マッターホルン

マッターホルン
ツェルマットから臨のぞむマッターホルンの北東ほくとう側がわ。左ひだりが東ひがし壁かべで右みぎが北きた壁かべ
標高ひょうこう	4,478 m
所在地しょざいち	スイス・イタリア国境こっきょう
位置いち	北緯ほくい45度ど58分ふん40.58秒びょう 東経とうけい07度ど39分ふん35.86秒びょう
山系さんけい	アルプス山脈あるぷすさんみゃく
初はつ登頂とうちょう	1865年ねん エドワード・ウィンパーら
マッターホルン (アルプス山脈あるぷすさんみゃく)
OpenStreetMap
プロジェクト 山やま

イタリア側がわから見みた姿すがた

マッターホルン（独どく: Matterhorn）は、アルプス山脈あるぷすさんみゃくに属ぞくする標高ひょうこう4,478mの山やまである。イタリア語ごでは「チェルヴィーノ」（Cervino、「鹿しかの角かく」の意い）、フランス語ふらんすごでは「セルヴァン」（Cervin）である。

山頂さんちょうにはスイスとイタリアの国境こっきょうが通とおり、麓ふもとの町まちはスイス側がわにツェルマット、イタリア側がわにブレイユ＝チェルヴィニアがある。マッターホルンという名称めいしょうは、ドイツ語ごで牧草ぼくそう地ちを表あらわす「Matt」と、角かくまたは角かくのような山頂さんちょうを表あらわす「Horn」に由来ゆらいしている。

地形ちけいと地質ちしつ

山やま体たいはピラミッド型かたで4つの斜面しゃめんがあり、東ひがし壁かべの落差らくさは1,000 m、北きた・南みなみ・西にし壁かべはそれぞれ1,200 m・1,350 m・1,400 mほどである。東ひがし壁かべと北きた壁かべがツェルマットから見みえる。傾斜けいしゃが激はげしい斜面しゃめんでは氷雪ひょうせつはわずかに残のこるのみである。雪ゆきは雪崩なだれを起おこして滑すべり落おち、場所ばしょによっては氷河ひょうがを造つくり出だす。マッターホルンの切きり立たった北きた壁かべは、アイガーおよびグランド・ジョラスと合あわせ三さん大北おおきた壁かべと呼よばれる。

基部きぶは堆積岩たいせきがんであるが山やま体たいは片かた麻あさ岩がんで形成けいせいされている。パンゲア大陸たいりくが分裂ぶんれつし始はじめた2億おく年ねん前まえにゴンドワナ大陸たいりくのアフリカ部分ぶぶんとして残のこったアプーリア・プレートが、1億おく年ねん前まえに同どう大陸たいりくから分離ぶんりしヨーロッパ大陸たいりくへ移動いどうして乗のり上あげた、ナッペと言いわれる地質ちしつ構造こうぞうを示しめす。山容さんようはその後ごの氷河ひょうがの作用さようで形成けいせいされたもので、こういった地形ちけいは氷こおり食しょく尖峰せんぽうと呼よばれる。

登山とざん史し

マッターホルンが制覇せいはされたのはアルプスの他ほかの山々やまやまと比くらべれば最近さいきんのことである。これは技術ぎじゅつ的てきな困難こんなんによるものではなく、この山さんが霊峰れいほうであるということを初期しょきの登山とざん家か達いたるが恐おそれたからであった。マッターホルン制覇せいはの試こころみが始はじまったのは1857年ねん頃ごろで、多おおくの登山とざん家かはイタリア側がわから挑戦ちょうせんした。しかしイタリア側がわの登山とざん路ろは険けわしく、多おおくの登山とざん隊たいは岩いわ壁かべを攻略こうりゃくできずに退散たいさんした。

数すう回かいの失敗しっぱいと民族みんぞく主義しゅぎ的てきな中傷ちゅうしょうを受うけつつも、1865年ねん7月がつ14日にち、エドワード・ウィンパー、チャールズ・ハドソン、フランシス・ダグラス卿きょう、ダグラス・ハドウのイギリス人ひとパーティはミシェル・クロとタウクヴァルター父子ふしをガイドにして登頂とうちょうに挑戦ちょうせんして初はじめてこれに成功せいこう、これがアルプス黄金おうごん時代じだいの終焉しゅうえんとされる。この時ときに選えらんだヘルンリ尾根おねを通とおる登山とざん路ろは他たのルートより平易へいいであった。下山げざん中ちゅう、ハドウの滑落すべりおちにクロとハドソン、ダグラス卿きょうが巻まき込こまれ、クライミングロープが何なんらかの衝撃しょうげきにより切きれ4人にんは1,400 m下したに落下らっかして死亡しぼうした。発見はっけんされなかったダグラス卿きょうを除のぞく3人にんの遺体いたいはツェルマットの墓地ぼちに埋葬まいそうされた。なおウィンパー著ちょ『アルプス登攀とうはん記き』が岩波いわなみ文庫ぶんこ上下じょうげと講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこで刊行かんこうされている。

初はつ登頂とうちょうから3日にち後ごの7月がつ17日にち、ジャン＝アントワーヌ・カレル率ひきいる登山とざん隊たいがイタリア側がわからの登頂とうちょうに成功せいこうした。1868年ねんにはジュリアス・エリオットが自身じしん2度目どめの登頂とうちょうを果はたし、同年どうねんジョン・ティンダルは2人ふたりのガイドとともにマッターホルン初はつ縦走じゅうそうに成功せいこうした。1871年ねんにはルーシー・ウォーカーがライバルのメタ・ブレヴォールに数すう週間しゅうかん先せんだって女性じょせい初はつの登頂とうちょうを成なし遂とげた。1923年ねんには日本人にっぽんじんとして麻生あそう武治たけはるが初はつ登頂とうちょうを果はたし、1926年ねんには昭和しょうわ天皇てんのうの弟おとうと宮みやである秩父宮ちちぶのみや が登頂とうちょうを果はたしている。

その他たの主おもな登頂とうちょう歴れき

• 1878年ねん - 日本にっぽんアルプスを世界せかいに紹介しょうかいしたウォルター・ウェストンが17歳さいで登頂とうちょう。
• 1879年ねん9月3日にち - アルバート・ママリーらがツムット稜りょうから登頂とうちょう。
• 1931年ねん8月がつ1日にち - トニー・シュミット、フランツ・シュミット兄弟きょうだいが北きた壁かべを初はつ登頂とうちょう。
• 1965年ねん2月がつ22日にち - ヴァルテル・ボナッティが初はつの冬季とうき北きた壁かべ単独たんどく登頂とうちょう（新しんルート）。
• 1965年ねん8月がつ6日にち - 芳野よしの満彦みつひこと渡部わたなべ恒明つねあきが北きた壁かべを日本人にっぽんじん初はつ登頂とうちょう。
• 1967年ねん7月がつ19日にち - 今井いまい通子みちこ、若山わかやま美子よしこの2人ふたりが女性じょせいパーティーとして初はじめて北きた壁かべからの登頂とうちょうに成功せいこう。
• 1969年ねん7月がつ29日にち - 福島ふくしま博ひろし憲けんが単独たんどくで北きた壁かべを日本人にっぽんじん初はつ登頂とうちょう（世界せかい第だい三さん登とう）。
• 1977年ねん2月がつ16日にち - 長谷川はせがわ恒男つねおが冬季とうき北きた壁かべ単独たんどく第だい二に登とう。

登山とざん

全すべての斜面しゃめんと尾根おねは、全すべての季き節ぶしにおいて制覇せいはされている。現在げんざいの水準すいじゅんから言いえば技術ぎじゅつは必要ひつようであるものの、熟練じゅくれん登山とざん家かにとってそれほど難かたくない。部分ぶぶん的てきに補助ほじょ用ようロープが張はられている部分ぶぶんさえある。しかし未熟みじゅくな登山とざん者しゃによる岩場いわばからの滑落すべりおちや遭難そうなんなどで、年間ねんかん何なん人にんかの登山とざん者しゃが命いのちを落おとしているのが現状げんじょうである。なお三さん大北おおきた壁かべの1つに数かぞえられる北きた壁かべルートは、熟練じゅくれん者しゃであっても困難こんなんなルートである。

最もっとも一般いっぱん的てきなヘルンリ尾根おねルート

1. ツェルマットからマッターホルン・エクスプレスというロープウェイに乗車じょうしゃ
2. 2つ目めのシュバルツゼー駅えきでロープウェイを下車げしゃし、ヘルンリヒュッテを目指めざす
3. ヒュッテで1泊はくし、午後ごごに発生はっせいする吹雪ふぶきと雲くもを避さけるために、翌日よくじつの午前ごぜん4時じ頃ごろから登頂とうちょうを始はじめる

ギャラリー

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  リッフェル湖こに映うつる「逆さかさマッターホルン」
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  スネガ展望てんぼう台下だいかのライ湖みずうみに映うつるマッターホルン
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  イタリア側がわの南みなみ壁かべ
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  南東なんとう側がわ
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  直下ちょっかから見みた東ひがし壁かべと
  ヘルンリヒュッテ
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  頂上ちょうじょうに立たつ登山とざん者しゃ
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  マッターホルンと
  アルプスの山々やまやま
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  ツェルマットの住宅じゅうたく地ちとマッターホルン
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  1865年ねん7月がつ14日にち、初はつ登頂とうちょう時じの滑落すべりおち事故じこ（J・フェラ画が）

その他た

• 2010年代ねんだいに入はいると、世界せかい的てきな気候きこう変動へんどうによる氷河ひょうが縮小しゅくしょうの影響えいきょうで氷こおりに埋うずもれていた物ものが露出ろしゅつするケースが増ふえている。また、長期間ちょうきかん行方ゆくえ不明ふめいとなっていた登山とざん者しゃの遺体いたいが発見はっけんされる事例じれいも増ふえており、2014年ねんにイギリス人じん登山とざん者しゃ、2016年ねんに日本人にっぽんじん登山とざん者しゃ2人にん、2023年ねんにドイツ人じん登山とざん者しゃの遺体いたいがそれぞれ発見はっけんされている。
• 2020年ねん、新型しんがたコロナウイルスの流行りゅうこうで世界せかいが混乱こんらんに陥おちいる中なか、マッターホルンの山腹さんぷくに希望きぼうのメッセージの投射とうしゃが行おこなわれた。

関連かんれん項目こうもく

• ソルベイ小屋こや - 標高ひょうこう 4,003メートルに建たてられた山小屋やまごや。
• マッターホルンの初はつ登頂とうちょう

外部がいぶリンク

• スイス政府せいふ観光かんこう局きょく：ツェルマット
• Virtual alps360.ch マッターホルンの360度どパノラマ
• 『マッターホルン』 - コトバンク