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ハーディ空間くうかん

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数学すうがく複素ふくそ解析かいせき分野ぶんやにおけるハーディ空間くうかん(ハーディくうかん、えい: Hardy space)あるいはハーディきゅう(Hardy class)Hp とは、単位たんいえんばんあるいはうえ半平はんぺんめんうえのあるしゅ正則せいそく函数かんすう空間くうかんのことをう。リース・フリジェシュ (Riesz 1923) によって導入どうにゅうされ、その論文ろんぶん (Hardy 1915) の著者ちょしゃであるゴッドフレイ・ハロルド・ハーディにちなむ。じつ解析かいせきにおけるハーディ空間くうかんは、(ちょう函数かんすう意味いみで)複素ふくそハーディ空間くうかん正則せいそく函数かんすう境界きょうかいであるような、実数じっすう直線ちょくせんじょうのあるちょう函数かんすうからなる空間くうかんで、函数かんすう解析かいせきがくにおけるLp空間くうかん関係かんけいする。1 ≤ p ≤ ∞ にたいし、それらじつハーディ空間くうかん HpLp部分ぶぶん集合しゅうごうであるが、p < 1 にたいして Lp はいくつかのぞましくない性質せいしつ一方いっぽう、ハーディ空間くうかんはよりいをする。

複素数ふくそすう場合ばあい管状かんじょう領域りょういき英語えいごばんうえ正則せいそく函数かんすうや、実数じっすう場合ばあいRn うえちょう函数かんすう空間くうかんなど、こう次元じげん一般いっぱんがいくつか存在そんざいする。

ハーディ空間くうかんには解析かいせきがくそれ自身じしんにおいておおくの応用おうよう存在そんざいするとともに、制御せいぎょ理論りろんH∞制御せいぎょ理論りろんなど)や散乱さんらん理論りろんにおいてもおおくの応用おうよう存在そんざいする。

単位たんいえんばんたいするハーディ空間くうかん[編集へんしゅう]

ひらく単位たんいえんばんうえ正則せいそく函数かんすう空間くうかんたいし、ハーディ空間くうかん H2 は、半径はんけい r円周えんしゅうじょう平均へいきんじょうr → 1 にしたからちかづいたとき有界ゆうかいとなるような函数かんすうから構成こうせいされる空間くうかんとなる。

より一般いっぱんに、0 < p < ∞ にたいするハーディ空間くうかん Hp は、つぎたすひらく単位たんいえんばんじょう正則せいそく函数かんすう f のクラスとなる:

このクラス Hp はベクトル空間くうかんである。この不等式ふとうしき左辺さへんかずは、fたいするハーディ空間くうかんp-ノルムであり、記述きじゅつされる。これは p ≥ 1 のときはノルムであるが、0 < p < 1 のときはノルムとならない。

Hえんばんじょう有界ゆうかい正則せいそく函数かんすうからなるベクトル空間くうかんとして定義ていぎされ、そのノルムは

となる。0 < p ≤ q ≤ ∞ にたいし、クラス HqHp部分ぶぶん集合しゅうごうであり、Hp-ノルムは p について増加ぞうかである(これは Lp-ノルムがかくりつ測度そくど、すなわちそう質量しつりょうが 1 である測度そくどたいして増加ぞうかであるというヘルダーの不等式ふとうしきによる)。

単位たんい円上えんじょうのハーディ空間くうかん[編集へんしゅう]

前節ぜんせつ定義ていぎされたハーディ空間くうかんは、単位たんい円上えんじょう複素ふくそ Lp 空間くうかんの閉線がた部分ぶぶん空間くうかんなすことも出来できる。この関係かんけいは、以下いか定理ていりによってしめされる(Katznelson 1976, Thm 3.8):p ≥ 0 にたいfHpあたえられるとき、半径はんけいかんする極限きょくげん

はほとんどすべての θしーたたいして存在そんざいする。この関数かんすう 単位たんいえんたいする Lp 空間くうかんぞくし、つぎ成立せいりつする。

単位たんいえんTあらわし、すべての極限きょくげん函数かんすう からなる Lp(T) の線型せんけい部分ぶぶん空間くうかんHp(T) とあらわす。fHp うち変化へんかするとき、p ≥ 1 にたいしてつぎつ (Katznelson 1976)。

ただし ĝ(n) は単位たんい円上えんじょう積分せきぶん函数かんすう gフーリエ係数けいすうであり、つぎつ。

空間くうかん Hp(T) は Lp(T) の閉部分ぶぶん空間くうかんである。1 ≤ p ≤ ∞ にたいして Lp(T) はバナッハ空間くうかんであるため、Hp(T) もまた同様どうようにバナッハ空間くうかんとなる。

上述じょうじゅつ議論ぎろんぎゃくつ。p ≥ 1 にたいして函数かんすう Lp(T) があたえられるとき、ポアソンかく Prもちいて単位たんいえんばんじょう正則せいそく函数かんすう fつぎのようにさい構成こうせいすることが出来できる:

そして Hp(T) にぞくしているなら、fHpぞくす。Hp(T) ないにある、すなわち は、すべての n < 0 にたいして an = 0 をたすフーリエ係数けいすう (an)nZつと仮定かていする。このとき、関連かんれんするハーディ空間くうかん Hpもと f は、つぎ正則せいそく函数かんすうである。

応用おうよう場面ばめんでは、これらまけのフーリエ係数けいすう消失しょうしつしている函数かんすう通常つうじょう因果いんがかい(causal solution)と解釈かいしゃくされる。したがって空間くうかん H2自然しぜんL2 空間くうかん内側うちがわにあり、N によってけられる無限むげんれつとしてあらわされる。一方いっぽうL2Z によってけられる両側りょうがわ無限むげんれつ(bi-infinite sequence)から構成こうせいされる。

円上えんじょうじつハーディ空間くうかんとの関連かんれん[編集へんしゅう]

1 ≤ p < ∞ のとき、後述こうじゅつじつハーディ空間くうかん Hp現在げんざい文脈ぶんみゃく容易ようい表現ひょうげんすることが出来できる。単位たんい円上えんじょうじつ函数かんすう f は、それが Hp(T) ないのある函数かんすうであるなら、じつハーディ空間くうかん Hp(T) にぞくする。また複素ふくそ函数かんすう fじつハーディ空間くうかんぞくするための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、Re(f) および Im(f) がその空間くうかんぞくすることである(後述こうじゅつじつハーディ空間くうかんかんするふし参照さんしょうされたい)。

p < 1 にたいし、フーリエ係数けいすうやポアソン積分せきぶん共役きょうやく函数かんすうのような道具どうぐはもはや有効ゆうこうではない。たとえば、

かんがえる。函数かんすう Fすべての p < 1 にたいして Hpふくまれ、半径はんけいかんする極限きょくげん fHp(T) ないにあるが Re(f) はほとんどいたところで 0 とする。Re(f) から Fることはもはや出来できなく、上述じょうじゅつのような簡単かんたん方法ほうほう Hp(T) を定義ていぎすることは出来できない。

おな函数かんすう Fたいし、fr(eiθしーた) = F(reiθしーた) とする。r → 1 としたときの Re(fr) のちょう函数かんすう意味いみでの円上えんじょう極限きょくげんは、z = 1 でのデルタちょう函数かんすうゼロの倍数ばいすうひとしい。単位たんい円上えんじょう任意にんいてんでのデルタちょう函数かんすうは、すべての p < 1 にたいしてみのる Hp(T) にぞくする(後述こうじゅつ議論ぎろん参照さんしょう)。

うち函数かんすうそと函数かんすうへの因数いんすう分解ぶんかい(バーリング)[編集へんしゅう]

0 < p ≤ ∞ にたいし、Hp うちすべてのゼロ函数かんすう f は、以下いか定義ていぎされるそと函数かんすう(outer function)Gうち函数かんすう(inner function)hせき f = Ghあらわすことが出来できる (Rudin 1987, Thm 17.17)。このバーリング英語えいごばん因数いんすう分解ぶんかいは、ハーディ空間くうかんうち函数かんすうそと函数かんすう空間くうかんによって完全かんぜん特徴付とくちょうづけることをゆるす。

G(z) はつぎ形状けいじょうるとき、そと函数かんすうばれる。

ただし c は |c| = 1 であるような複素数ふくそすうで、φふぁい は log(φふぁい) が単位たんい円上えんじょう積分せきぶんであるようなせいはか函数かんすうである。とくφふぁい単位たんい円上えんじょう積分せきぶんであるなら、うえしきポアソンかく形状けいじょうるため、GH1ふくまれる。このことは、ほとんどすべての θしーたたいして

成立せいりつすることを意味いみする。

h(z) がうち函数かんすうであるとは、単位たんいえんばんじょうで |h(z)| ≤ 1 をたし、ほとんどすべての θしーたたいして極限きょくげん

存在そんざいし、そのははすうが 1 にひとしいことをう。とくに、hHふくまれる。うち函数かんすうはさらに、ブラシュケせき英語えいごばんふくかたち分解ぶんかいすることが出来できる。

f = Gh分解ぶんかいされる函数かんすう fHp うちにあるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、そと函数かんすう Gしきあらわれるせい函数かんすう φふぁいLp(T) にぞくすることである。

G を、単位たんい円上えんじょう函数かんすう φふぁい によって上述じょうじゅつのように表現ひょうげんされるそと函数かんすうとする。αあるふぁ > 0 にたいして φふぁいφふぁいαあるふぁえることで、つぎ性質せいしつたすそと函数かんすうぞく (Gαあるふぁ) をることが出来できる。

G1 = G, Gαあるふぁ+βべーた = Gαあるふぁ Gβべーた  and |Gαあるふぁ| = |G|αあるふぁ almost everywhere on the circle.

単位たんい円上えんじょうじつ変数へんすう手法しゅほう[編集へんしゅう]

Rn うえ定義ていぎされる「じつハーディ空間くうかん」(後述こうじゅつ)の研究けんきゅうおも関連かんれんするじつ変数へんすう手法しゅほうもまた、単位たんいえんかんするより簡単かんたん枠組わくぐみにおいてもちいられる。その手法しゅほうは、それら「空間くうかんにおける複素ふくそ函数かんすう(あるいはちょう函数かんすう)にたいする実践じっせんてきなものである。以下いか定義ていぎでは、実数じっすうおよび複素数ふくそすう場合ばあい区別くべつしない。

Pr単位たんいえん T うえのポアソンかくとする。単位たんい円上えんじょうちょう函数かんすう fたいして、つぎさだめる。

ここで「スター」の記号きごうは、単位たんい円上えんじょうでのちょう函数かんすう f函数かんすう eiθしーたPr(θしーた) のたたみをあらわす。すなわち、(fPr)(eiθしーた) は、単位たんい円上えんじょう

定義ていぎされる C-函数かんすうについての f作用さよう結果けっかである。0 < p < ∞ にたいし、じつハーディ空間くうかん Hp(T) は M f  が Lp(T) にぞくするようなちょう函数かんすう f より構成こうせいされる。

単位たんい円上えんじょうF(reiθしーた) = (fPr)(eiθしーた) で定義ていぎされる函数かんすう F調和ちょうわてきであり、M f  は F半径はんけい極大きょくだい函数かんすう(radial maximal function)である。M f  が Lp(T) にぞくし、p ≥ 1 であるとき、ちょう函数かんすう f  は Lp(T) の函数かんすう、すなわち、F境界きょうかいである。p ≥ 1 にたいし、じつハーディ空間くうかん Hp(T) は Lp(T) の部分ぶぶん空間くうかんである。

共役きょうやく函数かんすう[編集へんしゅう]

単位たんい円上えんじょうのすべてのじつ三角さんかく多項式たこうしき uたいし、u + iv単位たんいえんいたない正則せいそく函数かんすうとなるように拡張かくちょうできるじつ共役きょうやく多項式たこうしき vつぎのように定義ていぎできる。

この写像しゃぞう uv は、1 < p < ∞ のときには Lp(T) じょう有界ゆうかい線型せんけい作用素さようそ H へと拡張かくちょうされる(スカラーばいのぞき、それは単位たんい円上えんじょうヒルベルト変換へんかんである)。また HL1(T) をじゃく-L1(T) にもうつす。1 ≤ p < ∞ のとき、単位たんい円上えんじょうじつ数値すうち積分せきぶん函数かんすう fたいして、以下いか同値どうちである。

  • 函数かんすう f はある函数かんすう gHp(T) の
  • 函数かんすう f とその共役きょうやく H(f)Lp(T) にぞくする;
  • 半径はんけい極大きょくだい函数かんすう M f  は Lp(T) にぞくする。

1 < p < ∞ のとき、fLp(T) であるなら H(f)Lp(T) にぞくし、したがってじつハーディ空間くうかん Hp(T) はこの場合ばあい Lp(T) と一致いっちする。p = 1 にたいし、じつハーディ空間くうかん H1(T) は L1(T) の部分ぶぶん空間くうかんとなる。

L 函数かんすう極大きょくだい函数かんすう M f  はつね有界ゆうかいであり、みのる HLひとしくなることはのぞまれていないため、p = ∞ の場合ばあいじつハーディ空間くうかん定義ていぎから除外じょがいすることが出来できる。しかし、じつ数値すうち函数かんすう fたいしてつぎふたつの性質せいしつ同値どうちとなる。

  • 函数かんすう f  がある函数かんすう gH(T) の
  • 函数かんすう f  とその共役きょうやく H(f)L(T) にぞくする。

0 < p < 1 にたいするじつハーディ空間くうかん[編集へんしゅう]

0 < p < 1 のとき、Lpとつせい欠如けつじょにより、Hp うち函数かんすう F単位たんい円上えんじょう境界きょうかい極限きょくげん函数かんすうによってさい構成こうせいすることが出来できない。とつせいたされないが、あるしゅ複素ふくそとつせい、すなわち z → |z|q がすべての q > 0 にたいしてれつ調和ちょうわてきとなるという性質せいしつたされる。したがって、

Hpぞくするのであれば、cn = O(n1/p–1) であることがしめされる。フーリエ級数きゅうすう

ちょう函数かんすう意味いみである単位たんい円上えんじょうちょう函数かんすう f収束しゅうそくし、F(reiθしーた) =(f ∗ Pr)(θしーた) となる。F のテイラー係数けいすう cn は Re(f) のフーリエ係数けいすうより計算けいさんすることが出来できるので、函数かんすう FHp単位たんい円上えんじょうじつちょう函数かんすう Re(f) によってさい構成こうせいされる。すなわち p < 1 であれば、単位たんい円上えんじょうちょう函数かんすう一般いっぱんにハーディ空間くうかんあつかうえ十分じゅうぶんなものとなる。1 以上いじょう自然しぜんすう Nたいし、0 < N p < 1 であるなら、函数かんすう F(z) = (1−z)N(|z| < 1)にられるように、ちょう函数かんすうHpぞくする。

単位たんい円上えんじょうじつちょう函数かんすうじつ-Hp(T) にぞくするための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、それがある FHp境界きょうかいであることである。単位たんい円上えんじょう任意にんいてん x でのディラックちょう函数かんすう δでるたx は、すべての p < 1 にたいしてみのる-Hp(T) にぞくする。p < 1/2 であれば微分びぶん δでるたxぞくし、p < 1/3 であればかい微分びぶん δでるた′′xぞくする。以下いか同様どうようのことがつ。

うえ半平はんぺんめんたいするハーディ空間くうかん[編集へんしゅう]

えんばん以外いがい領域りょういきじょうでもハーディ空間くうかん定義ていぎすることは可能かのうで、複素ふくそ半平はんぺんめん通常つうじょうみぎ半平はんぺんめんあるいはうえ半平はんぺんめんじょうのハーディ空間くうかんおおくの応用おうよう場面ばめんもちいられている。

うえ半平はんぺんめん H うえのハーディ空間くうかん Hp(H) は、H うえ正則せいそく函数かんすう f からなる空間くうかんで、つぎ有界ゆうかいじゅん)ノルムをそなえるものとして定義ていぎされる。

これに対応たいおうする H(H) は、つぎあたえられる有界ゆうかいノルムをそなえる函数かんすうからなる空間くうかんとして定義ていぎされる。

単位たんいえんばん Dうえ半平はんぺんめん H は、メビウス変換へんかん意味いみ一方いっぽうから他方たほううつすことが可能かのうとなるが、ハーディ空間くうかんたいする領域りょういきとしてそれらは交換こうかん可能かのうではない。このちがいの原因げんいんは、単位たんいえん有限ゆうげん(1次元じげんルベーグ測度そくどつが、実数じっすう直線ちょくせんたないという事実じじつにある。しかし、H2たいしては、依然いぜんとしてつぎ定理ていりつ。メビウス変換へんかん m : DHつぎたすものがあたえられたとする。

このとき、ひとしちょう同型どうけい M : H2(H) → H2(D) で、つぎたすものが存在そんざいする。

Rnたいするじつハーディ空間くうかん[編集へんしゅう]

じつベクトル空間くうかん Rn うえ解析かいせきにおいて、ハーディ空間くうかん Hp(0 < p ≤ ∞)は、∫Φふぁい = 1 をたすあるシュワルツ函数かんすう Φふぁいたいして極大きょくだい函数かんすう英語えいごばん

Lp(Rn) にぞくするような、なる増加ぞうかちょう函数かんすう f によって構成こうせいされる。ここで ∗ はたたあらわし、Φふぁいt(x) = t −nΦふぁい(x / t) である。Hp うちちょう函数かんすう fHp-じゅんノルム ||f ||Hp は、MΦふぁいfLp ノルムとして定義ていぎされる(これは Φふぁい選択せんたく依存いぞんするが、ことなるシュワルツちょう函数かんすう Φふぁいえらんでも同値どうちなノルムがあたえられる)。Hp-じゅんノルムは p ≥ 1 のときノルムであるが、p < 1 のときはノルムではない。

1 < p < ∞ であるなら、ハーディ空間くうかん HpLpひとしいベクトル空間くうかんで、同値どうちなノルムをつ。p = 1 のとき、ハーディ空間くうかん H1L1部分ぶぶん集合しゅうごうである。L1 において有界ゆうかいであるが、H1 において有界ゆうかいであるようなれつ H1つけることが出来できる。たとえば、実数じっすう直線ちょくせんじょう以下いか函数かんすうげられる。

L1H1 のノルムは H1 うえ同値どうちではなく、H1L1 において閉ではない。H1双対そうついは、有界ゆうかい平均へいきん振動しんどう英語えいごばん函数かんすう空間くうかん BMO である。空間くうかん BMO有界ゆうかい函数かんすうふくむ(これはふたたび、H1L1 において閉でないことを意味いみする)。

p < 1 であるなら、ハーディ空間くうかん Hp函数かんすうではないもとち、その双対そうつい次数じすう n(1/p − 1) のどうつぎリプシッツ空間くうかんである。p < 1 のとき、Hp-じゅんノルムはれつ加法かほうてきではないため、ノルムではない。pつぎのベキ ||f ||Hppp < 1 のときれつ加法かほうてきであり、ハーディ空間くうかん Hp うえのある距離きょり定義ていぎする。それは位相いそう定義ていぎし、Hp完備かんび距離きょり空間くうかんにする。

原子げんし分解ぶんかい[編集へんしゅう]

0 < p ≤ 1 のとき、コンパクトなだい有界ゆうかいはか函数かんすう f がハーディ空間くうかん Hpぞくするための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、その次数じすう i1+ ... +in高々たかだか n(1/p − 1) であるすべてのモーメント

消失しょうしつすることである。たとえば、fHp, 0 < p ≤ 1 であるためには f積分せきぶん消失しょうしつする必要ひつようがある。p > n / (n+1) であるなら、その消失しょうしつ十分じゅうぶん条件じょうけんとなる。

さらに f があるたま Bだいち、|B|−1/p によって有界ゆうかいであるなら、fHp-原子げんしばれる(ここで |B| は Rn における B のユークリッド体積たいせきあらわす)。任意にんいHp-原子げんしHp-じゅんノルムは、p およびシュワルツ函数かんすう Φふぁい にのみ依存いぞんする定数ていすうによって有界ゆうかいとなる。

0 < p ≤ 1 のとき、Hp任意にんいもと f には、Hp-原子げんし収束しゅうそく無限むげん結合けつごうであるつぎ原子げんし分解ぶんかい存在そんざいする。

ここで ajHp-原子げんしであり、cj はスカラーである。

たとえば、ディラックちょう函数かんすう f = δでるた1δでるた0 は、1/2 < p < 1 のとき Hp-じゅんノルムにおいて収束しゅうそくであるようなハール函数かんすう級数きゅうすうとして表現ひょうげんできる(単位たんい円上えんじょうで、対応たいおうする表現ひょうげんは 0 < p < 1 にたいして有効ゆうこうとなるが、実数じっすう直線ちょくせんじょうではハール函数かんすうp ≤ 1/2 のときには Hpぞくさない。これはなぜならば、それらの極大きょくだい函数かんすう無限むげんだいにおいて、ある a ≠ 0 にたいする a x–2同値どうちとなるからである)。

Hpたいするマルチンゲール[編集へんしゅう]

(Mn)n≥0 をあるかくりつ空間くうかん (ΩおめがΣしぐまP) じょうの、σしぐま-からだ増加ぞうかれつ (Σしぐまn)n≥0かんするマルチンゲールとする。簡単かんたんのために、Σしぐま はそのれつ (Σしぐまn)n≥0 によって生成せいせいされる σしぐま-からだひとしいものと仮定かていする。そのマルチンゲールの極大きょくだい函数かんすうは、つぎ定義ていぎされる。

1 ≤ p < ∞ とする。マルチンゲール (Mn)n≥0M*Lp のとき、マルチンゲール-Hpぞくする。

M*Lp であるなら、マルチンゲール (Mn)n≥0Lp うち有界ゆうかいであり、したがってドゥーブのマルチンゲール収束しゅうそく定理ていり英語えいごばんによってほとんど確実かくじつにある函数かんすう f収束しゅうそくする。さらにゆう収束しゅうそく定理ていりによって、MnLp-ノルムにおいて f収束しゅうそくするため、MnΣしぐまn うえでの f条件じょうけん期待きたいとして表現ひょうげんされる。したがってマルチンゲール-Hp を、マルチンゲール

がマルチンゲール-Hpぞくするようなそれら f からなる Lp(ΩおめがΣしぐまP) の部分ぶぶん空間くうかんとして認識にんしきすることが出来できる。

ドゥーブの極大きょくだい不等式ふとうしきによると、マルチンゲール-Hp は 1 < p < ∞ のとき Lp(ΩおめがΣしぐまP) と一致いっちする。興味深きょうみぶか空間くうかんとして、双対そうついがマルチンゲール-BMO であるようなマルチンゲール-H1げられる (Garsia 1973)。

p > 1 のときの)バークホルダー=ガンディ不等式ふとうしきや、(p = 1 のときの)バージェス=デービス不等式ふとうしきは、極大きょくだい函数かんすうLp-ノルムを、マルチンゲールの自乗じじょう函数かんすう

関連付かんれんづける。マルチンゲール-Hp は、S(f)∈ Lp とすることで定義ていぎすることが出来できる (Garsia 1973)。

連続れんぞく時間じかんパラメータをともなうマルチンゲールもまた考慮こうりょすることが出来できる。古典こてんてき理論りろんとの直接的ちょくせつてき関連かんれんは、複素ふくそ平面へいめんない複素ふくそブラウン運動うんどう (Bt) で、てん z = 0 を時間じかん t = 0 に出発しゅっぱつするものをつうじてることが出来できる。τたう単位たんいえんへの到達とうたつ時刻じこくとする。単位たんいえんいたない任意にんい正則せいそく函数かんすう Fたいして、

がマルチンゲール-Hpぞくするマルチンゲールであるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、F ∈ Hp である(Burkholder, Gundy & Silverstein 1971)。

れい次項じこうマルチンゲール-H1[編集へんしゅう]

ここではれいとして、Ωおめが = [0, 1] とし、任意にんいn ≥ 0 にたいしてながさ 2n の 2n 区間くかんへの [0, 1] の次項じこう分割ぶんかつによって生成せいせいされる有限ゆうげんたいΣしぐまn とする。[0, 1] じょう函数かんすう f が、ハールシステム (hk) じょう展開てんかい

によってあらわされるなら、f のマルチンゲール-H1 ノルムは自乗じじょう函数かんすうL1 ノルム

によってあたえられる。この空間くうかんはしばしば H1(δでるた) と表記ひょうきされ、単位たんい円上えんじょう古典こてんてき H1 空間くうかん同型どうけいとなる(Müller 2005)。ハールシステムは、H1(δでるた) にたいする無条件むじょうけん基底きてい英語えいごばんである。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Burkholder, Donald L.; Gundy, Richard F.; Silverstein, Martin L. (1971), “A maximal function characterization of the class Hp, Transactions of the American Mathematical Society 157: 137–153, doi:10.2307/1995838, JSTOR 1995838, MR0274767, https://jstor.org/stable/1995838. 
  • Cima, Joseph A.; Ross, William T. (2000), The Backward Shift on the Hardy Space, American Mathematical Society, ISBN 0-8218-2083-4 
  • Colwell, Peter (1985), Blaschke Products - Bounded Analytic Functions, Ann Arbor: University of Michigan Press, ISBN 0-472-10065-3 
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  • Rudin, Walter (1987), Real and Complex Analysis, McGraw-Hill, ISBN 0-07-100276-6 
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