大坂おおさか城代じょうだい

大坂おおさか城代じょうだい（おおさかじょうだい）は、江戸えど幕府ばくふの役職やくしょくの一ひとつ。将軍しょうぐん直属ちょくぞくで有力ゆうりょくな譜代ふだい大名だいみょうが任にんじられ、大坂おおさか城主じょうしゅである将軍しょうぐんに代かわり大だい坂城さかきを預あずかった。

本ほん記事きじでは、大坂おおさか城代じょうだいを補佐ほさする大坂おおさか定番ていばん2名めい、京橋きょうばし口こう定番ていばん（きょうばしぐちじょうばん）と玉造たまつくり口こう定番ていばん（たまつくりぐちじょうばん）についても記述きじゅつする。

概要がいよう

大坂おおさかの陣じん後ごの戦災せんさい復興ふっこうや市街しがいの拡張かくちょう整備せいびなどを担になった松平まつだいら忠明ただあきの大和郡山やまとこおりやま移うつり封ふうをもって大坂おおさか藩はんは廃止はいしされ、1619年ねん（元和がんわ5年ねん）に大坂おおさかは江戸えど幕府ばくふ直轄ちょっかつ地ちとなり、大坂おおさか城じょうに城代しろだいが置おかれるようになった。

翌よく1620年ねん（元和がんわ6年ねん）からは大だい坂城さかき修築しゅうちく工事こうじも始はじまり、大坂おおさか城代じょうだいは、豊臣とよとみ色いろを払拭ふっしょくして徳川とくがわの威厳いげんを天下てんかに知しらしめる大だい改修かいしゅうが施ほどこされた大坂おおさか城しろを預あずかり、大だい坂城さかき守衛もりえの総そう監かんおよび西国さいごく大名だいみょうの監視かんし等とうにあたった。江戸えど時代じだい後期こうきに書かかれた『甲子きのえね夜話やわ』には、かつては西国さいこくで変事へんじが起おきた際さいに、大坂おおさか城代じょうだいは江戸えどの許可きょかを得えずに独断どくだんでの行動こうどうが許ゆるされており、その為ための白紙はくしの将軍しょうぐんの印判いんばん状じょうを有ゆうしていたとあるが、現在げんざいもそうだったのかは不明ふめいとある。

1623年ねん（元和がんわ9年ねん）には副ふく城代じょうだいに相当そうとうする京橋きょうばし口こう定番ていばん・玉造たまつくり口こう定番ていばんの大坂おおさか定番ていばん2名めいが置おかれ、城代じょうだいが追つい手口てぐち、京橋きょうばし口こう定番ていばんが京橋きょうばし口こう、玉造たまつくり口こう定番ていばんが玉造たまつくり口こうの各かく虎口ここうの守衛しゅえいをそれぞれ主おもに担当たんとうした^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。将軍しょうぐん直属ちょくぞくの大坂おおさか城代じょうだいと異ことなり、大坂おおさか定番ていばんは大坂おおさか町奉行まちぶぎょうなどと同様どうように老中ろうじゅう支配しはいであった。

なお、阿部あべ正次まさつぐが現職げんしょくのまま没ぼっした後のち、大坂おおさか城代じょうだいはしばらく「追手おって口こう定番ていばん」と見みなされていたこともあり、城代じょうだいを定番ていばん2名めいが補佐ほさする体制たいせいが確立かくりつしたのは青山あおやま宗俊むねとしの就任しゅうにん後ごである。城代じょうだいと定番ていばんは妻子さいしを伴ともなっての赴任ふにんが認みとめられており、外濠そとぼりの周囲しゅういには南みなみに大坂おおさか城代じょうだいの家中いえじゅう、南西なんせいおよび北東ほくとうに京橋きょうばし口こう定番ていばんの家中いえじゅう・与力よりき・同心どうしん、南東なんとうに玉造たまつくり口こう定番ていばんの家中いえじゅう・与力よりき・同心どうしんの屋敷やしき地ちが置おかれ、概おおむね棲すみ分わけられていた。

大番おおばん12組くみのうち2組くみが大だい坂城さかきに置おかれ、本丸ほんまるや二にの丸まるといった中心ちゅうしん部ぶの守衛しゅえいを東大とうだい番ばん・西にし大番おおばんの大坂おおさか在ざい番ばん2組くみが主おもに担当たんとうし、大番おおばんに加勢かせいする山里やまざと加か番ばん・中小屋なかごや加か番ばん・青屋あおや口こう加か番ばん・雁木がんぎ坂ざか加か番ばんの大坂おおさか加か番ばん4名めいも置おかれた。大坂おおさか在ざい番ばんと大坂おおさか加か番ばんは1年ねん交代こうたい制せいで、大坂おおさか定番ていばんと同様どうように老中ろうじゅう支配しはいであった。

江戸えど時代じだい中期ちゅうき以降いこう、大坂おおさか城代じょうだい・京都きょうと所司代しょしだいを経へて老中ろうじゅうに就任しゅうにんする例れいも多おおい。

関東かんとう地方ちほうなど遠方えんぽうに領地りょうちを持もつ大名だいみょうが大坂おおさか城代じょうだいに就任しゅうにんすると、所領しょりょうのうち1万まん～2万まん石せき程度ていどを大坂おおさか近郊きんこうの摂津せっつ国こく・河内かわうち国こく・和泉いずみ国こくなどに割わり当あてて直なおされた。退任たいにん時じには元もとの所領しょりょうに戻もどされた（京都きょうと所司代しょしだいへの転任てんにんなどで、引ひき続つづき大坂おおさか近郊きんこうの領地りょうちを領有りょうゆうする場合ばあいもある）。そのため、播磨はりま国こく南部なんぶなどでも頻繁ひんぱんに領主りょうしゅの入いれ替かわりがあった。

歴代れきだい大坂おおさか城代じょうだい

内藤ないとう信正のぶまさ　（1619年ねん - 1626年ねん）
阿部あべ正次まさつぐ　（1626年ねん - 1647年ねん）
稲垣いながき重しげる綱つな　（1648年ねん - 1649年ねん）
内藤ないとう信しん照あきら　（1649年ねん - 1652年ねん）
水野みずの忠ただし職しょく　（1652年ねん - 1654年ねん）
内藤ないとう忠興ただおき　（1654年ねん - 1656年ねん）
松平まつだいら光重みつしげ　（1656年ねん - 1658年ねん）
水野みずの忠ただし職しょく　（1658年ねん - 1659年ねん）
内藤ないとう忠興ただおき　（1659年ねん - 1660年ねん）
松平まつだいら光重みつしげ　（1660年ねん - 1661年ねん）
水野みずの忠ただし職しょく　（1661年ねん - 1662年ねん）
青山あおやま宗俊むねとし　（1662年ねん - 1678年ねん）
太田おおた資し次じ　（1678年ねん - 1684年ねん）
土屋つちや政直まさなお　（1684年ねん - 1685年ねん）
内藤ないとう重頼しげより　（1685年ねん - 1687年ねん）
松平まつだいら信しん興きょう　（1687年ねん - 1690年ねん）
土岐とき頼よりゆき殷いん　（1691年ねん - 1712年ねん）
内藤ないとう弌信　（1712年ねん - 1718年ねん）
安藤あんどう信友のぶとも　（1718年ねん - 1722年ねん）
松平まつだいら乗じょう邑　（1722年ねん - 1723年ねん）
酒井さかい忠ただし音おん　（1723年ねん - 1728年ねん）
堀田ほった正ただし虎とら　（1728年ねん - 1729年ねん）
松平まつだいら信しん祝しゅく　（1729年ねん - 1730年ねん）
土岐とき頼よりゆき稔みのる　（1730年ねん - 1734年ねん）
稲葉いなば正親まさちか　（1734年ねん）
太田おおた資晴すけはる　（1734年ねん - 1740年ねん）
酒井さかい忠ただし恭きょう　（1740年ねん - 1744年ねん）
堀田ほった正ただし亮あきら　（1744年ねん - 1745年ねん）
阿部あべ正ただし福ぶく　（1745年ねん - 1747年ねん）
酒井さかい忠ただし用よう　（1747年ねん - 1752年ねん）
松平まつだいら輝あきら高だか　（1752年ねん - 1756年ねん）
井上いのうえ正ただし経けい　（1756年ねん - 1758年ねん）
青山あおやま忠ただし朝あさ　（1758年ねん - 1760年ねん）
松平まつだいら康やすし福ぶく　（1760年ねん - 1762年ねん）
阿部あべ正ただし允まこと　（1762年ねん - 1764年ねん）
松平まつだいら乗じょう祐ゆう　（1764年ねん - 1769年ねん）
久世くぜ広明ひろあき　（1769年ねん - 1777年ねん）
牧野まきの貞さだ長ちょう　（1777年ねん - 1781年ねん）
土岐とき定じょう経けい　（1781年ねん - 1782年ねん）
戸田とだ忠寛ただひろ　（1782年ねん - 1784年ねん）
阿部あべ正敏まさとし　（1784年ねん - 1787年ねん）
堀田ほった正ただし順じゅん　（1787年ねん - 1792年ねん）
牧野まきの忠ただし精せい　（1792年ねん - 1798年ねん）
松平まつだいら輝和てるかず　（1798年ねん - 1800年ねん）
青山あおやま忠裕ただみち　（1800年ねん - 1802年ねん）
稲葉いなば正ただし謁　（1802年ねん - 1804年ねん）
阿部あべ正由まさよし　（1804年ねん - 1806年ねん）
松平まつだいら乗じょう保ほ　（1806年ねん - 1810年ねん）
大久保おおくぼ忠真ただざね（1810年ねん - 1815年ねん）
松平まつだいら輝あきら延のべ　（1815年ねん - 1822年ねん）
松平まつだいら康やすし任にん　（1822年ねん - 1825年ねん）
水野みずの忠邦ただくに　（1825年ねん - 1826年ねん）
松平まつだいら宗はじめ発はつ　（1826年ねん - 1828年ねん）
太田おおた資始すけはる　（1828年ねん - 1831年ねん）
松平まつだいら信しん順じゅん　（1831年ねん - 1834年ねん）
土井どい利とし位い　（1834年ねん - 1837年ねん）
堀田ほった正篤まさあつ　（1837年ねん）
間部まべ詮勝あきかつ　（1837年ねん - 1838年ねん）
井上いのうえ正ただし春はる　（1838年ねん - 1840年ねん）
青山あおやま忠良ただよし　（1840年ねん - 1844年ねん）
松平まつだいら乗じょう全あきら　（1844年ねん - 1845年ねん）
松平まつだいら忠ただし優ゆう　（1845年ねん - 1848年ねん）
内藤ないとう信しん親おや　（1848年ねん - 1850年ねん）
土屋つちや寅とら直ただし　（1850年ねん - 1858年ねん）
松平まつだいら信篤のぶあつ　（1858年ねん - 1860年ねん）
松平まつだいら宗そう秀しげる　（1860年ねん - 1862年ねん）
松平まつだいら信しん古いにしえ　（1862年ねん - 1865年ねん）
牧野まきの貞明さだあき　（1864年ねん - 1868年ねん）

※ 阿部あべ正次まさつぐの死去しきょから稲垣いながき重しげる綱つなの就任しゅうにんまで永井ながい直ただし清きよしが代行だいこう（1647年ねん - 1648年ねん）、太田おおた資し次じの死去しきょから土屋つちや政直まさなおの就任しゅうにんまで寺社じしゃ奉行ぶぎょうの水野みずの忠春ただはるが兼任けんにん（1684年ねん）。

歴代れきだい京橋きょうばし口こう定番ていばん

高木たかぎ正次まさつぐ　（1623年ねん - 1630年ねん）
内藤ないとう信広のぶひろ　（1648年ねん - 1649年ねん）
安部あべ信しん盛もり　（1649年ねん - 1660年ねん）
板倉いたくら重しげる矩のり　（1660年ねん - 1665年ねん）
米べい津田つだ盛もり　（1666年ねん - 1684年ねん）
松平まつだいら乗じょう次じ　（1684年ねん - 1687年ねん）
遠山とおやま政まさし亮あきら　（1687年ねん - 1693年ねん）
内藤ないとう正勝まさかつ　（1693年ねん - 1694年ねん）
松平まつだいら乗じょう成なり　（1694年ねん - 1703年ねん）
内藤ないとう正友まさとも　（1703年ねん - 1711年ねん）
水野みずの忠ただし位い　（1711年ねん - 1713年ねん）
松平まつだいら勝以かつもち　（1713年ねん - 1725年ねん）
戸田とだ忠ただし囿　（1725年ねん - 1732年ねん）
永井ながい直ただし亮あきら　（1732年ねん - 1737年ねん）
保科ほしな正ただし寿ことぶき　（1737年ねん - 1739年ねん）
山口やまぐち弘ひろし長ちょう　（1739年ねん - 1742年ねん）
植村うえむら恒ひさし朝あさ　（1742年ねん - 1747年ねん）
酒井さかい忠告ちゅうこく　（1747年ねん - 1751年ねん）
遠藤えんどう胤たね将しょう　（1751年ねん - 1767年ねん）
井上いのうえ正ただし国こく　（1767年ねん - 1788年ねん）
永井ながい直ただし温あつし　（1788年ねん - 1795年ねん）
安部あべ信しん亨とおる　（1795年ねん - 1804年ねん）
堀ほり直ただし起おこり　（1804年ねん - 1808年ねん）
稲垣いながき定じょう淳あつし　（1808年ねん - 1821年ねん）
大久保おおくぼ教きょう孝こう　（1821年ねん - 1836年ねん）
米倉よねくら昌寿よしかず　（1836年ねん - 1857年ねん）
本多ほんだ忠ただし鄰　（1857年ねん - 1863年ねん）
保科ほしな正ただし益えき　（1863年ねん - 1866年ねん）
本多ほんだ忠ただし鄰　（1866年ねん - 1867年ねん）

歴代れきだい玉造たまつくり口こう定番ていばん

稲垣いながき重しげる綱つな　（1623年ねん - 1648年ねん）
保科ほしな正ただし貞さだ　（1648年ねん - 1660年ねん）
石川いしかわ総長そうちょう　（1660年ねん - 1661年ねん）
渡辺わたなべ吉よし綱つな　（1661年ねん - 1668年ねん）
安部あべ信之のぶゆき　（1668年ねん - 1677年ねん）
保科ほしな正ただし景けい　（1677年ねん - 1686年ねん）
安部あべ信友のぶとも　（1686年ねん - 1701年ねん）
渡辺わたなべ基はじめ綱つな　（1701年ねん - 1728年ねん）
植村うえむら正ただし朝あさ　（1728年ねん - 1729年ねん）
米津よねつ政まさし容よう　（1729年ねん - 1739年ねん）
丹羽にわ薫かおる氏し　（1739年ねん - 1745年ねん）
森川もりかわ俊しゅん方かた　（1745年ねん - 1749年ねん）
米津よねつ政まさし崇たかし　（1749年ねん）
戸田とだ忠言ちゅうげん　（1749年ねん - 1764年ねん）
丹羽にわ氏し栄さかえ　（1764年ねん - 1771年ねん）
安部あべ信しん允まこと　（1771年ねん - 1781年ねん）
稲垣いながき定じょう計けい　（1781年ねん - 1791年ねん）
保科ほしな正ただし率りつ　（1791年ねん - 1801年ねん）
松平まつだいら直ただし紹　（1801年ねん - 1806年ねん）
本庄ほんじょう道みち昌あきら　（1806年ねん - 1817年ねん）
山口やまぐち弘ひろし致　（1817年ねん - 1828年ねん）
酒井さかい忠ただし藎　（1828年ねん - 1833年ねん）
遠藤えんどう胤たね統みつる　（1833年ねん - 1841年ねん）
酒井さかい忠ただし毘　（1841年ねん - 1843年ねん）
米津よねつ政まさし懿　（1843年ねん - 1853年ねん）
田沼たぬま意い尊みこと　（1853年ねん - 1861年ねん）
京極きょうごく高富たかとみ　（1861年ねん - 1866年ねん）
稲垣いながき太ふとし清きよし　（1866年ねん - 1867年ねん）

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

^ 大坂おおさか城じょうの虎口ここうは追手おって口こう・京橋きょうばし口こう・青屋あおや口こう・玉造たまつくり口こうと4つあるが、青屋あおや口こうは平時へいじ開ひらかずの虎口ここうだったため、規模きぼの小ちいさい青屋あおや口こう加か番ばんが置おかれていた。過去かこに二に度ど、大塩おおしお平八郎へいはちろうの乱らんと鳥羽とば・伏見ふしみの戦たたかいの際さいに開ひらいたと言いわれている。

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

深谷ふかや克己かつみ『江戸えど時代じだい』岩波書店いわなみしょてん〈岩波ジュニア新書いわなみじゅにあしんしょ〉、2000年ねん3月がつ。ISBN 4-00-500336-2。
藪やぶ田貫たぬき『武士ぶしの町まち大坂おおさか—「天下でんかの台所だいどころ」の侍さむらいたち』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2010年ねん10月がつ。ISBN 4121020790。

外部がいぶリンク

『大坂おおさか城代じょうだい』 - コトバンク

[1] 大坂おおさか城じょうの虎口ここうは追手おって口こう・京橋きょうばし口こう・青屋あおや口こう・玉造たまつくり口こうと4つあるが、青屋あおや口こうは平時へいじ開ひらかずの虎口ここうだったため、規模きぼの小ちいさい青屋あおや口こう加か番ばんが置おかれていた。過去かこに二に度ど、大塩おおしお平八郎へいはちろうの乱らんと鳥羽とば・伏見ふしみの戦たたかいの際さいに開ひらいたと言いわれている。

[注釈ちゅうしゃく 1]