日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい26条じょう

日本国にっぽんこく憲法けんぽう 第だい26条じょう（にほんこく（にっぽんこく）けんぽう だい26じょう）は、日本国にっぽんこく憲法けんぽうの第だい3章しょうにある条文じょうぶんで、教育きょういくを受うける権利けんりおよび義務ぎむ教育きょういくについて規定きていしている。

条文じょうぶん

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第だい二に十じゅう六ろく条じょう

1. すべて国民こくみんは、法律ほうりつの定さだめるところにより、その能力のうりょくに応おうじて、ひとしく教育きょういくを受うける権利けんりを有ゆうする。
2. すべて国民こくみんは、法律ほうりつの定さだめるところにより、その保護ほごする子女しじょに普通ふつう教育きょういくを受うけさせる義務ぎむを負ふふ。義務ぎむ教育きょういくは、これを無償むしょうとする。

解説かいせつ

本条ほんじょうは、国民こくみんの教育きょういくに関かんする権利けんりを規定きていするものであり、第だい1項こうは、いわゆる教育きょういくを受うける権利けんりについて保障ほしょうし、第だい2項こうでは、教育きょういくを受うけさせる義務ぎむおよび義務ぎむ教育きょういくの無償むしょうについて規定きていしている。第だい2項こうは「教育きょういくを受うけさせる義務ぎむ」とよばれ、国民こくみんの三さん大だい義務ぎむのひとつとされる。

教育きょういくを受うける自由じゆうという自由じゆう権けんとしての側面そくめん（学習がくしゅう権けん）と国家こっかに対たいして合理ごうり的てきな教育きょういく制度せいど・施設しせつを設もうけ、適正てきせいな教育きょういくの場ばを提供ていきょうさせるという社会しゃかい権けんとしての側面そくめんを持もつ。

教育きょういくを受うける権利けんりの中心ちゅうしんは、子供こどもの学習がくしゅう権けんの保障ほしょうである。そのため、「一いち個この人間にんげんとして、また、一いち市民しみんとして、成長せいちょう、発育はついくし、自己じこの人格じんかくを完成かんせい、実現じつげんさせるために必要ひつような学習がくしゅうをする権利けんりを有ゆうすること、特とくに、自みずから学習がくしゅうすることができない子供こどもは、その学習がくしゅう要求ようきゅうを充足じゅうそくするための教育きょういくを自己じこに施ほどこすことを大人おとな一般いっぱんに対たいして要求ようきゅうする権利けんり」が保障ほしょうされており、保護ほご者しゃに対たいする義務ぎむが第一義だいいちぎ的てきな義務ぎむの内容ないようとなる。

国くにも無償むしょうによる普通ふつう教育きょういくを受うける機会きかいの提供ていきょうが憲法けんぽう上じょう義務付ぎむづけられる。義務ぎむ教育きょういくの対象たいしょうとなる内容ないよう・期間きかんについては、普通ふつう教育きょういくとのみ憲法けんぽう上じょうでは定さだめられており、詳細しょうさいについては、法律ほうりつの規定きていに委ゆだねている。同どう項こうでは、あわせて義務ぎむ教育きょういくを無償むしょうとすることを明示めいじにて規定きていしているため、法律ほうりつ上じょう規定きていされる義務ぎむ教育きょういく期間きかんに関かんしては、政府せいふに対たいして、無償むしょうでの教育きょういくを義務付ぎむづける規定きていとなっている。無償むしょうの範囲はんいは、教育きょういくの対価たいかたる授業じゅぎょう料りょうの無償むしょうを定さだめたものであり、「教科書きょうかしょ代だいを父兄ふけいに負担ふたんさせることは、憲法けんぽう第だい26条じょう第だい2項こう後段こうだんの規定きていに違反いはんしない」。

なお、普通ふつう教育きょういくとは、単たんに学習がくしゅう内容ないように留とまらず、子女しじょが教育きょういく機関きかんにおいて受うける安全あんぜんかつ適切てきせつな教育きょういくを意味いみする。ただし、この権利けんりは、抽象ちゅうしょう的てき権利けんりであるから、単たんなるプログラム規定きていにはとどまらないものの、具体ぐたい的てきにどのような制度せいど・施設しせつを設もうけるかは、「法律ほうりつの定さだめるところに」よるとしていることから、相当そうとう程度ていど、立法りっぽう裁量さいりょうに属ぞくする。

1項こうが、「その能力のうりょくにつき、ひとしく」と付言ふげんする趣旨しゅしは、憲法けんぽう第だい14条じょうの法ほうの下したの平等びょうどうの教育きょういく分野ぶんやにおける確認かくにん規定きていにとどまらず、個人こじんの能力のうりょくや適性てきせいの違ちがいに応おうじた能力のうりょく別べつ教育きょういくを可能かのうとすることにある。

教育きょういく権けんの所在しょざい

教育きょういくを受うける権利けんりに関かんして争あらそわれている重要じゅうような問題もんだいは、教育きょういく内容ないようについて国くにが関与かんよ・決定けっていする権能けんのうを有ゆうするとする説せつと、子こどもの教育きょういくについて責任せきにんを負おうのは、親おやおよびその付託ふたくを受うけた教師きょうしを中心ちゅうしんとする国民こくみん全体ぜんたいであり、国くには教育きょういくの条件じょうけん設備せつびの任務にんむを負おうことにとどまるとする説せつのいずれが正当せいとうかという、いわゆる教育きょういく権けんの所在しょざいに関かんする問題もんだいである。

両りょう説せつの当否とうひを一刀両断いっとうりょうだん的てきに決きめることはできず、教育きょういくの全国ぜんこく的てき水準すいじゅんの維持いじの必要ひつように基もとづいて、国くには教科きょうか目め、授業じゅぎょう時間じかん数等すうとうの教育きょういくの大綱たいこうについて決定けっていできると解ほぐされるが、国くにの過度かどの教育きょういく内容ないようへの介入かいにゅうは教育きょういくの自主じしゅ性せいを害がいし、許ゆるされないと思おもわれる。

(芦部あしべ 信喜しき『憲法けんぽう　第だい七なな版はん』岩波書店いわなみしょてん 285頁ぺーじ)

また、教育きょういく権けんの所在しょざいについて、旭川あさひかわ学がくテ事件じけん判決はんけつでは「いずれの説せつも極端きょくたんかつ一方いっぽう的てきである」として退しりぞけ、次つぎのように述のべた。すなわち、親おや、私学しがくおよび教師きょうしの自由じゆうがそれぞれ一定いっていの範囲はんいにおいて妥当だとうすることを前提ぜんていに、それ以外いがいの領域りょういきにおいて、国くにが、子こども自身じしんおよび社会しゃかい公共こうきょうの利益りえきのために必要ひつようかつ相当そうとうと認みとめられる範囲はんい内ないにおいて、教育きょういく内容ないようについて決定けっていする権能けんのうを有ゆうするものとし、その際さい子こどもが「自由じゆうかつ独立どくりつの人格じんかくとして成長せいちょうすることを妨さまたげるような国家こっか的てき介入かいにゅう、例たとえば、誤あやまった知識ちしきや一方いっぽう的てきな観念かんねんを子供こどもに植うえ付つけるような内容ないようの教育きょういくを施ほどこすことを強制きょうせいするようなことは、憲法けんぽう26条じょう、13条じょうの規定きてい上じょうから許ゆるされない」と。

(佐藤さとう 幸治こうじ 『日本国にっぽんこく憲法けんぽう論ろん 第だい2版はん』成文せいぶん堂どう 407頁ぺーじ)

教育きょういくを受うける権利けんりを経済けいざい面めんでの条件じょうけん整備せいびのみならず、子こどもの学習がくしゅう権けんを保障ほしょうするものと解げするようになっている。 すなわち、すべての人ひと、特とくに子こどもは、生うまれながらに教育きょういくを受うけ学習がくしゅうして人間にんげんとして成長せいちょう・発達はったつしていく権利けんりがあり、この生うまれながらの学習がくしゅう権けんを満みたすために、国くには条件じょうけんを整備せいびし適切てきせつな教育きょういく内容ないようを提供ていきょうしなければならず、教育きょういくを受うける権利けんりとはこれらを国くにに要求ようきゅうする権利けんりだとされる。

（奥野おくの　恒久こうきゅう　『人権じんけん論ろん入門にゅうもん』法律文化社ほうりつぶんかしゃ　48頁ぺーじ）

義務ぎむ教育きょういくの無償むしょう

国くにが親おやに普通ふつう教育きょういくを受うけさせてる義務ぎむを課かしているのは、親おやの経済けいざい的てきな立場たちばによらずに、すべての子供こどもに平等びょうどうに教育きょういくを受うける権利けんりと機会きかいを保障ほしょうするためである。憲法けんぽう26条じょう2項こうで義務ぎむ教育きょういくの無償むしょうを定さだめるのもそのためである。 義務ぎむ教育きょういく段階だんかいで公立こうりつ学校がっこうに通かようときには授業じゅぎょうの負担ふたんは生しょうじない。国くにと地方ちほう公共こうきょう団体だんたいの責任せきにんのもと税金ぜいきんから支出ししゅつされる。 義務ぎむ教育きょういくの範囲はんいについては、学説がくせつ少数しょうすう派はと学説がくせつ多数たすう派はの２通とおりの考かんがえ方かたがある。学説がくせつ少数しょうすう派はは、給食きゅうしょく費ひや修学旅行しゅうがくりょこう費ひ、ノートや副ふく教材きょうざい、上履うわばきや体操たいそう服ふくにかかる費用ひようなど義務ぎむ教育きょういく段階だんかいで必要ひつようになるお金かねはすべて、本当ほんとうならば国くにが負担ふたんすべき無償むしょうの対象たいしょうだと考かんがえる。それに対たいして判例はんれいと学説がくせつ多数たすう派はは、公立こうりつ学校がっこうの授業じゅぎょう料りょうに限かぎられると考かんがえる（最高さいこう裁判所さいばんしょ1964年ねん2月がつ26日にち判決はんけつ）。この立場たちばからは、学用品がくようひんなどは親おやの負担ふたんになる。

（西原いりばる　博史ひろふみ・斎藤さいとう一久かずひさ　『教職きょうしょく課程かていのための憲法けんぽう入門にゅうもん　第だい2版はん』弘文こうぶん堂どう　97頁ぺーじ）

沿革えんかく

大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽう

なし

GHQ草案そうあん

「GHQ草案そうあん」、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん「日本国にっぽんこく憲法けんぽうの誕生たんじょう」。

日本語にほんご

第だい二に十じゅう四よん条じょう

有ゆうラユル生活せいかつ範囲はんいニ於テ法律ほうりつハ社会しゃかい的てき福祉ふくし、自由じゆう、正義まさよし及民主みんしゅ主義しゅぎノ向上こうじょう発展はってんノ為ためニ立案りつあんセラルヘシ

自由じゆう、普遍ふへん的てき且強制きょうせい的てきナル教育きょういくヲ設立せつりつスヘシ

児童じどうノ私利しり的てき酷使こくしハ之のヲ禁止きんしスヘシ

公共こうきょう衛生えいせいヲ改善かいぜんスヘシ

社会しゃかい的てき安寧あんねいヲ計けいルヘシ

労働ろうどう条件じょうけん、賃銀ちんぎん及勤務きんむ時間じかんノ規準きじゅんヲ定ていムヘシ

英語えいご

Article XXIV.

In all spheres of life, laws shall be designed for the promotion and extension of social welfare, and of freedom, justice and democracy.

Free, universal and compulsory education shall be established.

The exploitation of children shall be prohibited.

The public health shall be promoted.

Social security shall be provided.

Standards for working conditions, wages and hours shall be fixed.

憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん要綱ようこう

「憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん要綱ようこう」、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん「日本国にっぽんこく憲法けんぽうの誕生たんじょう」。

第だい二に十じゅう四よん

国民こくみんハ凡テ法律ほうりつノ定ていムル所しょニ依よリ其ノ能力のうりょくニ応おうジ均ひとしシク教育きょういくヲ受クルノ権利けんりヲ有ゆうスルコト

国民こくみんハ凡テ其ノ保護ほごニ係がかりル児童じどうヲシテ初等しょとう教育きょういくヲ受ケシムルノ義務ぎむヲ負ふフモノトシ其ノ教育きょういくハ無償むしょうタルコト

憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん

「憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん」、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん「日本国にっぽんこく憲法けんぽうの誕生たんじょう」。

第だい二に十じゅう四よん条じょう

すべて国民こくみんは、法律ほうりつの定さだめるところにより、その能力のうりょくに応おうじて、ひとしく教育きょういくを受うける権利けんりを有ゆうする。

すべて国民こくみんは、その保護ほごする児童じどうに初等しょとう教育きょういくを受うけさせる義務ぎむを負ふふ。初等しょとう教育きょういくは、これを無償むしょうとする。

関連かんれん訴訟そしょう

• 義務ぎむ教育きょういく教科書きょうかしょ費ひ国庫こっこ負担ふたん請求せいきゅう事件じけん（最高裁さいこうさい大だい法廷ほうてい判決はんけつ 昭和しょうわ39年ねん2月がつ26日にち）
  • 憲法けんぽう26条じょう2項こう後段こうだんでいう、義務ぎむ教育きょういくの無償むしょうとは「授業じゅぎょう料りょう」のみの無償むしょうをさし、教科書きょうかしょ代だい等とうの教材きょうざい費ひ等とうまで無償むしょうにすることまでも保障ほしょうしたものではない。
• 旭川あさひかわ学がくテ事件じけん（最高裁さいこうさい大だい法廷ほうてい判決はんけつ 昭和しょうわ51年ねん5月がつ21日にち）
  • 親おやは、子女しじょの教育きょういくの自由じゆうを有ゆうし、主しゅとして家庭かてい教育きょういく等とう学校がっこう外がいの教育きょういくや学校がっこう選択せんたくの自由じゆうであらわれる。
  • 国くには、子こども自身じしんの利益りえきの擁護ようごのため、あるいは子こどもの成長せいちょうに対たいする社会しゃかい公共こうきょうの利益りえきに応こたえるため、必要ひつようかつ相当そうとうと認みとめられる範囲はんいにおいて、教育きょういく内容ないようについてもこれを決定けっていする権能けんのうを有ゆうする。
• 家永教科書裁判いえながきょうかしょさいばん

関連かんれん条文じょうぶん

• 日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい14条じょう第だい1項こう（法ほうの下したの平等びょうどう）
• 日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい23条じょう（学問がくもんの自由じゆう）