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ミラー対称性 (弦理論) - Wikipedia コンテンツにスキップ

ミラー対称たいしょうせい (つる理論りろん)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがく理論りろん物理ぶつりがくにおいて、ミラー対称たいしょうせい(mirror symmetry)はカラビ・ヤウ多様たようたいばれる幾何きかがくてき対象たいしょうあいだ関係かんけいであり、2つの カラビ・ヤウ多様たようたい幾何きか学的がくてきにはまったことなっているにもかかわらず、つる理論りろん余剰よじょう次元じげんとしてそれらをあつかうと等価とうかとなる対称たいしょうせいのことをう。この場合ばあい多様たようたいたがいに「ミラー多様たようたいであるとばれる。

ミラー対称たいしょうせいはもともとは、物理ぶつり学者がくしゃによって発見はっけんされた。数学すうがくしゃがミラー対称たいしょうせい興味きょうみはじめたのは1990ねんごろで、とくに、フィリップ・キャンデラス英語えいごばん(Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、パウル・グリーン(Paul Green)、リンダ・パークス(Linda Parks)らによって、ミラー対称たいしょうせい数々かずかず方程式ほうていしきかいかずかぞえる数学すうがく分野ぶんやであるかぞ幾何きかがく使つかうことができることがしめされていた。実際じっさい、キャンデラスたちは、ミラー対称たいしょうせい使つかいカラビ・ヤウ多様たようたいうえ有理ゆうり曲線きょくせんかぞえることができ、ながきにわたり未解決みかいけつであった問題もんだい解明かいめいできることをしめした(参照さんしょう項目こうもく:ミラー対称たいしょうせい応用おうよう)[1]元来がんらいのミラー対称たいしょうせいへのアプローチは、理論りろん物理ぶつり学者がくしゃからのかならずしも数学すうがくてきには厳密げんみつ(mathematical rigor)ではないアイデアにもとづいているにもかかわらず、数学すうがくしゃはミラー対称たいしょうせい予想よそうのいくつかを数学すうがくてき厳密げんみつ証明しょうめい成功せいこうしつつある[2]

今日きょうでは、ミラー対称たいしょうせい純粋じゅんすい数学すうがく主要しゅよう研究けんきゅうテーマであり、数学すうがくしゃ物理ぶつり学者がくしゃ直感ちょっかんもとづくミラー対称たいしょうせい数学すうがくてきふか理解りかいしつつある[3]。ミラー対称たいしょうせいつる理論りろん計算けいさん実行じっこうするさい基本きほんてきなツールでもある[4]。ミラー対称たいしょうせいへの主要しゅようなアプローチは、マキシム・コンツェビッチ(Maxim Kontsevich)のホモロジカルミラー対称たいしょうせい予想よそうのプログラムやアンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)、エリック・ザスロフ英語えいごばん(Eric Zaslow)のSYZ予想よそう[5]ふくんでいる。

オーバービュー

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ミラー対称たいしょうせいのアイデア

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つる理論りろん基本きほんてき対象たいしょうぶつひらけつる英語えいごばんと閉弦である。

物理ぶつりがくでは、つる理論りろんは、そのなかでは素粒子そりゅうしてんじょう粒子りゅうしとはかんがえずに、つる英語えいごばんばれる 1次元じげん対象たいしょうえた理論りろんてきフレームワーク英語えいごばん(theoretical framework)である。これらのつる通常つうじょうつるのループやちいさな区分くぶんのようにえる。つる理論りろんは、どのようにつる空間くうかんなか伝搬でんぱんするか、たがいに相互そうご作用さようするかを記述きじゅつする。つるのスケールよりもおおきな距離きょりスケールでは、つる通常つうじょう粒子りゅうしのようにえ、質量しつりょう電荷でんかち、つる振動しんどう状態じょうたいによりきめられるほか性質せいしつっている。つる分裂ぶんれつしたり結合けつごうしたりすることには、粒子りゅうし輻射ふくしゃ吸収きゅうしゅう対応たいおうし、粒子りゅうしあいだ相互そうご作用さようおこ[6]

つる理論りろん記述きじゅつする世界せかい日常にちじょう世界せかいあいだには、たしかに差異さいがある。日常にちじょう生活せいかつでは、3つの空間くうかん次元じげん上下じょうげ左右さゆう前後ぜんご)と、1つの時間じかん次元じげん以後いご以前いぜん)が存在そんざいする。このように、現代げんだい物理ぶつり言葉ことばでは、時空じくうは4次元じげんである[7]つる理論りろん特別とくべつ有様ありさまひとつに、数学すうがくてき整合せいごうせいのために時空じくう余剰よじょう次元じげん(extra dimensions)を要求ようきゅうされる。ちょうつる理論りろんであるちょう対称たいしょうせいばれる理論りろんじょうかんがかた両立りょうりつする理論りろんのバージョンでは、毎日まいにち体験たいけんなかしたしんでいる4次元じげんくわえて、6次元じげん時空じくう余剰よじょう次元じげんがある[8]

つる理論りろん現在げんざい研究けんきゅう目標もくひょうのひとつは、こうエネルギー物理ぶつり実験じっけん観察かんさつされる粒子りゅうしを、つる再現さいげんするようなモデルを構成こうせいすることである。観察かんさつ整合せいごうせいたせるためには、そのような時空じくう次元じげんは4である必要ひつようがあるので、通常つうじょう距離きょりスケールではつる理論りろん余剰よじょう次元じげん方法ほうほうつけなくてはならない。つる理論りろん基礎きそとするもっと現実げんじつてきなモデルでは、コンパクトばれる過程かていとおしておこなわれる[9]。コンパクトかんがかたは、つる理論りろん特定とくてい次元じげんえんをなして自分じぶんで「じている」ようなものかもしれない。次元じげんきあがっている極限きょくげんでは、非常ひじょうちいさくなり、有効ゆうこう理論りろんではよりひく次元じげんとなっている理論りろんる。このことの標準ひょうじゅんてき類似るいじぶつは、にわのホースのような多次元たじげん対象たいしょうかんがえることである。ホースを充分じゅうぶんとお距離きょりると1次元じげんとなり、ながさしかっていないようにえる。しかし、ホースにちかづくにつれ、だい円周えんしゅうという次元じげんっていることがかる。このようにして、ホースの表面ひょうめんありは2次元じげんてきうごくことができる[10]

じつ 3次元じげんでのカラビ・ヤウ多様たようたい断面だんめん平面へいめん射影しゃえいした図形ずけい

コンパクトは、時空じくう有効ゆうこう次元じげんが4次元じげんとなるようなモデルを構成こうせいすることに使つかうことができる。しかし、余剰よじょう次元じげんをコンパクトするすべての方法ほうほうが、自然しぜん記述きじゅつする性質せいしつつモデルをつくすとはかぎらない。素粒子そりゅうし物理ぶつりがく確認かくにんできるようなモデルを構成こうせいするためには、コンパクトな余剰よじょう次元じげんカラビ・ヤウ多様たようたいかたちをしている必要ひつようがある[9]。カラビ・ヤウ多様たようたい複雑ふくざつな(典型てんけいでは)6次元じげんかたちをしていて、あるテクニカルな条件じょうけんたす。それらは、数学すうがくしゃエウジェニオ・カラビ(Eugenio Calabi)とシン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)の名前なまえから命名めいめいされた[11]

1980年代ねんだい後半こうはんつる理論りろんのそのようなコンパクトをすると、対応たいおうするカラビ・ヤウ多様たようたい一意いちいさい構成こうせいされることが可能かのうではないことがかった。わりに、2つのカラビ・ヤウ多様たようたいおな物理ぶつりつことが発見はっけんされた[12]。 これらの多様たようたいはたがいに「ミラー」といわれる。全部ぜんぶ双対そうついせいはいまだ予想よそうでしかないが、位相いそうてきつる理論りろん脈絡みゃくらくでのミラー対称たいしょうせいのバージョンがある。位相いそうてきつる理論りろんエドワード・ウィッテン[13] により導入どうにゅうされた簡素かんそされたつる理論りろんのバージョンであり、このバージョンは数学すうがくしゃにより厳密げんみつせい(en:mathematical rigor)をっている[2]位相いそうてきつる理論りろん脈絡みゃくらくでは、ミラー対称たいしょうせいは、2つの理論りろん、A-モデルとB-モデルがある正確せいかく意味いみ等価とうかであることを主張しゅちょうする[14]

つる理論りろんのこれらのカラビ・ヤウコンパクト自然しぜんただしい記述きじゅつをもたらすかどうかはべつとして、ことなるカラビ・ヤウ多様たようたいあいだのミラー対称たいしょうせい関係かんけい存在そんざいは、重要じゅうよう数学すうがくてき結果けっかである[15]つる理論りろん使つかわれるカラビ・ヤウ多様たようたい純粋じゅんすい数学すうがくてきには興味深きょうみぶかく、ミラー対称たいしょうせいは、ミラーカラビ・ヤウと同等どうとう問題もんだいくことでかぞ代数だいすう幾何きかがくおおくの問題もんだい数学すうがくしゃ解決かいけつできるようにした[16]今日きょう、ミラー対称たいしょうせい数学すうがく研究けんきゅう活発かっぱつ領域りょういきであり、数学すうがくしゃたちはいま物理ぶつり学者がくしゃ直感ちょっかんもとづくミラー対称たいしょうせい数学すうがくてき理解りかいふかめようと努力どりょくしている[17]

複素ふくそ幾何きかがく

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トーラス

ミラー双対そうつい片側かたがわあらわれる幾何きかがく一種いっしゅ理解りかいするためには、ここで複素ふくそ平面へいめんてん同一どういつすることで、トーラス(ドーナツのようにひとつのあなのあいた閉曲めん)の構成こうせいかんがえる。このトーラスを構成こうせいするためには、最初さいしょしょう 実数じっすうではない複素数ふくそすうのペア えらばねばならない. この最後さいご条件じょうけんは、これらのてん一直線いっちょくせんじょうにない(en:collinear)ことをたしかなものとしている.したがって、選択せんたくされたてんは、もう頂点ちょうてんが 0 と である平行四辺形へいこうしへんけい決定けっていする。この平行四辺形へいこうしへんけい反対はんたいがわあたり同一どういつすることで、もとめるトーラスがられる。

トーラス複素ふくそ平面へいめんなか平行四辺形へいこうしへんけい反対はんたいがわあたり同一どういつすることで構成こうせいできる。このトーラスの複素ふくそ構造こうぞうは、おおまかにいうと、トーラスの「がた」を記述きじゅつする。

このようにしてられるトーラスは、ひとつのトーラスがのトーラスと連続れんぞく変形へんけい可能かのうであるという意味いみですべて同値どうちである[18]他方たほう、トーラスは加法かほう構造こうぞうっているので、区別くべつすることが可能かのうとなる[14]。 すなわち、この方法ほうほう構成こうせいされたトーラスは複素ふくそ構造こうぞうっていて、そのようなトーラスじょう任意にんいてん近傍きんぼうは、複素ふくそ平面へいめんなかにある領域りょういきのようにえることを意味いみする。

このトーラスの構成こうせいなかで、わりにもとのペアと共通きょうつう因子いんし(つまり、ある複素数ふくそすう により である)としてリスケールによって複素数ふくそすうのペア 関連かんれんづけられるとすると、同値どうちなトーラスをる。したがって、「比率ひりつ でトーラス全体ぜんたいあつまりをパラメトライズすることはさらに便利べんりである。この比率ひりつはリスケール によってはわらない。一般いっぱんせいうしなうことなしに、このパラメータ せいきょつので、うえ半平はんぺんめんつ。また、パラメータ , , と おなじトーラスに対応たいおうしている。

もし 2つのトーラスがもともとことなる 対応たいおうしているとすると、それらは等価とうかではない複素ふくそ構造こうぞう[19]。 パラメータ は、平行四辺形へいこうしへんけい対辺たいへん同一どういつして構成こうせいされるトーラスの「がた」として記述きじゅつすることができる。うえ説明せつめいしたように、ミラー対称たいしょうせいは 2つの物理ぶつりがくてき理論りろん位相いそうてきつる理論りろんのA-モデルとB-モデルとを関連付かんれんづける。この双対そうついせいでは、位相いそうてきB-モデルが時空じくう複素ふくそ構造こうぞうにのみ依存いぞんしている。このようにして、もし「時空じくう」がトーラスであるような理論りろんかんがえると、理論りろんはパラメータ にのみ依存いぞんすることになる[14]

シンプレクティック幾何きかがく

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トーラスの幾何きかがくのもうひとつの側面そくめんは、トーラスのサイズである。さらにくわしくは、トーラスを単位たんいよん方形ほうけい英語えいごばん対辺たいへん同一どういつすることによりられる曲面きょくめんとしてみることができ、トーラスの面積めんせきはこの四辺しへんがたじょう面積めんせき要素ようそ 特定とくていできる。単位たんいよん方形ほうけいじょう面積めんせき要素ようそ積分せきぶんすることにより、対応たいおうするトーラスの面積めんせき る。これらの概念がいねんこう次元じげんにも一般いっぱんすることができ、面積めんせき要素ようそシンプレクティック形式けいしきかんがかたにより一般いっぱんされる。シンプレクティック形式けいしき空間くうかん研究けんきゅうは、シンプレクティック幾何きかがくばれる[20]

ミラー対称たいしょうせいでは、位相いそうてきつる理論りろんのA-モデルが、時空じくうのシンプレクティック幾何きかがく依存いぞんした理論りろんである。そのなかでは「時空じくう」がトーラスである理論りろんかんがえると、A-モデルは連続れんぞくてきにパラメータ 依存いぞんする[14]

T-双対そうつい

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トーラスは2つのえんせきであり、この場合ばあいあかえんがピンクのえん定義ていぎするじくまわりをくようになった場合ばあいである。あかえん半径はんけいで、 はピンクのえん半径はんけいである。

どのようにしてトーラスが複素ふくそ平面へいめんなか平行四辺形へいこうしへんけい対辺たいへん同一どういつするとることができるかをてみる。特別とくべつ単純たんじゅんれいは、複素数ふくそすう それぞれがじつじくきょじくにある場合ばあいである。この場合ばあいには、 および くことができる。ここに 実数じっすうである。上記じょうき議論ぎろんのようにしてられたトーラスじょう複素ふくそ構造こうぞうは、数値すうち により特徴とくちょうづけられる。

どのようにトーラスのシンプレクティック構造こうぞう面積めんせき要素ようそにより決定けっていされるかを、すでに説明せつめいした。平行四辺形へいこうしへんけいじょう座標ざひょう を、複素数ふくそすうによりられる平行四辺形へいこうしへんけい各々おのおのあたりながさ 1 をつようにえらぶことができる。すると、このトーラスの面積めんせき要素ようそ であり、単位たんい正方形せいほうけいじょう積分せきぶん となる。シンプレクティックパラメータ せき 定義ていぎする。

2つのえんカルテシアンせきとしてトーラスをかんがえることができることに注意ちゅういする。このことは、トーラス(ピンクで表示ひょうじされている)の赤道せきどう各々おのおのてんに、経線けいせんえんあか表示ひょうじされている)がある。

さて、トーラスは物理ぶつりてき理論りろんでの「時空じくう」を表現ひょうげんすることを想像そうぞうすると、この理論りろん基本きほんてき対象たいしょうは、量子力学りょうしりきがく規則きそくしたが時空じくうなか伝搬でんぱんするつる (物理ぶつりがく)英語えいごばんである。つる理論りろん双対そうついせい英語えいごばんひとつに T-双対そうついせいがある。このことは、すべての一方いっぽうでの観測かんそく可能かのうりょう双対そうつい記述きじゅつでのりょう同一どういつされるという意味いみで、半径はんけい えんまわりを伝搬でんぱんするつるは、半径はんけい えんまわりを伝搬でんぱんするつる等価とうかとなる[21]たとえば、つるのある方向ほうこうへの運動うんどうりょう離散りさんてきをとり、つる双対そうつい方向ほうこうえんまわりへなにまわいているかをあらわ[21]。 T-双対そうついをトーラスの経線けいせん方向ほうこうえん適用てきようすると、べつのトーラスにより表現ひょうげんされる時空じくうなかにある等価とうか記述きじゅつ存在そんざいすることがわかる。T-双対そうついせい へと変換へんかんし、この変換へんかん複素ふくそパラメータとシンプレクティックパラメータとをえる。

一般いっぱん場合ばあい

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一般いっぱんにミラー対称たいしょうせいは、2つの物理ぶつり理論りろん同値どうちせいであり、複素ふくそ幾何きかがく問題もんだいシンプレクティック幾何きかがく問題もんだい翻訳ほんやくすることでもある。ここでかんがえるトーラスは、たん位相いそう空間くうかんとしてコンパクトな(次元じげんが2であるカラビ・ヤウ多様たようたいであり、したがって、ミラー対称たいしょうせいのもっとも単純たんじゅんれいである[22]つる理論りろんへの応用おうようでは、普通ふつう、6次元じげんのカラビ・ヤウ多様たようたいかんがえる。この 6次元じげんは、時空じくう観測かんそくされえない次元じげん対応たいおうする。

上記じょうきれいなかのように、カラビ・ヤウ多様たようたい非常ひじょうわったかたちをしているかもしれない。6次元じげんのカラビ・ヤウ多様たようたいかたちは、数学すうがくてきにはある変量へんりょう(invariant)を使つか記述きじゅつされる(変量へんりょうとは多様たようたい付随ふずいする数値すうちであり、幾何きかがくてきおな多様たようたいおな付随ふずいする数値すうちつ)。たとえば、カラビ・ヤウ多様たようたいかたち大雑把おおざっぱにはオイラーしるべすうばれる数値すうちにより記述きじゅつされ、ミラー双対そうついのカラビ・ヤウ多様たようたいは、(ペアの相手あいてのカラビ・ヤウ多様たようたいの)反対はんたい符号ふごうをもつオイラーすうとなることができる[23]おおくのことなってえるかたちおなじオイラーしるべすうっていて、この変量へんりょうはカラビ・ヤウ多様たようたいかたちたんあら記述きじゅつをするものでしかない。しかしながら、このあらさはベッチすうばれるかずへとオイラーしるべすう分解ぶんかいすることにより、くわしくすることができる[24]。このためには、ホッジすうばれるミラーカラビ・ヤウ多様たようたい興味深きょうみぶか対称たいしょうせいっている不変ふへんりょう使つか[25]

一般いっぱんにミラー対称たいしょうせいでは、相関そうかん函数かんすうばれる物理ぶつりりょう計算けいさんすることに興味きょうみがある[26]相関そうかん函数かんすうれいのひとつは、つる相関そうかん函数かんすうである。A-モデルでは、つる相関そうかん函数かんすうあらわす、グロモフ・ウィッテン変量へんりょうばれる無限むげん数値すうち計算けいさんすることがむずかしい。しかしながら、ミラー対称たいしょうせいは、A-モデルの相関そうかん函数かんすうをB-モデルの相関そうかん函数かんすう関連付かんれんづけ、カラビ・ヤウ多様たようたい古典こてんてき複素ふくそ幾何きかがく依存いぞんしたものとし、より容易ようい計算けいさん可能かのうとする。この事実じじつがミラー対称たいしょうせい導入どうにゅう数学すうがくしゃたちを興味きょうみいたてんである[27]

ミラー対称たいしょうせい応用おうよう

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かぞ幾何きかがく

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アポロニウスのえん

ミラー対称たいしょうせい重要じゅうよう数学すうがくへの応用おうようおおくは、かぞ幾何きかがくばれる数学すうがく分野ぶんやぞくしている。かぞ幾何きかがくでは、典型てんけいてきには代数だいすう幾何きかがく使つかい、幾何きかがくてき問題もんだいかいかずかぞげることに興味きょうみがある。かぞ幾何きかがくのもっともはや時期じき問題もんだいひとつに、ギリシャの数学すうがくしゃアポロニウスによる紀元前きげんぜん200ねんごろ提案ていあんされた問題もんだいである。かれは、どのようにすればあたえられた3つのえんせっする平面へいめんじょうえんはいくつあるかがかるかとうた[28]一般いっぱんに、アポロニウスの問題もんだいかいは、8つのえん存在そんざいする。みぎくろしめした3つのあたえられたえんれいしめしている。

クレブシュ3曲面きょくめん英語えいごばん

数学すうがくかぞ問題もんだいはしばしば、多項式たこうしきがゼロとなるてんとして定義ていぎされるいわゆる代数だいすう多様たようたいという幾何きかがくてき対象たいしょうのクラスに関係かんけいしている。たとえば、クレブシュ3曲面きょくめん英語えいごばんひだり図示ずししてある4変数へんすうの3多項式たこうしきにより定義ていぎされる。19世紀せいき数学すうがくしゃアーサー・ケイリー(Arthur Cayley)とジョージ・サルモン英語えいごばん(George Salmon)の結果けっかは、この曲面きょくめんじょうにはちょうど 27 ほん直線ちょくせんがあるとのことであった[29]

この問題もんだい一般いっぱんすると、うえべたカラビ・ヤウ多様たようたいであるクインティックスリーフォールド(5多項式たこうしき記述きじゅつされる複素ふくそ3次元じげん多様たようたい)のうえなんほん直線ちょくせんえがくことができるかという問題もんだいとなる。この問題もんだいは19世紀せいきのドイツの数学すうがくしゃヘルマン・シューベルト英語えいごばん(Hermann Schubert)によりかれ、かれはそのような直線ちょくせんはちょうど 2,875 ほん存在そんざいすることを発見はっけんした。さらに、1986ねん幾何きか学者がくしゃ、セルダン・カッツ(Sheldon Katz)が、クインティックスリーフォールドに完全かんぜんはいっている(えんのような)2曲線きょくせんかずは 609,250 あることを証明しょうめいした[28]

1991ねんごろには、かぞ幾何きかがく古典こてんてき問題もんだい大半たいはんかれ、かぞ幾何きかがくへの興味きょうみ下火したびになりはじめていた。数学すうがくしゃマーク・グロス英語えいごばん(Mark Gross)によれば、「ふる問題もんだいかれるとともに、人々ひとびとはシューベルトのかず現代げんだいのテクニックを使つかいチェックするほうへもどりはしたものの、非常ひじょうふるめかしいものでした[30]。」 しかしながら、この分野ぶんやは1991ねん5がつにふたたび活発かっぱつはじめた。そのとき物理ぶつり学者がくしゃであったフィリップ・キャンデラス英語えいごばん(Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、ポール・グリーン(Paul Green)とリンダ・パークス(Linda Parks)は、ミラー対称たいしょうせいをクインティックスリーフォールドにふくまれる3曲線きょくせんかずかぞえることに使つかうことができるかもしれないことをしめした。おおまかにいうと、カラビ・ヤウ多様たようたい内部ないぶ完全かんぜんふくまれるたまとして、3曲線きょくせんかんがえることができる[16]。 キャンデラスとかれ協力きょうりょくしゃは、そのような6次元じげんカラビ・ヤウ多様たようたいは3曲線きょくせんをちょうど 317,206,375 ふくむことができることを発見はっけんした[30]

クインティックスリーフォールドじょうの3曲線きょくせんかぞえることにくわえて、キャンデラスとかれ協力きょうりょくしゃは、数学すうがくしゃたちの結果けっかをはるかにえる有理ゆうり曲線きょくせんかぞげにかんするより一般いっぱんてきすうおおくの結果けっか[31]。 この仕事しごと使つかわれた方法ほうほう理論りろん物理ぶつりがくからの数学すうがくてきには厳密げんみつ(en:mathematical rigor)ではないアイデアを基礎きそとしていたが、数学すうがくしゃたちはミラー対称たいしょうせい予想よそうのいくつかを数学すうがくてき厳密げんみつ証明しょうめいした。とくに、ミラー対称たいしょうせいかぞ幾何きかがく予想よそうは、現在げんざいでは厳密げんみつ証明しょうめいされている[32]

理論りろん物理ぶつりがく

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かぞ幾何きかがくへの応用おうようくわえて、ミラー対称たいしょうせいつる理論りろんでの計算けいさん実行じっこう基本きほんてきなツールである。位相いそうてきつる理論りろんのA-モデルでは、グロモフ・ウィッテン変量へんりょうばれる無限むげん数値すうちにより、計算けいさんすることはきわめてむずかしいが、物理ぶつりてき興味きょうみのあるりょう表現ひょうげんできる。一方いっぽう、B-モデルでは計算けいさん古典こてんてき積分せきぶん還元かんげんすることができ、非常ひじょう容易よういになる[33]理論りろんたちは、ミラー対称たいしょうせい適用てきようすることで、A-モデルでのむずかしい計算けいさんを、等価とうかであるが技術ぎじゅつてきにはやさしいB-モデルじょう計算けいさんうつえができるようになった。したがって、現在げんざいではこれらの計算けいさんは、つる理論りろん様々さまざま物理ぶつりてき過程かていかくりつ決定けっていすることに使つかわれている。ミラー対称たいしょうせい双対そうついせい結合けつごうされて、一方いっぽう理論りろんべつことなる理論りろん等価とうか計算けいさんうつえる。この方法ほうほうべつ理論りろん計算けいさん外出がいしゅつしすることにより、理論りろんたちは双対そうついせい使つかわずには計算けいさん不可能ふかのうであったおおくのりょう計算けいさん可能かのうとなった[34]

つる理論りろん以外いがいでは、ミラー対称たいしょうせい基本きほん粒子りゅうし記述きじゅつするために、物理ぶつり学者がくしゃ使つか形式けいしきである量子りょうしろんいち側面そくめん理解りかいすることに使つかわれる。たとえば、ミラー対称たいしょうせいゲージ理論りろん性質せいしつ理解りかいすることに使つかわれる。ゲージ理論りろんは、基本きほん粒子りゅうし標準ひょうじゅん模型もけいなかあらわれ、高度こうど対称たいしょうせいをもった物理ぶつり理論りろんである。そのような理論りろんは、近接きんせつした背景はいけい伝播でんぱするつるから発生はっせいし、ミラー対称たいしょうせいはこれらの理論りろん計算けいさんをすることに有用ゆうよう道具どうぐである[35]実際じっさい、このアプローチは、ネーサン・サイバーグ(Nathan Seiberg)やエドワート・ウィッテンにより研究けんきゅうされた 4次元じげん時空じくうなか重要じゅうようなゲージ理論りろん計算けいさん実行じっこう使つかわれ、ドナルドソン変量へんりょう脈絡みゃくらくでの数学すうがくている[36]。 ミラー対称たいしょうせい一般いっぱんとして、3次元じげんミラー対称たいしょうせい英語えいごばん(3D mirror symmetry)とばれるミラー対称たいしょうせいもあって、3次元じげん時空じくうなか量子りょうしろんのペアを関係付かんけいづける[37]

ミラー対称たいしょうせいへのアプローチ

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ホモロジカルミラー対称たいしょうせい

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D-ブレーンのペアに端点たんてん固定こていされたひらくつる

つる理論りろんちょう重力じゅうりょく理論りろんのような関連かんれんする理論りろんでは、「ブレーン」(brane)がてん粒子りゅうしかんがかたこう次元じげんへの一般いっぱんされた物理ぶつりてき対象たいしょうである。たとえば、てん粒子りゅうしはゼロ次元じげんのブレーンとかんがえることができるのにたいし、つるは 1次元じげんのブレーンとしてかんがえることができる。またこう次元じげんのブレーンもかんがえることができる。ブレーンということばは、「メンブレーン」(membrane)ということばからていて、2次元じげんのブレーンである。[38]

つる理論りろんでは、つる (物理ぶつりがく)英語えいごばんは、(2つの端点たんてん構成こうせいとなっている)ひらきつると(じたループになっている)閉弦がある。D-ブレーンは、ひらきつるかんがえるときに発生はっせいする重要じゅうようなブレーンのクラスである。ひらきつる時空じくうなか伝搬でんぱんし、その端点たんてんは D-ブレーンのうえにあることを要求ようきゅうされる。D-ブレーンのなか文字もじの "D" は、ディリクレ境界きょうかい条件じょうけんとしてられているある数学すうがくてき条件じょうけん導入どうにゅうするという事実じじつからる。[39]

数学すうがくてきには、ブレーンはけん概念がいねん使つか記述きじゅつすることができる。[40] これは対象たいしょう対象たいしょう任意にんいのペアにたいして、それらのあいだ(morphism)からなる数学すうがくてき構造こうぞうである。大半たいはんれいでは、対象たいしょうはある数学すうがくてき構造こうぞうっていて(たとえば、集合しゅうごうベクトル空間くうかん位相いそう空間くうかんといった)、はこれらの構造こうぞうあいだ函数かんすうによりあたえられる。[41] 対象たいしょうがD-ブレーンで、が2つのD-ブレーン あいだあいだびたひらくつる波動はどう函数かんすうであるともかんがえられる。[42]

位相いそうてきつる理論りろんのB-モデルでは、D-ブレーンのカテゴリは、そのうえつる伝搬でんぱんするカラビ・ヤウ多様たようたい複素ふくそ幾何きかがくから構成こうせいされる。数学すうがくのことばでは、カラビ・ヤウ多様たようたいじょう連接れんせつそうしるべらいけんとしてられている。他方たほう、A-モデルのD-ブレーンのカテゴリは、ミラーであるカラビ・ヤウ多様たようたいシンプレクティック幾何きかがくから構成こうせいされる。数学すうがくでは、これは深谷ふかやけん英語えいごばんとしてられている。[43] マキシム・コンツェビッチホモロジカルミラー対称たいしょうせい予想よそうは、ある意味いみでこれらの 2つのブレーンのカテゴリが同値どうちであることをっている。[44]

SYZ予想よそう

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ミラー対称たいしょうせい理解りかいしようとするもうひとつのアプローチは、アンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ(en:Shing-Tung Yau)、エリック・ザスロフ英語えいごばん(Eric Zaslow)により1996ねん論文ろんぶん示唆しさされた。[5] SYZ予想よそうしたがうと、ミラー対称たいしょうせい複雑ふくざつなカラビ・ヤウ多様たようたいをより単純たんじゅんなピースへ分解ぶんかいし、これらのピースのうえでの T-双対そうついかんがえることにより理解りかいすることができる。[45]

オーバービューのセクションでトーラスかんがえたことをおもすと、このトーラスが2つのえんせきとみなすことができた。このことは、(なかあかえんとしてしめしたように)たてえん経線けいせん)をあつめた合併がっぺいとしてかんがえることができることを意味いみする。これらのえんをどのように編成へんせいするかという補助ほじょてき空間くうかん存在そんざいし、この空間くうかん自体じたいえんとなる(ピンクのえんしめした)。この空間くうかんはトーラスじょう経線けいせんえんパラメトライズするとわれる。うえ説明せつめいしたように、ミラー対称たいしょうせい経線けいせん作用さようするT-双対そうつい同値どうちで、半径はんけい から 変換へんかんすることとなる。

SYZ予想よそうは、このアイデアをより複雑ふくざつな6次元じげんカラビ・ヤウ多様たようたい場合ばあい一般いっぱんした予想よそうである。トーラスの場合ばあいのように、6次元じげんカラビ・ヤウ多様たようたいをより単純たんじゅんなピースへ分割ぶんかつすることができ、この場合ばあいには3次元じげんトーラス英語えいごばん3次元じげん球面きゅうめんによりパラメトライズされる。[46] T-双対そうついはこの分解ぶんかいあらわれるように、えんから3次元じげんトーラスへ拡張かくちょう可能かのうで、SYZ予想よそうはミラー対称たいしょうせいがこれらの3次元じげんトーラスのT-双対そうつい同時どうじ適用てきようさることと同値どうちであることをっている。[47] このようにして、SYZ予想よそうはカラビ・ヤウ多様たようたいうえにミラー対称たいしょうせいがどのように作用さようするかの幾何きかがくてき素描そびょうあたえた。

歴史れきし発展はってん

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ミラー対称たいしょうせい発見はっけん

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ミラー対称たいしょうせいのアイデアは、1980年代ねんだい中期ちゅうきまでさかのぼることができ、そのときは半径はんけい えんうえ伝搬でんぱんしているつる物理ぶつり学的がくてきには、適当てきとう計量けいりょう単位たんいをとると、半径はんけい えんうえ伝搬でんぱんしているつる等価とうかであることに気付きづいたときである。[48] この現象げんしょうは、現在げんざいではT-双対そうついとしてられていて、ミラー対称たいしょうせい密接みっせつ関連かんれんしていることが理解りかいされている。

1985ねんからの論文ろんぶんなかで、フィリップ・キャンデラス英語えいごばん(Philip Candelas)、ガリー・ホロビッツ(Gary Horowitz)、アンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)とエドワード・ウィッテン(Edward Witten)はつる理論りろんカラビ・ヤウ多様たようたいうえコンパクトすることで、おおまかには理論りろん素粒子そりゅうし理論りろん標準ひょうじゅんモデルたものとなることをしめした。[49] この発展はってんにつづき、おおくの物理ぶつり学者がくしゃたちは、つる理論りろん基礎きそ素粒子そりゅうし物理ぶつり現実げんじつうモデルを構成こうせいできるのではないかと期待きたいし、カラビ・ヤウコンパクト研究けんきゅうはじめた。そのような物理ぶつりてきなモデルがあたえるには、対応たいおうするカラビ・ヤウ多様たようたい一意いちいさい構成こうせいすることができないことには注意ちゅういする必要ひつようがあった。わりに、同一どういつ物理ぶつりから発生はっせいする 2つのカラビ・ヤウ多様たようたい存在そんざいすることを発見はっけんした。[50]

カラビ・ヤウ多様たようたいとあるきょうかたちじょう理論りろんあいだ関係かんけい研究けんきゅうにより、ブライアン・グリーン(Brian Greene)とローネン・プレッサー(Ronen Plesser)は、自明じめいなミラー関係かんけいにあることを発見はっけんした[51]。さらにこの関係かんけい証拠しょうこは、プリップ・キャンデラス(Philip Candelas)とモニカ・リンカー(Monika Lynker)とロルフ・シームリック(Rolf Schimmrigk)の仕事しごとからで結論けつろんされていて、かれらは計算けいさんによりおおくのかずのカラビ・ヤウ多様たようたい研究けんきゅうするなかから、それらのなかにミラーペアがあらわれることを発見はっけんした[52]

ミラー対称たいしょうせい応用おうよう

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数学すうがくしゃたちは1990ねんごろからミラー対称たいしょうせい興味きょうみはじめた。1990ねんごろは、物理ぶつり学者がくしゃのフィリップ・キャンデラス、ゼニア・デ・ラ・オッサ、パウル・グリーン、リンダ・パークス[53]らは、ミラー対称たいしょうせい使つかうことでかぞ幾何きかがくにおいて10ねん以上いじょう解決かいけつ問題もんだいであったものがけることをしめした[54]。これらの結果けっかは、1991ねんバークレーでの数理すうり科学かがく研究所けんきゅうじょ英語えいごばん(Mathematical Sciences Research Institute)(MSRI)での研究けんきゅう集会しゅうかい提案ていあんされた。この研究けんきゅう集会しゅうかいなかで、有理ゆうり曲線きょくせんかぞ問題もんだいをキャンデラスの計算けいさんしたかずひとつが、ノルウェーの数学すうがくしゃゲイル・エリングスラッド英語えいごばん(Geir Ellingsrud)とシュタイン・アリルド・シュトローム(Stein Arild Strømme)がかけ以上いじょう厳密げんみつなテクニックを使つかていたかず不一致ふいっちであることが認知にんちされた。[55] この研究けんきゅう集会しゅうかいおおくの数学すうがくしゃが、キャンデラスの仕事しごとは、厳密げんみつ数学すうがくてき議論ぎろん基礎きそとしていないので、あやまっているのではないかとの前提ぜんていっていた。しかしながら、それらのかいためしてみると、エリングスラッドとシュトロームは、かれらのおこなった計算けいさんのコードがあやまっていることを発見はっけんし、このコードをただしくすると、かいがキャンデラスと協力きょうりょくしゃたちのていたかい一致いっちするというこたえをた。[56]

証明しょうめいされたミラー対称たいしょうせい

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1990ねん、エドワード・ウィッテンはつる理論りろん簡素かんそした位相いそう的場まとば理論りろん導入どうにゅう[13]物理ぶつり学者がくしゃたちは位相いそう的場まとば理論りろんにもミラー対称たいしょうせいのバージョンが存在そんざいすることをしめした。[57] この位相いそう的場まとば理論りろんについてのステートメントは、普通ふつう数学すうがくてき脈絡みゃくらくでのミラー対称たいしょうせい定義ていぎとして使つかわれている。[58] 1995ねん数学すうがくしゃマキシム・コンツェビッチ(Maxim Kontsevich)は、つる理論りろん物理ぶつりてきなミラー対称たいしょうせいにアイデアの基礎きそあたらしい数学すうがくてき予想よそう提案ていあんした[59]ホモロジカルミラー対称たいしょうせいとしてられているこのミラー対称たいしょうせい予想よそうは、ミラー対称たいしょうせいを2つの数学すうがくてき構造こうぞう同値どうちせいとして定式ていしきした。すなわち、カラビ・ヤウ多様たようたいじょう連接れんせつそうしるべらいけんとそのミラーの深谷ふかやけん英語えいごばん同値どうちせいである。[59]

1996ねんから2000ねんにかけての、アレクサンダー・ギベンタール英語えいごばん(Alexander Givental)、ボング・リアン(Bong Lian)、ケフェング・リウ英語えいごばん(Kefeng Liu)、シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)はコンセビッチのいくつかのアイデアをどのようにして有理ゆうり曲線きょくせん実際じっさいかぞげに精密せいみつして適用てきようすることができるかをしめした。[2] これらの結果けっかが、げん次元じげんでの、ミラー対称たいしょうせい数学すうがくてき証明しょうめいをどのようにかんがえるのかをしめしている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Yau and Nadis 2010
  2. ^ a b c Givental 1996, 1998; Lian, Liu, Yau 1997, 1999, 2000
  3. ^ Hori et al. 2003; Aspinwall et al. 2009
  4. ^ Zaslow 2008
  5. ^ a b Strominger, Yau, and Zaslow 1996
  6. ^ 入手にゅうしゅ可能かのうつる理論りろん入門にゅうもんしょは、Greene 2000 を参照さんしょう
  7. ^ Wald 1984, p. 4
  8. ^ Zwiebach 2009, p. 8
  9. ^ a b Yau and Nadis 2010, Ch. 6
  10. ^ この類似るいじは Greene 2000, p. 186 でれいとして使つかわれている。
  11. ^ Yau and Nadis 2010, p. ix
  12. ^ Dixon 1988; Lerche, Vafa, and Warner 1989
  13. ^ a b Witten 1990
  14. ^ a b c d Zaslow 2008, p.531
  15. ^ Zaslow 2008, p.523
  16. ^ a b Yau and Nadis 2010, p.168
  17. ^ Hori et al. 2003, p. xix
  18. ^ Zaslow 2008, p.530
  19. ^ さらにくわしくは、トーラスはモジュラぐんたい基本きほん領域りょういき英語えいごばんによりパラメトライズされる。
  20. ^ Zaslow 2008, p. 531
  21. ^ a b Zaslow 2008, p.532
  22. ^ Zaslow 2008, p.533
  23. ^ Yau and Nadis 2010, p. 160
  24. ^ Yau and Nadis 2010, p. 161
  25. ^ Yau and Nadis 2010, p. 163
  26. ^ Zaslow 2008, p. 529
  27. ^ Zaslow 2008, p. 534
  28. ^ a b Yau and Nadis 2010, p.166
  29. ^ Yau and Nadis 2010, p.167
  30. ^ a b Yau and Nadis 2010, p.169
  31. ^ Yau and Nadis 2010, p.171
  32. ^ Yau and Nadis 2010, p.172
  33. ^ Zaslow 2008, pp. 533–4
  34. ^ Zaslow 2008, sec. 10
  35. ^ Hori et al. 2003, p. 677
  36. ^ Hori et al. 2003, p. 679
  37. ^ Intriligator and Seiberg 1996
  38. ^ Moore 2005, p.214
  39. ^ Moore 2005, p.215
  40. ^ Aspinwall et al. 2009
  41. ^ A basic reference on category theory is Mac Lane 1998.
  42. ^ Zaslow 2008, p.536
  43. ^ Aspinwall et al. 2009, p.575
  44. ^ Aspinwall et al. 2009, p.616
  45. ^ Yau and Nadis 2010, p.174
  46. ^ よりくわしくは、3次元じげん球面きゅうめん各々おのおのてん付随ふずいした3次元じげんトーラスが存在そんざいする。ただし例外れいがいは、特異とくいてんつトーラスに対応たいおうするあるわる性質せいしつてんがありうる。Yau and Nadis 2010, pp.176--7を参照さんしょうのこと。
  47. ^ Yau and Nadis 2010, p.178
  48. ^ This was first observed in Kikkawa and Yamasaki 1984 and Sakai and Senda 1986.
  49. ^ Candelas et al. 1985
  50. ^ This was observed in Dixon 1988 and Lerche, Vafa, and Warner 1989.
  51. ^ Green and Plesser 1990; Yau and Nadis 2010, p. 158
  52. ^ Candelas, Lynker, and Schimmrigk 1990; Yau and Nadis 2010, p. 163
  53. ^ Candelas et al. 1991
  54. ^ Yau and Nadis 2010, p.165
  55. ^ Yau and Nadis 2010, p.169--170
  56. ^ Yau and Nadis 2010, p.170
  57. ^ Vafa 1992; Witten 1992
  58. ^ Hori et al. 2003, p. xviii
  59. ^ a b Kontsevich 1995

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Givental, Alexander (1996). “Equivariant Gromov-Witten invariants”. International Mathematics Research Notices 1996 (13): 613–663. 
  • Givental, Alexander (1998). “A mirror theorem for toric complete intersections”. Topological field theory, primitive forms and related topics: 141–175. 
  • Kontsevich, Maxim (1995). “Homological algebra of mirror symmetry”. Proceedings of the International Congress of Mathematicians: 120–139. 
  • Lian, Bong; Liu, Kefeng; Yau, Shing-Tung (2000). “Mirror principle, IV”. Surveys in Differential Geometry: 475–496. 
  • Mac Lane, Saunders (1998). Categories for the Working Mathematician. ISBN 978-0387984032 
  • Moore, Gregory (2005). “What is... a Brane?” (PDF). Notices of the AMS 52: 214. http://www.ams.org/notices/200502/what-is.pdf June 2013閲覧えつらん. 
  • Witten, Edward (1992). “Mirror manifolds and topological field theory”. Essays on mirror manifolds: 121–160. 
  • Zaslow, Eric (2008), “Mirror Symmetry”, in Gowers, Timothy, The Princeton Companion to Mathematics, ISBN 978-0691118802