入江いりえ九きゅう一いち

凡例はんれい 入江いりえ 九きゅう一いち
入江いりえ九きゅう一いち（『高名こうみょう像ぞう伝でん : 近世きんせい遺のこ勲くん. 地ち』）
時代じだい	江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ）
生誕せいたん	天保てんぽう8年ねん4月がつ5日にち（1837年ねん5月9日にち）
死没しぼつ	元治もとはる元年がんねん7月がつ19日にち（1864年ねん8月がつ20日はつか）
別名べつめい	諱いみな：弘ひろ致、弘毅こうき、通称つうしょう：万吉まげち、杉すぎ蔵ぞう、字じ：子こ遠とお、変名へんめい：河島かわしま小太郎こたろう
戒名かいみょう	精せい節ぶし軒のき弘ひろ致子遠どお居士こじ
墓所はかしょ	上善寺じょうぜんじ（京都きょうと府ふ京都きょうと市し北きた区く） 長寿寺ちょうじゅじ（山口やまぐち県けん萩はぎ市し）
官位かんい	贈おく正せい四よん位い
藩はん	長州ちょうしゅう藩はん
氏族しぞく	入江いりえ氏し
父母ちちはは	父ちち：入江いりえ嘉よしみ伝次でんじ、母はは：満まん智さとし（村上むらかみ与三よぞう右みぎ衛門えもんの長女ちょうじょ）
兄弟きょうだい	九きゅう一いち、野村のむら靖やすし、伊藤いとうすみ子こ（伊藤いとう博文ひろぶみの最初さいしょの妻つま）
妻つま	粂（堀ほり音おと右みぎ衛門えもんの娘むすめ）
子こ	養子ようし：音次郎おとじろう、貫一かんいち

入江いりえ 九きゅう一いち（いりえ くいち）は、日本にっぽんの武士ぶし（長州ちょうしゅう藩士はんし）。別名べつめいは河島かわしま小太郎こたろう。

生涯しょうがい

天保てんぽう8年ねん（1837年ねん）4月がつ5日にち、長州ちょうしゅう藩はんの足軽あしがるである入江いりえ嘉よしみ伝次でんじ・満まん智さとし（村上むらかみ与三よぞう右みぎ衛門えもんの長女ちょうじょ）夫妻ふさいの長男ちょうなんとして生うまれた。弟おとうとに野村のむら靖やすし（和作わさく）、妹いもうとに伊藤いとうすみ子こ（伊藤いとう博文ひろぶみの最初さいしょの妻つま）がいる。妻つまは九きゅう一いちの父ちちの同僚どうりょうである堀ほり音おと右みぎ衛門えもんの娘むすめ・粂。

松下まつした村塾そんじゅく

安政あんせい3年ねん（1856年ねん）に父ちちが死去しきょし、家督かとくを継ついだ。安政あんせい4年ねん（1857年ねん）に弟おとうとの和作わさくが吉田よしだ松陰しょういんの松下まつした村塾そんじゅくに入塾にゅうじゅくするが、九きゅう一いちは家計かけいを支ささえるべき立場たちばであるため通かよう暇ひまを作つくれず、安政あんせい5年ねん（1858年ねん）になって遅おくれて入門にゅうもんした。同年どうねん12月がつに松陰しょういんは再さい投獄とうごくされるため、実際じっさいに学まなんだのは1ヶ月かげつ程度ていどに過すぎないが、松陰まつかげから高たかく評価ひょうかされ久坂くさか玄げん瑞みず、高杉たかすぎ晋作しんさく、吉田よしだ稔みのる麿まろと並ならんで松まつ門もん四天王してんのうの一人ひとりに数かぞえられた。

同年どうねん、師匠ししょうの松陰まつかげが江戸えど幕府ばくふの無む勅許ちょっきょによる日米にちべい修好しゅうこう通商つうしょう条約じょうやく締結ていけつに激怒げきどし倒幕とうばくを表明ひょうめいして老中ろうじゅうの間部まべ詮勝あきかつ暗殺あんさつ計画けいかくを企たくらんだ。この時とき、高杉たかすぎ・久坂くさか・稔みのり麿まろらは猛もう反対はんたいしたが、九きゅう一いち・和作わさく兄弟きょうだいだけは賛成さんせいし計画けいかくに加担かたん。その際さいに松陰まつかげから「久坂くさか君くんたちは優秀ゆうしゅうだが、度胸どきょうが無ない。しかし君きみだけは国くにのために死しねる男児だんじである」と高たかく評価ひょうかされている。そのため、後のちに松陰しょういんが安政あんせいの大獄たいごくで処刑しょけいされた後のちも、九きゅう一いちは師匠ししょうの遺志いしを受うけ継ついで間部まべ詮勝あきかつ暗殺あんさつ計画けいかくを実行じっこうに移うつそうとしている。

同年どうねん、伏見ふしみにて藩主はんしゅを拉致らちして朝廷ちょうていに誘導ゆうどうし、強引ごういんに攘夷じょういを宣言せんげんさせるという奇策きさく「伏見ふしみ要かなめ駕が策さく」を獄中ごくちゅうで思おもいついた松陰しょういんは、無謀むぼうな策さくに反対はんたいする久坂くさか玄げん瑞みず、高杉たかすぎ晋作しんさくら殆ほとんどの門下生もんかせいに破門はもん状じょうを出だし、入江いりえ兄弟きょうだいに実行じっこうの指示しじを出だすが、藩はんに察知さっちされて弟おとうとと共ともに岩倉いわくら獄ごくに投獄とうごくされた。これにより入江いりえ家かは困窮こんきゅうし、九きゅう一いちは獄中ごくちゅうで内職ないしょくを行おこなって家計かけいを助たすけた。

奇き兵隊へいたいと禁門きんもんの変へん

松陰まつかげの処刑しょけいから半年はんとし後ご、兄弟きょうだいも万延まんえん元年がんねん（1860年ねん）に釈放しゃくほうされ、文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん）には吉田よしだ稔みのる麿まろらと共ともに足軽あしがるから士分しぶんに取とり立たてられたが、無給むきゅうの士分しぶんという扱あつかいであり、家計かけいの苦くるしさに変化へんかはなかった。京都きょうとで尊皇そんのう攘夷じょういのための活動かつどうを行おこなう一方いっぽうで高杉たかすぎの奇き兵隊へいたい創設そうせつにも協力きょうりょくし、奇き兵隊へいたいの参謀さんぼうとなった。同年どうねんの下関しものせき戦争せんそうには久坂くさかの率ひきいる光明寺こうみょうじ党とうの一員いちいんとして参加さんかした。

翌よく元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）7月がつ19日にち、禁門きんもんの変へんでは久ひさ坂ざかの率ひきいる浪人ろうにん隊たいの一員いちいんとして天王山てんのうざんに布陣ふじんし、御所ごせ攻撃こうげきに参加さんかしたが敗やぶれて久坂くさかは自刃じじん。久坂くさかに藩主はんしゅ世子せいしへの伝言でんごんを頼たのまれた九きゅう一いちは何なにとか脱出だっしゅつしようと図はかったが、塀へいを越こえたところで越前えちぜん兵へいの槍やりを顔面がんめんに受うけて死亡しぼう。享年きょうねん28。

首級しゅきゅうは福井ふくい藩はん士しが松平まつだいら春はる嶽だけに許可きょかを得え、同様どうようの戦死せんし者しゃ8名めいと共ともに福井ふくい藩はんの京きょうの菩提寺ぼだいじである上善寺じょうぜんじに手厚てあつく葬ほうむられた。その後ご長ながらく長州ちょうしゅう藩はん側がわに忘わすれられていたが、旧きゅう福井ふくい藩士はんしが毛利もうり家かに連絡れんらくした事ことをきっかけに、明治めいじ30年代ねんだいに碑石ひせきが修築しゅうちくされた。

死後しご

後のちに木戸きど孝允たかよし・大村おおむら益次郎えきじろうたちによって長州ちょうしゅう藩はん内ないの桜山さくらやま招魂しょうこん場じょう（現在げんざいの桜山さくらやま神社じんじゃ、下関しものせき市し上新地かみしんち町まち）・朝日山あさひやま招魂しょうこん場じょう（現在げんざいの朝日山あさひやま護国ごこく神社じんじゃ、山口やまぐち市し秋穂二島あいおふたじま）、京都きょうと霊山れいざん護国ごこく神社じんじゃ、東京とうきょう招魂しょうこん社しゃ（後ごの靖国神社やすくにじんじゃ）に護国ごこくの英霊えいれいとして祀まつられている。山口やまぐち県けん萩はぎ市し「長寿寺ちょうじゅじ」にも入江いりえ家かの父母ちちはは、妻つまの粂らと共ともに墓碑ぼひがある。九きゅう一いちの没後ぼつご、妻つまの弟おとうとの音次郎おとじろうを養やしなえ嫡子ちゃくしにしたが、アメリカへ官費かんぴ留学りゅうがくした翌年よくねんの明治めいじ6年ねん（1873年ねん）に病やまいで客死かくししたため、九きゅう一いちの弟おとうと・野村のむら靖やすしの次男じなんである貫一かんいちを明治めいじ13年ねん（1880年ねん）に養子ようしに迎むかえ入江いりえ家かを継つがせた。ニュージャージー州しゅうニューブランズウィックのウィロー・グローブ墓地ぼちには、幕末ばくまつに同地どうちのラトガース大学だいがくで学まなび、同地どうちにて客死かくしした日下部くさかべ太郎たろうの墓はかがあり、それと並ならんで入江いりえ音次郎おとじろうの墓碑ぼひがある(墓碑ぼひでは1874年ねん、19歳さい没ぼつ)。日下部くさかべ家かは旧きゅう福井ふくい藩士はんしである。

明治めいじ24年ねん（1891年ねん）に正せい四よん位いを贈おくられた。家紋かもんは丸まるに並ならび鷹たかの羽わ。

著作ちょさく

• 「伝言でんごん録ろく」
• 「入江いりえ子こ遠どお遺稿いこう」

関連かんれん作品さくひん

テレビドラマ

• 『花はな神しん』（1977年ねんNHK大河たいがドラマ）演えんじ：今こん村民そんみん路ろ
• 『奇き兵隊へいたい』 (1989年ねん日本にほんテレビ年末ねんまつ時代じだい劇げきスペシャル、 演えんじ：岡野おかの進一郎しんいちろう)
• 『花はな燃もえゆ』（2015年ねんNHK大河たいがドラマ、演えんじ：要よう潤じゅん）