共同きょうどう浴場よくじょう

日本にっぽん最古さいこの共同きょうどう浴場よくじょうといわれる『つぼ湯ゆ』（湯ゆの峰みね温泉おんせん）

共同きょうどう浴場よくじょう（きょうどうよくじょう）とは、主おもに温泉おんせん地ちに存在そんざいする、地元じもとの人々ひとびとが管理かんりする温泉おんせんを利用りようした浴場よくじょう。このような温泉おんせん地ちの施設しせつには外そと湯ゆ施設しせつなどとして一般いっぱん入浴にゅうよく開放かいほうとする施設しせつと特定とくていの地元じもと住民じゅうみん専用せんようの入浴にゅうよく施設しせつがある。

概要がいよう

共同きょうどう浴場よくじょうは、広義こうぎには「不ふ特定とくてい多数たすうの人々ひとびとが共同きょうどうで入浴にゅうよくする浴場よくじょう」と定義ていぎされ、銭湯せんとうなどの公衆こうしゅう浴場よくじょうのほか、旅館りょかんの大だい浴場よくじょう、スーパー銭湯せんとう、公共こうきょう立たち寄より温泉おんせんなどを広ひろく含ふくむ。

狭義きょうぎには「温泉おんせん湧出ゆうしゅつ地域ちいきにみられる、主おもに地域ちいき住民じゅうみん向むけの温泉おんせん浴場よくじょう」と定義ていぎされる。この温泉おんせん湧出ゆうしゅつ地域ちいきにみられる主おもに地域ちいき住民じゅうみん向むけの温泉おんせん浴場よくじょうは、自治体じちたいや地域ちいきの管理かんり組合くみあい（旧慣きゅうかん上じょうの温泉おんせん権けんや惣そう有ゆう財産ざいさんにもとづく財産ざいさん法人ほうじんや財産ざいさん区く、地縁ちえん団体だんたいなど）により維持いじ・管理かんり・運営うんえいが行おこなわれているものが多おおく、地域ちいき住民じゅうみんの共同きょうどう資源しげんとなっている。

「共同きょうどう湯ゆ」という呼称こしょうもあり、「共同きょうどう浴場よくじょう」とほぼ同おなじ対象たいしょうや中身なかみで用もちいられることもあるが、「共同きょうどう浴場よくじょう」で網羅もうらされる対象たいしょうが広ひろくなりすぎたために「共同きょうどう湯ゆ」の言葉ことばに伝統でんとう的てきな共同きょうどう管理かんりや共同きょうどう利用りようの意味いみを持もたせるようになったという指摘してきもある。広義こうぎの共同きょうどう浴場よくじょうに対たいして、地域ちいき住民じゅうみんが自主じしゅ的てきに維持いじ・運営うんえいする共同きょうどう浴場よくじょうを「共同きょうどう風呂ふろ」と呼よんで区別くべつする文献ぶんけんもある。

なお、温泉おんせん場じょうにおいて旅館りょかんの外部がいぶに位置いちする共同きょうどう浴場よくじょうは総そう湯ゆ（そうゆ）と呼よばれることもある。

運営うんえい

大分おおいた県けん別府べっぷ市しには2001年ねん（平成へいせい13年ねん）現在げんざいで源泉げんせん数すうは総数そうすう2,850孔あなの源泉げんせんがあり（『別府べっぷ市し統計とうけい書しょ』）、別府べっぷ温泉おんせんでは「市有しゆう市営しえい温泉おんせん」が18施設しせつ、「市有しゆう区営くえい温泉おんせん」が65施設しせつ、「区く有ゆう区営くえいおよび組合くみあい営温泉いずみ」が19施設しせつあり、公共こうきょうの入浴にゅうよく場じょうが圧倒的あっとうてきに多おおい特徴とくちょうがある。

野沢温泉のざわおんせんでは温泉おんせん権けんを地元じもとの団体だんたいである財団ざいだん法人ほうじんの野沢のざわ会かいが持もち、温泉おんせんのほか山林さんりんや水利すいり権けんなども保有ほゆうしている（祭まつりなどの運営うんえいは野沢のざわ組ぐみが行おこなっているが財団ざいだん法人ほうじんの野沢のざわ会かいとほぼ同おなじメンバーである）。一方いっぽうで共同きょうどう湯ゆの維持いじ管理かんりは湯ゆ仲間なかまと呼よばれる地域ちいき住民じゅうみんの団体だんたいが行おこなっており、源泉げんせん所有しょゆう者しゃとしての野沢のざわ組ぐみ（野沢のざわ会かい）と利用りよう者しゃ団体だんたいとしての湯ゆ仲間なかまが並立へいりつする制度せいどがとられている。

山中さんちゅう温泉おんせんでは江戸えど時代じだい以前いぜんから共同きょうどう浴場よくじょうで温泉おんせん場じょう唯一ゆいいつの浴場よくじょうであった「惣そう湯ゆ」を守まもり、1876年ねん（明治めいじ9年ねん）に泉源せんげんと浴場よくじょうの権利けんりの一切いっさいを山やま中村なかむら有ゆう（後のちに山中さんちゅう町まち有ゆう）とした。

ジモ専せん

観光かんこう客きゃくに共同きょうどう浴場よくじょうを開放かいほうしている温泉おんせん地ちがあるかたわら、地元じもとの人ひとのみに利用りようを制限せいげんしている場合ばあいもある。そのような浴場よくじょうの事ことを、温泉おんせん愛好あいこう家かの間あいだでは「ジモ専せん」（「地元じもと専用せんよう」の略語りゃくご）と呼よんでいる。例たとえば、別府べっぷ温泉おんせんの羽衣はごろも温泉おんせんなどが「ジモ専せん」として紹介しょうかいされている。

ただし、地元じもとの人ひと以外いがいに宿泊しゅくはく客きゃくのみに開放かいほうする場合ばあい、特定とくていの曜日ようびのみ一般いっぱん開放かいほうする場合ばあい、なども存在そんざいする。また、かつては共同きょうどう浴場よくじょうに宿泊しゅくはく客きゃくが入はいることができるようにするため、住民じゅうみんと旅館りょかんの覚書おぼえがきが交かわされた地区ちくもある。例たとえば、湯田ゆだ中ちゅう温泉おんせんでは、9軒けんの共同きょうどう浴場よくじょうのうち一いち番ばん湯ゆである大湯おおゆのみを観光かんこう客きゃくに開放かいほうしている。ほかは特定とくてい曜日ようびのみ開放かいほうする浴場よくじょうや、通年つうねん宿泊しゅくはく客きゃくと地元じもとの人ひとにのみ利用りようを制限せいげんした浴場よくじょうとなっている。

各地かくちの共同きょうどう浴場よくじょう（ギャラリー）

• 
  重要じゅうよう文化財ぶんかざい・道後どうご温泉おんせん本館ほんかん
• 
  湯村ゆむら温泉おんせん「薬師やくし湯ゆ」
• 
  南紀なんき白浜しらはま温泉おんせん「崎さきの湯ゆ」
• 
  別府べっぷ温泉おんせん 竹瓦たけがわら温泉おんせん
• 
  鉄輪てつりん温泉おんせん 鉄輪てつりんむし湯ゆ

各地かくちの共同きょうどう浴場よくじょう例れい

• 飯坂いいざか温泉おんせん：鯖さば湖みずうみ湯ゆ、波なみ来らい湯ゆほか
• 磐梯ばんだい熱海あたみ温泉おんせん：宝たからの湯ゆ、錦にしき星ぼし湯ゆ、元もと湯ゆ
• いわき湯本ゆもと温泉おんせん：さはこの湯ゆ、みゆきの湯ゆ、上かみの湯ゆ
• 伊東いとう温泉おんせん：岡おか布袋ほていの湯ゆほか
• 草津くさつ温泉おんせん：地蔵じぞうの湯ゆほか
• 野沢温泉のざわおんせん：大湯おおゆほか13箇所かしょ
• 山中さんちゅう温泉おんせん：菊きくの湯ゆ（『おくのほそ道みち』より芭蕉ばしょうの句くから菊きく）
• 山代温泉やましろおんせん：総そう湯ゆ
• 片山津温泉かたやまづおんせん：総そう湯ゆ
• 有馬ありま温泉おんせん：金かねの湯ゆ、銀ぎんの湯ゆ
• 白浜しらはま温泉おんせん：牟婁むろの湯ゆ、崎さきの湯ゆほか
• 湯村ゆむら温泉おんせん：薬師やくし湯ゆ
• 七釜しちかま温泉おんせん：七釜しちかま温泉おんせんゆーらく館かん
• 浜坂はまさか温泉おんせん：ユートピア浜坂はまさか
• 道後どうご温泉おんせん：道後どうご温泉おんせん本館ほんかん、椿つばきの湯ゆ
• 三瓶さんべ温泉おんせん：鶴づるの湯ゆ、亀かめの湯ゆ
• 別府べっぷ温泉おんせん：竹瓦たけがわら温泉おんせんや鉄輪てつりんむし湯ゆなどの市営しえい温泉おんせんの他ほか、別府べっぷ市内しないには地元じもとの人ひとが管理かんりする共同きょうどう温泉おんせんが数すう百ひゃくヶ所かしょある。
• 由布院ゆふいん温泉おんせん：下くだん湯ゆ　
• 黒川くろかわ温泉おんせん：穴あな湯ゆ
• 指宿いぶすき温泉おんせん：村むら之の湯ゆ温泉おんせん、二月田温泉殿様湯ほか多数たすう

関連かんれん項目こうもく

• 銭湯せんとう
• 日帰ひがえり入浴にゅうよく施設しせつ
• 別府べっぷ八はち湯ゆ温泉おんせん道どう - 共同きょうどう温泉おんせんや旅館りょかんの立たち寄より湯ゆなどを88ヶ湯ゆ巡めぐり、温泉おんせん道どう名人めいじんの認定にんていを目指めざすもの。