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ピアノ協奏曲きょうそうきょくだい2ばん (ラフマニノフ)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピアノ協奏曲きょうそうきょくだい2ばん短調たんちょう作品さくひん18(ピアノきょうそうきょくだい2ばんハたんちょうさくひん18)は、ロシア作曲さっきょくセルゲイ・ラフマニノフ作曲さっきょくした2番目ばんめピアノ協奏曲きょうそうきょくである。

概要がいよう

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作曲さっきょく時期じきは、1900ねんあきから1901ねん4がつ[1]1900ねん12月2にち従兄じゅうけいアレクサンドル・ジロティ指揮しき作曲さっきょくしゃのピアノでだい2楽章がくしょうだい3楽章がくしょう初演しょえんされたのち1901ねん11月9にち(ユリウスれき 10がつ27にち)に、おな指揮しきしゃ・ソリストにより全曲ぜんきょく初演しょえんされた[2]。その屈指くっしうつくしさによって、協奏曲きょうそうきょく作家さっかとしての名声めいせいてたラフマニノフの出世しゅっせさくである[3]発表はっぴょう以来いらい、あらゆる時代じだいつうじてつねもっと人気にんきのあるピアノ協奏曲きょうそうきょくのひとつであり、ロシアロマン音楽おんがく代表だいひょうするきょくひとつにかぞえられている。

おおくのラフマニノフのピアノきょくおなじく、ピアノの難曲なんきょくとしてられ、きわめて高度こうど演奏えんそう技巧ぎこう要求ようきゅうされる。たとえばだいいち楽章がくしょう冒頭ぼうとう和音わおん連打れんだ部分ぶぶんにおいて、ピアニストいちに10間隔かんかくひろげることが要求ようきゅうされており、ちいさいピアニストの場合ばあいはこの和音わおんかたまりアルペッジョにしてくことが通例つうれいとなっている。

作曲さっきょく経緯けいい

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ラフマニノフ、1900年代ねんだい初頭しょとう

ラフマニノフの《交響こうきょうきょくだい1ばん》は、いまでこそ重要じゅうよう業績ぎょうせき看做みなされているが、1897ねん初演しょえんには批評ひひょう酷評こくひょうった[4]私生活しせいかつにおける問題もんだい相俟あいまって、ラフマニノフはうつ傾向けいこう自信じしん喪失そうしつおちいり、創作そうさく不能ふのう状態じょうたいとなる。1899ねんロンドン・フィルハーモニック協会きょうかいまねきでイギリスにわたったラフマニノフは、ここでピアノ協奏曲きょうそうきょく作曲さっきょく依頼いらい創作そうさく開始かいしするが、ふたた強度きょうど精神せいしん衰弱すいじゃくにおそわれる。

しかし、1900ねん友人ゆうじんのすすめでニコライ・ダーリ博士はかせ催眠さいみん療法りょうほうはじめると快方かいほうかい、同年どうねんなつにはだい2、だい3楽章がくしょうをほぼ完成かんせいさせた。最大さいだい難関なんかんとしてちはだかっただい1楽章がくしょう同年どうねん12がつごろはじめ、1901ねんはるには全曲ぜんきょく完成かんせいさせた。初演しょえんだい成功せいこうわり、そのひろ演奏えんそうされて圧倒的あっとうてき人気にんきた。ほん作品さくひん成功せいこうは、ラフマニノフがそれまでのすう年間ねんかんにわたるうつびょうスランプ糸口いとぐちとなった。作品さくひんは、ラフマニノフの自信じしん回復かいふくのためにあらゆるくしたニコライ・ダーリ博士はかせ献呈けんていされた[5]

楽器がっき編成へんせい

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伝統でんとうてきな2かん編成へんせい演奏えんそう時間じかんやく35ふん

楽曲がっきょく構成こうせい

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ピアノ独奏どくそうによる導入どうにゅう
弦楽器げんがっきより呈示ていじされるだい1楽章がくしょうだい1主題しゅだい
音楽おんがく音声おんせい外部がいぶリンク
全曲ぜんきょく試聴しちょうする
Rachmaninow:2. Klavierkonzert - デニス・コジュヒンP)、マリン・オールソップ指揮しきhr交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう。hr交響こうきょう楽団がくだん公式こうしきYouTube。
Sergei Rachmaninoff - Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18 - デニス・マツーエフ(P)、ユーリ・テミルカーノフ指揮しきサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう。EuroArts(レコードレーベル公式こうしきYouTube。
Rachmaninoff:Piano Concerto no.2 op.18 - アンナ・フェドローヴァ(P)、マーティン・パンテレーエフ(Martin Panteleev)指揮しき北西ほくせいドイツ・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうAVROTROS Klassiek公式こうしきYouTube。
Rachmaninov Concerto N.2 - Lim Hyun-Jung(はやし鉉靜、HJ Lim;P)、パブロ・ゴンザレス指揮しきバルセロナ交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう当該とうがいソリスト自身じしん公式こうしきYouTube。

伝統でんとうてきな3楽章がくしょう構成こうせいである。

だい1楽章がくしょう

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Moderato, ハ短調たんちょう、2ぶんの2拍子ひょうし自由じゆうソナタ形式けいしき

主題しゅだい呈示ていじ先駆さきがけて、ピアノ独奏どくそうロシア正教せいきょうかねした、ゆっくりとした和音わおん連打れんだを、クレシェンドつづけながららす。導入どうにゅうがついに最高潮さいこうちょうたっしたところで主部しゅぶとなる。

主部しゅぶ最初さいしょで、オーケストラトゥッティがロシアてき性格せいかく旋律せんりつうたげるが、そのあいだピアノはアルペッジョ伴奏ばんそうおんがた直向ひたむきにかなでるにすぎない。このながだい1主題しゅだい呈示ていじわると、急速きゅうそくおとがた移行いこうつづき、それからへん長調ちょうちょうだい2主題しゅだいあらわれる。だい1主題しゅだいがオーケストラにあらわれるのにたいし、より抒情じょじょうてきだい2主題しゅだいは、まずピアノに登場とうじょうする(ちなみにピアノ独奏どくそうは、だい1主題しゅだい伴奏ばんそうおんがたから移行いこうまで、急速きゅうそく装飾音そうしょくおんがたかなつづける。これらのおとがたは、しばしばすず誤解ごかいされやすいが、ロシア正教会せいきょうかいちいさなかねしている)。

劇的げきてきまぐるしい展開てんかいは、楽器がっきほう調しらべせいえながら両方りょうほう主題しゅだいおとがた利用りようしており、このあいだあらたな楽想がくそうがゆっくりと形成けいせいされる。展開てんかい壮大そうだいなクライマックスをむかえると、あたか作品さくひん最初さいしょからかえしそうになるが、再現さいげん (Maestoso) はかなりちがったおもむきとなる。ピアノの伴奏ばんそうおんがたえてだい1主題しゅだい前半ぜんはん部分ぶぶん行進曲こうしんきょく調ちょう再現さいげんされたのち後半こうはん部分ぶぶんはピアノによって再現さいげんされる。そしてだい2主題しゅだい移行いこうなしで再現さいげんされ、入念にゅうねんコーダ準備じゅんびする。

だい1楽章がくしょうにおいてピアノ独奏どくそう特異とくいなことに、だい1主題しゅだいしゅ旋律せんりつ進行しんこうを、完全かんぜんにオーケストラ、とく弦楽げんがく合奏がっそうゆだねている。ピアノの演奏えんそう至難しなんなパッセージのおおくが、音楽おんがくてき情緒じょうちょてき必要ひつようせいから使つかわれており、しかも伴奏ばんそうとして表立おもてだって目立めだたないこともあり、ききてにピアノの超絶ちょうぜつ技巧ぎこう存在そんざいかんかせない。ピアノはオーケストラのオブリガートてき役割やくわりてっすることで、ときには室内楽しつないがくてきな、ときには交響こうきょうてき印象いんしょうすのに役立やくだっている。

だい2楽章がくしょう

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Adagio sostenuto, 長調ちょうちょう、4ぶんの4拍子ひょうし序奏じょそうきのふくあいさん形式けいしき

ピアノ独奏どくそううえにフルートがはいだい2楽章がくしょうだい1主題しゅだい冒頭ぼうとう

がっただい1楽章がくしょうわると、それとこう対照たいしょうをなす緩徐かんじょ楽章がくしょう弦楽げんがく合奏がっそうのppで神秘しんぴてきはじまりをげる。弦楽げんがく合奏がっそう序奏じょそうは、ハ短調たんちょうしゅ和音わおんから、クレシェンドしながら4小節しょうせつでホ長調ちょうちょう転調てんちょうしピアノ独奏どくそうれる。このピアノによるアルペッジョは1891ねん作曲さっきょくされたろくのピアノのための「ロマンス」の序奏じょそうからられている。この部分ぶぶんはピアノの右手みぎてが1小節しょうせつさんれん4かたまりが3つでまれている。そのリズムじょうに2はくからフルートの甘美かんびいきながいメロディーがはいってくる。その4ぶんの4拍子ひょうしと2ぶんの3拍子ひょうしじりつつ、最初さいしょフルートでかなでられたメロディーがクラリネット、ピアノ、ヴァイオリンへとがれていく。テンポががり、ピアノがだい2主題しゅだいおもなやむかのように短調たんちょうかなでる。ファゴットやていつるさらにフルートとオーボエなどとからみ、ピアノがメロディーをかなでて2かいがる。そのピアノソロになりテンポもがりはなやかな分散ぶんさん和音わおんのちオーケストラとからんで、ピアノのカデンツァへとすすむ。そのtempo Ⅰで最初さいしょの3れん4かたまりが3つのピアノのおとがたになり、そのうえ最初さいしょのメロディーをヴァイオリンがかなでて再現さいげんする。そのうつくしくみじか終結しゅうけつはいる。ここではピアノの右手みぎて和音わおんなみのようにれてかなで、最後さいごはピアノだけで2楽章がくしょうやさしくしずかにまとめる。

だい3楽章がくしょう

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Allegro scherzando, ハ短調たんちょう - 長調ちょうちょう、2ぶんの2拍子ひょうし

最初さいしょこえる長調ちょうちょう旋律せんりつは、循環じゅんかん形式けいしきによってだい1楽章がくしょうからされている。そのしゅたる楽想がくそう明確めいかくな2つの対照たいしょうてき主題しゅだいちながらも、ぜん楽章がくしょうもちいられたモチーフを断片だんぺんてき使つかったり、2つの主題しゅだい融合ゆうごうするなど、既存きそん形式けいしきにこだわらない自由じゆう書法しょほうかれている。ふく主題しゅだいをもつ変奏曲へんそうきょく、あるいは変則へんそくてきロンドとも解釈かいしゃくすることが出来できる。

スケルツォてきまぐれな性格せいかくみとめられるだい1主題しゅだいと、より抒情じょじょうてきだい2主題しゅだい交互こうごあらわれ、最後さいごのピアノのカデンツァののちにハ長調ちょうちょうぜん合奏がっそう (Maestoso) でふたつの主題しゅだい融合ゆうごうされてがるシーンは圧巻あっかんで、たか演奏えんそう効果こうかをもたらす。

伴奏ばんそう音楽おんがくとしての利用りようれい

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ポピュラー音楽おんがくでの利用りよう

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  • フランク・シナトラうたった"I Think of You"はだい1楽章がくしょうだい2主題しゅだい原曲げんきょくである(1957ねんのアルバム"Where Are You?"に収録しゅうろく)。
  • エリック・カルメンが、だい2楽章がくしょう主題しゅだい全米ぜんべい2のバラード「オール・バイ・マイセルフ」の原曲げんきょく使つかっている。またのちには、ラフマニノフの《交響こうきょうきょく だい2ばんだい3楽章がくしょう原曲げんきょくにして「こいにノータッチ」をヒットさせた。
  • X JAPANYOSHIKIが、ライブにおいてかれ自身じしんのドラムソロで使用しようしている。
  • ミューズだい1楽章がくしょうもとにして、"Space Dementia"および"Megalomania"(アルバム『オリジン・オブ・シンメトリー』所収しょしゅう)、さらだい3楽章がくしょうもとにして"Butterflies and Hurricanes"(アルバム『アブソルーション』)などを発表はっぴょうしている。
  • ヴォーカルグループのゴスペラーズがこのきょくだいさん楽章がくしょうのメロディーをモチーフにした「Sky High」を発売はつばいした。
  • フレディ・マーキュリー自作じさくアルバムの「バルセロナ(Barcelona)」ではスペインのソプラノ歌手かしゅモンセラート・カバリェと、だい1楽章がくしょうをモチーフをもちいた"THE FALLEN PRIEST(Rachmaninov's Revenge)"を作曲さっきょくしてうたっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Harrison, Max (2006). Rachmaninoff: Life, Works, Recordings. London: Continuum. pp. pp. 92–99. ISBN 0-8264-9312-2 
  2. ^ Classy Classical: Rachmaninoff's Works for Piano and Orchestra
  3. ^ Norris, Geoffrey (1993). The Master Musicians: Rachmaninoff. New York City: Schirmer Books. pp. 113-115. ISBN 0-02-870685-4. https://books.google.com/books?id=aPc2AAAACAAJ 
  4. ^ Steinberg, Michael (1998). The Concerto. Oxford University Press. pp. 357. ISBN 0-19-513931-3 
  5. ^ Steinberg, Michael (1998). The Concerto. Oxford University Press. pp. 358. ISBN 0-19-513931-3 

外部がいぶリンク

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