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数列すうれつ空間くうかん

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関数かんすう解析かいせきがくおよび関連かんれんする数学すうがく分野ぶんやにおける数列すうれつ空間くうかん(すうれつくうかん、えい: sequence space)とは、実数じっすうあるいは複素数ふくそすう無限むげんれつもととするベクトル空間くうかんのことをう。またそれと同値どうちであるが、自然しぜんすうからじつあるいは複素数ふくそすうからだ K への関数かんすうもととする関数かんすう空間くうかんのことでもある。そのような関数かんすうすべてからなる集合しゅうごうは、Kもと無限むげんれつすべてからなる集合しゅうごうであると自然しぜん認識にんしきされ、関数かんすうてんごとおよびてんごとのスカラーばい作用さようもとで、ベクトル空間くうかんなされる。すべての数列すうれつ空間くうかんは、この空間くうかん線型せんけい部分ぶぶん空間くうかんである。通常つうじょう数列すうれつ空間くうかんノルムそなえるものであり、そうでなくともすくなくとも位相いそうベクトル空間くうかん構造こうぞうそなえている。

解析かいせきがくにおけるもっとも重要じゅうよう数列すうれつ空間くうかんのクラスは、p-じょう総和そうわ可能かのう数列すうれつからなる関数かんすう空間くうかんp である。それらの空間くうかんp-ノルムをそなえ、自然しぜんすう集合しゅうごうじょうかぞ測度そくどたいするLp空間くうかん特別とくべつ場合ばあいなされる。収束しゅうそくれつれいれつのようなほか重要じゅうよう数列すうれつのクラスも数列すうれつ空間くうかん構成こうせいし、それらの場合ばあいはそれぞれ c および c0表記ひょうきされ、上限じょうげんノルムそなえられる。任意にんい数列すうれつ空間くうかんかくてん収束しゅうそく位相いそうそなえるものでもあり、その位相いそうしたでのそれらの空間くうかんは、FK空間くうかん英語えいごばんばれるフレシェ空間くうかん特殊とくしゅ場合ばあいとなる。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

Kからだとくみのまたは複素数ふくそすう全体ぜんたいからだ)とし、各項かくこうKをとる数列すうれつ(スカラーれつ全体ぜんたい集合しゅうごう KN = {(xn)nN : xnK} は、数列すうれつおよびスカラーばい

さだめることによりベクトル空間くうかんす。このベクトル空間くうかん KN線型せんけい部分ぶぶん空間くうかん一般いっぱん数列すうれつ空間くうかんぶ。

p-空間くうかん[編集へんしゅう]

KN部分ぶぶん空間くうかん p を、0 < p < ∞たいして p = {(xn)nN : ∑n |xn|p < ∞} および p = ∞たいして 有界ゆうかい数列すうれつ全体ぜんたい空間くうかんさだめる。ここでじつ数値すうち単項たんこう演算えんざん |•| は(じつまたは複素数ふくそすうの)絶対ぜったいである。

1 ≤ p ≤ ∞場合ばあい
x = (xn)nNノルム
かんがえれば、空間くうかん p (1 ≤ p ≤ ∞)
ともける。p はこのノルムについて完備かんび距離きょり空間くうかんであり、したがってバナッハ空間くうかんとなる。
0 < p < 1場合ばあい
pノルムたないが d(x,y) := ∑n |xnyn|p定義ていぎされる距離きょり関数かんすうつ。

cc0[編集へんしゅう]

収束しゅうそくれつ空間くうかん c数列すうれつ空間くうかんで、これは収束しゅうそくれつlimn→∞xn存在そんざいする数列すうれつ xKN全体ぜんたい空間くうかんである。任意にんい収束しゅうそくれつ有界ゆうかいであるから、c有界ゆうかいれつ空間くうかん 線型せんけい部分ぶぶん空間くうかんである。さらにえば、無限むげんだいノルム ‖ • ‖かんして閉部分ぶぶん空間くうかんとなるから、それ自身じしんバナッハ空間くうかんである。

その部分ぶぶん空間くうかんで、れいれつ空間くうかん c0極限きょくげんれいである数列すうれつれいれつすべてからなる。これは数列すうれつ空間くうかん c の閉部分ぶぶん空間くうかんであるから、ふたたびバナッハ空間くうかんとなる。

数列すうれつ空間くうかん[編集へんしゅう]

有界ゆうかい級数きゅうすう (bounded series) の空間くうかん bs は、supn |∑n
i=0
xi| < ∞
たすれつ x 全体ぜんたい空間くうかんである。この空間くうかん(にノルム ‖ x ‖bs = supn |∑n
i=0
xi|
れたもの)は有界ゆうかい数列すうれつ空間くうかん ひとしちょう同型どうけいなバナッハ空間くうかんになる(この同型どうけい線型せんけい写像しゃぞう (xn)nN ↦ (∑n
i=0
xi)nN
あたえられる)。収束しゅうそく級数きゅうすう (convergent series) の空間くうかん cs は、この同型どうけいした収束しゅうそく数列すうれつ空間くうかん cうえうつされる。

空間くうかん Φふぁい あるいは c00 は、高々たかだか有限ゆうげんゼロこうつ(有限ゆうげんだいつ)無限むげんれつからなる空間くうかんとして定義ていぎされる。この集合しゅうごうは、おおくの数列すうれつ空間くうかんにおいて稠密ちゅうみつである。

p 空間くうかん空間くうかん c0性質せいしつ[編集へんしゅう]

空間くうかん2 は、ヒルベルト空間くうかんであるようなただひとつの ℓp 空間くうかんである。なぜならば、内積ないせきにより導出どうしゅつされるノルムはちゅうせん定理ていり たさなければならず、その xyことなるふたつの単位たんいベクトルを代入だいにゅうすることで p = 2 でないかぎりその等式とうしき成立せいりつしないことがかるからである。

かくp は、p < s のとき ℓs部分ぶぶん集合しゅうごうである。さらに、ℓpp ≠ s ならば ℓs とは線型せんけい同型どうけいではない。実際じっさい、ピットの定理ていり (Pitt 1936) により、p < s ならば ℓs から ℓp へのすべての有界ゆうかい線型せんけい作用素さようそコンパクトであるが、そのような作用素さようそ同型どうけいとはなりない。またさらに、それは ℓs任意にんい無限むげん次元じげん部分ぶぶん空間くうかんじょう同型どうけいともなりず、厳密げんみつ特異とくい作用素さようそ英語えいごばんばれる。

1 < p < ∞ なら、ℓp連続れんぞくてき双対そうつい空間くうかんは、1/p + 1/q = 1 をたすようなヘルダー共役きょうやく qたいする空間くうかんqひとしちょう同型どうけいである。この特別とくべつ同型どうけいは、ℓq のあるもと x を、ℓpもと yひろし函数かんすう

関連付かんれんづける。ヘルダーの不等式ふとうしきより、Lx は ℓp うえ有界ゆうかい線型せんけいひろし函数かんすうであることがかる。また実際じっさい

であることから、その作用素さようそノルム

たす。

y を ℓpもととし、

とすれば、Lx(y) = ‖ x ‖q ‖ y ‖pられるため、実際じっさいには等号とうごう成立せいりつ

である。

ぎゃくに、ℓp うえあたえられた有界ゆうかい線型せんけいひろし函数かんすう Lたいし、xn = L(en) で定義ていぎされる数列すうれつは ℓqぞくする。したがって、写像しゃぞう ひとしちょう写像しゃぞう

あたえる。

κかっぱp を、その転置てんちぎゃく合成ごうせいすることによりられる写像しゃぞう

は、そのじゅう双対そうついへの ℓq標準ひょうじゅんたん一致いっちする。したがって、ℓq回帰かいきてき空間くうかんである。記法きほう濫用らんようにより、ℓqp双対そうつい同一どういつするのが通例つうれいである(つまり、(ℓp)* = ℓq)。したがって、回帰かいきせいは、(ℓp)** = (ℓq)* = ℓp という等号とうごうのつながりによって理解りかいされる。

空間くうかん c0 は、ゼロへと収束しゅうそくするすべての数列すうれつからなる空間くうかんとして定義ていぎされる。これに上限じょうげんノルム ‖ x ‖れたものは ℓ の閉部分ぶぶん空間くうかんとなり、したがってバナッハ空間くうかんとなる。その双対そうつい空間くうかんは ℓ1 である。ℓ1双対そうつい空間くうかんは ℓ であることに注意ちゅういされたい。自然しぜんすう添字そえじ集合しゅうごう場合ばあい、ℓpc0可分かぶんである。ただし ℓ例外れいがいとなる。ℓ双対そうつい空間くうかんba空間くうかんである。

空間くうかん c0 と ℓp(1 ≤ p < ∞)には、標準ひょうじゅん無条件むじょうけんシャウダー基底きてい英語えいごばん {ei | i = 1, 2,…} が存在そんざいする。ここで eiだい i 成分せいぶんのみ 1 でそのではゼロであるようなれつである。

空間くうかん1シューアの性質せいしつ英語えいごばんつ:すなわち、ℓ1 においてじゃく収束しゅうそく英語えいごばんするれつは、かならつよ収束しゅうそく英語えいごばんもする(Schur 1921)。しかし、無限むげん次元じげん空間くうかんじょうじゃく位相いそうは、つよ位相いそうよりも厳密げんみつよわいため、ℓ1 にはじゃく収束しゅうそくするがつよ収束しゅうそくしない有向ゆうこうてんぞく存在そんざいする。

p 空間くうかんおおくのバナッハ空間くうかんまれる。すべての無限むげん次元じげんバナッハ空間くうかんがある ℓp あるいは c0同型どうけいふくむかという問題もんだいは、1974ねんボリス・チレルソン英語えいごばんによるチレルソン空間くうかん英語えいごばん構成こうせいにより、否定ひていてき解答かいとうあたえられた。そのたいとして、すべての可分かぶんバナッハ空間くうかんは ℓ1しょう空間くうかん線型せんけいとうちょうである、という問題もんだいは、Banach & Mazur (1933)により肯定こうていてき解答かいとうあたえられた。すなわち、すべての可分かぶんバナッハ空間くうかん Xたいして、X同型どうけいになるようなしょう写像しゃぞう 存在そんざいする。一般いっぱんてきに、ker Q は ℓ1 うち完備かんびされない。すなわち、 であるような ℓ1部分ぶぶん空間くうかん Y存在そんざいしない。実際じっさい、ℓ1 はそれ自身じしんのどれとも同型どうけいでないような可算かさんおおくの完備かんび部分ぶぶん空間くうかんつ(たとえば、かんがえる。そのような X可算かさんおお存在そんざいし、ℓp はどのほかのものとも同型どうけいでないため、可算かさんおおくの ker Q存在そんざいする)。

自明じめい有限ゆうげん次元じげん場合ばあいのぞき、ℓpわった性質せいしつは、それが多項式たこうしきてき回帰かいきてき空間くうかん英語えいごばんであることである。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Banach, S.; Mazur, S. (1933), “Zur Theorie der linearen Dimension”, Studia Mathematica 4: 100–112 .
  • Dunford, Nelson; Schwartz, Jacob T. (1958), Linear operators, volume I, Wiley-Interscience .
  • Pitt, H.R. (1936), “A note on bilinear forms”, J. London Math. Soc. 11 (3): 174–180, doi:10.1112/jlms/s1-11.3.174 .
  • Schur, J. (1921), “Über lineare Transformationen in der Theorie der unendlichen Reihen”, Journal für die reine und angewandte Mathematik 151: 79–111 .