山名やまな時じ氏し

凡例はんれい 山名やまな 時じ氏し
『本朝ほんちょう百ひゃく将しょう伝でん』より
時代じだい	鎌倉かまくら時代ときよ末期まっき - 南北なんぼく朝あさ時代じだい
生誕せいたん	嘉よしみ元もと元年がんねん（1303年ねん）別べつ説せつでは永えい仁ひとし6年ねん（1298年ねん）
死没しぼつ	建徳けんとく2年ねん/応おう安やす4年ねん3月28日にち（1371年ねん4月がつ14日にち）
別名べつめい	小次郎こじろう
戒名かいみょう	光孝みつたか寺てら殿どの鎮国道どう静しずか大だい禅定ぜんじょう門もん
墓所はかしょ	鳥取とっとり県けん倉吉くらよし市しの山名やまな寺てら
官位かんい	正せい五ご位い下か伊豆いず守まもる、弾正だんじょう少しょう弼、左京さきょう大夫たいふ
幕府ばくふ	室町むろまち幕府ばくふ 侍さむらい所しょ頭あたま人じん、引付ひきつけ頭あたま人じん、伯耆ほうき・出雲いずも・隠岐おき・因幡いなば・若狭わかさ・丹波たんば・丹後たんご・美作みさく・紀伊きい・和泉いずみ・備後びんご守護しゅご
主君しゅくん	足利尊氏あしかがたかうじ→直義ただよし→直冬ただふゆ→義詮よしあきら→義満よしみつ
氏族しぞく	山名やまな氏し
父母ちちはは	父ちち：山名やまな政氏まさうじ、母はは：上杉うえすぎ重房しげふさ娘むすめ
兄弟きょうだい	時どき氏し、兼義かねよし
子こ	師し義よし、義理ぎり、氏し冬ふゆ、氏清うじきよ、義継よしつぎ、時どき義よし、時治ときじ、氏頼うじより、氏し重おも、義ぎ数すう、高こう義よし

山名やまな 時じ氏し（やまな ときうじ）は、鎌倉かまくら時代ときよ末期まっきから南北なんぼく朝あさ時代じだいにかけての武将ぶしょう・守護しゅご大名だいみょう。室町むろまち幕府ばくふ侍さむらい所しょ頭あたま人じん、引付ひきつけ頭あたま人じん。伯耆ほうき国こく・出雲いずも国こく・隠岐おき国こく・因幡いなば国こく・若狭わかさ国こく・丹波たんば国こく・丹後たんご国こく守護しゅご。足利尊氏あしかがたかうじ・直義ただよし兄弟きょうだいの母ははである上杉うえすぎ清子きよこは母方ははかたの従姉妹いとこに当あたる。

生涯しょうがい

嘉よしみ元もと元年がんねん（1303年ねん）あるいは永えい仁ひとし6年ねん（1298年ねん）、上野うえの国こくの新田にった氏しの一族いちぞくである山名やまな政氏まさうじの子ことして誕生たんじょう。

今川いまがわ貞世さだよの著あらわした『難なん太平たいへい記き』によれば民みん百姓ひゃくしょうの暮くらしをしていたとされるが、山名やまな氏しは鎌倉かまくら幕府ばくふ成立せいりつ時じからの御家人ごけにんであり、かつ上杉うえすぎ氏しと姻戚いんせき関係かんけいを結むすんでいることから低ひくい身分みぶんとは考かんがえがたく、この記述きじゅつは貞世さだよがライバル関係かんけいにある山名やまな氏しを貶おとしめたものと考かんがえられる。その一方いっぽうで、鎌倉かまくら幕府ばくふにおいて活躍かつやくしていた山名やまな氏しは庶流である山名やまな重しげる家か（山名やまな義範よしのりの子こ）や山名やまな朝家ちょうか（山名やまな重しげる国こくの子こ）の子孫しそんであり、朝家ちょうかの兄あに・山名やまな重村しげむらの子孫しそんである嫡流ちゃくりゅうの活動かつどうは確認かくにんできない（重村しげむらは時どき氏しの高祖父こうそふにあたる）とする指摘してきもあり、この指摘してきが正ただしければ貞世さだよの記述きじゅつが必かならずしも山名やまな氏し（嫡流ちゃくりゅう家か）を貶おとしめたものとは言いえない、ということになる。なお、重じゅう家かや朝家ちょうかの子孫しそんは鎌倉かまくら時代じだい末期まっきの政争せいそうや幕府ばくふの滅亡めつぼうに伴ともなって没落ぼつらくしており、時どき氏しこそが山名やまな氏しの嫡流ちゃくりゅうの地位ちいを回復かいふくさせた人物じんぶつと言いうことになる。

足利あしかが氏しの姻族いんぞくである上杉うえすぎ氏しとの縁戚えんせき関係かんけいなどから、新田にった一族いちぞくの惣領そうりょうである新田にった義貞よしさだには従したがわずに、足利尊氏あしかがたかうじの後醍醐天皇ごだいごてんのうからの離反りはん、湊川みなとがわの戦たたかいなどに参加さんか、その功こうで延のべ元もと2年ねん/建たて武たけし4年ねん（1337年ねん）には名和なわ氏しの本拠ほんきょである伯耆ほうき守護しゅごに任にんぜられる。その後ごも南朝なんちょうとの戦たたかいで楠木くすのき正行まさゆき、名和なわ氏しの掃討そうとうなどを行おこない、興国こうこく2年ねん/暦こよみ応おう4年ねん（1341年ねん）の塩冶えんや高貞たかさだ討伐とうばつで功績こうせきを挙あげ、その功こうで丹後たんご・出雲いずも・隠岐おき守護しゅごとなり、正平しょうへい2年ねん/貞和さだかず3年ねん（1347年ねん）に楠木くすのき正行まさゆきと戦たたかい敗北はいぼくしたが、翌年よくねんに若狭わかさ守護しゅごとなる。

正平しょうへい5年ねん/観かん応おう元年がんねん（1350年ねん）、室町むろまち幕府ばくふ初代しょだい将軍しょうぐん・足利尊氏あしかがたかうじの弟おとうとである直義ただよしと、足利あしかが家か執事しつじ・高師直こうのもろなおの対立たいりつが発展はってんして観かん応おうの擾乱じょうらんが起おこると、時どき氏しは初はじめ師し直じきを推おして直義ただよし排斥はいせきのクーデターにも参加さんかするが、その後ご京都きょうとを脱出だっしゅつして南朝なんちょうに属ぞくした直義ただよしに従したがう（ただし、出雲いずもにいた嫡男ちゃくなん・師し義よしは離反りはんして尊たかし氏しに従したがっている）。正平しょうへい7年ねん（1352年ねん）に直義ただよしが死去しきょすると一時いちじは将軍しょうぐん派はに転身てんしんするが、出雲いずもや若狭わかさ守護しゅご職しょくなどを巡めぐる佐々木ささき道みち誉ほまれとの対立たいりつもあり、正平しょうへい8年ねん/文和ふみかず2年ねん（1353年ねん）には師し義ぎと共ともに室町むろまち幕府ばくふに対たいして挙兵きょへいして出雲いずもへ進攻しんこう、6月がつには南朝なんちょうの楠木くすのき正儀まさよしらと共ともに足利あしかが義詮よしあきらを追おい京都きょうとを占領せんりょうするが、7月がつには奪還だっかんされる。

時どき氏しは領国りょうごくに撤退てったいした後のち、尊たかし氏しの庶子しょしで一時いちじは九州きゅうしゅうで影響えいきょう力りょくを持もっていた足利あしかが直冬ただふゆを奉ほうじ、翌よく正平しょうへい9年ねん/文和ふみかず3年ねん（1354年ねん）12月には斯波しば高経たかつねや桃井ももい直ただし常つねらと再ふたたび京都きょうとを占領せんりょうするが、撤退てったい。その後ごは山陰さんいんにおいて、幕政ばくせいの混乱こんらんにも乗じょうじて影響えいきょう力りょくを拡大かくだいして播磨はりま国こくの赤松あかまつ則祐のりすけとも戦たたかう。

幕府ばくふでは細川ほそかわ頼よりゆき之これが管領かんりょうに任にんじられ、南朝なんちょうとの戦たたかいも小康しょうこう状態じょうたいになると、大内おおうち氏しや山名やまな氏しに対たいして帰順きじゅん工作こうさくが行おこなわれ、時どき氏しは領国りょうごくの安堵あんどを条件じょうけんに直ちょく冬ふゆから離反りはん、正平しょうへい18年ねん/貞治さだはる2年ねん（1363年ねん）8月がつには子こ・氏し冬ふゆと時どき義よしを上洛じょうらくさせ、大内おおうち氏しに続つづいて室町むろまち幕府ばくふに帰順きじゅん、時どき氏しは伯耆ほうき・丹波たんば守護しゅごに、師し義ぎは丹後たんご、氏し冬ふゆは因幡いなば国こく、時とき義ぎは美作みさく国こく守護しゅごに任命にんめいされ（後のちに次男じなん・義理ぎりに交代こうたい）、山名やまな氏しは5か国こくの守護しゅごとなった。また、引付ひきつけ頭あたま人じんにも任にんじられ幕政ばくせいに参加さんかした。翌よく正平しょうへい19年ねん/貞治さだはる3年ねん（1364年ねん）3月がつには若狭わかさの今富いまとみ名めいが与あたえられて若狭わかさ守護しゅごではない時とき氏しが小浜おばまなどの同国どうこくの主要しゅよう地点ちてんを掌握しょうあくした。幕府ばくふでは義詮よしあきら正室せいしつの渋川しぶかわ幸子さちこや、同おなじく幕府ばくふに帰順きじゅんした斯波しば義よし将しょう、大内おおうち弘世ひろよら共どもに反はん頼よりゆき之これ派はの武将ぶしょうであった。

山名やまな時じ氏し墓ぼ（鳥取とっとり県けん倉吉くらよし市し）

建徳けんとく2年ねん/応おう安やす4年ねん（1371年ねん）、死去しきょ。享年きょうねん69。伯耆ほうき大雄山だいゆうざんの光孝みつたか寺てら(現げん山名やまな寺てら倉吉くらよし市し厳いむ城しろ)に葬ほうむられ、嫡男ちゃくなん・師し義ぎが後こうを継ついだ。

時どき氏しは南北なんぼく両朝りょうちょうや守護しゅご大名だいみょう同士どうしの抗こう争そうに付つけ込こんで自じ勢力せいりょくの拡大かくだいに注力ちゅうりょくし、因幡いなばに二上ふたかみ山城やましろ、伯耆ほうきには田内たうち城しろと打吹うつぶき城じょうを築きずき、やがて山名やまな氏しは山陰さんいん地方ちほう随一ずいいちの勢力せいりょくとなった。5人にんの息子むすこも時どき氏しの死後しごに所領しょりょうを増ふやしていったが、それが将軍家しょうぐんけに危険きけん視しされ、後ごの同族どうぞく争あらそいに繋つながっていくのである。

人物じんぶつ・逸話いつわ

幕府ばくふに敵対てきたいしながら5か国こくの領国りょうごくを安堵あんどされたため、『太平たいへい記き』では「多おおく所領しょりょうを持もたんと思おもはば、只ただ御ご敵てきにこそ成なりべかりけれ」と人々ひとびとが噂うわさし合あったという。かつて敵てきであった時とき氏しが大だい勢力せいりょくを保持ほじしたまま帰順きじゅんしたことが皮肉ひにくられたと思おもわれる。

『難なん太平たいへい記き』では時どき氏しは自分じぶんの体験たいけんを子供こども達たちに語かたり、道理どうりを弁わきまえた自分じぶんでさえ上意じょういをおろそかにする時ときがあるため、子孫しそんは度どを過すぎて上うえに警戒けいかいされるのではないかと心配しんぱいしたという逸話いつわもある。真偽しんぎは不明ふめいながら、時どき氏しの死しから20年ねん後ごに山名やまな氏しは明徳めいとくの乱らんにおいて将軍家しょうぐんけから追討ついとうされることになり、勢力せいりょくは削減さくげんされてしまった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 福田ふくだ以久生せい『山名やまな時じ氏し』吉川弘文館よしかわこうぶんかん
• 小川おがわ信しん『山名やまな宗全そうぜんと細川ほそかわ勝元かつもと』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1994年ねん。 
• 川かわ岡おか勉つとむ『山名やまな宗全そうぜん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん〈人物じんぶつ叢書そうしょ〉、2009年ねん。 
• 瀬野せの精一郎せいいちろう『足利あしかが直冬ただふゆ』吉川弘文館よしかわこうぶんかん〈人物じんぶつ叢書そうしょ〉、2005年ねん。ISBN 464205233X。 
• 市川いちかわ裕士ひろし『室町むろまち時代じだいの地方ちほう支配しはいと地域ちいき権力けんりょく』戎えびす光ひかり祥さち出版しゅっぱん、2017年ねん。 ISBN 978-4-86403-234-6 第だい二に部ぶ「守護しゅご山名やまな氏しの分ぶん国くに支配しはいと同族どうぞく連合れんごう体制たいせい」

関連かんれん項目こうもく

• 布勢ふせ天神山てんじんやま城じょう
• 山名やまな寺てら（倉吉くらよし市し厳げん城じょう）

外部がいぶリンク

• 鳥取とっとり観光かんこうナビ・山名やまな寺てら 倉吉くらよし
• 鳥取とっとり観光かんこうナビ・山名やまな時じ氏し墓ぼ 山名やまな寺てら

先代せんだい 山名やまな政氏まさうじ

山名やまな氏し当主とうしゅ ? - 1371年ねん

次代じだい 山名やまな師し義よし