仮名かめい草子ぞうし

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仮名かめい草子ぞうし(かなぞうし)とは、江戸えど時代じだい初頭しょとうやく80年間ねんかん仮名かめい、もしくは仮名かめいじりぶんしるわされた散文さんぶん文芸ぶんげい総称そうしょう[1][2]明治めいじ30年代ねんだい水谷みずたに不倒ふとうはじめて使用しようした[1]下限かげん天和てんわ2ねん(1682)の井原いはら西鶴さいかく好色こうしょくいちだいおとこ出版しゅっぱんころまでとするのが一般いっぱんてき[3]

概略がいりゃく[編集へんしゅう]

中世ちゅうせい文学ぶんがく仮名かめい草子ぞうしちがいのひとつに出版しゅっぱんがある[4]中世ちゅうせい文学ぶんがく複製ふくせい方法ほうほう写本しゃほんであったのにくらべ、近世きんせいには仮名かめい草子ぞうしのような俗文ぞくぶんげい活字かつじ印刷いんさつ木版もくはん印刷いんさつ出版しゅっぱんされるようになり、従来じゅうらい貴族きぞくけの出版しゅっぱんから、特定とくてい多数たすう読者どくしゃ一般いっぱん庶民しょみん)にけた商業しょうぎょう出版しゅっぱんへの転換てんかんをもたらした[2]

作者さくしゃおおくは当時とうじ知識ちしきじんそうであり、浅井あさい了意りょうい鈴木すずき正三しょうさん烏丸からすま光広みつひろらがられている[1]。また、斎藤さいとうちかしもり江島えじま為信ためのぶなど、教養きょうようのある浪人ろうにん一時いちじ糊口ここうをしのぐためにいた作品さくひんおお[5][6]出版しゅっぱんもとはほとんどが京都きょうと本屋ほんやであり、一部いちぶ作品さくひん江戸えど改版かいはんされて出版しゅっぱんされた[2]

あかり暦年れきねんあいだ(1655~)から寛文ひろふみ年間ねんかん(1661-1672)にかけてが仮名かめい草子ぞうし最盛さいせいわれる[7]説話せつわからハナシへと文学ぶんがく流行りゅうこう移行いこうしていくにつれ、きょうせつせいつよ仮名かめい草子ぞうし下火したびとなった[8]

内容ないよう[編集へんしゅう]

内容ないよう教義きょうぎ教訓きょうくんてきなもの、娯楽ごらくてきなもの、実用じつよう本位ほんいのものに大別たいべつできるが、これらの性質せいしつかさなりっている場合ばあいおお[2]。1670ねん寛文ひろふみ10ねん)に刊行かんこうされた『増補ぞうほ書籍しょせき目録もくろく』では、当時とうじ書籍しょせきが36項目こうもく分類ぶんるいされている。

おも作品さくひん[編集へんしゅう]

ほか多数たすう深沢ふかざわ秋男あきお菊池きくち真一しんいちへん仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅう文献ぶんけん目録もくろく』によれば、300てんにおよぶ。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 岡本おかもとまさるくもえい末雄すえおへん新版しんぱん 近世きんせい文学ぶんがく研究けんきゅう事典じてん』おうふう、2006ねん2がつ、3-7ぺーじ 
  2. ^ a b c d 前田まえだ金五郎きんごろう,森田もりたたけしこうちゅう仮名かめい草子ぞうししゅう岩波書店いわなみしょてん、1965ねん5がつ、3-12ぺーじ 
  3. ^ 谷脇たにわき仮名かめい草子ぞうししゅう小学館しょうがくかん、1999ねん 
  4. ^ 谷脇たにわき仮名かめい草子ぞうししゅう小学館しょうがくかん、1999ねん、627ぺーじ 
  5. ^ 岡本おかもとまさるくもえい末雄すえおへん新版しんぱん 近世きんせい文学ぶんがく研究けんきゅう事典じてん』おうふう、2006ねん2がつ、3ぺーじ 
  6. ^ 谷脇たにわき仮名かめい草子ぞうししゅう小学館しょうがくかん、1999ねん、628-630ぺーじ 
  7. ^ 江本えもとひろし近世きんせい前期ぜんき小説しょうせつ研究けんきゅう若草わかくさ書房しょぼう、2000ねん、22ぺーじ 
  8. ^ 江本えもとひろし近世きんせい前期ぜんき小説しょうせつ研究けんきゅう若草わかくさ書房しょぼう、2000ねん 

刊行かんこうほん[編集へんしゅう]

原典げんてん校訂こうてい

  • 野田のだ寿雄よしおこうちゅう仮名かめい草子ぞうししゅうじょうした日本にっぽん古典こてん全書ぜんしょ朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1960ねん(1962ねん再刊さいかん)。
  • 前田まえだ金五郎きんごろう森田もりたたけしこうちゅう仮名かめい草子ぞうししゅう日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく大系たいけい90、岩波書店いわなみしょてん、1965ねん
  • 青山あおやま忠一ただかずきしとくぞう神保じんぼわたる谷脇たにわきこうちゅうやく仮名かめい草子ぞうししゅう 浮世草子うきよぞうししゅう日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう37、小学館しょうがくかん、1971ねん
  • 近世きんせい文学ぶんがく書誌しょし研究けんきゅうかいへん近世きんせい文学ぶんがく資料しりょう類従るいじゅう仮名かめい草子ぞうしへんいた地誌ちしへんぜん61さつつとむまことしゃ、1972ねん~1981ねん
  • 東洋文庫とうようぶんこ日本にっぽん古典こてんぶん学会がっかいへん仮名かめい草子ぞうし』、貴重きちょうほん刊行かんこうかい、1974ねん
  • 朝倉あさくら治彦はるひことうへん校訂こうてい仮名かめい草子ぞうし集成しゅうせい』1かん~49かん東京とうきょうどう出版しゅっぱん、1980ねん~2013ねんぜん70かん予定よてい刊行かんこうちゅう
  • 渡辺わたなべまもるくに渡辺わたなべ憲司けんじこうちゅう仮名かめい草子ぞうししゅうしん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく大系たいけい74、岩波書店いわなみしょてん、1991ねん
  • 谷脇たにわきへん仮名かめい草子ぞうししゅう早稲田大学わせだだいがく資料しりょう影印えいいん叢書そうしょ刊行かんこう委員いいんかい早稲田大学わせだだいがく出版しゅっぱん、1994ねん
  • 谷脇たにわき仮名かめい草子ぞうししゅう小学館しょうがくかん、1999ねん
  • 深沢ふかざわ秋男あきお菊池きくち真一しんいちへん仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅう文献ぶんけん目録もくろく和泉いずみ書院しょいん、2004ねん
  • 深沢ふかざわ秋男あきお菊池きくち真一しんいちへん仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅう叢書そうしょぜん8かん、クレス出版しゅっぱん、2006ねん

研究けんきゅうしょ

  • 坪内つぼうち逍遥しょうよう水谷みずたに不倒ふとう近世きんせい列伝れつでんたい小説しょうせつ春陽しゅんようどう、1897ねん
  • 水谷みずたに弓彦ゆみひこ仮名かめい草子ぞうし水谷みずたに文庫ぶんこ、1919ねん
  • 水谷みずたに不倒ふとう新撰しんせん列伝れつでんたい小説しょうせつ 前編ぜんぺん』、春陽しゅんようどう、1932ねん
  • 北条ほうじょう秀雄ひでお改訂かいてい増補ぞうほ 浅井あさい了意りょうい笠間かさま書院しょいん、1972ねん
  • 田中たなかしん仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅうさくらかえでしゃ、1974ねん
  • 水田みずたじゅん仮名かめい草子ぞうし世界せかい分化ぶんか系譜けいふ―』さくらかえでしゃ、1981ねん
  • 野間のまひかりたつ近世きんせい作家さっかでん攷』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ、1985ねん
  • 渡辺わたなべまもるくに仮名かめい草子ぞうし基底きていつとむまことしゃ、1986ねん
  • 野田のだ寿雄よしお日本にっぽん近世きんせい小説しょうせつ 仮名かめい草子ぞうしへんつとむまことしゃ、1986ねん
  • 三浦みうら邦夫くにお仮名かめい草子ぞうしについての研究けんきゅう』おうふう、1996ねん
  • 松原まつばらしげるこううすゆき物語ものがたり御伽草子おとぎぞうし仮名かめい草子ぞうし和泉いずみ書院しょいん、1997ねん
  • 市古いちこ夏生なつき近世きんせい初期しょき文学ぶんがく出版しゅっぱん文化ぶんか若草わかくさ書房しょぼう、1998ねん
  • 青山あおやま忠一ただかず近世きんせい仏教ぶっきょう文学ぶんがく研究けんきゅう』おうふう、1999ねん
  • 江本えもとひろし近世きんせい前期ぜんき小説しょうせつ研究けんきゅう若草わかくさ書房しょぼう、2000ねん
  • はな田富たとみ二夫つぎお仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅう説話せつわとその周辺しゅうへん―』しんてんしゃ、2003ねん
  • 田中たなかひろし仮名かめい草子ぞうし文学ぶんがくてき研究けんきゅう人間にんげん科学かがくしゃ、2016ねん

論文ろんぶん

  • 深沢ふかざわ秋男あきお仮名かめい草子ぞうし研究けんきゅう歴史れきし」(「近世きんせい初期しょき文芸ぶんげい」33ごう、2016ねん12がつ
  • 深沢ふかざわ秋男あきお仮名かめい草子ぞうし書誌しょしてき研究けんきゅう」(「近世きんせい初期しょき文芸ぶんげい」35ごう、2018ねん12がつ)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]