湯ゆの峰みね温泉おんせん

湯ゆの峰みね温泉おんせん
温泉おんせん街がい
温泉おんせん情報じょうほう
所在地しょざいち	和歌山わかやま県けん田辺たなべ市し本宮もとみや町まち
座標ざひょう	北緯ほくい33度ど49分ふん43.9秒びょう 東経とうけい135度ど45分ふん26.8秒びょう
交通こうつう	バス -熊野くまの交通こうつう・奈良交通ならこうつう：バス停ばすてい「湯ゆの峰みね温泉おんせん」
泉いずみ質ただし	含硫黄いおう炭酸たんさん水素すいそ塩しお泉いずみ（ナトリウム）
泉いずみ温あつし（摂氏せっし）	92 °C
湧出ゆうしゅつ量りょう	約やく30 L/分ぶん
pH	7.0
液えき性せいの分類ぶんるい	中性ちゅうせい
浸透しんとう圧あつの分類ぶんるい	低てい張はり性せい
宿泊しゅくはく施設しせつ数すう	15（旅館りょかん4・民宿みんしゅく11）
総そう収容しゅうよう人員じんいん数すう	507 人にん/日にち
外部がいぶリンク	熊野くまの本宮ほんぐう観光かんこう協会きょうかい

湯ゆの峰みね温泉おんせん（ゆのみねおんせん）は、和歌山わかやま県けん田辺たなべ市し本宮もとみや町まち（旧きゅう国くに紀伊きい国こく牟婁むろ郡ぐん）湯ゆの峰みねにある温泉おんせん。4世紀せいき頃ころに熊野くまのの国造くにのみやつこ、大だい阿おもね刀かたな足あし尼あまによって発見はっけんされ、後のちに歴代れきだい上皇じょうこうの熊野くまの御幸みゆきによってその名なを全国ぜんこくに知しらしめた日本にっぽん最古さいこの湯ゆで、古ふるくから熊野くまの詣まいの旅人たびびと達たちにとっての湯ゆ垢離こりと休息きゅうそくの場ばとして知しられていた。2004年ねんには紀伊きい山地さんちの霊場れいじょうと参詣さんけい道どうの構成こうせい資産しさんの一部いちぶとして、温泉おんせんとしては初はつの世界せかい遺産いさんにも登録とうろくされている。餓鬼がき阿弥あみの姿すがたとなり死しの淵ふちを彷徨ほうこうう小栗ささぐり判官ほうがんが、照手てるて姫ひめの助たすけで湯ゆに浸つかって体からだを癒いやした「小栗おぐり判官ほうがんと照手てるて姫ひめ伝説でんせつ」が残のこる。

地理ちり

和歌山わかやま県けんの紀南きなん地方ちほうの北東ほくとう部ぶにある熊野くまの三山さんざんの一ひとつ・熊野くまの本宮ほんぐう大社たいしゃに至いたる熊野くまの参詣さんけい道どうの一ひとつである中辺路なかへじの道みち沿ぞいに位置いちしている ことから、後述こうじゅつするように古ふるくからしばしば参拝さんぱい客きゃくたちの湯ゆ垢離こりと休息きゅうそくの場ばとして用もちいられた。中辺路なかへじのうち、途中とちゅうの分岐ぶんき点てんから湯ゆの峰みね温泉おんせんに至いたるまでの区間くかんは「赤木あかぎ越えつ」、またこの温泉おんせんと熊野くまの本宮ほんぐう大社たいしゃを結むすぶ区間くかんの峠とうげ道どうは「大日だいにち越えつ」とそれぞれ呼称こしょうされる。

概要がいよう

川湯温泉かわゆおんせん、渡瀬わたせ温泉おんせんと並ならぶ、熊野くまの本宮ほんぐう温泉郷おんせんきょうの3つの温泉おんせんの1つ。四村川よむらがわの流ながれる谷たにの両りょう岸きしに、十じゅう数すう軒けんの旅館りょかんが並ならぶ温泉おんせん街がいがある。約やく1800年ねんの歴史れきしを持もつ温泉おんせんであり、後述こうじゅつの「つぼ湯ゆ」は日本にっぽん最古さいこの共同きょうどう浴場よくじょうとも言いわれている。

湯ゆの峰みね温泉おんせんの源泉げんせんは、湯ゆの峰みね川がわの河床かしょう付近ふきんを中心ちゅうしんに十じゅう数すうか所しょ分布ぶんぷしており、川底かわぞこからの温泉おんせん輸出ゆしゅつに伴ともなう気泡きほうが観察かんさつできるほか、「つぼ湯ゆ」脇わきの河床かしょうの砂岩さがんの亀裂きれつからも温泉おんせんの湧出ゆうしゅつが認みとめられる。泉いずみ質ただしは塩化えんか物ぶつ・炭酸たんさん水素すいそ塩しお・ナトリウムを主成分しゅせいぶんとする含硫黄いおうの炭酸たんさん水素すいそ塩しお泉いずみに分類ぶんるいされ、湧出ゆうしゅつ温度おんどは92.5℃、湧出ゆうしゅつ量りょうは全体ぜんたいで885ℓ/分ぶんであり、神経痛しんけいつう、リウマチ性せい疾患しっかん、皮膚ひふ病びょう、糖尿とうにょう病びょうなどに効能こうのうを持もつとされる。

温泉おんせん街がいの中心ちゅうしん地ちには公衆こうしゅう浴場よくじょう、および天然てんねん温泉おんせんの岩いわ風呂ふろである「つぼ湯ゆ」が位置いちしている。「つぼ湯ゆ」は一いち日にちに七なな回かいも湯ゆの色いろが変化へんかするとのい伝いつたえがあり、2004年ねん7月がつには紀伊きい山地さんちの霊場れいじょうと参詣さんけい道どうの構成こうせい資産しさんの一部いちぶとして、温泉おんせんとしては世界せかいで唯一ゆいいつの世界せかい遺産いさんに登録とうろくされた。

公衆こうしゅう浴場よくじょうには一般いっぱん湯ゆ、くすり湯ゆ、貸切かしきり湯ゆ、休憩きゅうけい場じょう、温泉おんせんくみとり場じょうなどがあり、温泉おんせんくみとり場じょうでは10L100円えんで温泉おんせん水すいを持もち帰かえることもできる。公衆こうしゅう浴場よくじょう前まえの川かわ沿ぞいには「湯ゆ筒とう」という熱湯ねっとうの源泉げんせんの自噴じふん口こうがあり、観光かんこう客きゃく達たちも卵たまごや野菜やさいを茹ゆでることができる他ほか、近所きんじょの土産物みやげもの店てんなどでも温泉おんせん卵たまごや茹ゆで野菜やさいなどが販売はんばいされている。

この温泉おんせんの熱源ねつげんは、かつては約やく14-15Maに活動かつどうした熊野くまのカルデラに代表だいひょうされる熊野くまの酸性さんせい岩がん類るいの残ざん熱ねつに求もとめられていたが、のちの研究けんきゅうでこれら岩がん体たいは完全かんぜんに冷却れいきゃくされており、現在げんざいは熱ねつ水すい貯蔵ちょぞう層そうに過すぎないことが示しめされた。2000年代ねんだい以降いこうは南海なんかいトラフから沈しずみ込こむフィリピン海うみプレートのスラブから脱水だっすいした高温こうおん流体りゅうたいが起源きげんであり熱源ねつげんとする説せつが提唱ていしょうされている。

この地ちは後述こうじゅつする通とおり、中世ちゅうせいの説経節せっきょうぶし「小栗おぐり判官ほうがん」において小栗ささぐりが蘇生そせいを遂とげた地ちとされるため、この温泉おんせんの周辺しゅうへんには、餓鬼がき阿弥あみとなった小栗ささぐりが湯ゆの峰みねにやって来くるまでに乗のっていた車くるまが捨すてられたと伝つたえられる「車塚くるまづか」、蘇生そせいした小栗ささぐりが力試ちからだめしをするために持もち上あげた石いしだとされる「力石りきいし」、小栗ささぐりの髪かみを結ゆっていた藁わらを捨すてたところに稲いねが自然しぜんに生はえて来きたという「不ふ蒔の稲いね」など、伝承でんしょうにまつわる多おおくの遺構いこうが現存げんそんしている。

またこの温泉おんせんは、1887年ねんにコバノイシカグマ科かのシダであるユノミネシダが日本にっぽんで初はじめて発見はっけんされた地ちであり、和名わみょうはこの温泉おんせんの呼称こしょうに由来ゆらいしている。生育せいいく地ちは町まちの公衆こうしゅう浴場よくじょうの裏手うらてにあり、1928年ねんには同種どうしゅの北限ほくげん生育せいいく地ちとしてユノミネシダ自生じせい地ちの名称めいしょうで国くにの天然記念物てんねんきねんぶつに指定していされている。

歴史れきし

4世紀せいきごろに熊野くまの国造くにのみやつこの大だい阿おもね刀かたな足あし尼あまによって発見はっけんされ、後のちに歴代れきだいの上皇じょうこうによる熊野くまの御幸みゆきによってその名なが広ひろく知しられるようになった。古いにしえより熊野くまの詣まいの旅人たびびと達たちはここで湯ゆ垢離こりを行おこなって身みを清きよめ、長旅ながたびの疲つかれを癒いやしていたとされる。この温泉おんせんには「一いち遍へん上人しょうにん名号みょうごう碑ひ」或あるいは「爪つめ書がき岩がん」などと呼よばれる、時宗じしゅうの開祖かいそである一遍いっぺんが経文きょうもんを爪つめで刻きざみ込こんだと伝つたえられる岩いわが現在げんざいまで残のこっている。また中世ちゅうせいの説経節せっきょうぶし「小栗おぐり判官ほうがん」においては、餓鬼がき阿弥あみの姿すがたとなってしまった小栗おぐり判官ほうがんが、この温泉おんせんでの湯治とうじによって元もとの姿すがたに戻もどったという伝説でんせつも残のこされている。

温泉おんせんの中心ちゅうしん部ぶには、天台宗てんだいしゅうの寺院じいんである東光寺とうこうじが位置いちしている。東光寺とうこうじの本尊ほんぞんは湯ゆの峰みね温泉おんせんの源泉げんせんの周囲しゅういに湯ゆの花はなが積つもって薬師如来やくしにょらいの形かたちとなったものであり、その本尊ほんぞんの胸むねから温泉おんせんが噴出ふんしゅつしていたことから「湯ゆの胸むね温泉おんせん」と呼よばれていたものが転てんじて「湯ゆの峰みね温泉おんせん」の名なになったとされている。

湯ゆの峰みねの評判ひょうばんは、平安へいあん時代じだい後期こうきの公卿くぎょう・藤原ふじわら宗忠むねただの日記にっき『中ちゅう右記うき』や、鎌倉かまくら時代ときよ前期ぜんきの公卿くぎょう・広橋ひろはし頼よりゆき資し日記にっき『頼よりゆき資し卿きょう記き』など、熊野くまの詣まいを行おこなった中世ちゅうせいの貴族きぞくたちの日記にっきにも記しるされている。熊野くまの御幸みゆきの時代じだいにも、皇族こうぞくや貴紳きしんがこの地ちを訪おとずれたが、それらはあくまで休養きゅうようとしてのものである。熊野くまの詣まいとの関連かんれんで、湯ゆ垢離こり（ゆごり）による潔斎けっさいの場ばとしての地位ちいを獲得かくとくするのは、熊野くまの御幸みゆきの盛期せいきを過すぎた14世紀せいき頃ころからであると考かんがえられており、室町むろまち時代ときよに入はいると旅たびの疲つかれを癒いやす意味いみもあって参拝さんぱい前まえに入浴にゅうよくしたという。この時期じきには、熊野くまのの地ちで修行しゅぎょうに励はげんだ一遍いっぺんもこの地ちを訪おとずれている。

しかし、近世きんせいには、西国さいこく三さん十じゅう三さん所しょの優越ゆうえつとともに、潔斎けっさいの場ばとしての意義いぎは薄うすれ、単たんなる湯治とうじ場じょうとしての性格せいかくが勝かってくるようになった。また、江戸えど時代じだいに作成さくせいされた温泉おんせん番付ばんづけでは、「本宮ほんぐうの湯ゆ」として勧進元かんじんもとに名なを連つらねている。名なの由来ゆらいとなった湯ゆ峯みね薬師くすしをまつる東光寺とうこうじ、熊野くまの九きゅう十じゅう九きゅう王子おうじのひとつ湯ゆの峰みね王子おうじが温泉おんせん街がい内ないに今いまもある。

1957年ねん（昭和しょうわ32年ねん）9月27日にちには厚生省こうせいしょう告示こくじ第だい310号ごうにより、熊野くまの本宮ほんぐう温泉郷おんせんきょうの一部いちぶとして川湯温泉かわゆおんせん、渡瀬わたせ温泉おんせんとともに国民こくみん保養ほよう温泉おんせん地ちに指定していされた。2004年ねん（平成へいせい16年ねん）7月がつ7日にちには世界せかい遺産いさんにも認定にんていされた。

温泉おんせん街がい

中心ちゅうしん部ぶには「つぼ湯ゆ」、公衆こうしゅう浴場よくじょう、湯ゆ筒とうを配はいし、細ほそい川かわに沿そうように南北なんぼくに13軒けん（2019年ねん現在げんざい）の小規模しょうきぼな宿やどが点在てんざいする。

宿やど

• あずまや（100名めい）
• 湯ゆの峯みね荘そう（80名めい）
• 伊いせや （60名めい）
• あづまや荘そう（40名めい）
• ジェイホッパーズ熊野くまの湯峰ゆのみねゲストハウス（31名めい）
• よしのや（20名めい）
• 瀧たきよし（20名めい）
• ゆの里さと（20名めい）
• 湯ゆの谷だに荘そう（18名めい）
• やまね（13名めい）
• くらや（12名めい）
• あたらしや（10名めい）
• てるてや（10名めい）
• わだま（10名めい）

（以上いじょう定員ていいん数すう順じゅん）

行事ぎょうじ

毎年まいとし1月がつ8日にちには、温泉おんせんの繁栄はんえいと参拝さんぱい者しゃの諸しょ願ねがい成就じょうじゅの祈願きがんや厄払やくはらいのために、温泉おんせんの湯ゆを献けんじ湯ゆする「湯ゆの峰みね八はち日にち薬師くすし祭さい」が行おこなわれる。また毎年まいとし9月がつ或あるいは10月がつには川かわ湯ゆ・渡瀬わたせ両りょう温泉おんせんとの共同きょうどうで、熊野くまの本宮ほんぐう大社たいしゃに湯ゆを供そなえる献けんじ湯ゆ祭さいを開催かいさいしている。

ギャラリー

• 
  上流じょうりゅう側がわから眺ながめた温泉おんせん街がい。
• 
  湯ゆの峰みね温泉おんせんの公衆こうしゅう浴場よくじょうの外観がいかん。
• 
  つぼ湯ゆのある小屋こやの外観がいかん。
• 
  つぼ湯ゆの湯殿ゆどの。
• 
  熱湯ねっとうの源泉げんせんの自噴じふん口こうである「湯ゆ筒とう」。

文化財ぶんかざい

• つぼ湯ゆ - 文化財ぶんかざい保護ほご法ほうに基もとづく史跡しせき「熊野くまの参詣さんけい道どう」（2000年ねん〈平成へいせい12年ねん〉11月2日にち指定してい） の一部いちぶとして、2002年ねん（平成へいせい14年ねん）12月19日にちに追加ついか指定していされた。ユネスコの世界せかい遺産いさん『紀伊きい山地さんちの霊場れいじょうと参詣さんけい道どう』（2004年ねん〈平成へいせい16年ねん〉7月がつ登録とうろく）の一部いちぶ。
• 磨すり崖がけ名号みょうごう碑ひ（伝つて一いち遍へん上人しょうにん名号みょうごう石せき） - 和歌山わかやま県けん指定してい史跡しせき（1967年ねん〈昭和しょうわ42年ねん〉4月がつ14日にち指定してい）。県道けんどうに面めんした高たかさは2.8メートル、幅はば2.4メートルの巨大きょだいな岩盤がんばんの平滑へいかつ面めんを使つかって、月輪げつりん中ちゅうに阿弥陀あみだ三さん尊みことの梵字ぼんじ、その下したに蓮台れんだいにのる六ろく字じ名号みょうごうが薬研やげん彫ほした碑石ひせき。制作せいさく年代ねんだいは鎌倉かまくら時代じだいと見みられる。一遍いっぺん上人しょうにんの瓜ふり書しょ遺跡いせきとする伝承でんしょうがあるが断定だんていできない。

交通こうつう

• 紀勢本線きせいほんせん新宮しんぐう駅えきより熊野くまの御坊ごぼう南海なみバスまたは奈良交通ならこうつう八木はちぼく新宮しんぐう特急とっきゅうバスで約やく60分ふん
• 近鉄きんてつ大和やまと八木やぎ駅えきより、奈良交通ならこうつう八木はちぼく新宮しんぐう特急とっきゅうバス（近鉄きんてつ高田たかだ市し駅えき、近鉄御所きんてつごせ駅えき、JR和歌山線わかやません五条ごじょう駅えきを経由けいゆ）、約やく5時じ間あいだ20分ふん

関連かんれん項目こうもく

• 温泉おんせん、温泉おんせん街がい、外そと湯ゆ、温泉おんせん番付ばんづけ
• 日本にっぽんの温泉おんせん地ち一覧いちらん
• 東光寺とうこうじ
• 湯ゆの峰みね王子おうじ
• 熊野くまの本宮ほんぐう大社たいしゃ例れい大祭たいさい - 特殊とくしゅ神事しんじ「湯ゆ登とう神事しんじ」（4月がつ13日にち）の湯ゆ垢離こり潔斎けっさいおよび八はち撥ばち神事しんじが湯ゆの峰みね温泉おんせんで執行しっこうされる