インターネット告発こくはつ

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ネット告発こくはつから転送てんそう

インターネット告発こくはつ(インターネットこくはつ)とは、ウェブサイトメールマガジンなどインターネットうえメディアもちいておこなわれる告発こくはつのことである。通称つうしょうネット告発こくはつ以下いか、ネット告発こくはつりゃくす)。

※ただし、告発こくはつといっても、インターネット告発こくはつしょうされるようなものはあくまで広報こうほうてきなものであって、法令ほうれいにおける告発こくはつ刑事けいじ訴訟そしょうほう239じょう)の効果こうか存在そんざいしない。法的ほうてき告発こくはつ効果こうか発揮はっきさせたい場合ばあいは、刑事けいじ訴訟そしょうほうにおいて有効ゆうこうかたちでの告発こくはつおこな必要ひつようがある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

インターネットの普及ふきゅうともなまれたあたらしい告発こくはつ手段しゅだんで、裁判さいばんなどにくら費用ひよう必要ひつようとせず、またマスコミ依存いぞんせずに世間せけん問題もんだいうったえかけることができる。告発こくはつ対象たいしょうとなるのは、企業きぎょう行政ぎょうせいといった、個人こじんちからでは太刀打たちうちが困難こんなん組織そしき団体だんたい主流しゅりゅうとなっている。この場合ばあい商品しょうひんやサービス、接客せっきゃく態度たいどなどにたいする不備ふび不満ふまんうったえたり、秘密裏ひみつりおこなわれる悪事あくじ不正ふせいといった犯罪はんざい行為こうい理不尽りふじん行為こういなどを告発こくはつする。著名ちょめいかつ実績じっせきある告発こくはつさきについては、内部ないぶ告発こくはつ情報じょうほう提供ていきょうサイトの一覧いちらん参照さんしょう

告発こくはつサイトの作成さくせい、サイトへの情報じょうほう提供ていきょうしゃは、なんらかの被害ひがいけた企業きぎょうとう顧客こきゃく従業じゅうぎょういん(いわゆる内部ないぶ告発こくはつ一環いっかん)、OBなど多岐たきにわたる[1]。また、個人こじんあいだ紛争ふんそう原因げんいんとなり、相手あいて不備ふび告発こくはつするものもある。サイト運営うんえいにあたって人々ひとびと閲覧えつらんつづけてもらうためには、たんなる自分じぶん告発こくはつだけでわらせず、総合そうごうてき情報じょうほう提供ていきょうするサイトにするためにつね努力どりょく必要ひつようとなる[1]現在げんざい日本にっぽん目立めだ告発こくはつサイトとして「みずほ銀行ぎんこう被害ひがいしゃかい」などがある。

インターネット発祥はっしょうであるアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、インターネット黎明れいめいからネット告発こくはつおこなわれた。欧米おうべいでは企業きぎょう経営けいえい影響えいきょうあたえる場合ばあいもあり、影響えいきょうりょくしているという[1]日本にっぽんでは、東芝とうしばクレーマー事件じけん1999ねん)をマスコミがげたことにより、世間せけん認知にんちひろがった[2]

従来じゅうらい告発こくはつ手段しゅだんとしては、裁判さいばんやビラまきなどがあったが、裁判さいばん手間てま煩雑はんざつ費用ひよう負担ふたんおおきく、ビラまきはマスコミにでもげられないかぎり、問題もんだい存在そんざいうったえかけられる範囲はんい限定げんていてきであるという状況じょうきょうにあった。これにたいし、ネット告発こくはつ費用ひよう負担ふたんちいさく、またインターネットをつうじてひろ世間せけん問題もんだい存在そんざいうったえかけることができる[1]。こうして問題もんだい世間せけんわたった結果けっか問題もんだい改善かいぜん企業きぎょう行動こうどう変更へんこうおこなわれる場合ばあいいちれいとしては、イギリス銀行ぎんこう顧客こきゃくやく6,000おくえんともわれる手数料てすうりょう返還へんかんした事例じれい[1]や、サハリン2シェル権益けんえきロシア譲渡ゆずりわたせざるをない状況じょうきょう一因いちいんとなった事例じれい[1]など)[1]がある。ただし、なかにはかえしクレームをつけて新品しんぴん要求ようきゅうしたり、理不尽りふじん要求ようきゅう企業きぎょうきつけるものもいる[2]

SNS動画どうが共有きょうゆうサービス台頭たいとうすると、コレコレとう動画どうがやストリーミングサービスじょうでの告発こくはつけるものや、容易よういみずか告発こくはつ投稿とうこうできるようになったが、これもまた後述こうじゅつ名誉めいよ棄損きそん脅迫きょうはくとううったえられる危険きけんせいがある。

危険きけんせい[編集へんしゅう]

手軽てがるかつ強力きょうりょく武器ぶきとなるネット告発こくはつだが、告発こくはつしゃにとって利点りてんだけではなく、危険きけんせいわせている。ここでは危険きけんせいとして、恐喝きょうかつ[2]名誉めいよ毀損きそんげる。

恐喝きょうかつ
問題もんだい告発こくはつまではともかく、その金銭きんせん要求ようきゅうをした場合ばあい恐喝きょうかつとなるおそれがある[2]
名誉めいよ毀損きそん
たとえ真実しんじつであったとしても、公言こうげんによって他人たにん名誉めいよおとしめる結果けっかとなれば名誉めいよ毀損きそん成立せいりつする。名誉めいよ毀損きそんについては、「公共こうきょうせい」「公益こうえきせい」「真実しんじつせい実際じっさいには真実しんじつでなかった場合ばあいでもよいが、相当そうとう理由りゆう必要ひつよう)」の3てんたせばその成立せいりつは阻却される(刑法けいほう230じょうの2 - くわしくは名誉めいよ毀損きそん参照さんしょう)。告発こくはつしゃにおいては、その告発こくはつ公共こうきょう利害りがいかかることで、かつ公共こうきょう利益りえき目的もくてきとしたものであることを前提ぜんていとし、くわえて真実しんじつであると認識にんしきするに相当そうとう理由りゆうがある場合ばあいかぎ告発こくはつおこなうようつとめることがもとめられる。
すなわち、告発こくはつ自体じたいには違法いほうせいはないが、ネット告発こくはつ手軽てがるおこなえるために違法いほうせいについての検討けんとう不十分ふじゅうぶんとなり、法律ほうりつ違反いはんしやすくなる。

プロバイダ責任せきにん制限せいげんほうとの関係かんけい[編集へんしゅう]

2002ねん制定せいていされたプロバイダ責任せきにん制限せいげんほう正式せいしき名称めいしょうは、特定とくてい電気でんき通信つうしん役務えきむ提供ていきょうしゃ損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん制限せいげんおよ発信はっしんしゃ情報じょうほう開示かいじかんする法律ほうりつ)によって、インターネットじょうプライバシー侵害しんがい名誉めいよ棄損きそんけた被害ひがいしゃが、プロバイダたいしてその発信はっしんしゃ情報じょうほう開示かいじすることをもとめる権利けんりみとめられた。しかし、プロバイダにとっては権利けんり侵害しんがい基準きじゅん曖昧あいまいであり、くわえて通信つうしん守秘しゅひ義務ぎむせられていたことから、発信はっしんしゃ同意どういしに安易あんいには情報じょうほう開示かいじができなかった。

そこで、2006ねん12月の総務そうむしょう業界ぎょうかい団体だんたいによるガイドライン制定せいていにより、一定いってい範囲はんいまでは発信はっしんしゃ同意どういしに情報じょうほう開示かいじおこなえることとした。

ただし名誉めいよ毀損きそんについては例外れいがいがある。政治せいじ企業きぎょう経営けいえいしゃなどについては、不正ふせい問題もんだいてん公共こうきょう利益りえきのためにうったえかける内部ないぶ告発こくはつまでしてしまうおそれがあることから、過去かこのインターネットじょうにおける誹謗ひぼう中傷ちゅうしょう事件じけん判例はんれい通説つうせつらしわせて、それに「公共こうきょうせい」「公益こうえきせい」「真実しんじつせい」がみとめられないような場合ばあいかぎり、自主じしゅてき情報じょうほう開示かいじとしている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g 黒木くろきあきら企業きぎょう告発こくはつサイト、おそれるべし サハリン2騒動そうどうは“シェルはたき”のとばっちりだった!」『日経にっけいビジネスオンライン』日経にっけいBPしゃ、2007ねん11月12にちづけ配信はいしん
  2. ^ a b c d 杉山すぎやま俊幸としゆき山崎やまざきりょうへい急増きゅうぞうするネット告発こくはつうらひそ危険きけんせい!!」日経にっけいBPしゃ、1999ねん10がつ6にちづけ配信はいしん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]