 の裁判 の告発 者 (新 しい弾劾 者 )の区別 。そして、まずは「旧 い弾劾 者 」側 のい分 に対 して、弁明 することの確認 。 - 3. 「
旧 い弾劾 者 」側 のい分 の検討 。「不正 ・無益 なことに従事 、地下 天上 の事象 を研究 、悪事 を曲 げて善事 と成 し、他人 に教授 する」が事実無根 であることを、まずは聴衆 へと訴 えかけ、確認 。 - 4.
同時 に「人 を教育 し謝礼 を要求 する」というソフィスト的 風評 も否定 。自身 はソフィストの術 を持 ち合 わせない。
裁判 に至 るまでの経緯 [編集 ]
「デルポイの神託 」と「無知 の知 」[編集 ]
- 5.
自身 に対 する名声 ・悪評 の理由 。それは一種 の智慧 である。しかしそれは告発 者 ・風評 に言 われるような超 人的 智慧 ではなく、人間 的 智慧 である。その説明 の端緒 として、デルポイの神託 所 で自身 (ソクラテス)が最 も賢 いと言 われたエピソードを披露 [注釈 2]。(以降 、9まで一連 の話 が続 く) - 6.
上記 の神託 の検証 のために、賢者 と世評 のある政治 家 と対話 を行 ったエピソードを披露 。相手 を無知 だと感 じ、その説明 を試 みるも憎悪 される。自身 も無知 だが、それを自覚 している(無知 の知 )だけ、相手 より賢 いと考 える。更 にもう一人 の世評 のある人物 を訪 ねたが同 じ結論 だった。 - 7. その
後 も順次 、様々 な人 に憎悪 されながらも歴訪 。その結果 、世評 のあるうぬぼれた人々 はほぼ全 て智 見 を欠 いており、むしろ世評 なき分 をわきまえた謙虚 な人々 ほど智 見 が優 れていた。政治 家 の次 に、様々 な詩人 を訪問 したが、政治 家 の場合 と同 じく、自 ら語 る内容 の真義 については何 らの理解 もなく、特定 の才能 を以 て他 の事柄 も知 り尽 くしている智者 であるかのようにうぬぼれていた。 - 8.
最後 に手工 者 を訪 ねた。彼 らもその分野 、熟練 した技芸 においては智者 であったが、詩人 と同 じく、そのことを以 て他 の事柄 に関 しても識者 と信 じていた。こうして一連 の歴訪 を終 え、神託 の名 において、これまでの自身 のように「智慧 (に関 する思 い込 み/満足 /居直 り) と (それ故 の)愚昧 を持 たずに、あるがままでいる」のがいいか、彼 らのように「智慧 (に関 する思 い込 み/満足 /居直 り) と (それ故 の)愚昧 を併 せ持 つ」のがいいか自問 し、前者 を選 んだ。 - 9. こうした
行為 の結果 、自身 には多 くの敵 が出来 、多 くの誹謗 が起 こった。また、相手 の無知 を論証 する行為 を見 ていた傍聴 者 は、自身 (ソクラテス)を賢者 と信 じるため、名声 も広 まった。しかし、真 に賢明 なのは神 のみであり、この神託 は人智 の僅少 ・空 無 さを指摘 したものであり、神 が自身 (ソクラテス)の名 を用 いたのはあくまでも一 例 に過 ぎない。「最大 の智者 は、ソクラテスのように、自分 の智慧 の無 価値 さを悟 った者 である」と。この神意 のままに自身 は歩 き廻 り、賢者 と思 われる者 を見 つけてはその智慧 を吟味 し、その濫用 ・うぬぼれがあれば神 の助力 者 としてそれを指摘 する。この神 への奉仕 事業 のため公事 ・私事 の暇 無 く、極貧 に生活 している。
富裕 市民 の息子 たちによる模倣 [編集 ]
- 10. また、
富裕 市民 の息子 たちが自身 (ソクラテス)を模倣 し、その試問 によって無知 を暴 かれた人々 も、「青年 を腐敗 させた」と自身 (ソクラテス)に憤 った。またその批判 内容 の無 さに窮 した挙 げ句 、哲学 者 批判 の常套句 である「地下 天上 の事象 を~(上記 3)」といった批判 も併 せて自身 に向 けられることになった。こうして詩人 代表 のメレトス、手工 者 ・政治 家 代表 のアニュトス、演説 家 代表 のリュコンの3名 が告発 者 となり、今回 の裁判 が起 こされた。
メレトスとの質疑 応答 [編集 ]
「青年 を腐敗 させ」に対 する反証 [編集 ]
- 11. 「
旧 い弾劾 者 」に対 する弁明 終了 、続 いて「新 しい弾劾 者 」(当 裁判 の告発 者 )に対 する弁明 へ。訴状 の内容 「青年 を腐敗 させ、国家 の信 じる神 々を信 じず、新 しき神霊 (ダイモニア)を信 じる」の検証 。まずは「青年 を腐敗 させ」の部分 から。告発 者 メレトスは青年 の善導 に本来 無関心 なのに、熱心 であるかのように装 っている。 - 12. メレトスへの
尋問 開始 。メレトス、青年 の善導 が関心事 「その通 り」、青年 の善導 者 は「国法 」、人間 では「裁判官 (陪審 員 )、聴衆 、評議 員 、民 会議 員 全員 」「ソクラテスを除 く全 てのアテナイ人 」。ソクラテス、馬 の場合 ならそう答 えないはず、調 馬 師 以外 の大 多数 が一緒 に躾 けたらかえって悪 くする、青年 も一緒 、これでメレトスの青年 善導 への無 関心 が暴露 された。 - 13. メレトス、
人 は自分 を益 する善人 よりも自分 を害 する悪人 を欲 すること(青年 たちが自 ら望 んでソクラテスを欲 したこと)は「ない」、ソクラテスが青年 を腐敗 させたのは(無自覚 ではなく)「故意 」。ソクラテス、メレトスのい分 では、自身 (ソクラテス)は青年 を害 し、青年 からも害 されることを故意 に行 なっている愚者 になってしまうが、そのような者 はいない。自身 (ソクラテス)は青年 を害 さないか、無自覚 かのどちらかであり、いずれにしろメレトスは嘘 を述 べている。また、自身 (ソクラテス)が無自覚 に青年 を腐敗 させているのなら、自身 (ソクラテス)にそれを教示 ・訓 誨すれば済 む話 なのに、それをせずに不当 にも処罰 のための裁判 へと引 き出 した。
「新 しき神霊 を信 じる」に対 する反証 [編集 ]
- 14. メレトスの
青年 善導 に対 する無 関心 は明白 。次 に「新 しき神霊 (ダイモニア)を信 じる」の部分 に話題 移行 。メレトス、ソクラテスは国家 の認 める神 々ではなく他 の新 しい神霊 (ダイモニア)を青年 に教 えて腐敗 させている。ソクラテス、それは「アテナイ以外 の神 々を信 じる」ということか、それとも「無 神 論 者 」ということか。メレトス、ソクラテスは後者 の「無 神 論 者 」であり、「太陽 を石 、月 を土 」と主張 する。ソクラテス、それは哲学 者 アナクサゴラスの主張 だと皆 知 っている。メレトスこそが実 は高慢 ・放恣 な無 神 論 者 であり、この訴状 もそうした青年 の出来心 ゆえに思 える。メレトスの訴状 ・主張 は(「ソクラテスは罪人 。神 を信 じないが故 に、しかも神 を信 じるが故 に。」という)矛盾 を孕 んだ謎 かけのよう。 - 15. メレトス、「
神霊 の働 き(ダイモニア)は信 じるが、神霊 そのもの(ダイモネス)を信 じない者 」など「一人 もいない」、また、神霊 は「神 々そのもの」か、「神 々の子 」と「看做 している」。ソクラテス、そのい分 では自身 (ソクラテス)は「神 々を認 めないで、神霊 (神 々)を認 める」ということになり、謎 かけ・冗談 のよう。メレトスがこのような訴状 を起草 したのは、我々 を試 しているのか、自身 (ソクラテス)を陥 れる罪過 に苦慮 した結果 かのどちらか。
最終 弁論 [編集 ]
「死 の危険 」と「持 ち場 」[編集 ]
- 16. 「
新 しい弾劾 者 」(当 裁判 の告発 者 )及 び「訴状 」に対 する弁明 も終了 、総論 へ。自身 (ソクラテス)や他 の善人 を滅 ぼすのは、メレトスら告発 者 (新 しい弾劾 者 )ではなく、むしろ大衆 の誹謗 ・猜忌 (旧 い弾劾 者 )である。これまでもこれからもそう。それら大衆 によって死 の危険 に晒 される営 みであっても、人 は自身 の持 ち場 を死 をも厭 わず固守 すべき。 - 17.
自身 は従軍 [注釈 3]した際 にも持 ち場 を固守 した。したがって、今 も自身 が神 から受 けたと信 じる持 ち場 、愛 智者 として他者 を吟味 する持 ち場 を、死 などを恐 れて放棄 することはできない。それをしてしまうことこそがむしろ、神託 の拒否 、賢人 の装 い、神 の不信 の罪 であり、法廷 に引 き出 されるに値 する。死 が人間 にとって何 かを知 る者 などいないのに、死 を恐 れることも賢人 を気取 ること。したがって、アニュトスの「ソクラテスを死刑 にするか、放免 して子弟 を一人 残 らず腐敗 させるかの二者択一 」という意見 はともかく、今回 放免 と引 き換 えに姿勢 変更 を求 められたとしても、自身 はこれまでの姿勢 を変 えない。自身 は諸君 よりも神 に従 う。そうした人々 には「偉大 なアテナイ人 が蓄財 ・名声 ・栄誉 ばかりを考 え、智 見 ・真理 ・霊魂 を善 くすることを考 えないのは恥辱 と思 わないか」と指摘 する。自身 は「神 に対 する私 のこの奉仕 に優 るほどの幸福 が、この国 において諸君 に授 けられたことはいまだかつてなかった」と信 じている。それは身体 ・財産 よりも霊魂 の完成 を顧 み、熱心 にすることの勧告 、徳 からこそ富 や善 きものが生 じることの附言 に他 ならない。いずれにしても、放免 されようがされまいが、自身 の姿勢 は一切 変 わらない。
「神 からの賜物 」としての「ソクラテス」[編集 ]
- 18.
諸君 が自身 (ソクラテス)を死刑 に処 するなら、諸君 はむしろ諸君 自身 を害 することになる。自身 (ソクラテス)にとっては、死刑 ・追放 ・公民 権 剥奪 は、正義 に反 するという大 きな禍 に比 べれば大 したことではない。自身 (ソクラテス)は自分 のためではなく、諸君 のため、諸君 が神 からの賜物 に対 して罪 を犯 し、容易 に見出 すことのできない自身 (ソクラテス)のような人物 を失 ってしまうことがないようにするために弁明 している。長年 、家庭 を顧 みず、貧乏 も厭 わず、何人 にも家族 のごとく接近 し、無 報酬 で徳 の追求 を説 くような行為 は、人間業 ではなく神 の賜物 。
「ダイモニオンの声 」と「政治 」[編集 ]
- 19.
自身 (ソクラテス)が国事 に関 わらない理由 は、幼年 時代 から現 れる「ダイモニオンの声 」にある。常 に何 かを諫止(禁止 ・抑止 )するために現 れるこの声 が、政治 に関 わることに抗議 する。この抗議 は正 しく、実際 、自身 が政治 に関 わっていたら、既 に死 んでいただろう。本当 に正義 のために戦 うことを欲 するならば、公人 ではなく私人 として生活 すべき。 - 20.
政治 に関 わることの危険 性 に関 する2つの例示 。唯一 の公職 経験 である評議 員 時代 、ペロポネソス戦争 中 の紀元前 406年 におけるアルギヌサイの海戦 後 の将軍 10名 に対 する違法 な有罪 宣告 に対 し、一人 反対 したことで演説 者 ・大衆 の怒号 を受 けたエピソードと、三 十 人 政権 下 の紀元前 404年 、サラミス人 レオンを処刑 のために連行 することを一人 拒否 して家 に帰 ったエピソード。 - 21.
自身 は公人 としても私人 としても態度 を一切 変 えなかったが、公人 として政治 に携 わることが少 なかったから、長 い歳月 生 きながらえることができた。誹謗 者 が自身 (ソクラテス)の弟子 と呼 んでいるクリティアスやアルキビアデスに対 しても、譲歩 したことはない。自身 は何人 に対 しても、報酬 を受 け取 らず、貧富 の差別 なく、試問 ・問答 を行 なってきた。いまだかつて誰 の師 になったこともなく、誰 に授業 を授 けたこともない。
ソクラテスの仲間 ・支援 者 [編集 ]
- 22.
自身 の仲間 となっている人々 は、賢明 とうぬぼれている人々 が吟味 されるのを楽 しむ。しかし、自身 は神 からの使命 としてこれを行 なっている。自身 が青年 を腐敗 させているのなら、その中 で既 に壮年 に達 した人々 や、その家族 ・一族 がここに復讐 に来 てなければおかしい。ここにもクリトン(クリトブロスの父 )、リュサニアス(アイスキネスの父 )、アンティポン(エピゲネスの父 )、ニコストラトス(テオドトスの兄 )、パラリオス(テアゲスの兄 )、アデイマントス(プラトンの兄 )、アイアントドロス(アポロドロスの兄 )等 がいるが、彼 らはむしろ自身 (ソクラテス)を援助 している。
補足 [編集 ]
「法廷 戦術 の拒否 」と「裁判官 の役割 」[編集 ]
- 23.
弁明 として言 いたいことは言 い終 えた。諸君 の中 には涙 を流 して嘆願 哀 求 したり、同情 をひくために子供 ・親族 ・友人 を多 く法廷 に連 れ出 そうとすることを期待 していた者 もいるかもしれないが、自身 はそうはしない。自身 にとっても、諸君 にとっても、国家 にとってもそれは不名誉 なことだから。 - 24.
裁判官 (陪審 員 )は、国法 にしたがって事件 を審理 しなくてはならない。メレトスの訴状 の通 りであるか否 か。自身 は告発 者 たちよりも堅 く神 々を信 じ、最 も善 い裁判 が成 されることを諸君 と神 々に委 ねる。
(「
刑 量 についての弁論 [編集 ]
意外 な僅差 [編集 ]
- 25.
有罪 決定 は予想 通 りだった。むしろ多 くの票 差 がつくと思 ってたのが、意外 に僅差 だった。30票 の投票 が違 えば無罪 放免 になっていただろうし、アニュトスとリュコンが告発 者 に名 を連 ねてなければ、メレトスは5分 の1の票数 も得 られずに罰金 1000ドラクメを払 うことになっていただろう。
「プリュタネイオンにおける食事 」の提議 [編集 ]
- 26.
告発 者 は死刑 を提議 している。それに対 して何 を提議 すべきか。何人 にも善良 かつ賢明 になるよう説得 することに務 めてきた一人 の貧 しき国家 功労 者 が受 けるべき賞罰 は、良 きものであるべきであり、プリュタネイオン(役所 、会議 場 、迎賓館 ・宴会 場 を兼 ねたアテナイの中心 施設 )における食事 がふさわしい。 - 27. これは
傲慢 から言 うのではない。自身 は決 して故意 に不正 を行 ったことがないと確信 しているが、それを諸君 に信 じさせるには時間 が短 すぎる。自身 は不正 を行 っていないと確信 しているので、(ましてや福 か禍 かも分 からず恐 れてもいないと述 べている死刑 にわざわざ対抗 するためにあえて)提議 する刑罰 が思 いつかない。投獄 されて奴隷 生活 を送 ればいいのか。罰金 を払 うにも金 が無 い。追放 されてもその町 々で同 じことを繰 り返 すだろう。
「姿勢 変更 」の拒否 と「罰金 30ムナ」の提議 [編集 ]
- 28. 「
追放 先 で静 かな生活 を送 る」ことなど、自身 にはできない。それは神 命 に背 くことであるし、人間 の最大 幸福 であり生 き甲斐 は、日毎 、徳 について語 ることであり、魂 の探求 に他 ならないから。金 があればそれを罰金 として提議 するが、自身 は一文 無 しである。銀 1ムナぐらいは払 えるので、それを提議 したいところだが、プラトン、クリトン、クリトブロス、アポロドロスが罰金 30ムナの提議 を催促 し、その保証人 になってくれるというので、それを提議 する。
(「
「死刑 確定 」を受 けて[編集 ]
「有罪 ・死刑 投票 をした人々 」への忠告 [編集 ]
- 29.
有罪 ・死刑 投票 をしたアテナイ人 諸君 は、高齢 で死 ぬ日 も遠 くない自身 (ソクラテス)の死 を待 つだけの辛抱 が足 りなかったばかりに、賢人 ソクラテスを死刑 に処 したという汚名 と罪科 を負 わされるだろう。諸君 を批議する人々 は自身 (ソクラテス)を賢人 と呼 ぶであろうから。諸君 は自身 (ソクラテス)が有罪 になった理由 は、「言葉 の不足 」「有罪 を免 れるためいかなる言動 も厭 わない姿勢 の欠如 」だと考 えるだろう。しかし自身 に言 わせれば「厚顔 ・無恥 ・迎合 意図 の不足 」である。自身 はいかなる危険 を前 にしても賤民 らしく振 る舞 うべきでないと信 じていたし、後悔 は無 い。死 を免 れることは困難 ではない。死 を免 れるより悪 を免 れる方 がはるかに困難 である。悪 は死 よりも速 く駆 ける。老年 の私 は死 に追 いつかれ、若 い諸君 は悪 に追 いつかれた。 - 30.
自身 (ソクラテス)を有罪 と断 じたる諸君 への予言 。諸君 には死刑 より遙 かに重 き刑 が課 されるだろう。諸君 は諸君 の生活 についての弁明 を免 れるために今回 の行動 に出 たが、結果 はその意図 とは反対 になるだろう。自身 (ソクラテス)が阻 んでいた、若 く峻烈 な多 くの問責 者 が、諸君 の前 に現 れ、諸君 を深 く悩 ますだろう。正 しくない生活 に対 する批議を、批判 者 を殺害 ・圧伏 することで阻止 しようとする手段 は、成功 も困難 で立派 でもない。最 も立派 で容易 な手段 は、自 ら善 くなるよう心掛 けることである。
「無罪 投票 をした人々 」への辞世 の挨拶 [編集 ]
- 31.
無罪 投票 をしてくれた諸君 (正当 な「裁判官 」諸君 )へ。「ダイモニオンの声 」は、今回 の件 で一 度 も現 れなかったので、今回 の出来事 はきっと善 い事 である。死 を禍 だと考 える者 は間違 っている。 - 32. また、
死 は一種 の幸福 であるという希望 には以下 の理由 もある。死 は「純然 たる虚無 への回帰 」か、「生 まれ変 わり、あの世 への霊魂 移転 」かのいずれかである。前者 であるならば、死 は感覚 の消失 であり、夢 一 つさえ見 ない眠 りに等 しいものであり、驚嘆 すべき利得 である。後者 であるならば、数々 の半 神 ・偉人 たちと冥府 で逢 えるのだから言語 を絶 した幸福 である。 - 33. 「
裁判官 」諸君 (無罪 投票 をしてくれた諸君 )も、「善人 に対 しては生前 にも死後 にもいかなる禍害 も起 こり得 ないこと、神 々も決 して彼 を忘 れることがないこと」を真理 と認 め、楽 しき希望 を以 て死 と向 き合 うことが必要 である。したがって、自身 (ソクラテス)は告発 者 や有罪 宣告 をした人々 にも、少 しも憤 りを抱 いてはいない。なお、自身 (ソクラテス)の息子 達 が成人 した暁 には、自身 (ソクラテス)が諸君 にしたように、彼 らを叱責 ・非難 して悩 ませてもらいたい。蓄財 よりも徳 を念頭 に置 くように、ひとかどの人間 でもないのにそうした顔 をすることがないように。去 るべき時 が来 た。自身 (ソクラテス)は死 ぬために、諸君 は生 きながらえるために。両者 の内 、どちらが良 き運命 に出逢 うか、神 より他 に知 る者 はいない。
論点 [編集 ]
無知 の知 [編集 ]
また、ソクラテスの
この「
なお、
正義 [編集 ]
裁判 [編集 ]
政治 [編集 ]
大衆 [編集 ]
また、ソクラテス
青年 の教育 [編集 ]
ソクラテスが
なお、こうした「
蓄財 [編集 ]
ダイモニオン[編集 ]
また、
信仰 [編集 ]
評価 [編集 ]
『
- ソクラテスの
描写 を通 じ、「哲学 者 」および「哲学 すること」の模範 を提示 する。 - ソクラテス
裁判 を記録 し、その真実 の姿 を伝 え、もって間接 的 に裁判 が不当 であることを示 す。
日本語 訳 [編集 ]
- 『プラトン
全集 〈1〉 エウテュプロン・ソクラテスの弁明 ・クリトン・パイドン』今林 万里子 ・田中 美知太郎 ・松永 雄二 訳 、岩波書店 1975年 、復刊 2005年 ほか - 『ソクラテスの
弁明 ・クリトン』久保 勉 訳 、岩波 文庫 、初版 1927年 、改版 1964年 、新版 2007年 ISBN 9784003360118 - 『ソークラテースの
弁明 ・クリトーン・パイドーン』田中 美知太郎 ・池田 美恵 訳 、新潮 文庫 、1968年 、改版 2005年 - 『ソクラテスの
弁明 ・クリトン』三嶋 輝夫 ・田中 享 英訳 、講談社 学術 文庫 、1998年 - 『ソクラテスの
弁明 ・クリトン・ゴルギアス』田中 美知太郎 ・藤沢 令 夫 訳 、中公 クラシックス、2002年 1月 - 『ソクラテスの
弁明 』納富 信 留 訳 、光文社 古典 新訳 文庫 、2012年 9月 - 『エウテュプロン・ソクラテスの
弁明 ・クリトン』西尾 浩二 ・朴 一 功 訳 、京都大学 学術 出版 会 〈西洋 古典 叢書 〉、2017年 8月 - 『ソクラテスの
弁明 』藤田 大雪 訳 、叢書 ムーセイオン、2013年 3月 。Kindle版
漫画 [編集 ]
- 『ソクラテスの
弁明 (マンガで読 む名作 )』画 ・横井 謙 仁 、日本文芸社 、2010年 ISBN 9784537125610 - 『まんがで
読破 ソクラテスの弁明 』バラエティ・アートワークス画 、イースト・プレス、2013年
脚注 [編集 ]
注釈 [編集 ]
出典 [編集 ]
- ^ 『ソクラテスの
思 い出 』岩波 文庫 佐々木 理 p6[要 文献 特定 詳細 情報 ] - ^ 『ソクラテスの
思 い出 』クセノポン 1巻 1章 [要 文献 特定 詳細 情報 ] - ^ 『エウテュプロン』
- ^ 『ソクラテスの
思 い出 』岩波 文庫 pp.5-7 - ^ 『ソクラテスの
弁明 ・クリトン』久保 勉 訳 岩波 文庫 - ^
参考 : 『ソクラテスの弁明 ・クリトン』久保 勉 訳 岩波 文庫 - ^
岩波書店 全集 1 p101、岩波 文庫 pp109-110 - ^
岩波 文庫 p.109では、「黒 と白 の石 票 で投票 が行 われた」と書 かれているが、アリストテレスの『アテナイ人 の国 制 』第 68章 に、当時 はψ ῆφ ο ι という専用 の投票 用具 を用 いていたことが説明 されているため、岩波 文庫 のその記述 は誤 りである。 - ^
岩波 文庫 pp110-111 - ^ 『ソクラテスの
弁明 ・クリトン』久保 勉 訳 岩波 文庫 p126
関連 項目 [編集 ]
外部 リンク[編集 ]
- プラトン
対話 篇 第 1(含 む「ソクラテスの弁明 」。国立 国会図書館 デジタルコレクション)久保 勉 、阿部 次郎 訳 、岩波書店 - ソクラテスの
弁明 (日本語 訳 )