小林こばやし愛雄よしお

小林こばやし 愛雄よしお（こばやし あいゆう、1881年ねん11月30日にち - 1945年ねん10月1日にち）は、日本にっぽんの詩人しじん、作詞さくし家か、翻訳ほんやく家か。元もと早稲田実業学校わせだじつぎょうがっこう校長こうちょう。家族かぞく・友人ゆうじん間あいだの親おや称しょうは ちかお。

日本にっぽんで初はじめてオペラの創立そうりつに尽力じんりょくしたことで知しられる。

来歴らいれき・人物じんぶつ

1881年ねん11月30日にち、東京とうきょう市しに生うまれる。父親ちちおやは旧きゅう幕臣ばくしん、後のちに東京とうきょう府ふ府会ふかい議員ぎいん、大蔵省おおくらしょう局長きょくちょう、万世ばんせい生命せいめい保険ほけん会社かいしゃ社長しゃちょうとなった小林こばやし好こう愛あい。

1892年ねんに東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく小学校しょうがっこう尋常じんじょう科か（現げん・筑波大学つくばだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう）、1899年ねんに東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく中学校ちゅうがっこう（現げん・筑波大学つくばだいがく附属ふぞく中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこう）を卒業そつぎょう。第だい六ろく高等こうとう学校がっこう（現げん・岡山大学おかやまだいがく）を経へて東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく英文えいぶん科かにて夏目なつめ漱石そうせき、佐佐木ささき信綱のぶつなに師事しじ。 父親ちちおやの小林こばやし好こう愛あいと共ともに樋口ひぐち一葉かずはとは家族かぞくぐるみの付つき合あいがあり、慈雲じうん寺てら (甲州こうしゅう市し)にある樋口ひぐち一葉かずは女史じょし文学ぶんがく碑ひには田山たやま花袋かたい、森もり鷗外、与謝野よさの晶子あきこと共ともに愛雄よしおの名なも刻きざまれている。

晩年ばんねんの樋口ひぐち一葉かずはを診察しんさつした青山あおやま胤通たねみちは義兄ぎけいにあたる。

日本にっぽんオペラの夜明よあけ

1906年ねん5月がつ、24歳さいのとき、東西とうざいの音楽おんがくと歌劇かげきの研究けんきゅう・保存ほぞん・創作そうさく・演奏えんそうを目的もくてきに小松こまつ耕こう輔、山田やまだ源一郎げんいちろうとともに「楽らく苑えん会かい」を結成けっせい、同年どうねん6月がつ2日にち、同どう会かいの第だい1回かい公演こうえんとして、神田かんだ区く美び土代どだい町まち（現在げんざいの千代田ちよだ区く神田美土代かんだみとしろ町まち）のYMCA神田かんだ会館かいかんで、小松こまつの作詞さくし作曲さっきょくによるオペラ『羽衣はごろも』の上演じょうえんを行おこない、これが「日本にっぽん初はつの創作そうさくオペラ」の上演じょうえんとなる。1907年ねん4月がつ13日にち、「牛込うしごめ高等こうとう演芸えんげい館かん」での第だい2回かい公演こうえんでは、小林こばやし作詞さくし・小松こまつ作曲さっきょくのオペラ『霊れい鐘がね』や、小林こばやし作詞さくし・沢田さわだ柳やなぎ吉きち作曲さっきょくのパントマイム『影法師かげぼうし』、小林こばやし訳やくグノーの『ファウスト』を上演じょうえんした。。

1911年ねん3月がつ1日にちにオープンした帝国ていこく劇場げきじょうに招まねかれ、1913年ねん6月がつ1日にち、小林こばやし訳やく、モーツァルトの『魔ま笛ふえ』を上演じょうえんした。その後ごも帝劇ていげき上演じょうえん作品さくひんの翻訳ほんやくをつづけ、1914年ねん、日本にっぽん初はつの口語こうご訳やくオッフェンバックのオペレッタ『天国てんごくと地獄じごく』を実現じつげんした。1915年ねんにもオペラ・オペレッタの翻訳ほんやくを量産りょうさんし、5月27日にち、オッフェンバックの『ブン大将たいしょう』（『ジェロルスタン女おんな大公たいこう殿下でんか』）を翻訳ほんやくし日本にっぽん初演しょえん、9月26日にちには原はら信子のぶこ主演しゅえんによるフランツ・フォン・スッペの『ボッカチオ』を翻訳ほんやくし日本にっぽん初演しょえん。。のちに「浅草あさくさオペラ」でヒット、大衆たいしゅう化かする歌曲かきょく『恋こいはやさしい野辺のべの花はなよ』はここで生うまれた。田谷たや力三りきぞうの歌唱かしょうで知しられるが、この時点じてんで田谷たやはまだ「ローヤル館かん」に入団にゅうだんしていない。

1916年ねん5月がつの帝劇ていげき洋楽ようがく部ぶ解散かいさんにあたり、ローシー夫妻ふさいの赤坂あかさか「ローヤル館かん」に参加さんか、ここでも翻訳ほんやくをつづけ、1917年ねん11月13日にち、ロッシーニの『セビリアの理髪りはつ師し』を翻訳ほんやく、日本にっぽん初演しょえんする。また、この年としの4月がつに田谷たやがローヤル館かんに入団にゅうだんし、小林こばやし訳やくのロベール・プランケットのオペレッタ『コルネヰルレ古城こじょうの鐘かね』の田谷たやの歌声うたごえを大阪おおさか公演こうえんで聴きいた新国劇しんこくげきの藤原ふじわら義江よしえが、上京じょうきょうしてオペラを志こころざす決意けついをする。1918年ねん2月がつ、ローヤル館かんは解散かいさんする。

帝劇ていげき、ローヤル館かんでの公演こうえんは興行こうぎょう的てきには華々はなばなしいものではなかったが、小林こばやしが日本語にほんごに移うつし変かえた平易へいいなオペラ、オペレッタは、浅草あさくさ公園こうえん六ろく区くの大衆たいしゅうのなかで花開はなひらいた。帝劇ていげきやローヤル館かんの残党ざんとうは浅草あさくさに流ながれ、小林こばやし訳やく作品さくひんを上演じょうえん、観客かんきゃくは熱狂ねっきょうし、小林こばやし訳やくの歌うたを愛唱あいしょうした。

音楽おんがくと文学ぶんがく

明治めいじ年間ねんかん、『サロメ』の戯曲ぎきょくをはじめとして、オスカー・ワイルドの日本語にほんご訳やくを盛さかんに行いった。

帝劇ていげき洋楽ようがく部ぶ解散かいさんを目前もくぜんにした1916年ねん3月がつ、大田黒おおたぐろ元雄もとおら12人にんの仲間なかまとともに雑誌ざっし『音楽おんがくと文学ぶんがく』を創刊そうかんした。同人どうじんには、のちに音楽之友社おんがくのともしゃを興おこす堀内ほりうち敬三けいぞう、『トオキイ音楽おんがく論ろん』を著あらわす中根なかね宏ひろし、音楽おんがく評論ひょうろん家かの重鎮じゅうちんとなる野村のむら光一こういち、作曲さっきょく家かの菅原すがわら明朗めいろう、「丸木まるき砂すな土ど」のペンネームで知しられる三菱商事みつびししょうじ社員しゃいん秦はた豊吉とよきち、兄あにの森村もりむら市し左衛門さえもんと森村もりむら組ぐみを興おこした森村もりむら財閥ざいばつの森村もりむら豊ゆたか、登山とざん家かとして知しられる田邊たなべ主計かずえらがいた。1919年ねんに休刊きゅうかんする。

また、1925年ねん3月がつ「日本にっぽん作歌さっか者しゃ協会きょうかい」を設立せつりつ、1935年ねん3月がつ文部省もんぶしょうから社団しゃだん法人ほうじんとして認可にんかされるなど、多方面たほうめんで活躍かつやくした。

教育きょういく者しゃとしても、1939年ねん2月がつ4日にち、「早稲田実業学校わせだじつぎょうがっこう振興しんこうニ関せきスル意見いけん書しょ」を提出ていしゅつしている。1941年ねん9月がつ1日にち、早稲田実業学校わせだじつぎょうがっこう長ちょうに就任しゅうにん、翌年よくねん3月がつ末まつで辞任じにんした（後任こうにんは浅川あさがわ栄次郎えいじろう）。

1945年ねん10月がつ1日にちに63歳さいで死去しきょ。墓所はかしょは東京とうきょう谷中やなか天王寺てんのうじ (台東たいとう区く)墓地ぼち。戒名かいみょうは昌徳まさのり院いん和光わこう愛雄よしお居士こじ。

代表だいひょう曲きょく

• 「ベアトリ姐あねちゃん」（フランツ・フォン・スッペ作曲さっきょく、オペレッタ『ボッカチオ』）
• 「恋こいはやさしい野辺のべの花はなよ」（フランツ・フォン・スッペ作曲さっきょく、オペレッタ『ボッカチオ』）
• 「若紫わかむらさきに水みず清きよく」（酒井さかい将軍しょうぐん作曲さっきょく、第だい六ろく高等こうとう学校がっこう寮歌りょうか）
• 「菊きくの花はな」（井上いのうえ武士たけし作曲さっきょく）　

主おもな著作ちょさく

• 『管絃かんげん』（彩雲さいうん閣かく） 明あかり40.4 (1907) NDL
• 『支ささえ那な印象いんしょう記き』（敬けい文ぶん館かん） 1911.11 NDL
• 『近代きんだい詞華集しかしゅう』(春陽しゅんよう堂どう、現代げんだい文芸ぶんげい叢書そうしょ 第だい18編へん） 大正たいしょう1 (1912) NDL
• 『西洋せいよう演劇えんげき史し』(赤城あかぎ正蔵しょうぞう、アカギ叢書そうしょ 第だい44編へん） 大正たいしょう3 (1914) NDL
• 『現代げんだいの歌劇かげき』（学芸がくげい書院しょいん、最新さいしん学芸がくげい叢書そうしょ 第だい5編へん） 大正たいしょう8 (1919) NDL
• 『女性じょせい中心ちゅうしん説せつ』（学芸がくげい書院しょいん、最新さいしん学芸がくげい叢書そうしょ 第だい7編へん） 大正たいしょう8 (1919) NDL
• The world of to-day : around the world by aeroplane / by A. Kobayashi. Ikueishoin, 1919 NDL
• 『余興よきょう劇げき脚本きゃくほん集しゅう』（京きょう文ぶん社しゃ） 大正たいしょう11 (1922) NDL
• 『工場こうじょう音楽おんがく通どおり解かい』（愛あい音おん会かい出版しゅっぱん部ぶ） 大正たいしょう12 (1923) NDL
• 『現代げんだい英えい詩し選せん : 対訳たいやく註解ちゅうかい』（育英いくえい書院しょいん） 大正たいしょう13 (1924) NDL
• 『詩しと音楽おんがくと舞踊ぶよう』（京きょう文ぶん社しゃ、音楽おんがく叢書そうしょ 第だい4編へん) 1924 NDL
• 『歌劇かげきの研究けんきゅう』（京きょう文ぶん社しゃ、音楽おんがく叢書そうしょ 第だい9編へん） 大正たいしょう14 (1925) NDL
• 『商業しょうぎょう美学びがく』（振興しんこう館かん） 昭和しょうわ4 (1929) NDL

共著きょうちょ

• 『英文えいぶん新しん寶玉ほうぎょく集しゅう』（坂井さかい正一しょういち共著きょうちょ、振興しんこう館かん） 1926.3 NDL
• 『新しん大學だいがく散文さんぶん集しゅう』（坂井さかい正一しょういち共著きょうちょ、振興しんこう舘たて） 1929.4

編へん・共編きょうへん

• 『日記にっき新しん文範ぶんぱん』 (編へん、新潮社しんちょうしゃ、作文さくぶん叢書そうしょ 第だい3編へん) 明あかり43.2 (1910) NDL
• 『連隊れんたいの娘むすめ 歌劇かげき』（編へん、愛あい音おん会かい） 大正たいしょう3 (1914) NDL
• 『合格ごうかく者しゃの経験けいけんに基もとづく英文えいぶん和訳わやくの仕方しかた』（佐武さたけ林蔵りんぞう共編きょうへん、西川にしかわ精きよし文ぶん館かん） 大正たいしょう8 (1919)NDL

訳わけ・訳わけ編へん

• 『古城こじょうの鐘かね 喜き歌劇かげき』（訳わけ、共益きょうえき商社しょうしゃ） 大正たいしょう4 (1915) NDL
• 『現代げんだい万葉集まんようしゅう』（訳わけ、愛あい音おん会かい出版しゅっぱん部ぶ） 大正たいしょう5 (1916) NDL
• 『世界せかい子守こもり唄うた集しゅう』（訳わけ、東光とうこう閣かく書店しょてん） 大正たいしょう11 (1922) NDL
• 『生いきた死骸しがい / 決闘けっとう』（トルストイ / アントン・チエホフ、訳わけ編へん / 福永ふくなが挽歌ばんか訳わけ編へん、生方うぶかた書店しょてん、世界せかい名著めいちょ叢書そうしょ 第だい3編へん） 大正たいしょう15 (1926) NDL

作歌さっか

• 『春はるの愁ひ : 外そと三さん曲きょく』（作歌さっか、沢田さわだ柳やなぎ吉きち曲きょく、愛あい音おん会かい出版しゅっぱん部ぶ） 大正たいしょう5 (1916) NDL
• 『帝都ていと復興ふっこうの歌うた』（作歌さっか、小松こまつ耕こう輔曲きょく、共益きょうえき商社しょうしゃ書店しょてん） 大正たいしょう12 (1923) NDL

外部がいぶリンク

• 現代げんだいの歌劇かげき (最新さいしん学芸がくげい叢書そうしょ ; 第だい5編へん)（国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション）小林こばやし愛雄よしお著ちょ、学芸がくげい書院しょいん、大正たいしょう8年ねん