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ボレロ (ラヴェル)

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Ravel:Boléro - ダニエル・バレンボイム指揮しきウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうBBC公式こうしきYouTube。
Ravel:Boléro - リオネル・ブランギエ指揮しきフランス放送ほうそうフィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうFrance Musique公式こうしきYouTube。
Maurice Ravel:Bolero - グスターボ・ドゥダメル指揮しきウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそう。ACCENTUS Music(音楽おんがくプロダクション)公式こうしきYouTube。
ラヴェル:ボレロ - レナード・スラットキン指揮しきフランス国立こくりつリヨン管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうナクソス・ジャパンレコードレーベル公式こうしきYouTube。
ラヴェル:ボレロ - エイドリアン・リーパー指揮しきロイヤル・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそう。ナクソス・ジャパン(レコードレーベル)公式こうしきYouTube。
Ravel Bolero - 寺岡てらおかきよしだか指揮しき浜松はままつ国際こくさい管楽器かんがっきアカデミー&フェスティヴァル2014管弦楽かんげんがくだんによる演奏えんそうヤマハ当該とうがい催事さいじ主催しゅさいしゃ公式こうしきYouTube。

ボレロ』(ふつ: Boléro)は、フランス作曲さっきょくモーリス・ラヴェル1928ねん作曲さっきょくしたバレエきょくである。同一どういつのリズムがたもたれているなかで、2種類しゅるい旋律せんりつかえされるという特徴とくちょうてき構成こうせいゆうしており、現代げんだいでもバレエの世界せかいまらず、ひろあいされる音楽おんがくひとつである。2016ねん5がつ1にち本国ほんごくフランスにおいて著作ちょさくけん消滅しょうめつした。

作曲さっきょく経緯けいい[編集へんしゅう]

このきょくは、バレエ演者えんじゃイダ・ルビンシュタイン依頼いらいにより、スペインじんやくのためのバレエきょくとして制作せいさくされた。当初とうしょ、ラヴェルはイサーク・アルベニスのピアノきょくしゅうイベリア』から6きょくオーケストラ編曲へんきょくすることでルビンシュタインと合意ごういしていたが、『イベリア』にはすでにアルベニスの友人ゆうじんであるエンリケ・フェルナンデス・アルボス編曲へんきょく存在そんざいした。ラヴェルの意図いとったアルボスは「のぞむなら権利けんりゆずりましょう」と打診だしんしたが、ラヴェルはそれをっていちからこすこととした。

作曲さっきょくは1928ねんの7がつから10がつごろにかけておこなわれた。同年どうねんなつ、アメリカへの演奏えんそう旅行りょこうからかえってきたラヴェルは、海水浴かいすいよくおとずれていたサン=ジャン=ド=リュズ別荘べっそう友人ゆうじんギュスターヴ・サマズイユにこのきょく主題しゅだいをピアノでいてみせ、単一たんいつ主題しゅだいをオーケストレーションを変更へんこうしながらなんかえ着想ちゃくそう披露ひろうした[1]当初とうしょは『ファンダンゴ』という題名だいめい予定よていされていたが、まもなく『ボレロ』に変更へんこうした。

原義げんぎ[編集へんしゅう]

Boleroとはスペインで18世紀せいきまつころにセギディーリャ一種いっしゅとしてつくされた3/4拍子ひょうし特徴とくちょうとする舞曲ぶきょくである[2][3]かろやかなのこなしからvolar(ぶ)という言葉ことば関連かんれんがあるというせつがある。この舞踊ぶようは1780ねんにスペインの舞踏ぶとうS.セレソによって創作そうさくされ、ギターとタンバリンの伴奏ばんそうおどしゅ1人ひとりまたは2人ふたりぐみでカスタネットをらしながら複雑ふくざつなステップをむ。

初演しょえん[編集へんしゅう]

初演しょえん1928ねん11月22にちパリ・オペラにおいて、ヴァルテール・ストララムフランス語ふらんすごばん指揮しき、イダ・ルビンシュタインのバレエだん振付ふりつけ: ブロニスラヴァ・ニジンスカ)によっておこなわれた[1]翌年よくねん、イダ・ルビンシュタインがっていた演奏えんそう会場かいじょうにおける1年間ねんかん独占どくせんけんがなくなると、『ボレロ』は各地かくちのオーケストラによってげられる人気にんききょくとなり、世界せかい一流いちりゅうオーケストラが『ボレロ』の演奏えんそう拒否きょひするだろうとかんがえていたラヴェルをおおいにおどろかせた[1]。1930ねん1がつにラヴェルはコンセール・ラムルー管弦楽かんげんがくだん指揮しきし、どうきょく録音ろくおんおこなった。

日本にっぽん初演しょえんは、1931ねん1がつ28にち日本にっぽん青年せいねんかんにて、ニコライ・シフェルブラットしん交響こうきょう楽団がくだんNHK交響こうきょう楽団がくだん前身ぜんしん)によりおこなわれた。

あらすじ[編集へんしゅう]

セビリアのとある酒場さかば一人ひとりおどが、舞台ぶたい足慣あしならしをしている。やがてきょうってきて、りがおおきくなってくる。最初さいしょはそっぽをいていたきゃくたちも、次第しだいおどりにけ、最後さいごには一緒いっしょおどす。

楽曲がっきょく[編集へんしゅう]

長調ちょうちょうで、一般いっぱんてき演奏えんそうでは、このきょくながさは15ふん程度ていどである[ちゅう 1]。 このきょくは、つぎのような特徴とくちょうつ。

  1. 最初さいしょから最後さいごまで(最後さいごの2小節しょうせつのぞく)おなじリズムがかえされる。
  2. 最初さいしょから最後さいごまで1つのクレッシェンドのみ
  3. メロディもA、B、2つのパターンのみ

これだけをるときわめて単調たんちょうなようにおもわれるが、実際じっさい演奏えんそう非常ひじょうゆたかな色彩しきさいをみせる。きょくは、スネアドラムによる後述こうじゅつのリズムがきざまれるなかフルートによってはじまる。フルートはAの演奏えんそうえるとスネアドラムとおなじリズムをきざはじめ、わってクラリネットがAのメロディーをかなでる。このように、次々つぎつぎことなった楽器がっき構成こうせいによりメロディーがかなでられ、メロディーもリズムも次第しだいいきおいをしていく。そして最後さいごには、フルート、ピッコロオーボエオーボエ・ダモーレコーラングレ、クラリネット、ファゴットコントラファゴットホルントランペットピッコロ・トランペットトロンボーンテューバチェレスタハープヴァイオリンヴィオラチェロコントラバスというだい編成へんせいで、圧倒的あっとうてき重厚じゅうこうさ(並行へいこう3や5わせたりもしている)でA、Bのメロディーを演奏えんそうすると、きょくはじめてA、Bのメロディーをはなれた旋律せんりつうつり、ちょう3たかいホ長調ちょうちょう転調てんちょうふたたびハ長調ちょうちょうもどり、ほぼすべての楽器がっきがボレロのリズムを演奏えんそうだい太鼓たいこサスペンド・シンバルタムタムくわわり最高潮さいこうちょうむかえ、最後さいごの2小節しょうせつ下降かこう調ちょう終焉しゅうえんむかえる。現代げんだい音楽おんがくミニマル・ミュージックつうじる展開てんかいである。

『ボレロ』はラヴェルゆかりのスペインの民族みんぞく舞踊ぶようであるにもかかわらず、自筆じひつスコアの研究けんきゅうではトライアングルカスタネット作曲さっきょく過程かてい抹消まっしょうされ、ぎゃくE♭クラリネットソプラノ・サクソフォーン追加ついかされるなど、そのルビンシュタインの「スペインじんやく」という出自しゅつじはんして民族みんぞくしょくされたじょう[ちゅう 2]、ラヴェルがった録音ろくおん総譜そうふ指示しじあるいは舞踊ぶようとしての『ボレロ』よりテンポがおそいものばかりで、指揮しきしゃトスカニーニ実演じつえんせっしたラヴェルは、そのテンポのはやさに激怒げきどし、トスカニーニと口論こうろんにまでなったという(しかし、ラヴェルの弟子でしマニュエル・ロザンタールは、著書ちょしょ『ラヴェル──その素顔すがお音楽おんがくろん』のなかで、この有名ゆうめい逸話いつわ真実しんじつではないとかたっている)。

楽器がっき編成へんせい[編集へんしゅう]

編成へんせいひょう
木管もっかん 金管きんかん つる
Fl. 2 (Picc.1), Picc. Hr. 4 Timp. 3 (1人ひとり) Vn.1
Ob. 2 (Ob.d'am.1), C.ing. Trp. 3, D Trp. T.mil. 2, Ptti., Gr.C., Tam-t. Vn.2
Cl. 2 (Pte Cl.1), Cl.b. Trb. 3 Va.
Fg. 2, Cfg. Tub. 1 Vc.
Sax.sino , Sax.s., Sax.t.Cb.
そのCel., Harpe

基本きほんリズム[編集へんしゅう]

基本きほんリズムは以下いかのようになっている。

このリズムを、スネアドラム(小太鼓こだいこ)が、最初さいしょから最後さいごまでおなじテンポで演奏えんそうする。

のち段々だんだんとリズムをきざ楽器がっきえていく。

メロディと音色ねいろ構成こうせい[編集へんしゅう]

メロディの構成こうせい[編集へんしゅう]

メロディはパターンA(16小節しょうせつ)とパターンB(16小節しょうせつ)があり、この2つのパターンが、以下いかのようにかえされる。

  1. AABB のくみを4かいかえし。
  2. Aを1かい演奏えんそう
  3. B'を1かい演奏えんそう。(ここでB'とは、Bのメロディの後半こうはん部分ぶぶんがコーダになっているものである)

楽器がっきわせ[編集へんしゅう]

メロディーをかなでる楽器がっき[編集へんしゅう]

メロディをかなでる楽器がっき以下いかのように変化へんかする。なお、数字すうじはA/Bのりょうパターンをとおしでっている。以下いか楽器がっきめいのちにAパターンかBパターンかをしめす。

  1. だい1フルート(A)
  2. だい1クラリネット(A)
  3. だい1ファゴット(B)
  4. しょうクラリネット(B)
  5. オーボエダモーレ(A)
  6. だい1フルート、だい1トランペット弱音よわねき)(A)
  7. テナーサクソフォーン(B)
  8. ソプラニーノサクソフォーンソプラノサクソフォーン今日きょうではソプラノサクソフォーン1ほん演奏えんそう)(B)
  9. ピッコロ長調ちょうちょうト長調とちょうちょう)、ホルン長調ちょうちょう)、チェレスタ(ハ長調ちょうちょう)(A)
  10. オーボエ、オーボエダモーレ(ト長調とちょうちょう)、コーラングレだい1,2クラリネット(A)
  11. だい1トロンボーン(B)
  12. フルート、ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、テナーサクソフォーン(B)
  13. フルート、ピッコロ、オーボエ、クラリネット、だい1ヴァイオリン(A)
  14. フルート、ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、テナーサクソフォーン、だい1ヴァイオリン、だい2ヴァイオリン(A)
  15. フルート、ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、だい1トランペット、だい1ヴァイオリン、だい2ヴァイオリン(B)
  16. フルート、ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、だい1トロンボーン、ソプラノサクソフォーン、だい1ヴァイオリン、だい2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ(B)
  17. フルート、ピッコロ、トランペット、サクソフォーン、だい1ヴァイオリン(A)
  18. フルート、ピッコロ、トランペット、だい1トロンボーン、サクソフォーン、だい1ヴァイオリン、ピッコロトランペット、テナーサックス(B)
リズムをかなでる楽器がっき[編集へんしゅう]

つぎにあげる楽器がっきほかに、終始しゅうしスネアドラムっている。

  1. スネアドラムのみ
  2. だい2フルート
  3. だい1フルート
  4. だい2フルート
  5. ファゴット
  6. だい1ホルン
  7. だい2トランペット
  8. だい1トランペット
  9. だい1フルート、だい2ホルン
  10. だい4ホルン、だい3トランペット、だい2ヴァイオリン、ヴィオラ
  11. だい1フルート、だい2ホルン、ヴィオラ
  12. だい4ホルン、だい1トランペット、だい2ヴァイオリン
  13. だい1・だい2ホルン
  14. だい3・だい4ホルン
  15. だい1・だい2ホルン
  16. ホルン
  17. オーボエクラリネット、ホルン、だい1ヴァイオリン、だい2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ
  18. オーボエ、クラリネット、ホルン、だい1ヴァイオリン、だい2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ

オルガンから借用しゃくようした手法しゅほう[編集へんしゅう]

きょくちゅう旋律せんりつ完全かんぜん並行へいこう音程おんていかさねられている箇所かしょがあるが、オーケストラのなか非常ひじょう新鮮しんせんひびくこの効果こうかは、パイプ・オルガン日常にちじょうてき使用しようされる倍音ばいおんわせをれた手法しゅほうわれている。実際じっさいそうする鍵盤けんばんにとって倍音ばいおん関係かんけいにあるおと発音はつおんされるパイプぐん並行へいこう音程おんていたもって装備そうびされており、それらを自在じざいわせることによって種々しゅじゅ倍音ばいおん構成こうせい特徴とくちょうづけるという技術ぎじゅつは、パイプ・オルガンにおいて複雑ふくざつ音色ねいろ常套じょうとう手法しゅほうである。上記じょうき9.箇所かしょにおいては、ホルン実音みお基音きおんとみなされ、それにたいしてだい2倍音ばいおんチェレスタが、だい3倍音ばいおんピッコロが、だい4倍音ばいおんをチェレスタが、だい5倍音ばいおんをピッコロが、それぞれの楽器がっき実音みおによってかさねられることでかがやかしい音色ねいろされている。実際じっさいのパイプ・オルガンにおいてのれいとしては、ストップを8' + 4' + 2 2/3' + 2' + 1 3/5'のわせによってホルンパートをそうすると、実際じっさいまったおなおんわせができあがる。また、それらをもっと高次こうじ倍音ばいおんとみなしてべつわせでおな効果こうかをもたらすこともできる。くわしくはストップ参照さんしょう

上記じょうき9.箇所かしょれい

楽譜がくふ[編集へんしゅう]

国際こくさい楽譜がくふライブラリープロジェクトにあるオリジナルスコアとう(いくつかのくにではパブリックドメインではないことに注意ちゅうい)。

編曲へんきょく[編集へんしゅう]

『ボレロ』が使用しようされている作品さくひん[編集へんしゅう]

単純たんじゅん構成こうせいとそこからかもされるゆたかさから、このきょく人気にんきがあり、様々さまざま場面ばめん使つかわれている。

バレエ・舞踊ぶよう[編集へんしゅう]

  • モーリス・ベジャールによるバレエの振付ふりつけ初演しょえんは1961ねんシルヴィ・ギエム映画えいがあいかなしみのボレロ』のげきちゅうクライマックスでおどったジョルジュ・ドン代表だいひょうさくひとつにもなっている。「ベジャールによるボレロの振付ふりつけ」は、日本にっぽんはじめて、パフォーマンスとしての知的ちてき財産ざいさんけん獲得かくとくしており、許可きょかなくこの振付ふりつけおどることはゆるされなかった。
  • ローラン・プティによるバレエの振付ふりつけ初演しょえんは1999ねん
  • 能楽のうがく野村のむらまんときけ・主演しゅえんによる『MANSAI ボレロ』。どくまいと、日本にっぽん舞踊ぶよう40にん共演きょうえんしたバージョンがある。

映画えいが・ドラマ[編集へんしゅう]

アニメ[編集へんしゅう]

CM[編集へんしゅう]

フィギュアスケート[編集へんしゅう]

その[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ラヴェルは17ふんのぞんでいたという(『作曲さっきょくべつ名曲めいきょく解説かいせつライブラリー11 ラヴェル』音楽之友社おんがくのともしゃ、p.38)。スコアじょうのテンポ指示しじは4ふん音符おんぷ=72だが、60、つまり1びょうきざみで演奏えんそうすると17ふんになる。
  2. ^ ラヴェルは"Finding Tunes in Factories"とだいしたエッセイのなかの'Music of Machines'で、『ボレロ』は工場こうじょうからインスピレーションをいたきょく、としるしている。「わたしの作品さくひん『ボレロ』は工場こうじょうから発想はっそうています。いつのか、壮大そうだい産業さんぎょうおん背景はいけいに、このきょく演奏えんそうしてみたいとおもっています。」(New Britain: August 9, 1933)/アービー ・オレンシュタインへん "A Ravel Reader: Correspondence, Articles, Interviews" * 日本語にほんごやく全文ぜんぶん工場こうじょう音楽おんがくをみつける』1933.8.9)
  3. ^ 芸術げいじゅつてんは9にん全員ぜんいんが6てん技術ぎじゅつてんは3にんが6てんのこり6にんが5.9てんをそれぞれけた。
  4. ^ ただし、カウントダウンに失敗しっぱいしたかず最多さいただい5かいだい17かい)。なお、公式こうしきには失敗しっぱいは1もないことになっている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c アービー・オレンシュタイン、井上いのうえさつきやく『ラヴェル 生涯しょうがい作品さくひん音楽之友社おんがくのともしゃ、2006ねん
  2. ^ 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんだいはん「ボレロ」[1]
  3. ^ ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてんしょう項目こうもく事典じてん「ボレロ」[2]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]