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テトラカルボニルニッケル

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ニッケルカルボニルから転送てんそう
テトラカルボニルニッケル
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識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 13463-39-3
EC番号ばんごう 236-669-2
RTECS番号ばんごう QR6300000
特性とくせい
化学かがくしき Ni(CO)4
モル質量しつりょう 170.7 g/mol
外観がいかん 無色むしょくもしくは黄色おうしょく液体えきたい[1]はん磁性じせい
にお かびくさ[1]
密度みつど 1.3 g/ml, 液体えきたい
融点ゆうてん

−19 °C

沸点ふってん

43 °C

みずへの溶解ようかい 不溶ふよう
構造こうぞう
はい構造こうぞう 四面しめん体形たいけい
分子ぶんしかたち 四面しめん体形たいけい
双極そうきょくモーメント 0 D
ねつ化学かがく
標準ひょうじゅん生成せいせいねつ ΔでるたfHo −632 kJ/mol
標準ひょうじゅん燃焼ねんしょうねつ ΔでるたcHo −1180 kJ/mol
標準ひょうじゅんモルエントロピー So 320 J K−1 mol−1
危険きけんせい
安全あんぜんデータシート(外部がいぶリンク) ICSC 0064
MSDS (PDF)
GHSピクトグラム Acutely toxic Health hazard Flammable Dangerous for the environment
GHSシグナルワード Danger [2]
Hフレーズ H225, H300, H310, H330, H351, H360, H400, H410
Pフレーズ P201, P202, P210, P233, P240, P241, P242, P243, P260, P271, P273, P280, P281, P284
NFPA 704
3
4
3
引火いんかてん -20 °C
発火はっかてん 60 °C
関連かんれんする物質ぶっしつ
関連かんれんする金属きんぞくカルボニル ヘキサカルボニルクロム
デカカルボニルマンガン
ペンタカルボニルてつ
オクタカルボニルコバルト
関連かんれん物質ぶっしつ テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Ni(PF3)4
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

テトラカルボニルニッケル (えい: tetracarbonylnickel) またはニッケルカルボニル (えい: nickel carbonyl) は、ニッケル一酸化いっさんか炭素たんそ錯体さくたいである。化学かがくしき Ni(CO)4あらわされる、無色むしょくもしくは黄色おうしょく揮発きはつせい液体えきたいである。毒性どくせい非常ひじょうたかく、「液体えきたい (えい: liquid death)」の異名いみょうつ。歴史れきし応用おうよう理論りろんかく方面ほうめん重要じゅうよう化合かごうぶつである。毒物どくぶつおよげきぶつ取締とりしまりほうにより毒物どくぶつ指定していされている[3]

構造こうぞう

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おおくの金属きんぞくカルボニルおなじく18電子でんし錯体さくたいである。金属きんぞくカルボニルの有名ゆうめいれいとしててつカルボニルモリブデンカルボニルげられる。これらの化合かごうぶつ特徴とくちょう金属きんぞくとカルボニルはい CO の炭素たんそ原子げんしとの共有きょうゆう結合けつごうである。金属きんぞくカルボニルは対称たいしょうせいたか構造こうぞうつため揮発きはつせいたかい。

合成ごうせいほう

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金属きんぞくニッケルは室温しつおん一酸化いっさんか炭素たんそ CO と反応はんのうしてテトラカルボニル錯体さくたいあたえる。あたたかいガラス表面ひょうめん接触せっしょくさせるなどしておだやかに加熱かねつすると、分解ぶんかいして金属きんぞくニッケルと一酸化いっさんか炭素たんそもどる。これらの反応はんのうモンドほうによって純粋じゅんすいなニッケルをるための基礎きそてき手法しゅほうである。

反応はんのう

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てい原子げんし金属きんぞくカルボニルと同様どうように CO の置換ちかん反応はんのう酸化さんかける。トリフェニルホスフィン のような供与きょうよせいはい反応はんのうして あたえる。ビピリジンなどのはいとも同様どうよう反応はんのうする。これらの反応はんのうでは、まず CO がだつはなしてこう活性かっせいな16電子でんし錯体さくたい ちゅうあいだたいとなり、これにはい結合けつごうする。

塩素えんそにより酸化さんかされて CO がだつはな塩化えんかニッケル(II) NiCl2あたえる。この反応はんのうはニッケルカルボニルを分解ぶんかいする簡単かんたん方法ほうほうである。

水酸化物すいさんかぶつイオンとの反応はんのうでは還元かんげんされて のようなクラスター生成せいせいする。

有機ゆうき合成ごうせいにおいては、ハロゲンアルキルハロゲンアリールとの反応はんのうがしばしばカルボニルされた有機ゆうき化合かごうぶつ合成ごうせいするのにもちいられる。PhCH=CHBr のようなハロゲンビニルは、ニッケルカルボニル、ナトリウムメトキシド NaOMe と順次じゅんじ反応はんのうさせることによって飽和ほうわエステルに変換へんかんされる。これらのはんおうも Ni(CO)3発生はっせいと、これにたいする酸化さんかてき付加ふか進行しんこうするとかんがえられている。

また、カルボニルはい炭素たんそ原子げんしたいするもとめかく攻撃こうげきける。もとめかくざい (Nu) と反応はんのうさせるとアシル誘導体ゆうどうたい られる。

毒性どくせい安全あんぜんかんする注意ちゅうい

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ニッケルカルボニルは、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせいほうだい2るい特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ指定していされている。

ニッケルカルボニルはとく体内たいない発生はっせいするニッケルの影響えいきょうにより、はいとしてふくまれている一酸化いっさんか炭素たんそよりも危険きけんせいたかいとかんがえられている。体内たいないへの吸収きゅうしゅう経路けいろ吸入きゅうにゅうけいがわがある。 まず皮膚ひふから吸収きゅうしゅうされた場合ばあい表面ひょうめんつよ刺激しげき火傷かしょうしょうじる。吸引きゅういんした場合ばあい致命ちめいてきである。その存在そんざいにおいでかんじることなく、重大じゅうだい毒性どくせい徴候ちょうこう症状しょうじょうあらわれることがられている。ニッケルカルボニルによってこされる急性きゅうせい毒性どくせい主要しゅよう標的ひょうてきはいであるとかんがえられるが、はい以外いがい臓器ぞうき関与かんよ報告ほうこくされている[4]蒸気じょうき自然しぜん発火はっかすることがある。

中毒ちゅうどく症状しょうじょうは2段階だんかい症状しょうじょうによって特徴付とくちょうづけられる。だい1数時間すうじかんつづ頭痛ずつうむねいたみで、通常つうじょうすぐにおさまる。だい2はおよそ16あいだはじまるあいだしつせい肺炎はいえんで、せき、息切いきぎれ、つよ疲労ひろうかんともなう。これらの症状しょうじょうは4にちもっとおもくなり、重症じゅうしょう場合ばあいには、はい水腫すいしゅチアノーゼなどになり,死亡しぼうするおそれがある。一心いっしんはい不全ふぜん腎不全じんふぜんによって死亡しぼうすることがおおい。回復かいふくはしばしばいちじるしく遅延ちえんし、疲労ひろうかんうつびょう呼吸こきゅう困難こんなんとの合併症がっぺいしょうもしばしばこる。呼吸こきゅうへの後遺症こういしょう一般いっぱんてきにはられない。はつがんせいについては議論ぎろんちゅうであり、くわしくはられていない。

有機ゆうき金属きんぞく反応はんのうざいハンドブック(たまあきらたいら編著へんちょ化学かがく同人どうじん)によると、Ni(CO)4作業さぎょう環境かんきょう許容きょよう濃度のうどは0.001ppmであり、シアン化水素しあんかすいそガス(10ppm)よりはるかにちいさく、それだけ毒性どくせいつよいことをしめしている。

もし漏洩ろうえいしてしまった場合ばあい火気かき厳禁げんきんとし、通風つうふう換気かんき十分じゅうぶんったうえで、保護ほご着用ちゃくよううえ破損はそん箇所かしょをシールし吸着きゅうちゃくざいをまいてったのち大量たいりょうみずあらう。保護ほごとしては自給じきゅうしき呼吸こきゅう保護ほごころも保護ほごメガネ、ゴム手袋てぶくろ、ゴム長靴ながぐつなどが推奨すいしょうされる[5]

化学かがく特性とくせい分析ぶんせき方法ほうほう

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反応はんのう生成せいせい速度そくどおそいが、CO濃度のうど = COぶんあつたかく、温度おんどが77–117 °C付近ふきん生成せいせいしやすい。

生成せいせい温度おんど範囲はんいは、−128–150 °Cわれる。

CO 濃度のうどひくく、水素すいそ共存きょうぞんする場合ばあいには、メタネーション反応はんのう (CO + 2H2 → CH4) が支配しはいてきである。基本きほんてきには、CO と Ni 金属きんぞく存在そんざいすれば生成せいせいするとわれ、アーク溶接ようせつ作業さぎょうや、SUSかんに CO ガスをれるだけでも発生はっせいする。

塩素えんそ臭素しゅうそ、ヨウ素水もとみ溶液ようえきにニッケルカルボニルガスをとおすことで素早すばや分解ぶんかいできる。また、パラジウム触媒しょくばいによる分解ぶんかいゼオライトによる吸着きゅうちゃくなどの手法しゅほうられている。

分析ぶんせき方法ほうほうは、原子げんし吸光光度こうどけいによるNiりょう定量ていりょう分析ぶんせきFT-IR による分析ぶんせき一般いっぱんてきである。

利用りよう

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  • 電池でんちよう電極でんきょくばん発泡はっぽう金属きんぞく(ニッケル)もとざい原料げんりょうとして利用りようされることがある[6]

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Lascelles, K.; Morgan, L. G.; Nicholls, D. '"Nickel Compounds", Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry; John Wiley & Sons: New Jersey, 1991; vol. A17, chapt. 5, pp. 235–249.
  • Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis; Paquette, L. A. ed.; John Wiley & Sons: New Jersey, 2003.

外部がいぶリンク

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