丹に党とう

丹に党とう（たんとう）は、平安へいあん時代じだい後期こうきから鎌倉かまくら時代ときよにかけて武蔵むさし国こく入間いるま郡ぐん・秩父ちちぶ郡ぐん・および児玉こだま郡ぐん西部せいぶ（旧きゅう賀が美び郡ぐん）にわたって繁栄はんえいした武蔵むさし七なな党とうの一ひとつである武士ぶし団だん。

出自しゅつじ

第だい28代だい宣せん化か天皇てんのうの子孫しそんである多治比たじひ氏しの後裔こうえいを称しょうし、各種かくしゅ史書ししょでもいずれも宣せん化か天皇てんのう裔としている。一方いっぽうで、これらの史書ししょ上じょうに掲載けいさいされている系図けいずの記載きさい内容ないようが史実しじつと矛盾むじゅんすることから、後世こうせいの仮かり冒おかせとする説せつも多おおく見みられる。太田おおた亮あきら『姓氏せいし家系かけい大だい辞典じてん』では、宣せん化か天皇てんのうの御ご名代なだいの一ひとつ檜前ひのくま舎人とねり部ぶの伴とも造づくり家かであった檜前ひのくま舎人とねり直ただしの後裔こうえいとする説せつをあげている。

概要がいよう

丹に党とうは秩父ちちぶ地方ちほうの神流川かんながわ流域りゅういきの児玉こだま地方ちほうを本拠地ほんきょちとし、中村なかむら氏しを中心ちゅうしんに活動かつどうした武士ぶし団だんである。神流川かんながわ流域りゅういきは藤岡ふじおか、児玉こだまの条じょう里さと地域ちいきである。このことから武蔵むさし七なな党とうの中なかでも古ふるく、代表だいひょう的てきなものであった。力ちからの根源こんげんは条じょう里さと地域ちいきの米べいの生産せいさんにあり、武力ぶりょく的てきな根拠こんきょは牧まきの牧畜ぼくちく的てきな生活せいかつに見出みいだされる。

丹たん基はじめ房ぼうが秩父ちちぶ五郎ごろうを称しょうし、その長男ちょうなんである直ちょく時ときが勅使河原てしがわらに居住きょじゅうし、勅使河原てしがわら氏しの祖そとなり、直じき時じの弟おとうとである恒つね房ぼうが新しん里さと・安保あんぽを領有りょうゆうし、新里にいさと氏しと安保あぼ氏しの祖そとなった。さらに恒つね房ぼうの弟おとうとである成なり房ぼうは榛沢はんざわ郡ぐんに住すんで榛はしばみ沢さわ氏しを称しょうし、成なり房ぼうの弟おとうとの重光しげみつは小島こじまに居住きょじゅうし、小島こじま氏しの祖そとなった。重光しげみつの三子みつごのうち、長男ちょうなん小島こじま光成みつなりは小島こじま氏しを継つぎ、次男じなん光俊みつとしは志水しみずを称しょうし、三男さんなん朝あさ俊しゅんは村田むらたを名乗なのったとある。

児玉こだま党とうとは、一時期いちじき、合戦かっせんが生しょうじる寸前すんぜんまで緊迫きんぱくした状態じょうたいになったが、畠山はたけやま重忠しげただの仲裁ちゅうさいにより、和解わかいしている（庄太郎しょうたろう家長かちょうの項こうを参照さんしょう）。領土りょうど問題もんだい、あるいは水利すいり問題もんだいで対立たいりつしたものと考かんがえられている。一いち例れいとして、真下ましも基行もとゆきの子息しそくの1人ひとりである真下ましも弘ひろし親おやが勅使河原てしがわら村むらへ移住いじゅうしたと系図けいずにはあり、賀が美び郡ぐん（現げん児玉こだま郡ぐん西部せいぶ）と児玉こだま郡ぐんが郡ぐん境さかいということもあって、両りょう武士ぶし団だんの領地りょうちが入はいり混まじっている状況じょうきょう下かにあった。

丹に党とう・児玉こだま党とう・猪俣いのまた党とうなどの武蔵むさし武士ぶし団だんは、南北なんぼく朝あさ時代じだいに南朝なんちょう＝新田にった義貞よしさだについたため、新田にった氏しの滅亡めつぼうと共ともに弱体じゃくたい化か、あるいは没落ぼつらくしていった。さらに上杉うえすぎ禅秀ぜんしゅうの乱らんでは禅秀ぜんしゅうに味方みかたしたため、鎌倉かまくら公方くぼうの足利あしかが氏しに所領しょりょうを没収ぼっしゅうされている。しかし、丹に党とうの氏族しぞくのうち、阿保あほ氏しは足利あしかが氏しに属ぞくしたため、その所領しょりょうを永ながく維持いじした。それは同時どうじに一いち党とう一族いちぞくと言いう概念がいねんの下した、結束けっそくしていた時代じだいが終おわったことを示しめしている。

派生はせい一族いちぞく

円子まるこ氏し、丹たん氏し、新里にいさと氏し、榛はしばみ沢さわ氏し、安保あぼ氏し、長浜ながはま氏し、勅使河原てしがわら氏し、中村なかむら氏し、中山なかやま氏し、大関おおぜき氏し、加治かじ氏し、横瀬よこせ氏し、薄うすき氏し、小鹿野おがの氏し、大河原おおかわら氏し、青木あおき氏し、小串こぐし氏し、志村しむら氏しなど。

参考さんこう文献ぶんけん

• 太田おおた亮あきら『姓氏せいし家系かけい大だい辞典じてん』上田うえだ萬年かずとし、三上みかみ参さん次じ監修かんしゅう、角川書店かどかわしょてん、1963年ねん11月。 NCID BN01488361。 
• 柴田しばた孝夫たかお『地割じわりの歴史れきし地理ちり学がく的てき研究けんきゅう』古今ここん書院しょいん、1975年ねん3月がつ。 NCID BN00918523。 
• 宝たから賀が寿男としお『古代こだい氏族しぞく系譜けいふ集成しゅうせい』古代こだい氏族しぞく研究けんきゅう会かい、1986年ねん4月がつ。 NCID BN00924708。 
• 板橋いたばし区史くし編へんさん調査ちょうさ会かい編へん 編へん『板橋いたばし区史くし』 通史つうし編へん 上巻じょうかん、板橋いたばし区く、1998年ねん3月がつ31日にち。 

史料しりょう

• 『系図けいず綜覧そうらん』所収しょしゅう 「武蔵むさし七なな党とう系図けいず」「井戸いど葉栗はぐり系図けいず」
• 『大だい日本にっぽん史し』
• 『寛永かんえい諸家しょか系図けいず伝でん』
• 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』
• 『新編しんぺん武蔵むさし風土記ふどき稿こう』
• 『華族かぞく諸しょ家伝かでん』