新田にった氏し

新田にった氏し
	大だい中黒なかぐろ・新田にった一ひとつ引
本姓ほんせい	清和せいわ源はじめ氏し流ながれ河内かわうち源はじめ氏し系けい義国よしくに流りゅう
家いえ祖そ	新田にった義重よししげ
種別しゅべつ	武家ぶけ; 華族かぞく（男爵だんしゃく）
出身しゅっしん地ち	上野うえの国こく新田にった郡ぐん新田にった荘そう
主おもな根拠地こんきょち	上野うえの国こく新田にった荘そう・八幡やはた荘そう; 越後えちご国こく波多はた岐荘・妻有つまあり荘そう; 越前えちぜん国こく; 東京とうきょう府ふ北多摩きたたま郡ぐん調布ちょうふ町まち
著名ちょめいな人物じんぶつ	新田にった義貞よしさだ; 脇屋わきや義助よしすけ; 新田にった義興よしおき
支流しりゅう、分家ぶんけ	山名やまな氏し（武家ぶけ → 華族かぞく）; 里見さとみ氏し（武家ぶけ）; 世良田せらだ氏し（武家ぶけ）; 額がく戸ど氏し(武家ぶけ); 岩松いわまつ氏し（武家ぶけ → 華族かぞく）; 大だい舘たて氏し（武家ぶけ）; 堀口ほりぐち氏し（武家ぶけ）; 他た
	凡例はんれい / Category:日本にっぽんの氏族しぞく

清和せいわ源はじめ氏し > 新田にった氏し

新田にった氏し（にったし）は、武家ぶけ・華族かぞくだった日本にっぽんの氏族しぞく。清和せいわ源はじめ氏しの一流いちりゅう河内かわうち源はじめ氏しの源義家みなもとのよしいえの孫まご新田にった義重よししげを祖そとする^[3]。上野うえの国こく新田にった荘そうを本ほん貫ぬきとした^[3]。鎌倉かまくら時代ときよ末すえの当主とうしゅ新田にった義貞よしさだは後醍醐天皇ごだいごてんのうに従したがい鎌倉かまくら幕府ばくふ倒幕とうばくに功績こうせきを上あげ、南北なんぼく朝あさ時代じだいにも南朝なんちょう方ほう武将ぶしょうとして活躍かつやくしたが、新田にった義興よしおきの死後しごには衰退すいたい^[3]。明治めいじになると支流しりゅうの岩松いわまつ氏しが新田しんでんの正統せいとうと認みとめられて新田しんでんに改姓かいせいし、義貞よしさだの功こうにより華族かぞく（男爵だんしゃく）に列れっせられた^[4]。

歴史れきし[編集へんしゅう]

平安へいあん時代じだい[編集へんしゅう]

開祖かいそは河内かわうち源はじめ氏しの棟梁とうりょうの源義家みなもとのよしいえ（八幡やはた太郎たろう）の三男さんなん（諸説しょせつあり）源みなもと義国よしくに。義国よしくには下野げや国こく足利あしかが荘そう（栃木とちぎ県けん足利あしかが市し）を本拠ほんきょとしていたが、足利あしかが荘そうは義国よしくにの次子じしである足利あしかが義康よしやすが継まましいで足利あしかが氏しを名乗なのり、異母いぼ兄けいの新田にった義重よししげは源頼信みなもとのよりのぶ-頼義よりちか-義ぎ家か-義国よしくにと伝つて領りょうした河内かわうち源はじめ氏し重代じゅうだいの拠点きょてんである摂関せっかん家か領りょう上野うえの国こく八幡やはた荘そうを継承けいしょう^[5]し、また義国よしくに^[6]と義重よししげは渡良瀬川わたらせがわ対岸たいがんの浅間山あさまやま噴火ふんかで荒廃こうはいしていた上野うえの国こく新田にった郡ぐん（現在げんざいの群馬ぐんま県けん太田おおた市し周辺しゅうへん）を開発かいはつする。

保ほ元もと2年ねん（1157年ねん）平家ひらか方かたの藤原ふじわら忠ただし雅みやびに開発かいはつ地ちを寄進きしんし、新田にった荘そうが立たて荘そうされた。本家ほんけは鳥羽とば院いん御願ごがん寺てらの金剛心こんごうしん院いん、領家りょうけは藤原ふじわら氏し北きた家か花山院かさんのいん流りゅうとなる。^{[注釈ちゅうしゃく 2]}荘そう官かん^{[注釈ちゅうしゃく 3]}に任にんぜられた義重よししげは新田にった氏しを称しょうし、源みなもと義国よしくに以来いらいの八幡やはた荘そうと新田にった荘そうを中心ちゅうしんに息子むすこたちを配はいして支配しはい体制たいせいを確立かくりつするとともに、東山ひがしやま道みち・利根川とねがわという水陸すいりく交通こうつう路ろや凝灰岩ぎょうかいがん石材せきざいの産地さんちであった天神山てんじんやま一帯いったいを掌握しょうあくして経済けいざい的てきな基盤きばんを固かためた。

義重よししげは周囲しゅういの藤ふじ姓せい足利あしかが氏しや秩父ちちぶ党とう、源義賢みなもとのよしまさと対立たいりつするが、甥おいである足利あしかが義兼よしかねや源義朝みなもとのよしともと連携れんけいし、それらに対抗たいこうする。特とくに義ぎ朝あさの長子ちょうし義平よしひらに娘むすめを娶めとらせるなど積極せっきょく的てきに清和せいわ源はじめ氏し嫡宗家かと関係かんけいを強つよめている。しかし、平治へいじの乱らんで義ぎ朝あさが没落ぼつらくすると平家へいけに接近せっきんしている。ちなみに、新田にった荘そう領りょう家かである藤原ふじわら忠ただし雅みやびも平清盛たいらのきよもりに近ちかづき太政大臣だじょうだいじんにまで昇進しょうしんした公卿くぎょうである。また、義重よししげら新田にった氏し一族いちぞくが歴代れきだいの女院にょいんの判官ほうがん代だいや蔵人くろうどとして近侍きんじしていたことも知しられている。これに対たいして、幼おさなくして父親ちちおやを失うしなった甥おいの足利あしかが義兼よしかねは八はち条じょう院いんの蔵人くろうどとなった。八条はちじょう院いんは当時とうじの女院にょいんの中なかでは平たいら氏し政権せいけんと対立たいりつ関係かんけいにあり、それが後こうの反はん平たいら氏しの動うごきに対たいする新田にった氏し・足利あしかが氏しの行動こうどうの差異さいに現あらわれたとも考かんがえられる^[7]。

1180年ねん（治ち承うけたまわ4年ねん）、伊豆いずに流罪るざいとなっていた義ぎ朝あさの子こ源みなもと頼朝よりとも、木曽きそでは義賢よしかたの子こ源義仲みなもとのよしなからが京都きょうとの平たいら氏し政権せいけんに対たいして挙兵きょへいし、治ち承うけたまわ・寿ことぶき永ひさしの乱らんとなる。平家へいけに属ぞくし、京きょうに滞在たいざいしていた新田にった義重よししげは、頼朝よりとも討伐とうばつを命めいぜられ東国とうごくに下くだった。義重よししげは上野うえの国こく八幡やはた荘そう寺尾てらお城じょうに入はいり兵へいを集あつめながら事態じたいを静観せいかんし、頼朝よりとも追討ついとうに加くわわらなかった。その後ご、木曽きそ勢ぜいは上野うえの国こくへ進出しんしゅつし、下野げや国こく足利あしかが荘そうを本拠ほんきょとする平家へいけ方かたの藤原ふじわら姓せい足利あしかが氏しの足利あしかが俊しゅん綱つなと対立たいりつするが義重よししげは中立ちゅうりつを保たもつ。木曽きそ氏しや佐竹さたけ氏しと共ともに関東かんとうの源氏げんじの一大いちだい勢力せいりょくだった新田にった氏しは義重よししげの弟おとうとの足利あしかが義康よしやすが早世そうせいしてしまったため甥おいの足利あしかが義兼よしかねを庇護ひごし周辺しゅうへんの敵対てきたい勢力せいりょくから守まもった。

鎌倉かまくら時代ときよ[編集へんしゅう]

頼朝よりともが鎌倉かまくらを本拠ほんきょにすると一族いちぞくの中なかには、甥おい・足利あしかが義兼よしかねや、子こである山名やまな義範よしのり、孫まごの里見さとみ義成よしなりなど、参さんじて挙兵きょへいに加くわわるものもあったが、義重よししげ自身じしんは参まいり陣じんの要請ようせいを無視むしし、静観せいかんしていた。頼朝よりとも勢ぜいが関東かんとう地方ちほうを制圧せいあつすると、12月に義重よししげは鎌倉かまくらへ参さんじる。その参さん陣じんの遅おそさから、頼朝よりともの勘気かんきを被こうむったと伝つたえられている（『吾妻あづま鏡きょう』）。

1221年ねんの承久じょうきゅうの乱らんにも惣領そうりょうは参まいり陣じんせず、代官だいかんとして庶家の世良田せらだ氏しが参まいり陣じんしている。これらの経緯けいいにより、鎌倉かまくらに東国とうごく政権せいけんとして成立せいりつした鎌倉かまくら幕府ばくふにおいて、新田にった氏し本ほん宗家そうけの地位ちいは低ひくいものとなった。新田にった氏し本ほん宗家そうけは頼朝よりともから御ご門葉もんようと認みとめられず、公式こうしきの場ばでの源みなもと姓せいを称しょうすることが許ゆるされず、官位かんいも比較的ひかくてき低ひくく、受領じゅりょう官かんに推挙すいきょされることもなかった。また、早期そうきに頼朝よりともの下したに参さん陣じんした山名やまな氏しと里見さとみ氏しはそれぞれ独立どくりつした御家人ごけにんとされ、新田にった氏し本ほん宗家そうけの支配しはいから独立どくりつして行動こうどうするようになる。その後ごも新田にった氏しの所領しょりょうが増ふえることはなく、世良田せらだ氏し・額がく戸ど氏し・岩松いわまつ氏しなどの創立そうりつによる分割ぶんかつ相続そうぞくや、所領しょりょうの沽却により弱体じゃくたい化かする。特とくに足利あしかが氏しを父系ふけいとする岩松いわまつ氏しの創立そうりつにより、本ほん宗家そうけの所領しょりょうは小ちいさいものとなった。さらに脇屋わきや・細谷ほそや・荒井あらい・大館おおだて・堀口ほりぐちらも分立ぶんりつし、弱体じゃくたい化かは進すすむ。

4代だいの新田にった政義まさよしは、京都きょうと大番おおばん役やくでの上京じょうきょう中ちゅうに幕府ばくふに無断むだんで出家しゅっけした罪つみで、御家人ごけにん役やくを剥奪はくだつされる。新田にった氏し惣領そうりょう職しょくは没収ぼっしゅうされ、一族いちぞくの実力じつりょく者しゃである世良田せらだ頼よりゆき氏しに与あたえられ、また世良田せらだ氏しと共ともに岩松いわまつ氏しも分担ぶんたんする。この時とき、新田にった氏し本ほん宗家そうけの所領しょりょうは得とく宗むね家いえにも渡わたり、得とく宗むね勢力せいりょく被官ひかんが荘そう内ないに進出しんしゅつする。

その後ご、頼よりゆき氏しが北条ほうじょう氏し内うちの得とく宗家そうけと反はん得とく宗家そうけの争あらそいである二に月がつ騒動そうどうに連座れんざして佐渡さど島とうに流罪るざいとなると、惣領そうりょう職しょくは新田にった氏し本ほん宗家そうけに復ふくするものの、幕府ばくふにおける新田にった氏し本ほん宗家そうけの地位ちいは非常ひじょうに低ひくいものとなり、以後いごは無位むい無官むかんに甘あまんずることとなる。そのため新田にった氏し本ほん宗家そうけは、鎌倉かまくら幕府ばくふの重鎮じゅうちんとなっていた足利あしかが惣領そうりょう家か（北条ほうじょう家かの有力ゆうりょく庶家並なみの家格かかくとなっていた）の庇護ひごを受うける。2代だいの新田にった義兼よしかねは娘むすめを足利あしかが義よし純じゅんに嫁とつがせ、4代だいの新田にった政義まさよしは足利あしかが義よし氏しの娘むすめを妻つまとして5代だい新田にった政氏まさうじを儲もうけ、政まさし氏しの娘むすめは足利あしかが家時いえときに嫁とついでいる。

政義まさよし失脚しっきゃく以降いこう、新田にった氏し本ほん宗家そうけの歴代れきだい当主とうしゅは足利あしかが氏し惣領そうりょうの通つう字じであった「氏し」を名前なまえに入いれた。新田にった氏し本ほん宗家そうけは足利あしかが氏し惣領そうりょうを烏帽子えぼし親おやとして元服げんぷくし、「氏し」の偏へん諱いみなを与あたえられたことで、擬制ぎせい的てき親子おやこ関係かんけいという庇護ひご下かに入はいったからと考かんがえられている。足利あしかが氏し惣領そうりょうで「氏し」を用もちいなかった足利あしかが高義たかよしの時代じだいに元服げんぷくしたと見みられる8代だい新田にった義貞よしさだの名なに「氏し」ではなく「義よし」の字じが入はいっていることが、この事実じじつを裏付うらづけている。後のちに新田にった義貞よしさだが討幕とうばくの兵へいを挙あげた時ときのことを「源みなもと義貞よしさだト云うん者しゃアリ。高こう氏しガ一族いちぞく也」（『神かみ皇すめらぎ正統せいとう記き』）・「尊たかし氏しの末すえの一族いちぞく新田にった小四郎こしろう義貞よしさだといふ物もの」（『増ぞう鏡きょう』）と記しるしているのは、実じつは婚姻こんいん関係かんけいと烏帽子えぼし親おやを通つうじた擬制ぎせい的てき親子おやこ関係かんけいの結果けっか、足利あしかが氏し庶流と化かしていた新田にった氏し本ほん宗家そうけの実態じったいを的確てきかくに表あらわしたものであったといえる（この傾向けいこうは里見さとみ氏しや世良田せらだ氏しなどの新田にった氏し一族いちぞくにもみられる）^[8]。ただしこうした見解けんかいに対たいして、鎌倉かまくら期き――新田にった義重よししげの段階だんかいで既すでに足利あしかが氏し一門いちもんとして扱あつかわれており、新田にった氏しは成立せいりつ当初とうしょより一貫いっかんして足利あしかが氏しを宗家そうけとしており、『太平たいへい記き』以外いがいの同どう時代じだい史料しりょうはその点てんではほぼ一致いっちしている。「新田にった氏し流りゅう」「新田にった氏し一門いちもん」という概念がいねん自体じたいが『太平たいへい記き』の影響えいきょうを受うけて後世こうせいに創作そうさくされた概念がいねんに過すぎない、という批判ひはんも出だされている^[9]^[10]。

その一方いっぽうで、義貞よしさだ（里見さとみ家家いえいえ譜ふによると里見さとみ家かから新田にった惣領そうりょう家かへの養子ようし）の時代じだいには長楽寺ちょうらくじ再建さいけん事業じぎょうを通つうじて、同どう寺てらの門前もんぜ町まちで当時とうじの地域ちいきを代表だいひょうする経済けいざい都市としであった世良田せらだ宿やどを本ほん宗家そうけが掌握しょうあくし、後ごの本ほん宗家そうけ主導しゅどうの討幕とうばく運動うんどう参加さんかの基礎きそが築きずかれることになった^[11]。

鎌倉かまくら時代じだい後期こうきには、新田にった義貞よしさだが後醍醐天皇ごだいごてんのうの倒幕とうばく運動うんどうに従したがい挙兵きょへい、源みなもと義国よしくに流りゅうの同族どうぞくにして北条ほうじょう氏しと重代じゅうだいの姻戚いんせきの最さい有力ゆうりょく御家人ごけにん足利あしかが高たかし氏し（後ごの尊氏たかうじ）の嫡男ちゃくなん千寿せんず王おう（後ごの足利あしかが義詮よしあきら）を加くわえて鎌倉かまくらを攻せめ、幕府ばくふを滅亡めつぼうさせる。

南北なんぼく朝あさ時代じだい・室町むろまち時代ときよ[編集へんしゅう]

当初とうしょ、鎌倉かまくら幕府ばくふの冷遇れいぐうによって建たて武たけし政権せいけんでの新田にった氏し本ほん宗家そうけの権威けんいは同族どうぞくである足利あしかが氏し惣領そうりょうよりも格下かくしたに見みられていたが、後のちに政権せいけん内部ないぶの政争せいそうにより、義貞よしさだは長年ながねんの足利あしかが氏しとの関係かんけいを断たち切きって反はん足利あしかが氏し派は・反はん武家ぶけ派はの首班しゅはんとして尊たかし氏し（高こう氏し改あらため）と対立たいりつした。新田にった一族いちぞく中なかでも義貞よしさだとともに上京じょうきょうした者ものと鎌倉かまくらや新田にった荘そうに残のこった者ものにわかれ、前者ぜんしゃは主おもに義貞よしさだに従したがい、後者こうしゃや山名やまな時じ氏しや岩松いわまつ氏し・大だい舘たて氏し・里見さとみ氏し・世良田せらだ氏し・大島おおしま氏しなどは主しゅとして足利あしかが氏しに従したがい北きた朝方あさがたとなった。以後いご、新田にった氏し一族いちぞくは南みなみ朝方あさがたの中核ちゅうかくを担になうが楠木くすのき正成まさしげとともに戦たたかった湊川みなとがわの戦たたかいで敗戦はいせん。比叡山ひえいざんでの戦たたかいの後のち、長男ちょうなんの新田にった義よし顕あきらと共ともに後醍醐天皇ごだいごてんのうの皇子おうじ・恒つね良りょう親王しんのうを奉ほうじて北国きたぐにに拠点きょてんを移うつした。しかし越前えちぜん国こく金ヶ崎かねがさき城しろで足利あしかが方かたの斯波しば高経たかつね・高師泰こうのもろやすらに敗やぶれ、義ぎ顕あらわは自決じけつし、義貞よしさだ自身じしんも同国どうこく藤島ふじしまで戦死せんしする。

義貞よしさだの戦死せんし後ご、三男さんなん新田にった義宗よしむねが家督かとくを継ついだ。足利あしかが家かの内乱ないらんである観かん応おうの擾乱じょうらんに乗じょうじて異母いぼ兄けいの新田にった義興よしおきと共ともに各地かくちを転戦てんせん、一時いちじは義興よしおきが鎌倉かまくらの奪還だっかんを果はたすが巻まき返かえされ、足利あしかが基氏もとうじ・畠山はたけやま国清くにきよらによって武蔵むさし国こく矢口やぐち渡わたりで謀殺ぼうさつされると劣勢れっせいは増ますばかりとなった。義詮よしあきら、基はじめ氏しが相次あいついで没ぼっすると、義宗よしむねは越後えちごから脇屋わきや義治よしはるとともに挙兵きょへいするが、上野うえの国こく沼田ぬまたで関東かんとう管領かんりょう上杉うえすぎ憲顕のりあき配下はいかの軍ぐんに敗やぶれて戦死せんしし、新田にった氏し本ほん宗家そうけは事実じじつ上じょう滅亡めつぼうした。その後ごも、義宗よしむねの子ことする新田にった貞方さだかたとその子こ貞さだ邦くにや、義宗よしむねの子ことも伝つたわる脇屋わきや義則よしのりなどが抵抗ていこうを続つづけるが、鎌倉かまくら公方くぼうの軍ぐんに破やぶれ新田にった氏しの抵抗ていこうは収束しゅうそくしていった。

一方いっぽう、北きた朝方あさがたについた新田にった一族いちぞくの岩松いわまつ氏しに上野うえの国こくの新田にった荘そうが与あたえられ、義宗よしむねの落胤らくいんを称しょうした岩松いわまつ満みつる純じゅん^{[注釈ちゅうしゃく 4]}が入にゅう嗣する。

室町むろまち幕府ばくふには支族しぞくである大館おおだて氏し・大だい井田いだ氏しなどが出仕しゅっしし幕府ばくふ高官こうかんとなった。また、三河みかわ守護しゅごには大島おおしま義高よしたかが補任ほにんされた^[12]。また、越後えちごに残のこったものは次第しだいに守護しゅご上杉うえすぎ家かの家臣かしんに組くみ込こまれていった。

山名やまな氏しは山陰さんいん地方ちほうの国々くにぐにを守護しゅご領国りょうごく化かし京都きょうとにおいても侍さむらい所しょの長官ちょうかんに任にんじられる四よん家いえの内うちの一ひとつとして繁栄はんえいした。関東かんとうにおいては古河ふるかわ公方くぼうを支ささえる有力ゆうりょくな勢力せいりょくとして安房あわの里見さとみ氏しが勢力せいりょくを広ひろげ下総しもうさ南部なんぶも支配しはい下かに置おいた。

戦国せんごく時代じだい[編集へんしゅう]

戦国せんごく時代じだいになると新田にった宗家そうけを継承けいしょうした岩松いわまつ氏しは重臣じゅうしん横瀬よこせ氏しに下克上げこくじょうされる。横瀬よこせ氏しは名字みょうじを由良ゆら氏しと改あらため、新田にった義宗よしむねの子こ・横瀬よこせ貞さだ氏し^[13]^{[注釈ちゅうしゃく 5]}の子孫しそんとされているが、これといった確証かくしょうがなく信憑しんぴょう性せいは薄うすい（横瀬よこせ氏し-由良ゆら氏しは源氏げんじではなく小野おの氏しであるとするのが通説つうせつである）。

岩松いわまつ氏しは新田にった荘そう北東ほくとう部ぶの桐生きりゅうに退すさ隠かくしていたが、後こう北条ほうじょう氏しに代かわって関東かんとうに入部にゅうぶした徳川とくがわ家康いえやすに接見せっけんする。伝来でんらいの新田にった氏し系図けいずを進上しんじょうするよう求もとめられたがこれを拒否きょひした。

『鑁阿寺てら新田にった足利あしかが両氏りょうし系図けいず』によると、義宗よしむねには宗そう親ちかし・親しん季きという子こがあったといい、宗そう親ちかしの子孫しそんは新田にった岩松いわまつ氏しとは別べつの系統けいとうとして子孫しそんを残のこしたという。また親しん季きは一族いちぞくの世良田せらだ政義まさよしの養子ようしとなり、その子この有ゆう親おやと孫まご・親おや氏しが三さん河かわに流ながれ松平まつだいら氏しの祖そとなったという。『筑後ちくご佐田さた新田にった系図けいず』では、義ぎ顕あらわには義一ぎいち（よしかず）という子こがあったという。

一方いっぽう、貞方さだかたの庶子しょし貞さだ政せいは武蔵むさし国こく稲毛いなげに逃のがれたという。この系統けいとうは堀江ほりえ氏しと称しょうし、後こう北条ほうじょう氏しに仕つかえ、後のちに足柄あしがら方面ほうめんに移住いじゅうし、神奈川かながわ県けん伊勢原いせはら市しに現存げんそんしているという^[14]。

また、義宗よしむねの子ことも伝つたわる新田にった（脇屋わきや）義則よしのりは、母方ははかたの世良田せらだ氏しも継承けいしょうしたといい、その子こ・祐ゆう義ぎは真船まぶね村むらに逃のがれたという。この子孫しそんは世良田せらだ氏しを称しょうしたのち江戸えど時代じだいに入はいって真船まふね氏しを称しょうしたという^[15]。

江戸えど時代じだい[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだいに岩松いわまつ氏しは上野うえの国こく新田にった郡ぐん田嶋たじま郷内ごうない120石せきの禄ろくを与あたえられ交代こうたい寄合よりあいとして存続そんぞくした。また、由良ゆら氏しも常陸ひたち国こく牛久うしくに5400石せきの領地りょうちを与あたえられ、数すう流りゅうに分わかれた由良ゆら氏しの中なかの嫡流ちゃくりゅう家かは1000石せきの高家こうかとなった^[16]。

幕末ばくまつ維新いしん期きの岩松いわまつ家かの当主とうしゅ俊しゅん純じゅんは「新田しんでんの殿様とのさま」と呼よばれる交代こうたい寄合よりあいだったが、わずか120石せきの家いえ禄ろくのために生活せいかつには苦労くろうし、糊口ここうを稼かせぐためにネズミ除のけの猫ねこの絵えを描えがくなどしていたという。しかし尊皇そんのう派はと佐幕さばく派はの対立たいりつが深ふかまる時世じせいの中なかで尊皇そんのうの志こころざしを強つよめた。慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）には新田にった義貞よしさだの勤王きんのうの志こころざしを継ついで尊皇そんのう討幕とうばくを目指めざす新田にった勤王きんのう党とうを結成けっせいしてその盟主めいしゅとなり、慶応けいおう4年ねん（1868年ねん）には征せい東ひがし軍ぐんの東山ひがしやま道みち総督そうとく岩倉いわくら具定ぐじょう軍ぐんに従軍じゅうぐん。この際さいに新田にった官軍かんぐんと改名かいめいし、戊辰戦争ぼしんせんそうでの旧きゅう幕府ばくふ軍ぐんとの戦闘せんとうで戦功せんこうをあげ^[17]、朝廷ちょうていから所領しょりょうを安堵あんどされた^[4]。

一方いっぽう同どう時期じきの由良ゆら家かの当主とうしゅ貞さだ靖やすしは旧幕きゅうばく時代じだいに奥おく高だか家かとなり、従したがえ五ご位い下か侍従じじゅう信濃しなの守まもるに叙任じょにんされていたが、明治維新めいじいしんに際さいして朝廷ちょうていに早期そうき帰順きじゅんし、こちらも本領ほんりょうを安堵あんどされている^[18]。

明治めいじ以降いこう[編集へんしゅう]

明治維新めいじいしん後ご、岩松いわまつ家かも由良ゆら家かも朝臣あそんに転てんじ、旧きゅう交代こうたい寄合よりあい・旧きゅう高こう家かとして中ちゅう大夫たいふ席せきに列れっし、明治めいじ2年ねん（1869年ねん）12月に中ちゅう大夫たいふ席せき以下いかが廃はいされると士族しぞくに列れつした^[19]。尊皇そんのうの風潮ふうちょうの中なか、由良ゆら家かは明治めいじ元年がんねん（1868年ねん）7月がつ2日にち、新田にった義貞よしさだ戦死せんし日びに合あわせて新田しんでんに改姓かいせいし、岩松いわまつ家かの方ほうも同どう時期じきに新田しんでんに改姓かいせいしている^[19]。

明治めいじ15年ねん（1882年ねん）には明治天皇めいじてんのうより皇室こうしつの忠臣ちゅうしんである新田にった義貞よしさだに対たいして正せい一いち位いが追贈ついぞうされている^[20]。

新田にった義貞よしさだ嫡流ちゃくりゅうをめぐる論争ろんそうが岩松いわまつ新田しんでん家かと由良ゆら新田にった家かの間あいだにあったが^[21]、三上みかみ参さん次じなどの歴史れきし学者がくしゃから由良ゆら氏しの出自しゅつじに関かんして疑問ぎもんが出だされるなどし^[22]、明治めいじ16年ねん（1883年ねん）7月がつ4日にちに至いたり、岩松いわまつ新田しんでん家かの俊しゅん純じゅんが義貞よしさだの正統せいとうと認みとめられて華族かぞくに列れっし、明治めいじ17年ねん（1884年ねん）7月がつ8日にち、華族かぞく令れいの施行しこうで華族かぞくが五ご爵制になったのに伴ともない男爵だんしゃく家いえに列れっせられた^[23]。

由良ゆら新田にった家かはその後ごも叙爵じょしゃく運動うんどうを継続けいぞくしたが、結局けっきょく不ふ許可きょかに終おわっている^[24]。大正たいしょう時代じだいには新田にった義貞よしさだ一族いちぞくで鎌倉かまくら幕府ばくふの打倒だとうに功こうがあった江田えだ行義ゆきよしの子孫しそんと称しょうする群馬ぐんま県けん在住ざいじゅう毛呂けろ由太郎よしたろうが叙爵じょしゃく運動うんどうをやっているが、不ふ許可きょかに終おわっている^[25]。

俊しゅん純じゅんの子こで爵位しゃくいを継承けいしょうした新田にった忠ただし純じゅん男爵だんしゃくは外務省がいむしょうに勤務きんむした後のち貴族きぞく院いんの男爵だんしゃく議員ぎいんに4回かい当選とうせんした^[26]。新田にった男爵だんしゃく家かの邸宅ていたくは東京とうきょう府ふ北多摩きたたま郡ぐん調布ちょうふ町まちにあった^[27]。

歴代れきだい棟梁とうりょう[編集へんしゅう]

源みなもと義国よしくに - 家いえ祖そ

系譜けいふ[編集へんしゅう]

 清和せいわ天皇てんのう
 　：（6代だい隔へだた）
 源みなもと義国よしくに
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新田にった義重よししげ　足利あしかが義康よしやす　義ぎ房ぼう（季邦すえくに）
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　義兼よしかね　里見さとみ義よし俊しゅん　山名やまな義範よしのり^{[注釈ちゅうしゃく 1]}　世良田せらだ（得とく川かわ）義ぎ季き　額がく戸ど経けい義よし
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　義ぎ房ぼう　　　　　　　　　　足利あしかが義よし純じゅん室しつ
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　政義まさよし　　　新井あらい覚さとし義よし　　　岩松いわまつ時どき兼けん　田中たなか時とき朝あさ
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　政氏まさうじ　大館おおだて家いえ氏し　堀口ほりぐち家いえ貞さだ　谷嶋たにしま信しん氏し　経けい光こう　助じょ義よし
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　基氏もとうじ　細谷ほそや国くに氏し　下細谷しもほそや知ち信しん　西谷にしたに重しげる氏し　 安養寺あんようじ快かい義よし　安養寺あんようじ貞さだ氏し 今井いまい惟おもんみ氏し
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　朝あさ氏し　満みつる氏し（義政よしまさ）　義量よしかず　義円ぎえん
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　義貞よしさだ　脇屋わきや義助よしすけ
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　義ぎ顕あらわ　義興よしおき　　義宗よしむね　  嶋田しまだ義央よしなか
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　義一ぎいち　貞方さだかた　横瀬よこせ貞さだ氏し　岩松いわまつ満まん純じゅん　宗そう親ちかし　脇屋わきや義則よしのり
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　義光よしみつ　貞さだ邦くに　堀江ほりえ貞さだ政せい　中村なかむら貞さだ長ちょう　信しん親おや　　祐ゆう義よし
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　義高よしたか　　　　　　　　　　　　　　　　　　経けい信しんじ　　真船まふね義親よしちか
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　義明よしあき　　　　　　　　　　　　　　　　　　義隆よしたか
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宗そう信しん
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　頼よりゆき宗むね
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　満家みついえ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　経けい家か
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　経けい徳とく
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宗そう基はじめ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　義ぎ業ぎょう
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　義ぎ風ふう

※『新田にった町まち誌し』^{[要よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう]}および『系図けいず纂要』による。ただし新田にった宗はじめ親おや以下いかは「鑁阿寺てら新田にった足利あしかが両家りょうけ系図けいず」、新田にった義一ぎいち以下いかは「筑後ちくご佐田さた新田にった系図けいず」、横瀬よこせ貞さだ氏しは「新田にった岩松いわまつ古こ系図けいず」、岩松いわまつ満みつる純じゅんは「新田にった岩松いわまつ古こ系図けいず」、嶋田しまだ義央よしなかは(浅田あさだ 1993, p. ^{[要ようページ番号ばんごう]})、脇屋わきや義則よしのりは(清水しみず 1990, p. ^{[要ようページ番号ばんごう]})を出典しゅってんとする。