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ルル (オペラ)

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ルル』(Lulu)は、アルバン・ベルク台本だいほん作曲さっきょくオペラ原作げんさくは「ルル二部作にぶさく」とばれるフランク・ヴェーデキント戯曲ぎきょくれい』(Erdgeist, 1895ねん)と『パンドラのはこ』(Die Büchse der Pandora, 1904ねん)。ベルクの2さくのオペラで、1929ねんから1935ねんにかけて作曲さっきょくおこなわれたが、完成かんせいしないまま絶筆ぜっぴつとなった。

歴史れきし

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作曲さっきょく

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ベルクが最初さいしょに『パンドラのはこ』の上演じょうえんたのは1905ねんカール・クラウスによる上演じょうえんだったが、オペラ着手ちゃくしゅしたのはもう1つのオペラ『ヴォツェック』を完成かんせいさせたのち1929ねんだった[ちゅう 1]。ベルクは作曲さっきょくたり、原作げんさくから省察せいさつてき会話かいわ部分ぶぶん削除さくじょし、映画えいが幕間まくあいげき挿入そうにゅうすることによって『れい』と『パンドラのはこ』を結合けつごうさせた。1933ねんあき、ベルクはだい2まくの『ルルのうた』のスコアとピアノアントン・ヴェーベルンの50さい誕生たんじょうおくっている。

1934ねん5月6にちのヴェーベルンあて手紙てがみは、まだ「オーバーホール」が必要ひつようとしながらもショートスコア(抜粋ばっすい)での作曲さっきょく一段落いちだんらくしたことをつたえている。どう時期じきにベルクはヴィルヘルム・フルトヴェングラーらにベルリンでの初演しょえん計画けいかく仲立なかだちをたのんでいたが[1]、フルトヴェングラーからはナチス政権せいけんのドイツにおいての上演じょうえん不可能ふかのうげられた[2]。それでも演奏えんそう機会きかいひろげるため、オペラのオーケストレーションに先立さきだってソプラノと管弦楽かんげんがくのための演奏えんそうかいよう組曲くみきょく『オペラ"ルル"からの交響こうきょうてき小品しょうひん(ルル組曲くみきょく)』が8がつまでにげられた[2][3]下記かき参照さんしょう)。ベルクは8がつ28にちづけ手紙てがみにおいて、亡命ぼうめいちゅうだったアルノルト・シェーンベルクに「最愛さいあいとも!」の言葉ことばともに『ルル』を献呈けんていするむねつたえているが、とおくからしかかれ誕生たんじょう9月13にち)をいわえないこと、きょくそのものではなく献辞けんじしかおくれないこと、そしてきょく未完みかんであることをびている。

そのもこつこつと作曲さっきょくつづけたが、1935ねんヴァルター・グロピウスアルマ・マーラーむすめマノン・グロピウスがくなり、ベルクは『ルル』を中断ちゅうだんして、マノンにささげるために『ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく』をつくることにした。きょく短期間たんきかん完成かんせいしふたたび『ルル』の作業さぎょうすすめられたが、そのとしすえにベルクが敗血症はいけつしょう急死きゅうししてしまったため、『ルル』は未完みかんわった。のこされたものは、だい3まくだい1じょうだい268小節しょうせつまでと、おおよその楽器がっき編成へんせい指示しじしたそののショートスコアだった[4]。さらに、だい3まく間奏かんそうきょく終結しゅうけつ組曲くみきょく一部いちぶとして抜粋ばっすい作曲さっきょくされていた。

ベルクぼつ

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エルヴィン・シュタインぜん3まくピアノ・ヴォーカル・スコアき、ベルクの未亡人みぼうじんヘレーネはオーケストレーションをアルノルト・シェーンベルク依頼いらいした。シェーンベルクはいったん承諾しょうだくしたものの、おくられてきたベルクのスケッチをて、いろいろな理由りゆうからことわった[ちゅう 2]。ヘレーネは作曲さっきょくによる補筆ほひつこばみ、1937ねん6月2にちチューリッヒ歌劇かげきじょうでの『ルル』の初演しょえんは、最初さいしょの2まくと『ルル組曲くみきょく』の一部いちぶ上演じょうえんされた。クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮しきウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだん、ルルやくアニャ・シリヤ録音ろくおん(デッカ/ロンドン、1976ねん録音ろくおん、1978ねん発売はつばい)もこの形式けいしきしたがっている。

そのもヘレーネは補筆ほひつ厳禁げんきんしていたが、彼女かのじょには秘密ひみつのうちに完全かんぜんばん作成さくせいへのこころみはつづいていた。1963ねんほんさく出版しゅっぱんしたウニヴェルザール出版しゅっぱんしゃが、ブーレーズの提案ていあん[よう出典しゅってん]、かねてよりこの作品さくひん関心かんしんっていたフリードリヒ・チェルハ補筆ほひつひそかに依頼いらいしていたのである。1976ねんにヘレーネがくなったのち公表こうひょうされたしん資料しりょうもとにして、チェルハは12ねんかけて『ルル』の3まくばん完成かんせいさせた。補筆ほひつばん存在そんざいあきらかになると、ヘレーネが設立せつりつしたアルバン・ベルク基金ききんはチェルハ補筆ほひつばん出版しゅっぱん反対はんたいして法的ほうてき処置しょちったが、最終さいしゅうてきに2まくまでと3まく補筆ほひつばんとをけることでようやく出版しゅっぱんみとめた。こうして『ルル』3まくばん1979ねん出版しゅっぱんされ、同年どうねん2がつ24にちピエール・ブーレーズ指揮しきパトリス・シェロー演出えんしゅつガルニエみやにて世界せかい初演しょえんされ、おおきな反響はんきょうんだ。

ルルをえんじたソプラノ歌手かしゅには、前述ぜんじゅつしたアニャ・シリヤ(のちにゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうえんじたこともある)のほかNuri Hadzic(1937ねん初演しょえん)、アンネリーゼ・ローテンベルガーイヴリン・リアーテレサ・ストラータス、ナンシー・シェイド(Nancy Shade)、ジュリア・ミゲネス(Julia Migenes)、カラン・アームストロング(Karan Armstrong)、パトリシア・ワイズ(Patricia Wise)、クリスティーネ・シェーファー、マリス・ピーターゼン(Marlis Petersen)、アナート・エフラティー(Anat Efrati)、ローラ・エイキン(Laura Aikin)らがいる。日本人にっぽんじんによる舞台ぶたい初演しょえんは2003ねん11月22にち日生劇場にっせいげきじょうにて、沼尻ぬまじりりゅうてん指揮しき東京とうきょうフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだん天羽あもう明恵あきえ飯田いいだみちによるもので、3まくばんもちいられた[5]。その佐藤さとうしのぶが2まくばんえんじたが[6]、のちびわホールにおける上演じょうえんでも飯田いいだみちえんじた[7]

配役はいやく

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ヴェーデキントの原作げんさくでは、ルルのきゃくとしてもう一人ひとり人物じんぶつ登場とうじょうするが、オペラにおけるシンメトリーを重視じゅうししたベルクにより削除さくじょされた。

  • ルル Luluソプラノ
  • ゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょう Gräfin Geschwitzメゾソプラノ
  • 劇場げきじょう衣裳いしょうがかり Garderobiere/ギムナジウムの学生がくせい ein Gymnasiast/下僕げぼくあたま ein Groomアルト
  • 医事いじ顧問こもんかん Der Medizinalratかたやく
  • 銀行ぎんこう Der Bankierバス
  • 教授きょうじゅ Der Professorだまやく
  • 画家がか Der Maler/黒人こくじん ein Negerテノール
  • シェーン博士はかせ Dr. Schön/きジャック Jack the Ripperバリトン
  • アルヴァ Alwa、シェーン博士はかせ息子むすこ作曲さっきょく(テノール)
  • シゴルヒ Schigolch老人ろうじん(バス)
  • 猛獣もうじゅう使づかEin Tierbändiger/ ちから技師ぎしein Athlet(バス) - 「ちから技師ぎし」の原作げんさくでの名前なまえは「ロドリーゴ」だがベルクが名前なまえ削除さくじょ
  • 公爵こうしゃく Der Prinz/ 従僕じゅうぼくder Kammerdiener/ 侯爵こうしゃくder Marquis(テノール)
  • 劇場げきじょう支配人しはいにん Der Theaterdirektor(バス)
  • 道化師どうけし Ein Clownだまやく
  • 劇場げきじょう作業さぎょういん Ein Bühnenarbeiterだまやく
  • 警部けいぶ Der Polizeikommissärかたやく
  • 15さい少女しょうじょ Eine Fünfzehnjährige(ソプラノ)
  • そのはは Ihre Mutter(アルト)
  • 女流じょりゅう工芸こうげい Eine Kunstgewerblerin(メゾソプラノ)
  • 新聞しんぶん記者きしゃ Ein Journalist(バリトン)
  • 召使めしつかEin Diener(バリトン)

演奏えんそう時間じかん

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やく3時間じかんかくまくやく1あいだ前後ぜんこう

あらすじ

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プロローグ

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サーカスで、猛獣もうじゅう使づかいがいろいろな動物どうぶつ紹介しょうかいする。最後さいごに、かれはヘビをステージにみちびき「ルル」と紹介しょうかいする。「へびだれにも気付きづかれることなく、いたずらを扇動せんどうし、誘惑ゆうわくし、誘惑ゆうわくし、毒殺どくさつし、殺害さつがいするために作成さくせいされた。女性じょせい原始げんしてき性質せいしつ

だい1まく

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19世紀せいきまつ、ドイツのある都市とし。ルルは貧民ひんみんがいにいたところを新聞しんぶん編集へんしゅうちょうシェーン博士はかせひろわれた。シェーン博士はかせ愛人あいじん関係かんけいつづけながらも、ルルを初老しょろう医事いじ顧問こもんかん(ゴル博士はかせ)と結婚けっこんさせていた。

ルルの魔性ましょう魅了みりょうされた画家がかがルルにいいよる。そこに医事いじ顧問こもんかんがやってきて、いかりのあまり心臓しんぞう発作ほっさぬ。

ルルは画家がか再婚さいこんし、シゴルヒやシェーン博士はかせ彼女かのじょのもとをたずねてくる。画家がかもルルのよごれた過去かこり、ショックのため自殺じさつする。

劇場げきじょうおどになったルルの楽屋がくやをシェーン博士はかせ訪問ほうもんする。シェーン博士はかせ許嫁いいなずけれて観劇かんげきたのだが、もはやルルからげられなくなったことをさとり、ルルの口述こうじゅつ婚約こんやくしゃへのわかれの手紙てがみく。

だい2まく

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シェーン博士はかせはルルと結婚けっこんする。しかし、ルルのまわりには同性愛どうせいあいしゃのゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょう貧民ひんみんがい時代じだい関係かんけいのあったシゴルヒ、ちから技師ぎしといったあやしげな人間にんげんがいて、さらに息子むすこのアルヴァまでルルにのぼせあがってしまう。嫉妬しっとくるったシェーン博士はかせはルルにピストルで自殺じさつするようせまる。しかし、ルルは「だれかがわたしのために自殺じさつしたって、わたし価値かちがったりしない」といいかえし、そのピストルでシェーン博士はかせ射殺しゃさつする。

サイレント映画えいがで、ルルの逮捕たいほ裁判さいばん投獄とうごくえがかれる。しかし逮捕たいほの1ねん、ゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうコレラ入院にゅういんちゅうのルルとわり、ルルは脱獄だつごく成功せいこうする(ただし、当時とうじ制作せいさくされた映画えいがはスティル写真しゃしんのぞいてうしなわれており、本来ほんらいさい製作せいさく必要ひつようであるが現在げんざい演奏えんそうでははぶかれている)。

ルルの脱獄だつごく計画けいかくすすめるアルヴァたちのもとをギムナジウム学生がくせいたずねてくる。学生がくせいもルルをがす計画けいかくかたるがされ、そこに脱獄だつごくしてきたルルがあらわれる。ちから技師ぎしとシゴルヒが退出たいしゅつし、ルルはアルヴァとにんきりでかたう。

だい3まく

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ルルはゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょう、アルヴァ、ちから技師ぎしとともにパリにげ、はなやかならしをおくっている。そこにシゴルヒも到着とうちゃくして、ルルをゆする。ちょうどちから技師ぎしから、かねをくれなければ警察けいさつ密告みっこくするとおどされていたので、ルルはシゴルヒにちから技師ぎし始末しまつしてくれるようたのむ。シゴルヒが宿やどちから技師ぎしさそやくはゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうたのむ。かぶ暴落ぼうらくほうとどき、さらにルルの過去かこ侯爵こうしゃく通報つうほう警察けいさつせまって、ルルはアルヴァと逃亡とうぼうする。

ルルはロンドンで売春ばいしゅんをしてらすことになり、教授きょうじゅきゃくとしてむ。ともにらしているアルヴァとシゴルヒが教授きょうじゅのポケットをあさる。さらにパリから、ちぶれたなりのゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうが、画家がかえがいたルルの肖像しょうぞうって到着とうちゃくする。

ルルはつぎに黒人こくじんきゃくれてかえる。黒人こくじん前払まえばらいを拒否きょひし、あらそっている最中さいちゅうにアルヴァがころされる。ゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうがピストル自殺じさつ思案しあんしているところに、ルルがさらにべつきゃくれてくる。しかし相手あいてきジャックで、ルルを惨殺ざんさつし、さらにゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうしてげる。重傷じゅうしょうったゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょうの、「ルル、わたし天使てんし!」という悲痛ひつうさけびによりオペラはじられる。

構造こうぞう

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だい2まく映画えいが伴奏ばんそう音楽おんがく中央ちゅうおう部分ぶぶん

『ルル』の構造こうぞうかがみているとよくわれる。たとえば、だい1まくのルルは栄華えいがきわみだが、だい3まくではどんぞこまでちぶれているし、だい1まくでルルのおっとたち(医事いじ顧問こもんかん画家がか、シェーン博士はかせ)をえんじた役者やくしゃたちは、だい3まくでルルのきゃく教授きょうじゅ黒人こくじんきジャック)をそれぞれえんじるように指示しじされる。

このかがみのような構造こうぞうは、だい2まくのサイレント映画えいがのところでより顕著けんちょである(牢獄ろうごくはいる-る、といった配置はいち)。そこに付随ふずいする音楽おんがくもきっちりと回文かいぶんになっている。

また、だい1まくだい2じょうはシェーン博士はかせおとれつにより全体ぜんたいソナタ形式けいしきかれ、だい2まくにはロンド形式けいしき導入どうにゅうされており、そしてだい3まくだい2じょう変奏曲へんそうきょく形式けいしき構成こうせいされている(ベルクは同様どうようこころみを『ヴォツェック』ですでにこころみている)。

おとれつ

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『ルル』は自由じゆう作曲さっきょくされたところもあるが、シェーンベルクのじゅうおと技法ぎほう使つかわれている。しかし全部ぜんぶに1つのおとれつ使つかうというよりも、登場とうじょう人物じんぶつそれぞれに固有こゆうおとれつあたえている。つまり、リヒャルト・ワーグナーのオペラのライトモティーフ機能きのうたす。またこれらのおとれつ前半ぜんはんはどれも調しらべせいわくないにあり、ベルクの後期こうきによくみられるじゅうおと技法ぎほうへの調しらべせいてき要素ようそ導入どうにゅうしめしている[8]

ベルクは、ひとつの基本きほんおんれつをもとにかく登場とうじょう人物じんぶつおとれつしている[8]

B, D, E, C, F, G, E, F#, A, G♯, C♯, B

たとえばアルヴァのおとれつは、基本きほんおんれつなん反復はんぷくしたそれぞれ7つめのおとす。

B, D, E, C, F, G, E, F♯, A, G♯, C♯, B, B, D, E, C, F, G, E, F♯, A, G♯, C♯, B...

そうしてできたアルヴァのおとれつはこうである。

B, F♯, E, G♯, F, B, E, D, A, C, C♯, G

シェーン博士はかせおとれつは、基本きほんおんれつ反復はんぷくさせ、最初さいしょおとき、1つけて、つぎおとき、2つけて、つぎおとき、3つけて、つぎおとき、(ここからぎゃくになる)3つけて、つぎおと、2つけて、つぎおと、1つけて、つぎおと……となる。

B, D, E, C, F, G, E, F♯, A, G♯, C♯, B, B, D, E, C, F, G, E, F♯, A, G♯, C♯, B...

そうしてできたシェーン博士はかせおとれつはこうである。

B, E, G, G♯, D, F, E, A, B, C, F♯, C♯
\relative c' {\clef treble \omit Staff.TimeSignature \cadenzaOn <d! bes' es>1 <g! c! f!> <a! e'! fis> <b! cis gis'>}
"Bild Motiv"

ルルのおとれつは、基本きほんおんれつを3つずつ和音わおんにした動機どうき(「の」動機どうき (Bild Motiv) とばれる)のかくこえじゅんっていくことでられる。

E, F, G, A, B, C, E, C♯, D, G, A, B

『ルル組曲くみきょく

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ソプラノ管弦楽かんげんがくのための『オペラ"ルル"からの交響こうきょうてき小品しょうひん』(Symphonische Stücke aus der Oper „Lulu“)いわゆる『ルル組曲くみきょく[ちゅう 3]1934ねん作曲さっきょくされた。構成こうせい以下いかとおりである。

  1. ロンド - だい2まくのアルヴァとルルの会話かいわ場面ばめんながれる管弦楽かんげんがくのパート。
  2. オスティナート - だい2まく、シェーン博士はかせ射殺しゃさつしたルルが逮捕たいほされてから収監しゅうかんされるまでの一部始終いちぶしじゅうえがいた映画えいが音楽おんがく
  3. ルルのうた - だい2まく、ルルがシェーン博士はかせかってうたうアリア。
  4. 変奏曲へんそうきょく - だい3まくだい1じょうわりで、ルルが警察けいさつにまたもやわれてのがれる部分ぶぶん音楽おんがく
  5. アダージョ・ソステヌート - だい3まく終結しゅうけつ。ルルのとゲシュヴィッツ伯爵はくしゃく令嬢れいじょう悲鳴ひめい

1934ねん11月30にちエーリヒ・クライバー指揮しきによってベルリン初演しょえんされ、好評こうひょうはくしたが、クライバーはその4にちベルリン国立こくりつ歌劇かげきじょう音楽おんがく監督かんとくをやめてドイツをっている[9]。ベルク自身じしんは、直前ちょくぜんの1935ねん12月11にちウィーンオズヴァルト・カバスタ指揮しき演奏えんそう出席しゅっせきした[10]

だい3まく補筆ほひつされるまでは、だい2まくのちに「変奏曲へんそうきょく」と「アダージョ・ソステヌート」を演奏えんそうするのが慣例かんれいとなっていた。

引用いんよう

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だい1まくだい3じょうには『ローエングリン』の「結婚けっこん行進曲こうしんきょく」が、そしてだい3まくにはヴェーデキント自身じしん作曲さっきょくした『リュートのうた』が引用いんようされている。また、ベルク自身じしんの『ヴォツェック』から動機どうき引用いんようられるのも特徴とくちょうである(だい1まくだい3じょうでの冒頭ぼうとう引用いんようだい3まく終結しゅうけつでのマリーの期待きたいしめ空虚くうきょ引用いんようなど)。

楽器がっき編成へんせい

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クラシック音楽おんがく史上しじょうはじめてヴィブラフォン使用しようしたきょくとしてられている[よう出典しゅってん][ちゅう 4]

ピットない

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木管もっかん楽器がっきフルート3(2ばんと3ばんピッコロえ)、オーボエ3(3ばんイングリュッシュ・ホルンえ)、アルト・サクソフォーンクラリネット3、バスクラリネット1、ファゴット3(3ばんコントラファゴットえ)

金管楽器きんかんがっきホルン4、トランペット(Cかん)3、トロンボーン3、チューバ1

打楽器だがっき:ティンパニ(4)、トライアングルタンブリン小太鼓こだいこ、ジャズ・ドラム、だい太鼓たいこシンバルわせと懸垂けんすい)、ルーテタムタム大小だいしょう)、ゴングヴィブラフォーン

ピアノハープ

弦楽器げんがっき:14がた、1stヴァイオリン14、2ndヴァイオリン12、ヴィオラ10、チェロ8、コントラバス6

舞台ぶたいじょう (だい1まくだい3じょう)

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クラリネット3(テナーサクソフォーン1ほんえ)、アルトサクソフォーン、ジャズトランペット2、スーザフォン、ジャズようドラムセットバンジョー、ピアノ、ヴァイオリン3、コントラバス。

メディア

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2まくばん

3まくばん

2まくばん

3まくばん

出典しゅってん

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  1. ^ チャンパイ、ホラント (1988) pp. 342-343
  2. ^ a b Jarman, Douglas (1992). Alban Berg: Lulu. Cambridge University Press. p. 7 
  3. ^ Clements, Andrew「ルル」スタンリー・セイディへん日本語にほんごばん監修かんしゅう中矢なかや一義かずよし土田つちた英三郎えいざぶろうしんグローヴオペラ事典じてん白水しろみずしゃ、2006ねん、p. 778
  4. ^ Jarman (1992) pp. 47-48
  5. ^ 昭和音楽大学しょうわおんがくだいがくオペラ研究所けんきゅうじょ オペラ情報じょうほうセンター
  6. ^ 昭和音楽大学しょうわおんがくだいがくオペラ研究所けんきゅうじょ オペラ情報じょうほうセンター
  7. ^ 昭和音楽大学しょうわおんがくだいがくオペラ研究所けんきゅうじょ オペラ情報じょうほうセンター
  8. ^ a b 浜尾はまお (1998) pp. 215-217
  9. ^ Perle (1985) pp.240-241
  10. ^ Perle (2001) p.111

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ベルクは2さくのオペラの題材だいざいとしてゲアハルト・ハウプトマンの『ピッパはおどる』(Und Pippa tanzt!) も検討けんとうしていたが、友人ゆうじんたちは『ルル』をし、おそらくハウプトマンがわ意向いこうもあって実現じつげんしなかった。Perle (1985) p. 40
  2. ^ 公式こうしきにはほかの仕事しごといそがしいとったが、実際じっさい理由りゆう原稿げんこうなかはんユダヤ主義しゅぎてき内容ないよう、とくにユダヤじんである銀行ぎんこうえんかたについて、もとのヴェーデキントの台本だいほんにはない「mauscheln」(ユダヤじん軽蔑けいべつしてかたりである「Mauschel」に由来ゆらいし、「イディッシュはなす」という意味いみ)という指示しじつけたことが原因げんいんだったというせつがある。Perle (1985) pp.287-288
  3. ^ ベルクは8楽章がくしょうからなる『ルル交響曲こうきょうきょく』("Lulu Symphony")も平行へいこうして構想こうそうしていたが、こちらは実現じつげんしなかった。現存げんそんの『交響こうきょうてき小品しょうひん』が『ルル交響曲こうきょうきょく』とばれることもある。Eaton, Quaintance (1974). Opera Production II: A Handbook. University of Minnesota Press. p. 144.
  4. ^ ヴィブラフォンを目立めだかたち最初さいしょもちいた作品さくひんハヴァーガル・ブライアンのオペラ "The Tigers" (1917-19/1928-29/1969)である可能かのうせいがあり、ダリウス・ミヨー1932ねんの "L'annonce faite à Marie" でもちいている。Blades, James; Holland, James (2001), “Vibraphone”, in Sadie, Stanley, The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 26 (2nd ed.), Oxford University Press, p. 522 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Huscher, Phillip, The Santa Fe Opera: An American Pioneer, Santa Fe: The Santa Fe Opera, 2006. ISBN 0-86534-550-3 ISBN 978-0-86534-550-8
  • Perle, George (1985). The Operas of Alban Berg: Lulu. University of California Press. ISBN 0520045025 
  • Perle, George (2001). Style and Idea in the Lyric Suite of Alban Berg (2nd ed.). Pendragon Press. ISBN 1576470857 
  • アッティラ・チャンパイ&ディートマル・ホラント『名作めいさくオペラブックス ベルク ルル』西原にしはらみのる&浅野あさのひろしわけ音楽之友社おんがくのともしゃ、1988ねん原著げんちょ1985ねん
  • ヴィリー・ライヒ『アルバン・ベルク―伝統でんとう革新かくしんあらしきた作曲さっきょく武田たけだ明倫めいりんやく音楽之友社おんがくのともしゃ、1980ねん原著げんちょ1963ねん
  • 浜尾はまお房子ふさこ「ルル」『作曲さっきょくべつ名曲めいきょく解説かいせつライブラリー16 しんウィーンらく音楽之友社おんがくのともしゃ、1998ねん

外部がいぶリンク

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