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オクタカルボニルコバルト

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オクタカルボニルコバルト
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識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 10210-68-1 チェック
国連こくれん/北米ほくべい番号ばんごう 3281
RTECS番号ばんごう GG0300000
特性とくせい
化学かがくしき Co2(CO)8
モル質量しつりょう 341.95 g/mol
外観がいかん 橙色だいだいいろ固体こたい
密度みつど 1.87 g/cm3
融点ゆうてん

51-52 °C

沸点ふってん

52 °C分解ぶんかい

みずへの溶解ようかい 不溶ふよう
構造こうぞう
双極そうきょくモーメント 0 D
危険きけんせい
安全あんぜんデータシート(外部がいぶリンク) ICSC 0976
おも危険きけんせい 有毒ゆうどく (T)
関連かんれんする物質ぶっしつ
関連かんれんする金属きんぞくカルボニル てつカルボニル
ノナカルボニルてつ
ニッケルカルボニル
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

オクタカルボニルコバルト (えい: octacarbonyldicobalt) とは、分子ぶんししきが Co2(CO)8あらわされるコバルト錯体さくたい一種いっしゅコバルトカルボニルコバルトオクタカルボニルオクタカルボニルジコバルトジコバルトオクタカルボニル ともしょうされる。有機ゆうき金属きんぞく化学かがく試薬しやくとしてもちいられ、関係かんけいするいくつかの有機ゆうき合成ごうせい反応はんのうられる[1]ヒドロホルミル反応はんのう触媒しょくばいとしても利用りようされる[2]純度じゅんどたか結晶けっしょう橙色だいだいいろで、空気くうきちゅう放置ほうちすると褐色かっしょくび、さらに自然しぜん発火はっかすることがある。水素すいそ一酸化いっさんか炭素たんそ雰囲気ふんいきちゅうでは安定あんていである。みず不溶ふよう

合成ごうせい[編集へんしゅう]

オクタカルボニルコバルトは、コバルト(II)のしおこうあつ一酸化いっさんか炭素たんそ反応はんのうさせて合成ごうせいされる。そのさいシアン化物ばけものしお添加てんかされることがある。

炭酸たんさんコバルト(II)水素すいそ一酸化いっさんか炭素たんそ加圧かあつして合成ごうせいする方法ほうほうられる[3]

分子ぶんし構造こうぞう[編集へんしゅう]

オクタカルボニルコバルトには構造こうぞう異性いせいたい存在そんざいする[4]。よくられた2れいしたしきのような構造こうぞうしきあらわされる。

オクタカルボニル二コバルトの異性体
オクタカルボニルコバルトの異性いせいたい

結晶けっしょうちゅうでは右側みぎがわの、2のカルボニルはいが2のコバルトをμみゅー-架橋かきょうした C2v 対称たいしょう構造こうぞう ((CO)3Co(μみゅー-CO)2Co(CO)3) が優勢ゆうせいであり、そこでは Co-Co 結合けつごう距離きょりは 2.522-2.525 Å、架橋かきょうカルボニルとコバルトの距離きょり Co-CObridge は 1.883-1.949 Å、末端まったんカルボニルとコバルトとの距離きょり Co-COterminal は 1.770-1.818 Å と報告ほうこくされている[5]。この構造こうぞうは Fe2(CO)9ており、くらべるとカルボニル架橋かきょう1個いっこすくないだけである。えきしょうではしき左側ひだりがわ架橋かきょうがたとの異性いせいこる。架橋かきょうがた ((CO)4Co-Co(CO)4) はD3d 対称たいしょうせいつ。

反応はんのう[編集へんしゅう]

オクタカルボニルコバルトは水素すいそ反応はんのうしてたんかくヒドリド錯体さくたいへと分解ぶんかいする。

このヒドリド錯体さくたいヒドロホルミル活性かっせいしゅであり、アルケン付加ふかするとアルキルCo(CO)4 ちゅうあいだたいあたえ、それからカルボニルが C-Co 結合けつごう挿入そうにゅう水素すいそアルデヒドとなる。

カルボニルのいくつかをさんきゅうホスフィンえた かたち誘導体ゆうどうたいは、ヒドロホルミル反応はんのう触媒しょくばいするときにその立体りったい障害しょうがいのためよりたか選択せんたくせいしめす。

アルカリ金属きんぞく還元かんげんするとアニオンしゅ発生はっせいする。これはうえのヒドリド錯体さくたい共役きょうやく塩基えんき相当そうとうする。

オクタカルボニルコバルトはアルキンつよ付加ふかたいつく活性かっせいさせる。その性質せいしつ利用りようして、アルキンアルケン一酸化いっさんか炭素たんそちぢみあわさせてシクロペンテノンたまきポーソン・カンド反応はんのうや、プロパルギルアルコールのヒドロキシもともとめかくざいえるニコラス反応はんのう試薬しやくとして利用りようされる。

ピリジンなどルイス塩基えんき作用さようでオクタカルボニルコバルトは分解ぶんかいする。

加熱かねつすると一酸化いっさんか炭素たんそ放出ほうしゅつしながらよん面体めんていがたのクラスター へとわる。

安全あんぜんせい[編集へんしゅう]

オクタカルボニルコバルト自身じしん揮発きはつせいち、また、分解ぶんかいすると一酸化いっさんか炭素たんそ発生はっせいさせる。反応はんのうせいたかさから空気くうきちゅうでは発火はっか危険きけんせいがある。通常つうじょうくらところ冷蔵れいぞう保存ほぞんされる。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Pauson, P. L. "Octacarbonyldicobalt" in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, Paquette, L. ed., J. Wiley & Sons, New York, 2004. DOI: 10.1002/047084289
  2. ^ Elschenbroich, C.; Salzer, A. ”Organometallics : A Concise Introduction” (2nd Ed) (1992) Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-28165-7
  3. ^ Wender, I.; Sternberg, H. W.; Metlin, S.; Orchin, M. Inorg. Synth. 1957, 5, 190.
  4. ^ Sweany, R. L.; Brown, T. L. "Infrared spectra of matrix-isolated dicobalt octacarbonyl. Evidence for the third isomer" Inorg. Chem 1977, 16, 415-421. DOI: 10.1021/ic50168a037
  5. ^ Sumner, G. G.; Klug, H. P.; Alexander, L. E. "The crystal structure of dicobalt octacarbonyl" Acta Crystallographica 1964, 17, 732-742. DOI: 10.1107/S0365110X64001803