ブブゼラ

プラスチック製せいのブブゼラ

ブブゼラ (Vuvuzela) は、南みなみアフリカの楽器がっき。ツワナ語ごではレパタタ (lepatata) とも呼よばれる。

概要がいよう

ブブゼラの発生はっせいさせる音おと成分せいぶんを示しめした周波数しゅうはすうスペクトル

1メートルほどの長ながさのある金管楽器きんかんがっきの一種いっしゅ で、“スタジアム・ホーン” (stadium horn) とも呼よばれるチアホーンの一種いっしゅである。

金管楽器きんかんがっきの一種いっしゅ ではあるが、金属きんぞく製せいではなく合成ごうせい樹脂じゅし製せい のものが一般いっぱん的てきである。管かんを巻まかないストレート型がたの単純たんじゅんな構造こうぞうを持もち、バルブやトーンホールといった音階おんかい調整ちょうせい用ようの機構きこうを持もたず、信号しんごうラッパやナチュラルホルンに近ちかい。唇くちびるに当あて、唇くちびるを振動しんどうさせて吹ふくと、霧笛むてきや象ぞうの鳴なき声ごえのような単調たんちょうな、しかし非常ひじょうに大おおきな音おとが出でる。

南みなみアフリカのサッカーの試合しあいでよく吹ふき鳴ならされ、試合しあいの終盤しゅうばんになるとサポーターたちは相手あいてチームを倒たおすべく熱狂ねっきょう的てきにブブゼラを吹ふく。南みなみアフリカでは代表だいひょう戦せんに限かぎらず、国内こくないの試合しあいでも吹ふかれる。観客かんきゃく席せきで吹ふき鳴ならされる多数たすうのブブゼラの響ひびきは、共鳴きょうめいと共振きょうしんにより虫むしの大群たいぐんの羽音はおとのような音おとをスタジアム全体ぜんたいに響ひびかせる。多数たすうのブブゼラが一いち度どに吹ふき鳴ならされている状態じょうたいでは、会話かいわがままならない事ことも珍めずらしくない。

2010 FIFAワールドカップでは世界せかい各国かっこくのサポーターがブブゼラを吹ふき鳴ならして応援おうえんし、スタジアム全体ぜんたいにブブゼラの音おとが鳴なり響ひびく様子ようすはこの大会たいかいの象徴しょうちょう的てきな場面ばめんとなった。また、テレビ中継ちゅうけい等とうで南みなみアフリカの楽器がっきとして紹介しょうかいされ、日本にっぽんにおいても広ひろく認知にんちされるところとなった。

起源きげん

南みなみアフリカの教会きょうかい「ナザレ・バプティスト・チャーチ」の創始そうし者しゃIsaiah Shembe師しが1910年ねん頃ごろにレイヨウの角かくを用もちいて開発かいはつしたという説せつがある。当時とうじはサッカーの試合しあいで用もちいられるのではなく、同どう教会きょうかいの信徒しんとが祈いのりを捧ささげるときに吹ふき鳴ならしたという。1980年代ねんだいには、ダーバンにあるサッカークラブアマズールFCのサポーターたちがスタジアムで管楽器かんがっきを吹ふき始はじめ、その後ご、カイザー・チーフスFCのサポーターなどヨハネスブルク周辺しゅうへんに広ひろがったという。

ブブゼラが南みなみアフリカで一般いっぱん的てきになったのは1990年代ねんだいになってからで、この頃ころは既すでにプラスチック製せいが主流しゅりゅうになっていた。最もっとも古ふるいものは1965年ねん頃ころに登場とうじょうしたと言いわれるが、それ以前いぜんの記録きろくは存在そんざいしない。一説いっせつによるとクーズー（ネジツノレイヨウ） の角かくで出来できた民族みんぞく楽器がっきが元もとになっているとされている がこれには異論いろんがあり、ブブゼラの起源きげんを巡めぐっては論争ろんそうも起おきている。

「ブブゼラ」という名称めいしょうの起源きげんについては見解けんかいが分わかれている。「ブブという音おとを出だす」を意味いみするズールー語ごであるという説せつや、「シャワー」を意味いみする非ひ白人はくじん居住きょじゅう地域ちいきにおけるスラングであるとする説せつがある。

メキシコでは1970年代ねんだい以降いこう、ブブゼラに似にたプラスチック製せいのラッパがスポーツの応おう援用えんようや祭まつりでの鳴物なりものとして用もちいられている。南みなみアフリカでは1990年代ねんだいに広ひろまり、元もとは錫すず製せいのものであった。

カイザー・チーフスFCのファンであるフレディ・“サダム”・マァケ (Freddie "Saddam" Maake) は、自分じぶんがブブゼラを発明はつめいしたと主張しゅちょうしている。マァケによると1960年代ねんだいに自転車じてんしゃ用ようのホーンを口くちで吹ふけるように改造かいぞうし、全長ぜんちょうを延のばしたのだという。彼かれは1970年代ねんだいと1980年代ねんだいの地元じもとのサッカーの試合しあい、1992年ねんと1996年ねんの国際こくさい試合しあい、さらに1998年ねんにフランスで行おこなわれたワールドカップにおいてアルミニウム製せいのブブゼラを持もって写うつった写真しゃしんを持もっている。マァケはアルミニウム製せいのブブゼラが危険きけんであるという理由りゆうで禁止きんしされたことで、プラスチック製せいのブブゼラを製造せいぞうする企業きぎょうを探さがすようになったと述のべている。

2001年ねんには南みなみアフリカの企業きぎょうがプラスチック製せいのブブゼラを大量たいりょう生産せいさんして安価あんかに供給きょうきゅうするようになり、爆発ばくはつ的てきに普及ふきゅうした。その後ご、2004年ねんごろからは中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの企業きぎょうが参入さんにゅう、2010年ねん現在げんざい広東かんとん省しょうなどで大量たいりょう生産せいさんされプラスチック製せいブブゼラの9割わりが同国どうこくで生産せいさんされていると見みられる。

問題もんだい点てん

プラスチック製せいブブゼラに成形せいけいされている、“人ひとの耳元みみもとで吹ふかないこと”を図示ずしした警告けいこく表示ひょうじ

ブブゼラは非常ひじょうに大おおきな音おとが出でる楽器がっきで、騒音そうおん性せい難聴なんちょうを引ひき起おこす可能かのう性せいがある。スイスの補聴器ほちょうき会社かいしゃが設立せつりつした財団ざいだんは85デシベルの音おとに長時間ちょうじかんさらされることで難聴なんちょうが引ひき起おこされる可能かのう性せいがあるところ、ブブゼラは127デシベルの音おとを出だすことから耳みみ栓せんの使用しようが推奨すいしょうされるとしている。プレトリア大学だいがく教授きょうじゅのDe Wet Swanepoelは3万まん人にん収容しゅうようのスタジアムでブブゼラの音おとにさらされた11名めいについて、一時いちじ的てきにではあるが深刻しんこくな聴力ちょうりょくの低下ていかがみられたとしている。

後述こうじゅつのように南みなみアフリカで開催かいさいされたFIFAコンフェデレーションズカップ2009と2010 FIFAワールドカップにおいてブブゼラが出だす大おおきな音おとに対たいする不満ふまんが挙あがり問題もんだい視しされたものの、FIFAおよび2010 FIFAワールドカップの組織そしき委員いいん会かいはブブゼラによる応援おうえんを禁止きんししていない。しかし世界中せかいじゅうの視聴しちょう者しゃなどから耳障みみざわりとの苦情くじょうもありフランスのケーブルテレビ局てれびきょくが音響おんきょう効果こうか機器ききを使用しよう、ブブゼラの音おとの周波数しゅうはすうだけをカットして放映ほうえいすることに成功せいこうした。

風邪かぜやインフルエンザの病原菌びょうげんきんを、咳せきや歓声かんせいによる場合ばあいよりも大だい規模きぼに拡散かくさんさせる可能かのう性せいも指摘してきされている。

国際こくさい大会たいかいにおける取とり扱あつかい

ブブゼラを吹ふく南みなみアフリカのサッカーファン

ブブゼラはアフリカ、特とくに南みなみアフリカにおいてサッカーの試合しあいが行おこなわれた際さいや南みなみアフリカの選手せんしゅが自国じこく外がいで試合しあいを行おこなった際さいに観客かんきゃくが吹ふき鳴ならし、その大おおきな音おとが問題もんだいとされた例れいが多々たたあった。

南みなみアフリカにおいてFIFAコンフェデレーションズカップ2009が開催かいさいされた際さい、放送ほうそう局きょくや選手せんしゅの一部いちぶからブブゼラが出だす大おおきな音おとに対たいする不満ふまんや苦情くじょうが出でた。

FIFAは2008年ねん7月がつ、FIFAコンフェデレーションズカップ2009においてブブゼラを禁止きんししない方針ほうしんをとることを決定けってい。さらにFIFAコンフェデレーションズカップ2009開催かいさい中ちゅうの2009年ねん6月18日にち、ゼップ・ブラッターFIFA会長かいちょうは同どう大会たいかい及および翌年よくねんに南みなみアフリカで開催かいさいされる2010 FIFAワールドカップにおいてもブブゼラの使用しようを禁止きんしする考かんがえのないことを明言めいげん しFIFAは2010 FIFAワールドカップにおいても1メートル以上いじょうの長ながさのものを除のぞき ブブゼラによる応援おうえんを容認ようにんした。ブラッター会長かいちょうは、「アフリカで開催かいさいされるワールドカップをヨーロッパ化かすべきでない」と主張しゅちょうしている。

2010 FIFAワールドカップの組織そしき委員いいん会かいは大会たいかい開幕かいまく直前ちょくぜんにブブゼラの騒音そうおんに関かんする調査ちょうさを行おこない 同どう委員いいん会かい会長かいちょうが「非常時ひじょうじのアナウンスをかき消けしたり、国歌こっか斉唱せいしょうの際さいに非礼ひれいにあたる可能かのう性せいがある」と懸念けねんを表明ひょうめいしたが、使用しようを禁止きんしする措置そちは講こうじられなかった。その結果けっか、大会たいかい2日にち目めまでは国歌こっか斉唱せいしょう時ときにも吹ふき鳴ならされたが大会たいかい3日にち目め以降いこうは国歌こっか斉唱せいしょう時じにブブゼラはほとんど吹ふかれなくなった。

禁止きんしされた主おもなイベント

• カーディフ・シティ、SWALEC、およびミレニアム・スタジアムのすべてのイベント
• ウィンブルドン選手権せんしゅけん
• メルボルン・クリケット・グラウンド
• ヤンキー・スタジアム
• サウスイースタン・カンファレンスの試合しあい
• UFCのすべてのイベント
• ゲーリック体育たいいく協会きょうかいのイベント
• 2010年ねんバスケットボール世界せかい選手権せんしゅけん
• UEFA主催しゅさい試合しあい
• ラグビーワールドカップ2011
• ロンドンオリンピック (2012年ねん)
• フジロックフェスティバル
• アトランタ・スラッシャーズのホーム試合しあい
• KHL

関連かんれん項目こうもく

• チアホーン - ブブゼラと同おなじく騒音そうおん問題もんだいに発展はってんした経緯けいいがある。日本にっぽんのJリーグでは、自粛じしゅく措置そちが取とられている。
• マカラパ - ブブゼラと同おなじく、南みなみアフリカのサッカー応援おうえんスタイルに登場とうじょうする、装飾そうしょくを施ほどこしたヘルメット。
• バルサホーン - 吹ふく部分ぶぶんとラッパの部分ぶぶんの2本ほんで構成こうせいされる吹奏楽すいそうがく器き。日本にっぽんのJリーグではブブゼラより浸透しんとうしているが、南みなみアフリカワールドカップ以来いらい、「ブブゼラ」と誤認ごにんされがち。
• カシローラ - 2014 FIFAワールドカップ公式こうしき応援おうえんグッズとして開発かいはつされた楽器がっき。

外部がいぶリンク

• Vuvuzela Concert -「ディー・ツァイト」紙し電子でんし版ばんの企画きかくでブブゼラを演奏えんそうするベルリン・コンツェルトハウス管弦楽かんげんがく団だんの金管楽器きんかんがっき奏者そうしゃたち。