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数学 すうがく や理論 りろん 物理 ぶつり 学 がく において、ミラー対称 たいしょう 性 せい (mirror symmetry)はカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい と呼 よ ばれる幾何 きか 学 がく 的 てき な対象 たいしょう の間 あいだ の関係 かんけい であり、2つの カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい が幾何 きか 学的 がくてき には全 まった く異 こと なっているにもかかわらず、弦 つる 理論 りろん の余剰 よじょう 次元 じげん としてそれらを扱 あつか うと等価 とうか となる対称 たいしょう 性 せい のことを言 い う。この場合 ばあい 、多様 たよう 体 たい は互 たが いに「ミラー多様 たよう 体 たい 」 であると呼 よ ばれる。
ミラー対称 たいしょう 性 せい はもともとは、物理 ぶつり 学者 がくしゃ によって発見 はっけん された。数学 すうがく 者 しゃ がミラー対称 たいしょう 性 せい に興味 きょうみ を持 も ち始 はじ めたのは1990年 ねん 頃 ごろ で、特 とく に、フィリップ・キャンデラス (英語 えいご 版 ばん ) (Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、パウル・グリーン(Paul Green)、リンダ・パークス(Linda Parks)らによって、ミラー対称 たいしょう 性 せい を数々 かずかず の方程式 ほうていしき の解 かい の数 かず を数 かぞ える数学 すうがく の分野 ぶんや である数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく で使 つか うことができることが示 しめ されていた。実際 じっさい 、キャンデラスたちは、ミラー対称 たいしょう 性 せい を使 つか いカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の上 うえ の有理 ゆうり 曲線 きょくせん を数 かぞ えることができ、長 なが きにわたり未解決 みかいけつ であった問題 もんだい を解明 かいめい できることを示 しめ した(参照 さんしょう 項目 こうもく :ミラー対称 たいしょう 性 せい の応用 おうよう )[ 1] 。元来 がんらい のミラー対称 たいしょう 性 せい へのアプローチは、理論 りろん 物理 ぶつり 学者 がくしゃ からの必 かなら ずしも数学 すうがく 的 てき には厳密 げんみつ (mathematical rigor )ではないアイデアに基 もと づいているにもかかわらず、数学 すうがく 者 しゃ はミラー対称 たいしょう 性 せい 予想 よそう のいくつかを数学 すうがく 的 てき に厳密 げんみつ な証明 しょうめい に成功 せいこう しつつある[ 2] 。
今日 きょう では、ミラー対称 たいしょう 性 せい は純粋 じゅんすい 数学 すうがく の主要 しゅよう な研究 けんきゅう テーマであり、数学 すうがく 者 しゃ は物理 ぶつり 学者 がくしゃ の直感 ちょっかん に基 もと づくミラー対称 たいしょう 性 せい を数学 すうがく 的 てき に深 ふか く理解 りかい しつつある[ 3] 。ミラー対称 たいしょう 性 せい は弦 つる 理論 りろん の計算 けいさん を実行 じっこう する際 さい の基本 きほん 的 てき なツールでもある[ 4] 。ミラー対称 たいしょう 性 せい への主要 しゅよう なアプローチは、マキシム・コンツェビッチ (Maxim Kontsevich)のホモロジカルミラー対称 たいしょう 性 せい 予想 よそう のプログラムやアンドリュー・ストロミンジャー (Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ (Shing-Tung Yau)、エリック・ザスロフ (英語 えいご 版 ばん ) (Eric Zaslow)のSYZ予想 よそう [ 5] を含 ふく んでいる。
弦 つる 理論 りろん の基本 きほん 的 てき な対象 たいしょう 物 ぶつ は開 ひらけ 弦 つる (英語 えいご 版 ばん ) と閉弦である。
物理 ぶつり 学 がく では、弦 つる 理論 りろん は、その中 なか では素粒子 そりゅうし を点 てん 状 じょう の粒子 りゅうし とは考 かんが えずに、弦 つる (英語 えいご 版 ばん ) と呼 よ ばれる 1次元 じげん の対象 たいしょう で置 お き換 か えた理論 りろん 的 てき フレームワーク(英語 えいご 版 ばん ) (theoretical framework)である。これらの弦 つる は通常 つうじょう の弦 つる のループや小 ちい さな区分 くぶん のように見 み える。弦 つる 理論 りろん は、どのように弦 つる が空間 くうかん の中 なか を伝搬 でんぱん するか、互 たが いに相互 そうご 作用 さよう するかを記述 きじゅつ する。弦 つる のスケールよりも大 おお きな距離 きょり スケールでは、弦 つる は通常 つうじょう の粒子 りゅうし のように見 み え、質量 しつりょう や電荷 でんか を持 も ち、弦 つる の振動 しんどう 状態 じょうたい によりきめられる他 ほか の性質 せいしつ を持 も っている。弦 つる が分裂 ぶんれつ したり結合 けつごう したりすることには、粒子 りゅうし の輻射 ふくしゃ や吸収 きゅうしゅう が対応 たいおう し、粒子 りゅうし の間 あいだ の相互 そうご 作用 さよう を惹 ひ き起 おこ す[ 6] 。
弦 つる 理論 りろん の記述 きじゅつ する世界 せかい と日常 にちじょう の世界 せかい の間 あいだ には、確 たし かに差異 さい がある。日常 にちじょう 生活 せいかつ では、3つの空間 くうかん 次元 じげん (上下 じょうげ 、左右 さゆう 、前後 ぜんご )と、1つの時間 じかん 次元 じげん (以後 いご 以前 いぜん )が存在 そんざい する。このように、現代 げんだい 物理 ぶつり の言葉 ことば では、時空 じくう は4次元 じげん である[ 7] 。 弦 つる 理論 りろん の特別 とくべつ な有様 ありさま の一 ひと つに、数学 すうがく 的 てき な整合 せいごう 性 せい のために時空 じくう の余剰 よじょう 次元 じげん (extra dimensions)を要求 ようきゅう される。超 ちょう 弦 つる 理論 りろん である超 ちょう 対称 たいしょう 性 せい と呼 よ ばれる理論 りろん 上 じょう の考 かんが え方 かた と両立 りょうりつ する理論 りろん のバージョンでは、毎日 まいにち の体験 たいけん の中 なか で慣 な れ親 した しんでいる4次元 じげん に加 くわ えて、6次元 じげん の時空 じくう の余剰 よじょう 次元 じげん がある[ 8] 。
弦 つる 理論 りろん の現在 げんざい の研究 けんきゅう の目標 もくひょう のひとつは、高 こう エネルギー物理 ぶつり 実験 じっけん で観察 かんさつ される粒子 りゅうし を、弦 つる が再現 さいげん するようなモデルを構成 こうせい することである。観察 かんさつ と整合 せいごう 性 せい を持 も たせるためには、そのような時空 じくう の次元 じげん は4である必要 ひつよう があるので、通常 つうじょう の距離 きょり スケールでは弦 つる 理論 りろん の余剰 よじょう 次元 じげん を消 け し去 さ る方法 ほうほう を見 み つけなくてはならない。弦 つる 理論 りろん を基礎 きそ とする最 もっと も現実 げんじつ 的 てき なモデルでは、コンパクト化 か と呼 よ ばれる過程 かてい を通 とお して行 おこな われる[ 9] 。コンパクト化 か の考 かんが え方 かた は、弦 つる 理論 りろん の特定 とくてい の次元 じげん が円 えん をなして自分 じぶん で「閉 と じている」ようなものかもしれない。次元 じげん が巻 ま きあがっている極限 きょくげん では、非常 ひじょう に小 ちい さくなり、有効 ゆうこう 理論 りろん ではより低 ひく い次元 じげん となっている理論 りろん を得 え る。このことの標準 ひょうじゅん 的 てき な類似 るいじ 物 ぶつ は、庭 にわ のホースのような多次元 たじげん の対象 たいしょう を考 かんが えることである。ホースを充分 じゅうぶん に遠 とお い距離 きょり で見 み ると1次元 じげん となり、長 なが さしか持 も っていないように見 み える。しかし、ホースに近 ちか づくにつれ、第 だい 二 に の円周 えんしゅう という次元 じげん を持 も っていることが分 わ かる。このようにして、ホースの表面 ひょうめん を這 は う蟻 あり は2次元 じげん 的 てき に動 うご くことができる[ 10] 。
実 じつ 3次元 じげん でのカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の断面 だんめん を平面 へいめん へ射影 しゃえい した図形 ずけい
コンパクト化 か は、時空 じくう の有効 ゆうこう 次元 じげん が4次元 じげん となるようなモデルを構成 こうせい することに使 つか うことができる。しかし、余剰 よじょう 次元 じげん をコンパクト化 か する全 すべ ての方法 ほうほう が、自然 しぜん を記述 きじゅつ する良 よ い性質 せいしつ を持 も つモデルを作 つく り出 だ すとは限 かぎ らない。素粒子 そりゅうし 物理 ぶつり 学 がく で確認 かくにん できるようなモデルを構成 こうせい するためには、コンパクトな余剰 よじょう 次元 じげん はカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の形 かたち をしている必要 ひつよう がある[ 9] 。カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい は複雑 ふくざつ な(典型 てんけい では)6次元 じげん の形 かたち をしていて、あるテクニカルな条件 じょうけん を満 み たす。それらは、数学 すうがく 者 しゃ のエウジェニオ・カラビ (Eugenio Calabi)とシン=トゥン・ヤウ (Shing-Tung Yau)の名前 なまえ から命名 めいめい された[ 11] 。
1980年代 ねんだい 後半 こうはん 、弦 つる 理論 りろん のそのようなコンパクト化 か をすると、対応 たいおう するカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい が一意 いちい に再 さい 構成 こうせい されることが可能 かのう ではないことが分 わ かった。代 か わりに、2 つのカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい が同 おな じ物理 ぶつり を持 も つことが発見 はっけん された[ 12] 。 これらの多様 たよう 体 たい はたがいに「ミラー」といわれる。全部 ぜんぶ の双対 そうつい 性 せい はいまだ予想 よそう でしかないが、位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん の脈絡 みゃくらく でのミラー対称 たいしょう 性 せい のバージョンがある。位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん はエドワード・ウィッテン [ 13] により導入 どうにゅう された簡素 かんそ 化 か された弦 つる 理論 りろん のバージョンであり、このバージョンは数学 すうがく 者 しゃ により厳密 げんみつ 性 せい (en:mathematical rigor )を持 も っている[ 2] 。位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん の脈絡 みゃくらく では、ミラー対称 たいしょう 性 せい は、2つの理論 りろん 、A-モデルとB-モデルがある正確 せいかく な意味 いみ で等価 とうか であることを主張 しゅちょう する[ 14] 。
弦 つる 理論 りろん のこれらのカラビ・ヤウコンパクト化 か が自然 しぜん の正 ただ しい記述 きじゅつ をもたらすかどうかは別 べつ として、異 こと なるカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の間 あいだ のミラー対称 たいしょう 性 せい 関係 かんけい の存在 そんざい は、重要 じゅうよう な数学 すうがく 的 てき 結果 けっか である[ 15] 。 弦 つる 理論 りろん に使 つか われるカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい は純粋 じゅんすい 数学 すうがく 的 てき には興味深 きょうみぶか く、ミラー対称 たいしょう 性 せい は、ミラーカラビ・ヤウと同等 どうとう な問題 もんだい を解 と くことで数 かぞ え上 あ げ代数 だいすう 幾何 きか 学 がく の多 おお くの問題 もんだい を数学 すうがく 者 しゃ が解決 かいけつ できるようにした[ 16] 。 今日 きょう 、ミラー対称 たいしょう 性 せい は数学 すうがく の研究 けんきゅう の活発 かっぱつ な領域 りょういき であり、数学 すうがく 者 しゃ たちは今 いま も物理 ぶつり 学者 がくしゃ の直感 ちょっかん に基 もと づくミラー対称 たいしょう 性 せい の数学 すうがく 的 てき 理解 りかい を深 ふか めようと努力 どりょく している[ 17] 。
トーラス
ミラー双対 そうつい の片側 かたがわ に現 あらわ れる幾何 きか 学 がく の一種 いっしゅ を理解 りかい するためには、ここで複素 ふくそ 平面 へいめん の点 てん を同一 どういつ 視 し することで、トーラス (ドーナツのようにひとつの穴 あな のあいた閉曲面 めん )の構成 こうせい を考 かんが える。このトーラスを構成 こうせい するためには、最初 さいしょ に商 しょう
ω おめが
1
/
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{1}/\omega _{2}}
が実数 じっすう ではない複素数 ふくそすう のペア
ω おめが
1
{\displaystyle \omega _{1}}
と
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{2}}
を選 えら ばねばならない. この最後 さいご の条件 じょうけん は、これらの点 てん が一直線 いっちょくせん 上 じょう にない(en:collinear )ことを確 たし かなものとしている.従 したが って、選択 せんたく された点 てん は、もう他 た の頂点 ちょうてん が 0 と
ω おめが
1
+
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{1}+\omega _{2}}
である平行四辺形 へいこうしへんけい を決定 けってい する。この平行四辺形 へいこうしへんけい の反対 はんたい 側 がわ の辺 あたり を同一 どういつ 視 し することで、求 もと めるトーラスが得 え られる。
トーラス は複素 ふくそ 平面 へいめん の中 なか の平行四辺形 へいこうしへんけい の反対 はんたい 側 がわ の辺 あたり を同一 どういつ 視 し することで構成 こうせい できる。このトーラスの複素 ふくそ 構造 こうぞう は、大 おお まかにいうと、トーラスの「形 がた 」を記述 きじゅつ する。
このようにして得 え られるトーラスは、ひとつのトーラスが他 た のトーラスと連続 れんぞく 変形 へんけい 可能 かのう であるという意味 いみ ですべて同値 どうち である[ 18] 。 他方 たほう 、トーラスは加法 かほう 構造 こうぞう を持 も っているので、区別 くべつ することが可能 かのう となる[ 14] 。 すなわち、この方法 ほうほう で構成 こうせい されたトーラスは複素 ふくそ 構造 こうぞう を持 も っていて、そのようなトーラス上 じょう の任意 にんい の点 てん の近傍 きんぼう は、複素 ふくそ 平面 へいめん の中 なか にある領域 りょういき のように見 み えることを意味 いみ する。
このトーラスの構成 こうせい の中 なか で、替 か わりに元 もと のペアと共通 きょうつう 因子 いんし (つまり、ある複素数 ふくそすう
λ らむだ
{\displaystyle \lambda }
により
ω おめが
1
′
=
λ らむだ
ω おめが
1
{\displaystyle \omega _{1}'=\lambda \omega _{1}}
と
ω おめが
2
′
=
λ らむだ
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{2}'=\lambda \omega _{2}}
である)としてリスケールによって複素数 ふくそすう のペア
ω おめが
1
′
{\displaystyle \omega _{1}'}
と
ω おめが
2
′
{\displaystyle \omega _{2}'}
が関連 かんれん づけられるとすると、同値 どうち なトーラスを得 え る。従 したが って、「比率 ひりつ 」
τ たう
=
ω おめが
1
/
ω おめが
2
{\displaystyle \tau =\omega _{1}/\omega _{2}}
でトーラス全体 ぜんたい の集 あつ まりをパラメトライズすることはさらに便利 べんり である。この比率 ひりつ はリスケール
ω おめが
i
{\displaystyle \omega _{i}}
によっては変 か わらない。一般 いっぱん 性 せい を失 うしな うことなしに 、このパラメータ
τ たう
{\displaystyle \tau }
は正 せい の虚 きょ 部 ぶ を持 も つので、
τ たう
{\displaystyle \tau }
は上 うえ 半平 はんぺん 面 めん に値 ね を持 も つ。また、パラメータ
τ たう
{\displaystyle \tau }
,
τ たう
+
1
{\displaystyle \tau +1}
, と
−
1
/
τ たう
{\displaystyle -1/\tau }
が同 おな じトーラスに対応 たいおう している。
もし 2つのトーラスがもともと異 こと なる
τ たう
{\displaystyle \tau }
値 ね に対応 たいおう しているとすると、それらは等価 とうか ではない複素 ふくそ 構造 こうぞう を持 も つ[ 19] 。 パラメータ
τ たう
{\displaystyle \tau }
は、平行四辺形 へいこうしへんけい の対辺 たいへん を同一 どういつ 視 し して構成 こうせい されるトーラスの「形 がた 」として記述 きじゅつ することができる。上 うえ で説明 せつめい したように、ミラー対称 たいしょう 性 せい は 2つの物理 ぶつり 学 がく 的 てき な理論 りろん 、位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん のA-モデルとB-モデルとを関連付 かんれんづ ける。この双対 そうつい 性 せい では、位相 いそう 的 てき B-モデルが時空 じくう の複素 ふくそ 構造 こうぞう にのみ依存 いぞん している。このようにして、もし「時空 じくう 」がトーラスであるような理論 りろん を考 かんが えると、理論 りろん はパラメータ
τ たう
{\displaystyle \tau }
にのみ依存 いぞん することになる[ 14] 。
トーラスの幾何 きか 学 がく のもう一 ひと つの側面 そくめん は、トーラスのサイズである。さらに詳 くわ しくは、トーラスを単位 たんい 四 よん 方形 ほうけい (英語 えいご 版 ばん ) の対辺 たいへん を同一 どういつ 視 し することにより得 え られる曲面 きょくめん としてみることができ、トーラスの面積 めんせき はこの四辺 しへん 形 がた 上 じょう の面積 めんせき 要素 ようそ
ρ ろー
d
x
d
y
{\displaystyle \rho dxdy}
で特定 とくてい できる。単位 たんい 四 よん 方形 ほうけい 上 じょう の面積 めんせき 要素 ようそ を積分 せきぶん することにより、対応 たいおう するトーラスの面積 めんせき
ρ ろー
{\displaystyle \rho }
を得 え る。これらの概念 がいねん を高 こう 次元 じげん にも一般 いっぱん 化 か することができ、面積 めんせき 要素 ようそ はシンプレクティック形式 けいしき の考 かんが え方 かた により一般 いっぱん 化 か される。シンプレクティック形式 けいしき を持 も つ空間 くうかん の研究 けんきゅう は、シンプレクティック幾何 きか 学 がく と呼 よ ばれる[ 20] 。
ミラー対称 たいしょう 性 せい では、位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん のA-モデルが、時空 じくう のシンプレクティック幾何 きか 学 がく に依存 いぞん した理論 りろん である。その中 なか では「時空 じくう 」がトーラスである理論 りろん を考 かんが えると、A-モデルは連続 れんぞく 的 てき にパラメータ
ρ ろー
{\displaystyle \rho }
に依存 いぞん する[ 14] 。
トーラスは2つの円 えん の積 せき であり、この場合 ばあい は赤 あか い円 えん がピンクの円 えん を定義 ていぎ する軸 じく の周 まわ りを掃 は くようになった場合 ばあい である。
R
1
{\displaystyle R_{1}}
は赤 あか い円 えん の半径 はんけい で、
R
2
{\displaystyle R_{2}}
はピンクの円 えん の半径 はんけい である。
どのようにしてトーラスが複素 ふくそ 平面 へいめん の中 なか の平行四辺形 へいこうしへんけい の対辺 たいへん を同一 どういつ 視 し すると得 え ることができるかを見 み てみる。特別 とくべつ に単純 たんじゅん 例 れい は、複素数 ふくそすう
ω おめが
1
{\displaystyle \omega _{1}}
と
ω おめが
2
{\displaystyle \omega _{2}}
それぞれが実 じつ 軸 じく と虚 きょ 軸 じく にある場合 ばあい である。この場合 ばあい には、
ω おめが
1
=
R
1
{\displaystyle \omega _{1}=R_{1}}
および
ω おめが
2
=
i
R
2
{\displaystyle \omega _{2}=iR_{2}}
と書 か くことができる。ここに
R
1
{\displaystyle R_{1}}
と
R
2
{\displaystyle R_{2}}
は実数 じっすう である。上記 じょうき の議論 ぎろん のようにして得 え られたトーラス上 じょう の複素 ふくそ 構造 こうぞう は、数値 すうち
τ たう
=
i
R
2
/
R
1
{\displaystyle \tau =iR_{2}/R_{1}}
により特徴 とくちょう づけられる。
どのようにトーラスのシンプレクティック構造 こうぞう が面積 めんせき 要素 ようそ により決定 けってい されるかを、すでに説明 せつめい した。平行四辺形 へいこうしへんけい 上 じょう の座標 ざひょう
x
{\displaystyle x}
と
y
{\displaystyle y}
を、複素数 ふくそすう により張 は られる平行四辺形 へいこうしへんけい の各々 おのおの の辺 あたり が長 なが さ 1 を持 も つように選 えら ぶことができる。すると、このトーラスの面積 めんせき 要素 ようそ は
R
1
R
2
d
x
d
y
{\displaystyle R_{1}R_{2}dxdy}
であり、単位 たんい 正方形 せいほうけい 上 じょう で積分 せきぶん し
R
1
R
2
{\displaystyle R_{1}R_{2}}
となる。シンプレクティックパラメータ
ρ ろー
{\displaystyle \rho }
を積 せき
i
R
1
R
2
{\displaystyle iR_{1}R_{2}}
と定義 ていぎ する。
2つの円 えん のカルテシアン積 せき としてトーラスを考 かんが えることができることに注意 ちゅうい する。このことは、トーラス(ピンクで表示 ひょうじ されている)の赤道 せきどう の各々 おのおの の点 てん に、経線 けいせん の円 えん (赤 あか で表示 ひょうじ されている)がある。
さて、トーラスは物理 ぶつり 的 てき 理論 りろん での「時空 じくう 」を表現 ひょうげん することを想像 そうぞう すると、この理論 りろん の基本 きほん 的 てき な対象 たいしょう は、量子力学 りょうしりきがく の規則 きそく に従 したが い時空 じくう の中 なか を伝搬 でんぱん する弦 つる (物理 ぶつり 学 がく )(英語 えいご 版 ばん ) である。弦 つる 理論 りろん の双対 そうつい 性 せい (英語 えいご 版 ばん ) の一 ひと つに T-双対 そうつい 性 せい がある。このことは、すべての一方 いっぽう での観測 かんそく 可能 かのう 量 りょう は双対 そうつい な記述 きじゅつ での量 りょう と同一 どういつ 視 し されるという意味 いみ で、半径 はんけい
R
{\displaystyle R}
の円 えん の周 まわ りを伝搬 でんぱん する弦 つる は、半径 はんけい
1
/
R
{\displaystyle 1/R}
の円 えん の周 まわ りを伝搬 でんぱん する弦 つる に等価 とうか となる[ 21] 。例 たと えば、弦 つる のある方向 ほうこう への運動 うんどう 量 りょう は離散 りさん 的 てき な値 ね をとり、弦 つる が双対 そうつい 方向 ほうこう の円 えん の周 まわ りへ何 なに 周 まわ り巻 ま き付 つ いて いるかを表 あらわ す[ 21] 。 T-双対 そうつい をトーラスの経線 けいせん 方向 ほうこう の円 えん へ適用 てきよう すると、別 べつ のトーラスにより表現 ひょうげん される時空 じくう の中 なか にある等価 とうか な記述 きじゅつ が存在 そんざい することがわかる。T-双対 そうつい 性 せい は
R
1
{\displaystyle R_{1}}
を
1
/
R
1
{\displaystyle 1/R_{1}}
へと変換 へんかん し、この変換 へんかん は
τ たう
↔
ρ ろー
{\displaystyle \tau \leftrightarrow \rho }
と複素 ふくそ パラメータとシンプレクティックパラメータとを入 い れ替 か える。
一般 いっぱん にミラー対称 たいしょう 性 せい は、2つの物理 ぶつり 理論 りろん の同値 どうち 性 せい であり、複素 ふくそ 幾何 きか 学 がく の問題 もんだい をシンプレクティック幾何 きか 学 がく の問題 もんだい へ翻訳 ほんやく することでもある。ここで考 かんが えるトーラスは、単 たん に位相 いそう 空間 くうかん としてコンパクト な(実 み )次元 じげん が2であるカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい であり、従 したが って、ミラー対称 たいしょう 性 せい のもっとも単純 たんじゅん な例 れい である[ 22] 。 弦 つる 理論 りろん への応用 おうよう では、普通 ふつう 、6次元 じげん のカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい を考 かんが える。この 6次元 じげん は、時空 じくう の観測 かんそく されえない次元 じげん に対応 たいおう する。
上記 じょうき の例 れい の中 なか のように、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい は非常 ひじょう に変 か わった形 かたち をしているかもしれない。6次元 じげん のカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の形 かたち は、数学 すうがく 的 てき にはある不 ふ 変量 へんりょう (invariant)を使 つか い記述 きじゅつ される(不 ふ 変量 へんりょう とは多様 たよう 体 たい に付随 ふずい する数値 すうち であり、幾何 きか 学 がく 的 てき に同 おな じ多様 たよう 体 たい は同 おな じ付随 ふずい する数値 すうち を持 も つ)。例 たと えば、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の形 かたち は大雑把 おおざっぱ にはオイラー標 しるべ 数 すう と呼 よ ばれる数値 すうち により記述 きじゅつ され、ミラー双対 そうつい のカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい は、(ペアの相手 あいて のカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の)反対 はんたい の符号 ふごう をもつオイラー数 すう となることができる[ 23] 。 多 おお くの異 こと なって見 み える形 かたち が同 おな じオイラー標 しるべ 数 すう を持 も っていて、この不 ふ 変量 へんりょう はカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の形 かたち の単 たん に粗 あら い記述 きじゅつ をするものでしかない。しかしながら、この粗 あら さはベッチ数 すう と呼 よ ばれる数 かず の和 わ へとオイラー標 しるべ 数 すう を分解 ぶんかい することにより、詳 くわ しくすることができる[ 24] 。このためには、ホッジ数 すう と呼 よ ばれるミラーカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の興味深 きょうみぶか い対称 たいしょう 性 せい を持 も っている不変 ふへん 量 りょう を使 つか う[ 25] 。
一般 いっぱん にミラー対称 たいしょう 性 せい では、相関 そうかん 函数 かんすう と呼 よ ばれる物理 ぶつり 量 りょう を計算 けいさん することに興味 きょうみ がある[ 26] 。相関 そうかん 函数 かんすう の例 れい のひとつは、弦 つる の相関 そうかん 函数 かんすう である。A-モデルでは、弦 つる の相関 そうかん 函数 かんすう を表 あらわ す、グロモフ・ウィッテン不 ふ 変量 へんりょう と呼 よ ばれる無限 むげん 個 こ の数値 すうち は計算 けいさん することが難 むずか しい。しかしながら、ミラー対称 たいしょう 性 せい は、A-モデルの相関 そうかん 函数 かんすう をB-モデルの相関 そうかん 函数 かんすう へ関連付 かんれんづ け、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の古典 こてん 的 てき な複素 ふくそ 幾何 きか 学 がく へ依存 いぞん したものとし、より容易 ようい に計算 けいさん を可能 かのう とする。この事実 じじつ がミラー対称 たいしょう 性 せい の導入 どうにゅう 時 じ に数学 すうがく 者 しゃ たちを興味 きょうみ を惹 ひ いた点 てん である[ 27] 。
アポロニウスの円 えん
ミラー対称 たいしょう 性 せい の重要 じゅうよう な数学 すうがく への応用 おうよう の多 おお くは、数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく と呼 よ ばれる数学 すうがく の分野 ぶんや に属 ぞく している。数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく では、典型 てんけい 的 てき には代数 だいすう 幾何 きか 学 がく を使 つか い、幾何 きか 学 がく 的 てき な問題 もんだい の解 かい の数 かず を数 かぞ え上 あ げることに興味 きょうみ がある。数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく のもっとも早 はや い時期 じき の問題 もんだい の一 ひと つに、ギリシャの数学 すうがく 者 しゃ アポロニウス による紀元前 きげんぜん 200年 ねん 頃 ごろ に提案 ていあん された問題 もんだい である。彼 かれ は、どのようにすれば与 あた えられた3つの円 えん に接 せっ する平面 へいめん 上 じょう の円 えん はいくつあるかが分 わ かるかと問 と うた[ 28] 。 一般 いっぱん に、アポロニウスの問題 もんだい の解 かい は、8つの円 えん が存在 そんざい する。右 みぎ の図 ず は黒 くろ で示 しめ した3つの与 あた えられた円 えん の例 れい を示 しめ している。
クレブシュ3次 じ 曲面 きょくめん (英語 えいご 版 ばん )
数学 すうがく の数 かぞ え上 あ げ問題 もんだい はしばしば、多項式 たこうしき の値 ね がゼロとなる点 てん として定義 ていぎ されるいわゆる代数 だいすう 多様 たよう 体 たい という幾何 きか 学 がく 的 てき 対象 たいしょう のクラスに関係 かんけい している。例 たと えば、クレブシュ3次 じ 曲面 きょくめん (英語 えいご 版 ばん ) は左 ひだり に図示 ずし してある4変数 へんすう の3次 じ 多項式 たこうしき により定義 ていぎ される。19世紀 せいき の数学 すうがく 者 しゃ アーサー・ケイリー (Arthur Cayley)とジョージ・サルモン (英語 えいご 版 ばん ) (George Salmon)の結果 けっか は、この曲面 きょくめん 上 じょう にはちょうど 27 本 ほん の直線 ちょくせん があるとのことであった[ 29] 。
この問題 もんだい を一般 いっぱん 化 か すると、上 うえ に述 の べたカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい であるクインティックスリーフォールド (5次 じ 多項式 たこうしき で記述 きじゅつ される複素 ふくそ 3次元 じげん 多様 たよう 体 たい )の上 うえ に何 なん 本 ほん の直線 ちょくせん を描 えが くことができるかという問題 もんだい となる。この問題 もんだい は19世紀 せいき のドイツの数学 すうがく 者 しゃ ヘルマン・シューベルト (英語 えいご 版 ばん ) (Hermann Schubert)により解 と かれ、彼 かれ はそのような直線 ちょくせん はちょうど 2,875 本 ほん 存在 そんざい することを発見 はっけん した。さらに、1986年 ねん に幾何 きか 学者 がくしゃ 、セルダン・カッツ(Sheldon Katz)が、クインティックスリーフォールドに完全 かんぜん に入 はい っている(円 えん のような)2次 じ 曲線 きょくせん の数 かず は 609,250 個 こ あることを証明 しょうめい した[ 28] 。
1991年 ねん 頃 ごろ には、数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく の古典 こてん 的 てき な問題 もんだい の大半 たいはん が解 と かれ、数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく への興味 きょうみ は下火 したび になり始 はじ めていた。数学 すうがく 者 しゃ マーク・グロス (英語 えいご 版 ばん ) (Mark Gross)によれば、「古 ふる い問題 もんだい が解 と かれるとともに、人々 ひとびと はシューベルトの数 かず を現代 げんだい のテクニックを使 つか いチェックするほうへ戻 もど りはしたものの、非常 ひじょう に古 ふる めかしいものでした[ 30] 。」 しかしながら、この分野 ぶんや は1991年 ねん 5月 がつ にふたたび活発 かっぱつ 化 か し始 はじ めた。そのとき物理 ぶつり 学者 がくしゃ であったフィリップ・キャンデラス (英語 えいご 版 ばん ) (Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、ポール・グリーン(Paul Green)とリンダ・パークス(Linda Parks)は、ミラー対称 たいしょう 性 せい をクインティックスリーフォールドに含 ふく まれる3次 じ 曲線 きょくせん の数 かず を数 かぞ えることに使 つか うことができるかもしれないことを示 しめ した。大 おお まかにいうと、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の内部 ないぶ に完全 かんぜん に含 ふく まれる球 たま として、3次 じ 曲線 きょくせん を考 かんが えることができる[ 16] 。 キャンデラスと彼 かれ の協力 きょうりょく 者 しゃ は、そのような6次元 じげん カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい は3次 じ 曲線 きょくせん をちょうど 317,206,375 個 こ 含 ふく むことができることを発見 はっけん した[ 30] 。
クインティックスリーフォールド上 じょう の3次 じ 曲線 きょくせん を数 かぞ えることに加 くわ えて、キャンデラスと彼 かれ の協力 きょうりょく 者 しゃ は、数学 すうがく 者 しゃ たちの得 え た結果 けっか をはるかに超 こ える有理 ゆうり 曲線 きょくせん の数 かぞ え上 あ げに関 かん するより一般 いっぱん 的 てき な数 すう 多 おお くの結果 けっか を得 え た[ 31] 。 この仕事 しごと で使 つか われた方法 ほうほう は理論 りろん 物理 ぶつり 学 がく からの数学 すうがく 的 てき には厳密 げんみつ (en:mathematical rigor )ではないアイデアを基礎 きそ としていたが、数学 すうがく 者 しゃ たちはミラー対称 たいしょう 性 せい 予想 よそう のいくつかを数学 すうがく 的 てき 厳密 げんみつ に証明 しょうめい した。特 とく に、ミラー対称 たいしょう 性 せい の数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく の予想 よそう は、現在 げんざい では厳密 げんみつ に証明 しょうめい されている[ 32] 。
数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく への応用 おうよう に加 くわ えて、ミラー対称 たいしょう 性 せい は弦 つる 理論 りろん での計算 けいさん の実行 じっこう の基本 きほん 的 てき なツールである。位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん のA-モデルでは、グロモフ・ウィッテン不 ふ 変量 へんりょう と呼 よ ばれる無限 むげん 個 こ の数値 すうち により、計算 けいさん することは極 きわ めて難 むずか しいが、物理 ぶつり 的 てき に興味 きょうみ のある量 りょう を表現 ひょうげん できる。一方 いっぽう 、B-モデルでは計算 けいさん が古典 こてん 的 てき な積分 せきぶん へ還元 かんげん することができ、非常 ひじょう に容易 ようい になる[ 33] 。 理論 りろん 家 か たちは、ミラー対称 たいしょう 性 せい を適用 てきよう することで、A-モデルでの難 むずか しい計算 けいさん を、等価 とうか であるが技術 ぎじゅつ 的 てき にはやさしいB-モデル上 じょう の計算 けいさん へ移 うつ し替 が えができるようになった。従 したが って、現在 げんざい ではこれらの計算 けいさん は、弦 つる 理論 りろん の様々 さまざま な物理 ぶつり 的 てき 過程 かてい の確 かく 率 りつ を決定 けってい することに使 つか われている。ミラー対称 たいしょう 性 せい は他 た の双対 そうつい 性 せい と結合 けつごう されて、一方 いっぽう の理論 りろん を別 べつ の異 こと なる理論 りろん の等価 とうか な計算 けいさん へ移 うつ し替 か える。この方法 ほうほう で別 べつ な理論 りろん の計算 けいさん へ外出 がいしゅつ しすることにより、理論 りろん 家 か たちは双対 そうつい 性 せい を使 つか わずには計算 けいさん が不可能 ふかのう であった多 おお くの量 りょう の計算 けいさん が可能 かのう となった[ 34] 。
弦 つる 理論 りろん 以外 いがい では、ミラー対称 たいしょう 性 せい は基本 きほん 粒子 りゅうし を記述 きじゅつ するために、物理 ぶつり 学者 がくしゃ が使 つか う形式 けいしき である場 ば の量子 りょうし 論 ろん の一 いち 側面 そくめん を理解 りかい することに使 つか われる。例 たと えば、ミラー対称 たいしょう 性 せい はゲージ理論 りろん の性質 せいしつ を理解 りかい することに使 つか われる。ゲージ理論 りろん は、基本 きほん 粒子 りゅうし の標準 ひょうじゅん 模型 もけい の中 なか に現 あらわ れ、高度 こうど に対称 たいしょう 性 せい をもった物理 ぶつり 理論 りろん である。そのような理論 りろん は、近接 きんせつ した背景 はいけい を伝播 でんぱ する弦 つる から発生 はっせい し、ミラー対称 たいしょう 性 せい はこれらの理論 りろん の計算 けいさん をすることに有用 ゆうよう な道具 どうぐ である[ 35] 。実際 じっさい 、このアプローチは、ネーサン・サイバーグ (Nathan Seiberg)やエドワート・ウィッテンにより研究 けんきゅう された 4次元 じげん の時空 じくう の中 なか の重要 じゅうよう なゲージ理論 りろん の計算 けいさん の実行 じっこう に使 つか われ、ドナルドソン不 ふ 変量 へんりょう の脈絡 みゃくらく での数学 すうがく に良 よ く似 に ている[ 36] 。 ミラー対称 たいしょう 性 せい の一般 いっぱん 化 か として、3次元 じげん ミラー対称 たいしょう 性 せい (英語 えいご 版 ばん ) (3D mirror symmetry)と呼 よ ばれるミラー対称 たいしょう 性 せい もあって、3次元 じげん 時空 じくう の中 なか の場 ば の量子 りょうし 論 ろん のペアを関係付 かんけいづ ける[ 37] 。
D-ブレーン のペアに端点 たんてん を固定 こてい された開 ひらく 弦 つる
弦 つる 理論 りろん や超 ちょう 重力 じゅうりょく 理論 りろん のような関連 かんれん する理論 りろん では、「ブレーン」 (brane)が点 てん 粒子 りゅうし の考 かんが え方 かた の高 こう 次元 じげん への一般 いっぱん 化 か された物理 ぶつり 的 てき 対象 たいしょう である。例 たと えば、点 てん 粒子 りゅうし はゼロ次元 じげん のブレーンと考 かんが えることができるのに対 たい し、弦 つる は 1次元 じげん のブレーンとして考 かんが えることができる。また高 こう 次元 じげん のブレーンも考 かんが えることができる。ブレーンということばは、「メンブレーン」 (membrane)ということばから来 き ていて、2次元 じげん のブレーンである。[ 38]
弦 つる 理論 りろん では、弦 つる (物理 ぶつり 学 がく )(英語 えいご 版 ばん ) は、(2つの端点 たんてん を持 も つ構成 こうせい となっている)開 ひらき 弦 つる と(閉 と じたループになっている)閉弦がある。D-ブレーン は、開 ひらき 弦 つる を考 かんが えるときに発生 はっせい する重要 じゅうよう なブレーンのクラスである。開 ひらき 弦 つる は時空 じくう の中 なか を伝搬 でんぱん し、その端点 たんてん は D-ブレーンの上 うえ にあることを要求 ようきゅう される。D-ブレーンの中 なか の文字 もじ の "D" は、ディリクレ境界 きょうかい 条件 じょうけん として知 し られているある数学 すうがく 的 てき 条件 じょうけん を導入 どうにゅう するという事実 じじつ から来 く る。[ 39]
数学 すうがく 的 てき には、ブレーンは圏 けん の概念 がいねん を使 つか い記述 きじゅつ することができる。[ 40] これは対象 たいしょう と対象 たいしょう の任意 にんい のペアに対 たい して、それらの間 あいだ の射 い (morphism)からなる数学 すうがく 的 てき な構造 こうぞう である。大半 たいはん の例 れい では、対象 たいしょう はある数学 すうがく 的 てき な構造 こうぞう を持 も っていて(例 たと えば、集合 しゅうごう 、ベクトル空間 くうかん や位相 いそう 空間 くうかん といった)、射 い はこれらの構造 こうぞう の間 あいだ の函数 かんすう により与 あた えられる。[ 41] 対象 たいしょう がD-ブレーンで、射 い が2つのD-ブレーン
α あるふぁ
{\displaystyle \alpha }
と
β べーた
{\displaystyle \beta }
の間 あいだ の射 い が
α あるふぁ
{\displaystyle \alpha }
と
β べーた
{\displaystyle \beta }
の間 あいだ に伸 の びた開 ひらく 弦 つる の波動 はどう 函数 かんすう であるとも考 かんが えられる。[ 42]
位相 いそう 的 てき 弦 つる 理論 りろん のB-モデルでは、D-ブレーンのカテゴリは、その上 うえ に弦 つる が伝搬 でんぱん するカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の複素 ふくそ 幾何 きか 学 がく から構成 こうせい される。数学 すうがく のことばでは、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい 上 じょう の連接 れんせつ 層 そう の導 しるべ 来 らい 圏 けん として知 し られている。他方 たほう 、A-モデルのD-ブレーンのカテゴリは、ミラーであるカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい のシンプレクティック幾何 きか 学 がく から構成 こうせい される。数学 すうがく では、これは深谷 ふかや 圏 けん (英語 えいご 版 ばん ) として知 し られている。[ 43] マキシム・コンツェビッチ のホモロジカルミラー対称 たいしょう 性 せい 予想 よそう は、ある意味 いみ でこれらの 2つのブレーンのカテゴリが同値 どうち であることを言 い っている。[ 44]
ミラー対称 たいしょう 性 せい を理解 りかい しようとするもう一 ひと つのアプローチは、アンドリュー・ストロミンジャー (Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ (en:Shing-Tung Yau )、エリック・ザスロフ (英語 えいご 版 ばん ) (Eric Zaslow)により1996年 ねん の論文 ろんぶん で示唆 しさ された。[ 5] SYZ予想 よそう に従 したが うと、ミラー対称 たいしょう 性 せい は複雑 ふくざつ なカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい をより単純 たんじゅん なピースへ分解 ぶんかい し、これらのピースの上 うえ での T-双対 そうつい を考 かんが えることにより理解 りかい することができる。[ 45]
オーバービューのセクションでトーラス を考 かんが えたことを思 おも い出 だ すと、このトーラスが2つの円 えん の積 せき とみなすことができた。このことは、(図 ず の中 なか の赤 あか い円 えん として示 しめ したように)縦 たて の円 えん (経線 けいせん )を集 あつ めた合併 がっぺい として考 かんが えることができることを意味 いみ する。これらの円 えん をどのように編成 へんせい するかという補助 ほじょ 的 てき な空間 くうかん が存在 そんざい し、この空間 くうかん 自体 じたい が円 えん となる(ピンクの円 えん で示 しめ した)。この空間 くうかん はトーラス上 じょう で経線 けいせん の円 えん をパラメトライズ すると言 い われる。上 うえ で説明 せつめい したように、ミラー対称 たいしょう 性 せい は経線 けいせん に作用 さよう するT-双対 そうつい に同値 どうち で、半径 はんけい
R
1
{\displaystyle R_{1}}
から
1
/
R
1
{\displaystyle 1/R_{1}}
へ変換 へんかん することとなる。
SYZ予想 よそう は、このアイデアをより複雑 ふくざつ な6次元 じげん カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の場合 ばあい へ一般 いっぱん 化 か した予想 よそう である。トーラスの場合 ばあい のように、6次元 じげん カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい をより単純 たんじゅん なピースへ分割 ぶんかつ することができ、この場合 ばあい には3次元 じげん トーラス (英語 えいご 版 ばん ) が3次元 じげん 球面 きゅうめん によりパラメトライズされる。[ 46] T-双対 そうつい はこの分解 ぶんかい に現 あらわ れるように、円 えん から3次元 じげん トーラスへ拡張 かくちょう が可能 かのう で、SYZ予想 よそう はミラー対称 たいしょう 性 せい がこれらの3次元 じげん トーラスのT-双対 そうつい の同時 どうじ に適用 てきよう さることと同値 どうち であることを言 い っている。[ 47] このようにして、SYZ予想 よそう はカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい の上 うえ にミラー対称 たいしょう 性 せい がどのように作用 さよう するかの幾何 きか 学 がく 的 てき な素描 そびょう を与 あた えた。
ミラー対称 たいしょう 性 せい のアイデアは、1980年代 ねんだい 中期 ちゅうき まで遡 さかのぼ ることができ、そのときは半径 はんけい
R
{\displaystyle R}
の円 えん の上 うえ の伝搬 でんぱん している弦 つる が物理 ぶつり 学的 がくてき には、適当 てきとう な計量 けいりょう の単位 たんい をとると、半径 はんけい
1
/
R
{\displaystyle 1/R}
の円 えん の上 うえ を伝搬 でんぱん している弦 つる と等価 とうか であることに気付 きづ いたときである。[ 48] この現象 げんしょう は、現在 げんざい ではT-双対 そうつい として知 し られていて、ミラー対称 たいしょう 性 せい に密接 みっせつ に関連 かんれん していることが理解 りかい されている。
1985年 ねん からの論文 ろんぶん の中 なか で、フィリップ・キャンデラス (英語 えいご 版 ばん ) (Philip Candelas)、ガリー・ホロビッツ(Gary Horowitz)、アンドリュー・ストロミンジャー (Andrew Strominger)とエドワード・ウィッテン (Edward Witten)は弦 つる 理論 りろん をカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい 上 うえ へコンパクト化 か することで、大 おお まかには理論 りろん が素粒子 そりゅうし 理論 りろん の標準 ひょうじゅん モデル に似 に たものとなることを示 しめ した。[ 49] この発展 はってん につづき、多 おお くの物理 ぶつり 学者 がくしゃ たちは、弦 つる 理論 りろん に基礎 きそ を持 も つ素粒子 そりゅうし 物理 ぶつり の現実 げんじつ に合 あ うモデルを構成 こうせい できるのではないかと期待 きたい し、カラビ・ヤウコンパクト化 か の研究 けんきゅう を始 はじ めた。そのような物理 ぶつり 的 てき なモデルが与 あた えるには、対応 たいおう するカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい が一意 いちい に再 さい 構成 こうせい することができないことには注意 ちゅうい する必要 ひつよう があった。代 か わりに、同一 どういつ の物理 ぶつり から発生 はっせい する 2つのカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい が存在 そんざい することを発見 はっけん した。[ 50]
カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい とある共 きょう 形 かたち 場 じょう 理論 りろん の間 あいだ の関係 かんけい の研究 けんきゅう により、ブライアン・グリーン (Brian Greene)とローネン・プレッサー(Ronen Plesser)は、非 ひ 自明 じめい なミラー関係 かんけい にあることを発見 はっけん した[ 51] 。さらにこの関係 かんけい の証拠 しょうこ は、プリップ・キャンデラス(Philip Candelas)とモニカ・リンカー(Monika Lynker)とロルフ・シームリック(Rolf Schimmrigk)の仕事 しごと からで結論 けつろん されていて、彼 かれ らは計算 けいさん 機 き により多 おお くの数 かず のカラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい を研究 けんきゅう する中 なか から、それらの中 なか にミラーペアが現 あらわ れることを発見 はっけん した[ 52] 。
数学 すうがく 者 しゃ たちは1990年 ねん 頃 ごろ からミラー対称 たいしょう 性 せい に興味 きょうみ を持 も ち始 はじ めた。1990年 ねん 頃 ごろ は、物理 ぶつり 学者 がくしゃ のフィリップ・キャンデラス、ゼニア・デ・ラ・オッサ、パウル・グリーン、リンダ・パークス[ 53] らは、ミラー対称 たいしょう 性 せい を使 つか うことで数 かぞ え上 あ げ幾何 きか 学 がく において10年 ねん 以上 いじょう 未 み 解決 かいけつ 問題 もんだい であったものが解 と けることを示 しめ した[ 54] 。これらの結果 けっか は、1991年 ねん のバークレー での数理 すうり 科学 かがく 研究所 けんきゅうじょ (英語 えいご 版 ばん ) (Mathematical Sciences Research Institute)(MSRI)での研究 けんきゅう 集会 しゅうかい で提案 ていあん された。この研究 けんきゅう 集会 しゅうかい の中 なか で、有理 ゆうり 曲線 きょくせん の数 かぞ え上 あ げ問題 もんだい をキャンデラスの計算 けいさん した数 かず の一 ひと つが、ノルウェーの数学 すうがく 者 しゃ ゲイル・エリングスラッド (英語 えいご 版 ばん ) (Geir Ellingsrud)とシュタイン・アリルド・シュトローム(Stein Arild Strømme)が見 み かけ以上 いじょう に厳密 げんみつ なテクニックを使 つか い得 え ていた数 かず に不一致 ふいっち であることが認知 にんち された。[ 55] この研究 けんきゅう 集会 しゅうかい で多 おお くの数学 すうがく 者 しゃ が、キャンデラスの仕事 しごと は、厳密 げんみつ な数学 すうがく 的 てき な議論 ぎろん を基礎 きそ としていないので、誤 あやま っているのではないかとの前提 ぜんてい に立 た っていた。しかしながら、それらの解 かい を試 ため してみると、エリングスラッドとシュトロームは、彼 かれ らの行 おこな った計算 けいさん 機 き のコードが誤 あやま っていることを発見 はっけん し、このコードを正 ただ しくすると、解 かい がキャンデラスと協力 きょうりょく 者 しゃ たちの得 え ていた解 かい に一致 いっち するという答 こた えを得 え た。[ 56]
1990年 ねん 、エドワード・ウィッテンは弦 つる 理論 りろん を簡素 かんそ 化 か した位相 いそう 的場 まとば の理論 りろん を導入 どうにゅう し[ 13] 、物理 ぶつり 学者 がくしゃ たちは位相 いそう 的場 まとば の理論 りろん にもミラー対称 たいしょう 性 せい のバージョンが存在 そんざい することを示 しめ した。[ 57] この位相 いそう 的場 まとば の理論 りろん についてのステートメントは、普通 ふつう は数学 すうがく 的 てき な脈絡 みゃくらく でのミラー対称 たいしょう 性 せい の定義 ていぎ として使 つか われている。[ 58] 1995年 ねん 、数学 すうがく 者 しゃ マキシム・コンツェビッチ (Maxim Kontsevich)は、弦 つる 理論 りろん の物理 ぶつり 的 てき なミラー対称 たいしょう 性 せい にアイデアの基礎 きそ を置 お く新 あたら しい数学 すうがく 的 てき な予想 よそう を提案 ていあん した[ 59] 。ホモロジカルミラー対称 たいしょう 性 せい として知 し られているこのミラー対称 たいしょう 性 せい 予想 よそう は、ミラー対称 たいしょう 性 せい を2つの数学 すうがく 的 てき 構造 こうぞう の同値 どうち 性 せい として定式 ていしき 化 か した。すなわち、カラビ・ヤウ多様 たよう 体 たい 上 じょう の連接 れんせつ 層 そう の導 しるべ 来 らい 圏 けん とそのミラーの深谷 ふかや 圏 けん (英語 えいご 版 ばん ) の同値 どうち 性 せい である。[ 59]
1996年 ねん から2000年 ねん にかけての、アレクサンダー・ギベンタール (英語 えいご 版 ばん ) (Alexander Givental)、ボング・リアン(Bong Lian)、ケフェング・リウ (英語 えいご 版 ばん ) (Kefeng Liu)、シン=トゥン・ヤウ (Shing-Tung Yau)はコンセビッチのいくつかのアイデアをどのようにして有理 ゆうり 曲線 きょくせん の実際 じっさい の数 かぞ え上 あ げに精密 せいみつ 化 か して適用 てきよう することができるかを示 しめ した。[ 2] これらの結果 けっか が、現 げん 次元 じげん での、ミラー対称 たいしょう 性 せい の数学 すうがく 的 てき な証明 しょうめい をどのように考 かんが えるのかを示 しめ している。
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弦 つる 理論 りろん
理論 りろん 概念 がいねん 人物 じんぶつ 関連 かんれん 項目 こうもく