ヴァイマル、デッサウ及およびベルナウのバウハウスとその関連かんれん遺産いさん群ぐん

ヴァイマル、デッサウ及およびベルナウのバウハウスとその関連かんれん遺産いさん群ぐん （ドイツ）
デッサウ・バウハウス
英名えいめい	Bauhaus and its Sites in Weimar, Dessau and Bernau
仏ふつ名めい	Bauhaus et ses sites à Weimar, Dessau et Bernau
面積めんせき	8.1614 ha （緩衝かんしょう地帯ちたい 59.26 ha）
登録とうろく区分くぶん	文化ぶんか遺産いさん
登録とうろく基準きじゅん	(2), (4), (6)
登録とうろく年ねん	1996年ねん
拡張かくちょう年ねん	2017年ねん
公式こうしきサイト	世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
地図ちず
使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ

ヴァイマル、デッサウ及およびベルナウのバウハウスとその関連かんれん遺産いさん群ぐん（ヴァイマル、デッサウおよびベルナウのバウハウスとそのかんれんいさんぐん）は、1996年ねんに登録とうろくされたドイツの世界せかい遺産いさんのひとつで、2017年ねんにベルナウ・バイ・ベルリンの関連かんれん遺産いさんなどを拡大かくだい登録とうろくし、現在げんざいの名称めいしょうになった。ドイツのモダニズム建築けんちくに重要じゅうような影響えいきょうを及およぼした建築けんちく学校がっこうバウハウスにかかわる物件ぶっけんがまとめて登録とうろくされている。バウハウスはヴァイマル、デッサウ、ベルリンの順じゅんに移転いてんしたが、最後さいごのベルリンは末期まっきのごく短みじかい期間きかんしか存在そんざいしていなかった。

この世界せかい遺産いさんの当初とうしょの登録とうろく名めいは「ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連かんれん遺産いさん群ぐん」だった。

歴史れきし

詳細しょうさいは「バウハウス」を参照さんしょう

ヴァイマル

バウハウスは、1919年ねんに、ヴァルター・グロピウスの手てによって保守ほしゅ的てきな都市としヴァイマルに建設けんせつされた。これはヴァイマル美術びじゅつ工芸こうげい学校がっこう（the Weimar School of Arts and Crafts）とヴァイマル美術びじゅつアカデミー（the Weimar Academy of Fine Arts）を合併がっぺいしたものだった。

彼かれは開校かいこうの辞じで、職人しょくにんや芸術げいじゅつ家かの間あいだに傲岸ごうがんな障壁しょうへきを生起せいきする階級かいきゅう差別さべつを排はいした、新あらたな職人しょくにんギルドを打うち立たてることを宣言せんげんした。

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん前まえのヴァイマルの作業場さぎょうばにあったものは、戦争せんそう中ちゅうにほとんどが売却ばいきゃくされた。バウハウスにとっての初期しょきの狙ねらいは、建築けんちく学校がっこう、技術ぎじゅつ学校がっこう、美術びじゅつアカデミーを混成こんせいしたものになることであったが、内外ないがいで論争ろんそうが惹起じゃっきされた。

グロピウスは、終戦しゅうせんと共ともに歴史れきしの新あたらしい時代じだいが始はじまったのだということを説といた。彼かれは、この新あたらしい時代じだいを反映はんえいした新あたらしい建築けんちく様式ようしきを創出そうしゅつしようとしていた。建築けんちくや消費しょうひ財ざいにおける彼かれの様式ようしきは、機能きのう的てきかつ安価あんかで、大量たいりょう生産せいさんに適てきしたものであった。彼かれは最後さいごまで芸術げいじゅつと技術ぎじゅつを、芸術げいじゅつ的てき主張しゅちょうを伴ともないつつも高性能こうせいのうであるような機能きのう主義しゅぎに高たかめることを目指めざして、統一とういつしようとした。バウハウスは、雑誌ざっし『バウハウス』を発刊はっかんすると共ともに、「バウハウス叢書そうしょ」（Bauhausbücher）も刊行かんこうした。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくやイギリスが持もっている原材料げんざいりょうがドイツには欠かけていたので、彼かれらはその分ぶん熟練じゅくれん労働ろうどう力りょくが持もつ練達れんたつさと、革新かくしん的てきで高性能こうせいのうな商品しょうひんを輸出ゆしゅつする能力のうりょくに頼たよらなければならなかった。したがってデザイナーが必要ひつようになり、そのための芸術げいじゅつ教育きょういくの新あたらしい形式けいしきもまた要請ようせいされた。バウハウスの理念りねんは、芸術げいじゅつ家かは産業さんぎょうと共ともに働はたらいて鍛きたえられるというものだった。

テオ・ファン・デスブルク（Theo van Doesburg）とその批評ひひょうの出現しゅつげんは、グロピウスに影響えいきょうを与あたえた。彼かれは当時とうじ、ヨハネス・イッテンによって教おしえられていたもの、すなわち表現ひょうげん主義しゅぎは、彼かれの意図いとしていたものではないことを悟さとった。イッテンは結局けっきょく学校がっこうを去さり、後任こうにんにはモホリ＝ナジ・ラースローが就ついた。

バウハウスへのテューリンゲン議会ぎかいの支援しえんは、社会しゃかい民主党みんしゅとうに由来ゆらいしていたが、1924年ねん2月がつに、社会しゃかい民主党みんしゅとうは州しゅう議会ぎかいの与党よとうから転落てんらくした。文部省もんぶしょうは六ろくヶ月かげつ契約けいやくでスタッフを置おき、助成じょせい金きんを半減はんげんさせた。彼かれらはすでに資金しきん調達ちょうたつのための別べつの拠より所どころを探さがしていた。彼かれは1925年ねん3月がつ末まつをもってヴァイマルのバウハウスを閉校へいこうすることを発表はっぴょうした。

バウハウスがデッサウに移うつった後のちのヴァイマルにも、保守ほしゅ的てき政治せいじ体制たいせいに余あまり対抗たいこう的てきではない教師きょうしやスタッフと共ともに、工業こうぎょうデザイン学校がっこうが残のこった。この学校がっこうは建築けんちく・土木どぼく工科こうか大学だいがく（the Technical University of Architecture and Civil Engineering）として知しられたが、1996年ねんにバウハウス大学だいがくヴァイマル（Bauhaus University Weimar）に改称かいしょうされた。

デッサウ

デッサウ時代じだいに、バウハウスは顕著けんちょな方向ほうこう性せいの転換てんかんを図はかった。エレーヌ・ホフマンによれば、グロピウスは新あたらしい建築けんちくプログラムの遂行すいこうのために、オランダ人じん建築けんちく家かのマルト・スタム（Mart Stam）に接触せっしょくした。スタムに断ことわられると、ABCグループでのスタムの友人ゆうじんで同僚どうりょうだったハンネス・マイヤーに切きり替かえたが、グロピウスはこの決定けっていを悔くやむことになる。

カリスマ性せいを持もったマイヤーは、1928年ねん2月がつには2代目だいめ学長がくちょうの座ざにおさまり、バウハウスに2つの最さい重要じゅうような建築けんちく物ぶつの委託いたくを取とり付つけた。その2つとは、デッサウの5棟むねの片かた廊下ろうか式しき集合しゅうごう住宅じゅうたくと、ベルナウの全ぜんドイツ労働ろうどう組合くみあい総そう連合れんごう（ADGB）の連合れんごう学校がっこう本部ほんぶ棟とうであり、それらは現存げんそんしている。マイヤーは、顧客こきゃくへのプレゼンテーションで計測けいそくと計算けいさんを好このみ、コスト削減さくげんのために規格きかく品ひんの建築けんちく部品ぶひんを使つかうことも好このんだ。このアプローチは潜在せんざい的てきな顧客こきゃくをひきつけ、1929年ねんには彼かれのリーダーシップのもとで、バウハウスは最初さいしょの収益しゅうえきを上あげた。

しかし、マイヤーは多おおくの衝突しょうとつも引ひき起おこした。ラディカルな機能きのう主義しゅぎ者しゃとして、彼かれは審美しんび的てきなプログラムには我慢がまんがならなかったので、長ながく指導しどうに当あたってきたヘルベルト・バイヤー、マーセル・ブロイアーらに辞職じしょくを迫せまった。口煩くちうるさい共産きょうさん主義しゅぎ者ものとしては、彼かれは共産きょうさん主義しゅぎ的てきな学生がくせい団体だんたいの結成けっせいを後押あとおしした。政治せいじ的てき状況じょうきょうが剣呑けんのんとしたものになるにしたがって、こうした振ふる舞まいはデッサウのバウハウスの存続そんぞくや関かかわりのある人々ひとびとの安全あんぜんを脅おびやかすものとなった。マイヤー自身じしんが生徒せいとの一人ひとりと関係かんけいをもった性的せいてきなスキャンダルで危あやうくなったので、グロピウスは1930年ねんに彼かれを解雇かいこした。

デッサウのバウハウスも1932年ねんに閉鎖へいさされて、ベルリンへと移うつった。

ベルリン

ナチもアドルフ・ヒトラー自身じしんも、1930年代ねんだいに確固かっこたる建築けんちく理念りねんをもち合あわせていたわけではないが、ヴィルヘルム・フリックやアルフレート・ローゼンベルクといったナチ御用達ごようたしの書かき手てたちは、バウハウスに「非ひゲルマン的てき」とのレッテルを貼はり、故意こいに公共こうきょうの議論ぎろんを引ひき起おこすためにそのモダニズム様式ようしきを批判ひはんした。

1930年代ねんだい初頭しょとうに、彼かれらは徐々じょじょにバウハウスを共産きょうさん主義しゅぎ者しゃや社会しゃかい自由じゆう主義しゅぎ者しゃらの前線ぜんせんとして特徴付とくちょうづけていった。確たしかに、2代目だいめの学長がくちょうであったマイヤーは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃを自任じにんしていたし、彼かれとその忠実ちゅうじつな生徒せいとたちが1930年ねんにソビエト連邦れんぽうへと亡命ぼうめいしたのは事実じじつである。

政治せいじ的てきな圧力あつりょくの中なか、バウハウスは1933年ねん4月がつ11日にちにナチの命令めいれいで閉鎖へいさされた。この閉鎖へいさについてや、ミース・ファン・デル・ローエの反はん応おうなどは、エレーヌ・ホフマンの研究けんきゅうに詳くわしい。

登録とうろく対象たいしょう

バウハウス大学だいがく本部ほんぶ棟とう

デッサウの「親方おやかたの家いえ」

世界せかい遺産いさんに登録とうろくされているのは、以下いかの11件けんである。IDは世界せかい遺産いさん登録とうろく上じょうのもので、英語えいご表記ひょうきは世界せかい遺産いさんとしての登録とうろく名めい（いずれもユネスコ世界せかい遺産いさんセンターによる。英語えいご表記ひょうきではバウハウス大学だいがくが旧称きゅうしょうの「建築けんちく・土木どぼく工科こうか大学だいがく」のままになっているが、原はら資料しりょうに従したがった）。

ヴァイマル

• バウハウス大学だいがく本部ほんぶ棟とう（Main building of the Weimar Academy for Architecture and Building Arts - University, ID729-001）- 所在地しょざいちWeimar, Geschwister-Scholl-Strasse 8
• バウハウス大学だいがくのヴァン・デ・ヴェルデが手てがけた建物たてもの（The Van-de-Velde building of the Academy for Architecture and Building Arts -University, ID 729-002）- 所在地しょざいちWeimar, Geschwister-Scholl-Strasse 7
• ハウス・アム・ホルン（The “Haus am Horn”, ID 729-003）

デッサウ

• デッサウ・バウハウス（The Bauhaus, ID 729-004）
• 親方おやかたの家いえ（The Masters’ Houses, ID 729-005）

2017年ねんの拡大かくだい登録とうろく分ぶん

上述じょうじゅつのマイヤーが手てがけた5棟むねの片かた廊下ろうか式しき集合しゅうごう住宅じゅうたくと、ベルナウのADGB連合れんごう学校がっこうが加くわえられた。

• House with Balcony access - Peterholzstr. 40 (ID 729bis-006)
• House with Balcony access - Peterholzstr. 48 (ID 729bis-007)
• House with Balcony access - Peterholzstr. 56 (ID 729bis-008)
• House with Balcony access - Mittelbreite 6 (ID 729bis-009)
• House with Balcony access - Mittelbreite 14 (ID 729bis-010)
• The ADGB Trade Union School (ID 729bis-011)

登録とうろく基準きじゅん

この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

• (2) ある期間きかんを通つうじてまたはある文化ぶんか圏けんにおいて、建築けんちく、技術ぎじゅつ、記念きねん碑ひ的てき芸術げいじゅつ、都市とし計画けいかく、景観けいかんデザインの発展はってんに関かんし、人類じんるいの価値かちの重要じゅうような交流こうりゅうを示しめすもの。
• (4) 人類じんるいの歴史れきし上じょう重要じゅうような時代じだいを例証れいしょうする建築けんちく様式ようしき、建築けんちく物ぶつ群ぐん、技術ぎじゅつの集積しゅうせきまたは景観けいかんの優すぐれた例れい。
• (6) 顕著けんちょで普遍ふへん的てきな意義いぎを有ゆうする出来事できごと、現存げんそんする伝統でんとう、思想しそう、信仰しんこうまたは芸術げいじゅつ的てき、文学ぶんがく的てき作品さくひんと直接ちょくせつにまたは明白めいはくに関連かんれんするもの（この基準きじゅんは他たの基準きじゅんと組くみ合あわせて用もちいるのが望のぞましいと世界せかい遺産いさん委員いいん会かいは考かんがえている）。

関連かんれん出版しゅっぱん

• アドルフ・マイヤー編へん『バウハウスの実験じっけん住宅じゅうたく　バウハウス叢書そうしょ3』

  貞さだ包つつみ博幸ひろゆき訳やく、中央公論ちゅうおうこうろん美術びじゅつ出版しゅっぱん、1991年ねん、新装しんそう版ばん2019年ねん。ISBN 978-4805510537

参考さんこう文献ぶんけん

• 日本にっぽんユネスコ協会きょうかい連盟れんめい『世界せかい遺産いさん年報ねんぽう2018』講談社こうだんしゃ、2018年ねん。ISBN 978-4-06-509599-7。