岡本おかもと保たもつ真しん

凡例はんれい 岡本おかもと保たもつ真しん
時代じだい	江戸えど時代じだい
生誕せいたん	天正てんしょう10年ねん（1582年ねん）
死没しぼつ	寛永かんえい21年ねん3月がつ10日とおか（1644年ねん4月がつ16日にち）
別名べつめい	伊兵衛いへえ、塩谷しおや惣そう十郎じゅうろう
戒名かいみょう	厳いむ浄きよし院いん殿どの瑞雲ずいうん道どう光こう居士こじ
氏族しぞく	岡本おかもと氏し、塩谷しおや氏し
父母ちちはは	父ちち：塩谷しおや義よし通どおり　母はは：岡本おかもと正親まさちか娘むすめ 養父ようふ：岡本おかもと正親まさちか
兄弟きょうだい	義ぎ保ほ、保ほ真しん、保ほ忠ただし
妻つま	千本清兵衛尉長勝妹いもうと（一説いっせつには娘むすめ）
子こ	岡本おかもと義則よしのり室しつ、某ぼう（長男ちょうなん）、某ぼう（次男じなん）、保正やすまさ

岡本おかもと 保たもつ真しん（おかもと やすざね）は、下野げや国こく塩谷しおや郡ぐんの戦国せんごく末期まっきの武将ぶしょう。塩谷しおや義よし通どおり流ながれ塩谷しおや氏しの二に代目だいめ。

生涯しょうがい

塩谷しおや義よし通どおりの次男じなんとして生うまれる。兄あに義ぎ保ほが、母方ははかたの実家じっかである岡本おかもと家かを継ついだため、慶長けいちょう2年ねん（1597年ねん）頃ごろ、塩谷しおや惣そう十じゅう郎ろうと名乗なのり、父ちち義ぎ通どおりの塩谷しおや家かの家督かとくを継つぐ。この年とし、保ほ真しんは、祖父そふの正親おうぎと兄あにとともに上洛じょうらくし、豊臣とよとみ秀吉ひでよしに謁見えっけんしている。保ほ真しんは武勇ぶゆうに優すぐれ、特とくに小太刀こだちの名人めいじんとして知しられており、大坂おおさかの陣じんでは、兄あにとともに徳川とくがわ方かたとして出陣しゅつじんし、兄あにと合あわせて31の首くびを挙あげる活躍かつやくを見みせている。

保ほ真しんは、約やく1000石せきの旗本はたもととして幕府ばくふに仕つかえるが、寛永かんえい21年ねん（1644年ねん）3月がつ10日とおか、甥おいの岡本おかもと義政よしまさの謀略ぼうりゃくにより殺害さつがいされる（泉いずみ騒動そうどう）。この時とき、義政よしまさの弟おとうと万吉まんきちと保ほ真しんの養子ようし縁組えんぐみの話はなしが決きまっていたが、この際さい、岡本おかもと本家ほんけから保ほ真しんに1000石せきが分ぶん知ちされる約束やくそくになっており、財政ざいせい的てきに苦くるしかった義政よしまさがこれを嫌きらったために起おきた事件じけんであった。

この事件じけんをきっかけに岡本おかもと家かは改易かいえきされたが、保ほ真しんの三男さんなん保正やすまさは、桜田さくらだ御殿ごてん（徳川とくがわ家宣いえのぶを出だす甲府こうふ徳川とくがわ家か）に仕つかえて、のちに30俵ひょう扶持ふちの幕臣ばくしんとなった。子孫しそんに九州きゅうしゅう豊後ぶんご日田ひたの天領てんりょう代官だいかん塩谷しおや正義まさよしがいる。

曲渕まがりぶち薬師くすし

保ほ真しんについては、次つぎのような伝承でんしょうがある。文ぶん禄ろく4年ねん（1595年ねん）頃ごろ、保ほ真しんは眼め病びょうを患わずらっており、医師いしに見みせても直なおらなかったという。しかし、祖父そふである正親おうぎの居城きょじょうであった泉いずみ城じょうのそばに流ながれていた内川うちかわにあった曲渕まがりぶち（まがりふち）という深ふかい渕ふちに、ある夜よる、保ほ真しんの夢枕ゆめまくらに老ろう僧そうが現あらわれ、保ほ真しんが信仰しんこうしていた薬師如来やくしにょらいが出現しゅつげんするとのお告つげがあり、曲渕まがぶちで仏像ぶつぞうを見みつけ、薬師堂やくしどうを立たてて毎日まいにち信心しんじんしたら、眼め病びょうが治なおったという。この薬師堂やくしどうは、太平洋戦争たいへいようせんそうの頃ころまで残のこっていたが、老朽ろうきゅう化かにより現在げんざいは壊こわされているが、保ほ真しんは、のちに自身じしんが開基かいきとなり、曲渕まがぶち山さん瑞雲ずいうん院いんという寺てらを曲渕まがりぶちのそばに建立こんりゅうし、曲渕まがりぶち薬師くすしは、この寺てらに現在げんざいも安置あんちされている。

なお、この瑞雲ずいうん院いんの創建そうけんについては、一説いっせつにはこの文ぶん禄ろく4年ねん（1595年ねん）とされているが、これはありえない。瑞雲ずいうん院いんの開山かいさんは、岡本おかもと家かの菩提寺ぼだいじである鏡かがみ山寺やまでらの二に代目だいめ住職じゅうしょくである照あきら嶺みね呑鏡だが、鏡かがみ山寺やまでらの開山かいさんが慶長けいちょう2年ねん（1597年ねん）だが、瑞雲ずいうん院いんは、その鏡かがみ山寺やまでらの末寺まつじとして開山かいさんしており、これは時とき系列けいれつ的てきに矛盾むじゅんする。矢板やいた市し史しでも、年表ねんぴょうの文ぶん禄ろく4年ねんの項こうに「瑞雲ずいうん院いん建たつというも曲渕まがりぶち薬師堂やくしどう建立こんりゅうか」と記しるしており、薬師堂やくしどう建立こんりゅうと瑞雲ずいうん院いんの創建そうけんが混同こんどうされていることを示唆しさしている。

瑞雲ずいうん院いんの建立こんりゅうは、鏡かがみ山寺やまでらが建立こんりゅうされた慶長けいちょう2年ねん（1597年ねん）以降いこう、開山かいさんの照あきら嶺みね呑鏡が没ぼっした慶長けいちょう9年ねん（1604年ねん）3月がつ27日にち以前いぜんの事ことと考かんがえられているが、当とう寺てらは、保ほ真しんが継ついだ塩谷しおや家かの菩提寺ぼだいじとして、元もとは父ちち義ぎ通どおりの隠居いんきょ屋敷やしきのあった場所ばしょに建立こんりゅうされているため、父ちち義ぎ通どおりが没ぼっした慶長けいちょう3年ねん（1598年ねん）11月1日にちの一いち周忌しゅうき前後ぜんこうの頃ころが最もっとも有力ゆうりょくとされている。

参考さんこう資料しりょう

• 矢板やいた市し史し編集へんしゅう委員いいん会かい編へん 『矢板やいた市し史し』
• 矢板やいた市し文化財ぶんかざい愛護あいご協会きょうかい 『やいたの伝説でんせつ 後編こうへん』
• 『堀江ほりえ記き、岡本おかもと記き』（矢板やいた市し郷土きょうど文化ぶんか研究けんきゅう会かい）