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リンさんしお

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

リンさんしお(リンさんえん、えい: phosphate)は、1個いっこリンと4酸素さんそから構成こうせいされる原子げんしイオンまたはもとから形成けいせいされる物質ぶっしつである。リンさんイオンは−3電荷でんかち、PO43−あらわされる。食品しょくひん添加てんかぶつとしても使用しようされる。

有機ゆうき化学かがくにおいては、リンさんのアルキル誘導体ゆうどうたい有機ゆうきリンさん化合かごうぶつ呼称こしょうされる。

リンさんしお通常つうじょう元素げんそのリンをふくみ、種々しゅじゅのリンさん鉱物こうぶつリンこう)として見出みいだされる。一方いっぽう単体たんたいのリンやホスフィンなどてい酸化さんか状態じょうたいのリン化合かごうぶつ自然しぜんかいではることができない(まれ隕石いんせきちゅうに、ホスフィンるい見出みいだされる)。

HPO42− イオンのスティックモデル。むらさき: リン原子げんしあか: 酸素さんそ原子げんししろ: 水素すいそ原子げんし

水溶液すいようえき希釈きしゃくしてゆくと、リンさんしおは4つの解離かいり状態じょうたい形成けいせいする。一般いっぱんてきには、つよ塩基えんきせい条件じょうけんでは、リンさんイオンは PO43−状態じょうたい存在そんざいする。じゃく塩基えんきせい条件じょうけんではリンさん水素すいそイオン HPO42− として、弱酸じゃくさんせい条件じょうけんではリンさん水素すいそイオン H2PO4、そして強酸きょうさんせい条件じょうけんでは遊離ゆうりリンさん H3PO4 (aq) として存在そんざいする。

リンさんしお重合じゅうごうしたイオンとしても存在そんざいしうる。P2O74−リンさん (diphosphate) またはピロリンさん (pyrophosphate)、P3O105−さんリンさん (triphosphate) というように呼称こしょうされる。また種々しゅじゅのメタリンさんおおくの化合かごうぶつとして見出みいだされるが、実験じっけんしきでは PO3表現ひょうげんされる。

生化学せいかがく

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生体せいたいけいにおいては、リンさん化合かごうぶつはリンさんイオンやDNARNAはじめとしたいろいろなリンさんエステルからだとして見出みいだされる。一方いっぽう置換ちかんホスフィンなど有機ゆうき化学かがく利用りようされるようなリン化合かごうぶつ自然しぜんかいではることができない。

生化学せいかがく領域りょういきではリンさんイオン溶液ようえき無機むきリンさんばれ、ATPDNAあるいはRNAとして結合けつごうしているものをす。そして無機むきリンさん記号きごう Piあらわされる。無機むきリンさんはATPがADP、あるいはADPがAMPになるさいにイオンが形成けいせいされ放出ほうしゅつされる。のヌクレオシドさんリンさんやヌクレオシドリンさんでも同様どうようである。

生体せいたいでは、リンさんイオンはピロリンさんしおばれるおおきなイオンが加水かすい分解ぶんかいして形成けいせいされる。ピロリンさんは P2O74−構造こうぞうち、PPi という記号きごうあらわされる。

すじ組織そしきではADPやATPあるいはのヌクレオシドさんリンさんやヌクレオシドリンさんのリンさん結合けつごうはエネルギーの貯蔵ちょぞうたいで、一般いっぱんにはこうエネルギーリンさんとしてられている。

環境かんきょう科学かがく農業のうぎょう

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生態せいたいがくにおいて、リンの化合かごうぶつ (phosphate) は環境かんきょうにおける重要じゅうよう制御せいぎょ因子いんしとみなされている。生物せいぶつのエネルギー代謝たいしゃ不可欠ふかけつATPDNAは、リンさん分子ぶんし一部いちぶふくヌクレオチドからできており、生物せいぶつ現存げんそんりょうバイオマス)は環境かんきょうちゅうからられるリンさんりょうからおおきく制約せいやくけている。生物せいぶつ細胞さいぼう重要じゅうよう構成こうせい元素げんそとしては炭素たんそ窒素ちっそ重要じゅうようであるが、炭素たんそ光合成こうごうせい化学かがく合成ごうせいによって、植物しょくぶつなどの炭酸たんさん同化どうか能力のうりょくのある生物せいぶつ大気たいきちゅう水中すいちゅう二酸化炭素にさんかたんそから、窒素ちっそ窒素ちっそ固定こてい能力のうりょくのある細菌さいきん大気たいきちゅう窒素ちっそからほぼ無尽蔵むじんぞう生態せいたいけい存在そんざいするバイオマスにむことができる。ところが、リンは土壌どじょうちゅう水中すいちゅう存在そんざいするりょうかぎられているし、溶存ようぞんするリンさんしおとして生物せいぶつ利用りようしやすい形態けいたい存在そんざいするりょうはさらにかぎられている。

海洋かいよう生態せいたいけいにおいて、海面かいめんゆたかな太陽たいようエネルギーをけているが、表層ひょうそう海水かいすい通常つうじょうリンさんしおとぼしく生物せいぶつ生産せいさんせいとぼしいことがおおい。海水かいすいちゅうからバイオマスにまれたリンは生物せいぶつとともに海底かいていしずむので、海水かいすいちゅうのリンは海底かいてい偏在へんざいする。炭酸たんさん同化どうかおこなわれる表層ひょうそう有光ありみつそう)へリンが供給きょうきゅうされる道筋みちすじは、陸上りくじょうからの流入りゅうにゅうと、海底かいていからのゆうのぼりなど少数しょうすうかぎられ、こうした供給きょうきゅう場所ばしょ顕著けんちょ生物せいぶつ生産せいさんられる。土壌どじょうちゅうではリンさん存在そんざいりょうはそれほどおおくないのにくわえて、そのおおくが不溶性ふようせい化合かごうぶつとなっていることがおおい。植物しょくぶつ土壌どじょうちゅうのリンさん化合かごうぶつをめぐる競争きょうそうきん細菌さいきんといった微生物びせいぶつたいして劣勢れっせいであるのにくわえ、不溶性ふようせいのリンさん化合かごうぶつ吸収きゅうしゅうする能力のうりょくもそれほどたかくない。植物しょくぶつはしばしばきん共生きょうせいし、ふく合体がったいであるきん形成けいせいしてリンさんしお獲得かくとく有利ゆうりにしている。リンさんしおなどの栄養えいよう塩類えんるい獲得かくとく極端きょくたん困難こんなん環境かんきょう適応てきおうした植物しょくぶつとして、きた昆虫こんちゅうなどから獲得かくとくするような進化しんかげた食虫植物しょくちゅうしょくぶつられている。

生態せいたいけいおおくの場合ばあいかぎられたリンさん供給きょうきゅうによって成立せいりつしているため、自然しぜんかいにみられないようなりょうのリンさん供給きょうきゅうされると、しばしば生態せいたいけい崩壊ほうかいにつながる。たとえばみずかい生態せいたいけい多量たりょうのリンさん供給きょうきゅうされると、特定とくてい植物しょくぶつプランクトン大量たいりょう増殖ぞうしょくし、赤潮あかしおアオコ発生はっせいをみる。このとき大量たいりょう増殖ぞうしょくした藻類そうるい水中すいちゅう有機物ゆうきぶつ増加ぞうかさせて有機物ゆうきぶつ汚濁おだく原因げんいんとなったり、毒性どくせいのある藻類そうるいえることで、生物せいぶつ悪影響あくえいきょうあたえることとなる。

リンさんしおはしばしば洗剤せんざい水質すいしつ軟化なんかざいとして配合はいごうされる。しかし、リンさんみず環境かんきょう放出ほうしゅつ生態せいたいけいのバランスをこわ原因げんいんとなるため、リンさんふく合成ごうせい洗剤せんざい販売はんばい規制きせいされる地域ちいきもある。 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、1970ねんミシガン近接きんせつするシカゴ洗剤せんざいのリンさんしお含有がんゆうりょう規制きせいおこなわれた[1]ほか、日本にっぽんでは、1979ねん琵琶湖びわこゆうする滋賀しがけん条例じょうれい洗剤せんざいのリンさんしお含有がんゆうりょう規制きせいおこなった。

リンさんしお体内たいない過剰かじょう摂取せっしゅするとカルシウムの吸収きゅうしゅう阻害そがいされ骨粗こつそしょうしょうにもなりかねない事例じれいがある。このようなことをけて一部いちぶのコンビニエンスストアチェーンでは、ハム・ソーセージを使つかった食品しょくひんからリンさんしお排除はいじょするみをおこなっている[2]

農業のうぎょうにおいて、リン(リンさんしお)は植物しょくぶつ主要しゅよう栄養素えいようそであるため、肥料ひりょう成分せいぶんひとつとして重要じゅうようである。リン鉱石こうせき地層ちそうのリン鉱床こうしょうから採掘さいくつされる。かつてはたん粉砕ふんさいされたままで肥料ひりょう利用りようされたが、今日きょうでは化学かがく肥料ひりょう原料げんりょうとして利用りようされる。通常つうじょう化学かがく処理しょりによりリンさん肥料ひりょうじゅうリンさん石灰せっかいリンさんアンモニウムりんやす)の原料げんりょうとされる。この処理しょりにより、リンさん成分せいぶんりょうたかめられ、水溶すいようせい向上こうじょうするので植物しょくぶつがすばやく利用りようできるようになる。

肥料ひりょう分類ぶんるい通常つうじょう3つの数字すうじあらわされる。最初さいしょ窒素ちっそ成分せいぶん実効じっこうりょうつぎがリン成分せいぶん実効じっこうりょう(P2O5 りょうとして換算かんさん)そして最後さいごがカリ成分せいぶん実効じっこうりょう(K2O りょうとして換算かんさん)である。たとえば、10-10-10 肥料ひりょう上記じょうき3つの成分せいぶんを10パーセントずつふくのこりは増量ぞうりょうざいであることを意味いみする。

産出さんしゅつ

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天然てんねんのリンさんしお鉱物こうぶつ

鉱物こうぶつがく地質ちしつがくリンこう (phosphate rock) はリンさんイオンをふく岩石がんせきである。

きたアメリカには巨大きょだいなリンこう埋蔵まいぞうされており、中央ちゅうおうフロリダのボーンバレー地区ちくオハイオしゅうのソーダスプリングス、そしてきたカリフォルニアしゅう海岸かいがん採掘さいくつされている。比較的ひかくてきちいさな鉱床こうしょうがテネシーしゅう、ジョージアしゅうにも存在そんざいする。ちいさな島国しまぐにであるナウルには良質りょうしつのリンこう大量たいりょう存在そんざいするが、採掘さいくつしつくされている。またモロッコでもだい規模きぼ工業こうぎょうてき採掘さいくつされている。

過剰かじょう追肥ついひされた農地のうちからのリン成分せいぶん流出りゅうしゅつは、みず環境かんきょうのリン汚染おせんこす。それはリンさんしお合成ごうせい洗剤せんざい同様どうようとみ栄養えいよう大量たいりょう発生はっせい)とその結果けっかさかな水生すいせい生物せいぶつ酸素さんそ欠乏症けつぼうしょうによるこす。

過剰かじょう摂取せっしゅ全身ぜんしん老化ろうか

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ハーバード大学だいがく研究けんきゅうでインスタントめんなどおおくの加工かこう食品しょくひんふくまれている無機むきリンさんしお現代げんだいじん過剰かじょう摂取せっしゅしており、その結果けっかほね密度みつど低下ていか皮膚ひふ筋肉きんにく萎縮いしゅくなど全身ぜんしん老化ろうか進行しんこうすることがわかっている、なおマウスの実験じっけんではリンさん正常せいじょうにすれば進行しんこうまるという[3]。 なおリンさんしお過剰かじょう摂取せっしゅ現行げんこう法規ほうきじょう表示ひょうじする必要ひつようのないかたちで「リンさん」「リンさんしお」が非常ひじょうおお使つかわれているのでらずに過剰かじょう摂取せっしゅしている可能かのうせいたか[4]新潟にいがたけんつばめはリンさんしお摂取せっしゅりょうをカップめんをカップきそば同様どうよういちゆでじるてたり、ふくろのインスタントめんは、スープをべつにしてゆでじるてるなどの行動こうどうらすことを提唱ていしょうしている[5]

リンさんしお鉱物こうぶつ

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鉱物こうぶつがくにおいて、リンさんしおからなる鉱物こうぶつリンさんしお鉱物こうぶつ(りんさんえんこうぶつ、えい: phosphate mineral)という。燐灰石りんかいせき(Ca5(PO4)3(F,Cl,OH))などがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 中性ちゅうせい洗剤せんざいのリンさんしお シカゴで禁止きんしかわみずうみ生物せいぶつころす『朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)11月5にち 12はん 23めん
  2. ^ しょく安心あんしん安全あんぜんへの”. 株式会社かぶしきがいしゃセブン・イレブン・ジャパン. 2016ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  3. ^ “[http://robust-health.jp/article/preventive01/000033.php 米国べいこくには科学かがく情報じょうほう いっぱいあるのです。 「ロハス・メディカル」誌面しめんより| 2012ねん9がつごう(vol84)掲載けいさい]”. 株式会社かぶしきがいしゃロハスメディア. 2020ねん12月6にち閲覧えつらん
  4. ^ “[http://lohasmedical.jp/archives/2016/09/post_373.php 加工かこう食品しょくひん老化ろうかはやめる?~リンさん探検たんけんたい① 2016ねん9がつごう (vol.132)掲載けいさい]”. 株式会社かぶしきがいしゃロハスメディア. 2020ねん12月6にち閲覧えつらん
  5. ^ しょくそだてだより12がつごうリンさんしお”. つばめ健康けんこうづくり. 2021ねん9がつ25にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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