ミヤコタナゴ (都 と 鱮、学名 がくめい :Tanakia tanago )は、コイ目 め コイ科 か タナゴ亜 あ 科 か アブラボテ属 ぞく の小型 こがた 淡水魚 たんすいぎょ の一種 いっしゅ 。種 たね 小名 しょうみょう のtanagoは「タナゴ」を意味 いみ する。善福寺 ぜんぷくじ 川 がわ や文京 ぶんきょう 区 く にある小石川 こいしかわ 植物 しょくぶつ 園 えん の池 いけ など東京 とうきょう 都 と に広 ひろ く分布 ぶんぷ していたことが「ミヤコ」の和名 わみょう 由来 ゆらい といわれる。地域 ちいき 名 めい (本 ほん 種 しゅ を指 さ す方言 ほうげん )としてミョーブタ・ジョンピー(千葉 ちば 県 けん 南 みなみ 総 そう )、ベンタナ・オシャラクブナ(千葉 ちば 県 けん 東総 とうそう -南 みなみ 総 そう )、ナナイロ(埼玉 さいたま 県 けん 入 にゅう 間 あいだ 、比企 ひき )、シャレブナ・オシャレブナ(栃木 とちぎ 県 けん )などがある。この中 なか にはヤリタナゴ との混 こん 称 しょう も含 ふく まれる。1974年 ねん に国 くに の天然記念物 てんねんきねんぶつ 、1994年 ねん に国内 こくない 希少 きしょう 野生 やせい 動植物 どうしょくぶつ 種 しゅ に指定 してい された。
全長 ぜんちょう 7cm。一対 いっつい の口 くち ひげがあり、産卵 さんらん 期 き に現 あらわ れるオス の美 うつく しい婚姻 こんいん 色 しょく で知 し られる。オスは臀 しり 鰭 ひれ と腹 はら 鰭 ひれ の縁取 へりと りが黒色 こくしょく で、その内側 うちがわ には赤色 あかいろ 、白色 はくしょく の帯 おび がある。
地域 ちいき により変異 へんい があり、那珂川 なかがわ 水系 すいけい 、利根川 とねがわ 水系 すいけい ・荒川 あらかわ 水系 すいけい ・千葉 ちば 県 けん 茂原 もはら 市 し 、鶴見川 つるみがわ 水系 すいけい 、千葉 ちば 県 けん いすみ市 し ・御宿 おんじゅく 町 まち ・勝浦 かちうら 市 し と大 おお きく4つの系統 けいとう が存在 そんざい する。以下 いか のような相違 そうい 点 てん が本 ほん 種 たね の密漁 みつりょう 捜査 そうさ に役立 やくだ つこともある。
体高 たいこう は、埼玉 さいたま 県 けん 産 さん のものは他 た の産地 さんち のものに比 くら べ低 ひく く、神奈川 かながわ 県 けん 産 さん のものは高 たか い。
オスの婚姻 こんいん 色 しょく は、栃木 とちぎ 県 けん 大田原 おおたわら 市 し 付近 ふきん 産 さん のものは背 せ 側 がわ の青色 あおいろ が強 つよ い範囲 はんい が広 ひろ く、神奈川 かながわ 県 けん 産 さん のものは赤 あか 茶色 ちゃいろ が強 つよ い。
背鰭 せびれ の黒色 こくしょく の縁取 へりと りの内側 うちがわ は、通常 つうじょう は白色 はくしょく だが、千葉 ちば 県 けん 勝浦 かちうら 市 し 産 さん では濃 こ いピンク色 ぴんくいろ である。
臀 しり 鰭 ひれ の黒色 こくしょく の縁取 へりと りの内側 うちがわ は、埼玉 さいたま 県 けん 産 さん のものは乱 みだ れる。
尾鰭 おびれ は、通常 つうじょう は大半 たいはん が赤色 あかいろ 、縁取 へりと りは黒色 こくしょく だが、一宮川 いちのみやがわ 水系 すいけい 産 さん のものは大半 たいはん が黒色 こくしょく で一部 いちぶ は赤色 あかいろ である。
よく似 に た種 たね
よく似 に た種 たね として同属 どうぞく のアブラボテ 、ヤリタナゴ がいる。アブラボテは本 ほん 種 しゅ に形態 けいたい 、生態 せいたい とも類似 るいじ するが、本 ほん 種 たね ほど湧水 わきみず 依存 いぞん が強 つよ くないなど適応 てきおう 環境 かんきょう が幅広 はばひろ い感 かん がある。また、アブラボテは西日本 にしにほん に分布 ぶんぷ する。ヤリタナゴは本 ほん 種 しゅ が幼魚 ようぎょ の頃 ころ に酷似 こくじ するが、成魚 せいぎょ の本 ほん 種 しゅ はヤリタナゴより体高 たいこう が高 たか く、尾鰭 おびれ が丸 まる みを帯 お び、側線 そくせん が不完全 ふかんぜん であり鰓 えら 蓋 ぶた の後 うし ろから胸 むね 鰭 ひれ の上 うえ あたりまでしかないことで区別 くべつ できる。
雑食 ざっしょく で、底 そこ 生 せい の水生 すいせい 昆虫 こんちゅう を主 おも に、藻類 そうるい などを食 た べる。
湧水 わきみず を水源 すいげん とした水 みず が綺麗 きれい な細流 さいりゅう や沼 ぬま 、それらと接続 せつぞく している小川 おがわ に生息 せいそく し、同 おな じ水系 すいけい に生息 せいそく するヤリタナゴ より上流 じょうりゅう にいる。
繁殖 はんしょく 期 き は4-7月 がつ で、鶏卵 けいらん 形 がた の卵 たまご をマツカサガイ 、ヨコハマシジラガイ などのイシガイ目 め の貝 かい に産 う み付 つ ける。水温 すいおん 22-23度 ど の場合 ばあい 48時 じ 間 あいだ で孵化 ふか し、全長 ぜんちょう 8-9mmになると産卵 さんらん 母 はは 貝 かい から出 で て行 い く。イシガイ は利用 りよう しない。
寿命 じゅみょう は自然 しぜん 下 か では2年 ねん 、飼育 しいく 下 か では最長 さいちょう 5年 ねん である[7] 。
日本 にっぽん 固有 こゆう 種 しゅ で、関東 かんとう 地方 ちほう の全域 ぜんいき に生息 せいそく し、ごく普通 ふつう に見 み られたが、神奈川 かながわ 県 けん 、群馬 ぐんま 県 けん 、埼玉 さいたま 県 けん 、東京 とうきょう 都 と では絶滅 ぜつめつ し、現在 げんざい は千葉 ちば 県 けん 、栃木 とちぎ 県 けん の一部 いちぶ にのみ生息 せいそく している。茨城 いばらき 県 けん を自然 しぜん 分布 ぶんぷ から除外 じょがい する文献 ぶんけん があるが、標本 ひょうほん やき取 きと り調査 ちょうさ で過去 かこ に土浦 つちうら 付近 ふきん に生息 せいそく していたことが判明 はんめい している。自然 しぜん 分布 ぶんぷ が東京 とうきょう 近郊 きんこう に偏在 へんざい しているため、戦後 せんご の高度 こうど 成長 せいちょう 期 き を中心 ちゅうしん とした都市 とし 化 か で生息 せいそく 環境 かんきょう が次々 つぎつぎ に破壊 はかい され個体 こたい 数 すう が激減 げきげん 、絶滅 ぜつめつ に瀕 ひん している。日本 にっぽん 固有 こゆう のタナゴの中 なか では最 もっと も分布 ぶんぷ 域 いき が狭 せま い。
保全 ほぜん 状態 じょうたい 評価 ひょうか [ 編集 へんしゅう ]
1974年 ねん に天然記念物 てんねんきねんぶつ に、1994年 ねん に国内 こくない 希少 きしょう 野生 やせい 動植物 どうしょくぶつ 種 しゅ に指定 してい 。環境省 かんきょうしょう レッドリスト では、絶滅 ぜつめつ 危惧 きぐ IA類 るい に当初 とうしょ から指定 してい されている。したがって、許可 きょか のない捕獲 ほかく 採集 さいしゅう や飼育 しいく 、譲渡 じょうと 売買 ばいばい は禁 きん じられている。ほとんどの生息 せいそく 地 ち において地域 ちいき 社会 しゃかい が本 ほん 種 たね の保全 ほぜん に関心 かんしん を持 も ち、生息 せいそく 地 ち によっては密漁 みつりょう 行為 こうい を監視 かんし 、警察 けいさつ への通報 つうほう を緊密 きんみつ に行 おこ なうなどしている。なお、近年 きんねん では新規 しんき に生息 せいそく 地 ち が発見 はっけん されても密漁 みつりょう 等 とう を防 ふせ ぐ意味 いみ で公開 こうかい しないのが原則 げんそく であるが、同時 どうじ に保護 ほご が地域 ちいき 社会 しゃかい に浸透 しんとう できず、どこからか密漁 みつりょう 者 しゃ もやってくるという悪循環 あくじゅんかん に悩 なや まされている。
本 ほん 種 しゅ は湧水 わきみず に続 つづ く小 しょう 水路 すいろ と水田 すいでん 耕作 こうさく 地 ち という二 に 次 じ 自然 しぜん に強 つよ く依存 いぞん しており、産卵 さんらん 母 はは 貝 かい であるマツカサガイ の維持 いじ には定期 ていき 的 てき な水路 すいろ の土 ど 揚 あ げや農業 のうぎょう 用 よう 溜池 ためいけ の池 いけ 乾 ぼ しなど手入 てい れが欠 か かせず、それを周知 しゅうち できなかった過去 かこ においては保護 ほご がうまくいかなかったという苦 にが い経験 けいけん がある。すなわち本 ほん 種 たね の生態 せいたい は、人間 にんげん による耕作 こうさく 生産 せいさん 活動 かつどう と密接 みっせつ 不可分 ふかぶん な関係 かんけい にあり、人手 ひとで 不足 ふそく や後継 こうけい 者 しゃ 難 なん による耕作 こうさく 放棄 ほうき など農村 のうそん 社会 しゃかい の荒廃 こうはい が、本 ほん 種 しゅ の将来 しょうらい に暗 くら い影 かげ を落 お としている。
また、本 ほん 種 たね 生息 せいそく 地 ち でのゴルフ場 じょう 開発 かいはつ や圃場 ほじょう 整備 せいび 事業 じぎょう 、河川 かせん のコンクリート護岸 ごがん 化 か や直線 ちょくせん 化 か などの生息 せいそく 地 ち 破壊 はかい につながる開発 かいはつ 許可 きょか や公共 こうきょう 事業 じぎょう は、本 ほん 種 しゅ の希少 きしょう 性 せい が世 よ に広 ひろ く知 し られるようになった近年 きんねん でも後 ご を絶 た たない。
千葉 ちば 県 けん にある生息 せいそく 地 ち の一部 いちぶ では他 た 地域 ちいき のヤリタナゴ(国内 こくない 外来 がいらい 種 しゅ )やタイリクバラタナゴの侵入 しんにゅう もみられる。
一方 いっぽう で、本 ほん 種 しゅ が本来 ほんらい 分布 ぶんぷ していない場所 ばしょ で発見 はっけん されることもあり、違法 いほう 飼育 しいく 者 しゃ の密 みつ 放流 ほうりゅう が疑 うたが われる。
国 くに の許可 きょか の下 した 、神奈川 かながわ 県 けん 産 さん [9] 、埼玉 さいたま 県 けん 産 さん [10] [11] 、千葉 ちば 県 けん 産 さん [12] 、栃木 とちぎ 県 けん 産 さん [13] のものは関東 かんとう 各地 かくち の水産 すいさん 試験場 しけんじょう 、動物 どうぶつ 園 えん 、水族館 すいぞくかん 、博物館 はくぶつかん 、大学 だいがく 、一部 いちぶ の自治体 じちたい 関係 かんけい 機関 きかん などによって系統 けいとう 保存 ほぞん ・復元 ふくげん 再生 さいせい を目的 もくてき とした飼育 しいく ・繁殖 はんしょく やそれに伴 ともな う一般 いっぱん 展示 てんじ が行 おこな われている。
脚注 きゃくちゅう ・出典 しゅってん [ 編集 へんしゅう ]
^ Hasegawa, K., Kanao, S., Miyazaki, Y., Mukai, T., Nakajima, J., Takaku, K. & Taniguchi, Y. 2019. Tanakia tanago. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T21383A110464790. doi :10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T21383A110464790.en Accessed on 06 July 2022.
^ “ミヤコタナゴふ化 か 観察 かんさつ 記録 きろく ”. 神奈川 かながわ 県 けん . 2020年 ねん 11月16日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2020年 ねん 11月14日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “神奈川 かながわ 県 けん におけるミヤコタナゴの保護 ほご ・復元 ふくげん ”. 神奈川 かながわ 県 けん . 2020年 ねん 7月 がつ 12日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2020年 ねん 11月14日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “滑川 なめかわ 町 まち エコミュージアムセンター ”. 滑川 なめかわ 町 まち . 2021年 ねん 6月 がつ 15日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2022年 ねん 7月 がつ 6日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “ミヤコタナゴ ”. 所沢 ところざわ 市 し . 2021年 ねん 4月 がつ 19日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2022年 ねん 7月 がつ 6日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “絶滅 ぜつめつ 危惧 きぐ 種 しゅ の保護 ほご ・回復 かいふく ”. 千葉 ちば 県 けん . 2021年 ねん 12月9日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2022年 ねん 7月 がつ 6日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “ミヤコタナゴの保護 ほご ”. 栃木 とちぎ 県 けん . 2022年 ねん 3月 がつ 3日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2022年 ねん 7月 がつ 6日 にち 閲覧 えつらん 。
赤井 あかい 裕 ひろし 、秋山 あきやま 信彦 のぶひこ 、上野 うえの 輝 あきら 彌 わたる 、葛島 かずらしま 一美 かずみ 、鈴木 すずき 信洋 のぶひろ 、増田 ますだ 修 おさむ 、藪本 やぶもと 美 よし 孝 こう 『タナゴ大全 たいぜん 』エムピージェー、2009年 ねん 、p. 69頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-904837-08-5 。
佐土 さど 哲也 てつや 、松沢 まつざわ 陽 よう 士 し 『タナゴハンドブック』文 ぶん 一 いち 総合 そうごう 出版 しゅっぱん 、2011年 ねん 、pp. 50-51頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-8299-8100-9 。
今泉 いまいずみ 忠明 ただあき 監修 かんしゅう 『日本 にっぽん にしかいない生 い き物 もの 図鑑 ずかん 』PHP研究所 けんきゅうじょ 、2014年 ねん 、p. 38頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-569-78426-7 。
北村 きたむら 淳一 じゅんいち 、内山 うちやま りゅう『日本 にっぽん のタナゴ』山 やま と渓谷社 けいこくしゃ 、2020年 ねん 、pp. 38-45頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-635-06289-3 。