帝国ていこく図書館としょかん

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（書籍しょせき館かんから転送てんそう）
旧きゅう帝国ていこく図書館としょかん（現げん•国際こくさい子こども図書館としょかん）

帝国ていこく図書館としょかん（ていこくとしょかん）は、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以前いぜんの日本にっぽんにおける唯一ゆいいつの国立こくりつ図書館としょかんである。1872年ねん設立せつりつの書籍しょせき館かん（しょじゃくかん、図書館としょかんの古称こしょう）を起源きげんとして[1]、1897年ねんに設置せっちされた[2]。戦後せんごの1947年ねんに国立こくりつ図書館としょかん（こくりつとしょかん）と改称かいしょうした上うえ、1949年ねんに国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんに統合とうごうされて消滅しょうめつし、蔵書ぞうしょは現在げんざいの国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん東京とうきょう本館ほんかんに受うけ継つがれた。

帝国ていこく図書館としょかんは上野公園うえのこうえんの丘おかに所在しょざいしたことから、「上野うえの図書館としょかん」（うえのとしょかん）の通称つうしょうで長ながく親したしまれた[1]。上野うえの図書館としょかんに通とおった経験けいけんをもつ文豪ぶんごうや学者がくしゃ[注釈ちゅうしゃく 1]は数すう知しれず、近代きんだい日本にっぽん文化ぶんかの歴史れきしに大おおきな足跡あしあとを残のこしている。

その歴史れきしある建物たてものは国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん支部しぶ上野うえの図書館としょかんを経へて、2000年ねん（平成へいせい12年ねん）に国立こくりつの児童じどう書しょ専門せんもん図書館としょかんである国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん国際こくさい子こども図書館としょかんとして再生さいせいし、現在げんざいも国立こくりつの図書館としょかんとして現役げんえきである。

沿革えんかく[編集へんしゅう]

帝国ていこく図書館としょかんは、明治めいじ5年ねん8月がつ1日にち（1872年ねん9月3日にち）に文部省もんぶしょうによって設置せっちされた書籍しょせき館かんを前身ぜんしんとする[5]。前年ぜんねんに設立せつりつされた文部省もんぶしょうは博物館はくぶつかんを近代きんだい的てきな国家こっかに欠かかせない文化ぶんか施設しせつと考かんがえ、設立せつりつ後ごすぐに博物館はくぶつかんを設置せっちするが、同おなじく重要じゅうような施設しせつとして書籍しょせき館かん（図書館としょかんの当初とうしょの呼称こしょう）併設へいせつの必要ひつようが建白けんぱくされ[6]、博物館はくぶつかんと同おなじ博物はくぶつ局きょくの管轄かんかつとして書籍しょせき館かんを湯島ゆしま聖堂せいどう内うちに設置せっちされた博物館はくぶつかんに併設へいせつした[7]。書籍しょせき館かんは東京とうきょうで最初さいしょの近代きんだい的てきな公共こうきょう図書館としょかんであるが、当時とうじの閲覧えつらんは有料ゆうりょう制せいであった。

しかし、翌よく1873年ねん（明治めいじ6年ねん）、ウィーン万国博覧会ばんこくはくらんかい参加さんかのためにつくられた太政官だじょうかん博覧はくらん会かい事務じむ局きょくに文部省もんぶしょう博物はくぶつ局きょくが併合へいごうされると書籍しょせき館かんも文部省もんぶしょうの管轄かんかつを離はなれ、のちに浅草あさくさに移うつって浅草あさくさ文庫ぶんこと改称かいしょうされた[8]。一方いっぽう、文部省もんぶしょうは太政官だじょうかんに博物館はくぶつかんと書籍しょせき館かんの必要ひつよう性せいを説とき、1875年ねん（明治めいじ8年ねん）になって博物館はくぶつかんと書籍しょせき館かんを組織そしきのみ文部省もんぶしょうの所管しょかんに取とり戻もどした。ところが書籍しょせき館かんの蔵書ぞうしょは文部省もんぶしょうの所管しょかんには戻もどってこなかったため、文部省もんぶしょうは改あらためて省しょうの所蔵しょぞうする図書としょを譲渡じょうとし、同館どうかんは東京書籍とうきょうしょせき館かんとして再度さいど湯島ゆしま聖堂せいどう内ないに再さい発足ほっそくすることになった。

東京書籍とうきょうしょせき館かんは蔵書ぞうしょは文部省もんぶしょうから交付こうふされた約やく1万まん冊さつを基礎きそとし、日本にっぽんで初はじめての納本のうほん図書館としょかんとして全すべての国内こくない出版しゅっぱん物ぶつを蔵書ぞうしょに受うけ入いれた。閲覧えつらんは再さい発足ほっそく時じから無料むりょうとなるが、西南せいなん戦争せんそうの影響えいきょうによる財政難ざいせいなんから1877年ねん（明治めいじ10年ねん）に廃止はいしが決定けっていされ、東京とうきょう府ふに移管いかんされて学務がくむ課かが管轄かんかつする東京とうきょう府ふ書籍しょせき館かんとなった。しかし、東京とうきょう府ふも財政難ざいせいなんで運営うんえい困難こんなんとなり、1880年ねん（明治めいじ8年ねん）7月がつには文部省もんぶしょうに再度さいど復帰ふっきし、名称めいしょうを東京とうきょう図書館としょかんに変更へんこう[注釈ちゅうしゃく 2]。東京とうきょう図書館としょかんは1885年ねん（明治めいじ18年ねん）6月がつに東京とうきょう教育きょういく博物館はくぶつかん（国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんの前身ぜんしん）と合併がっぺいして上野うえのに移転いてんした[7]。「上野うえの図書館としょかん」の通称つうしょうはこのときに始はじまる。上野うえのの東京とうきょう図書館としょかんは同年どうねん10月がつに開館かいかんするが、無料むりょう制せいに伴ともなう館内かんないの混雑こんざつを調整ちょうせいする目的もくてきから有料ゆうりょう制せいに戻もどされた。1889年ねん（明治めいじ22年ねん）3月がつには東京とうきょう図書館としょかん官制かんせい[10]公布こうふにより東京とうきょう教育きょういく博物館はくぶつかんから分離ぶんり、独立どくりつの図書館としょかんとなるが、財政ざいせい・施設しせつとも貧弱ひんじゃくで、国立こくりつ図書館としょかんというにはいまだ不十分ふじゅうぶんであった。

1911年頃の上野帝国図書館を撮影した写真。外観。
上野うえの帝国ていこく図書館としょかん（1911年ねん頃ごろ[11]）

1890年ねん（明治めいじ23年ねん）、東京とうきょう図書館としょかんの館長かんちょうに就任しゅうにんした田中たなか稲城いなぎは、欧米おうべいへの図書館としょかん事情じじょう視察しさつ経験けいけんから東京とうきょう図書館としょかんを本格ほんかく的てきな国立こくりつ図書館としょかんに発展はってんさせる必要ひつようを認識にんしきし、帝国ていこく図書館としょかんの設置せっちをはたらきかけた[1]。その結果けっか、1897年ねん（明治めいじ30年ねん）4月がつになって帝国ていこく図書館としょかん官制かんせいが公布こうふされ帝国ていこく図書館としょかんが設立せつりつ、田中たなか稲城いなぎが初代しょだい館長かんちょうに就任しゅうにんした。帝国ていこく図書館としょかんは東京とうきょう図書館としょかんの業務ぎょうむと蔵書ぞうしょを受うけ継つぎ拡充かくじゅうさせ、1906年ねん3月がつ20日はつかには上野公園うえのこうえん内ないに現存げんそんする新館しんかん庁舎ちょうしゃを竣工しゅんこう、移転いてんし、開館かいかん式しきを挙行きょこう[12][13]。

田中たなか館長かんちょうの尽力じんりょくにもかかわらず帝国ていこく図書館としょかんの予算よさんは館長かんちょうの要望ようぼうする額がくには及およばず、庁舎ちょうしゃも当初とうしょ計画けいかくのわずか4分ぶんの1の規模きぼに留とどまったが[1]、納本のうほん制度せいどによる国内こくない文献ぶんけんの受うけ入いれや洋書ようしょの購入こうにゅうが努力どりょくされ、研究けんきゅう書しょを多おおくそろえた研究けんきゅう図書館としょかんとして、すぐれた蔵書ぞうしょコレクションが構築こうちくされた。1921年ねんからは文部省もんぶしょうの図書館としょかん員いん教習所きょうしゅうじょ（図書館情報大学としょかんじょうほうだいがくの前身ぜんしん）も館内かんないに置おかれるなど、文部省もんぶしょうによる図書館としょかん行政ぎょうせいの拠点きょてんとなって帝国ていこく図書館としょかんは戦前せんぜんの日本にっぽんの図書館としょかん界かいを主導しゅどうしていった[14]。この年とし、田中たなか館長かんちょうが文部省もんぶしょうとの対立たいりつから更迭こうてつされ（11月29日にち）、東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう（東京教育大学とうきょうきょういくだいがくを経へた、現在げんざいの筑波大学つくばだいがく）教授きょうじゅの松本まつもと喜一きいちが就任しゅうにんした。松本まつもとは図書館としょかんにおける活動かつどうの経歴けいれきが無なく、在任ざいにん中ちゅうには文部省もんぶしょうの意向いこうに忠実ちゅうじつで図書館としょかんの国家こっか・軍部ぐんぶへの従属じゅうぞくを進すすめたとする批判ひはんと司書ししょに対たいする資格しかく制度せいどの導入どうにゅうなどの人材じんざい育成いくせいや納本のうほん制度せいどの改革かいかくなど戦後せんごの図書館としょかんシステムの基礎きそを築きずいたとする功績こうせきの間あいだにおいて、今日きょうもなおその評価ひょうかが分わかれている人物じんぶつである。

1923年ねんの関東大震災かんとうだいしんさいでは蔵書ぞうしょと庁舎ちょうしゃに損傷そんしょうを受うけたが軽微けいびで済すみ[15]、太平洋戦争たいへいようせんそう中なかは住宅じゅうたく街がいから離はなれた台地だいち上じょうにあったことから空襲くうしゅうの被害ひがいを免まぬかれて、大正たいしょうから昭和しょうわ初期しょきの動乱どうらんを生いき延のびる。太平洋戦争たいへいようせんそう中ちゅうに貴重きちょう書しょの疎開そかいなどを行おこないながら、終戦しゅうせんまで帝国ていこく図書館としょかんの閉鎖へいさや臨時りんじ閉館へいかん等とうを行おこなわずに予定よてい通どおりの開館かいかんを続つづけたのは松本まつもとの最大さいだいにして最後さいごの功績こうせきであった。終戦しゅうせん直後ちょくごの1945年ねん11月13日にちに松本まつもと館長かんちょうが在任ざいにんのまま死去しきょし、翌よく1946年ねん5月13日にちに司書ししょ官かん岡田おかだ温あつしが館長かんちょうに就任しゅうにんする（最後さいごの帝国ていこく図書館としょかん長ちょう）。

戦後せんごの1947年ねん12月、「帝国ていこく図書館としょかん」の名称めいしょうは時代じだいに適合てきごうしなくなったことから「国立こくりつ図書館としょかん」と改称かいしょうされた。さらに翌よく1948年ねんには米国べいこく議会ぎかい図書館としょかんを模範もはんとして旧きゅう帝国ていこく議会ぎかい両院りょういんの附属ふぞく図書館としょかんを基礎きそとする国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんが設置せっちされて新あらたな法定ほうてい納本のうほん図書館としょかんとなるが、この法律ほうりつによって旧来きゅうらいの納本のうほん図書館としょかんである国立こくりつ図書館としょかんはその機能きのうを国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんに統合とうごうされることになり、同年どうねん5月がつ岡田おかだ館長かんちょうは国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん整理せいり局長きょくちょうに転てんじた。その後ご、統合とうごう後ごの分館ぶんかん館長かんちょう就任しゅうにんを前提ぜんていに文部省もんぶしょう社会しゃかい教育きょういく局員きょくいんの加藤かとう宗そう厚あつし（元もと・帝国ていこく図書館としょかん員いん）が館長かんちょうに就任しゅうにん（1957年ねん7月がつまで）、1949年ねん4月がつになって国立こくりつ図書館としょかんは国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんに統合とうごうされ、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん支部しぶ上野うえの図書館としょかんとなった。

歴代れきだい図書館としょかん長ちょうなど[編集へんしゅう]

  • 町田まちだ久成くなり：1872年ねん（明治めいじ5年ねん）書籍しょせき館たて務つとむ兼けん理り
  • 辻つじ新次しんじ：1875年ねん（明治めいじ8年ねん）東京書籍とうきょうしょせき館かん御用ごよう掛かけ・東京書籍とうきょうしょせき館かん館長かんちょう事務じむ取扱とりあつかい
  • 畠山はたけやま義成よしなり：1875年ねん（明治めいじ8年ねん）書籍しょせき博物はくぶつ両りょう館長かんちょう兼勤けんきん
  • 永井ながい久一郎ひさいちろう：1875年ねん（明治めいじ8年ねん）東京書籍とうきょうしょせき館長かんちょう補ほ
  • 二に橋きょう元長もとなが：1877年ねん（明治めいじ10年ねん）東京とうきょう府ふ書籍しょせき館かん掛かけ、1879年ねん（明治めいじ12年ねん）東京とうきょう府ふ書籍しょせき館かん幹事かんじ
  • 岡おか千仞せんじん：1879年ねん（明治めいじ12年ねん）東京とうきょう府ふ書籍しょせき館かん幹事かんじ
  • 小林こばやし小太郎こたろう：1880年ねん（明治めいじ13年ねん）文部もんぶ少しょう書記官しょきかん・東京とうきょう図書館としょかん長ちょう兼務けんむ
  • 鈴木すずき良輔りょうすけ：1880年ねん（明治めいじ13年ねん）東京とうきょう図書館としょかん長ちょう
  • 平山ひらやま太郎たろう：1881年ねん（明治めいじ14年ねん）東京とうきょう図書館としょかん長ちょう
  • 箕作みつくり秋坪しゅうへい：1885年ねん（明治めいじ18年ねん）東京とうきょう教育きょういく博物館はくぶつかん長ちょう兼けん東京とうきょう図書館としょかん長ちょう
  • 手島てじま精一せいいち：1886年ねん（明治めいじ19年ねん）東京とうきょう教育きょういく博物館はくぶつかん兼けん東京とうきょう図書館としょかん主幹しゅかん
  • 末岡すえおか精一せいいち：1889年ねん（明治めいじ22年ねん）法科ほうか大学だいがく教授きょうじゅ・東京とうきょう図書館としょかん長ちょう兼任けんにん（田中たなか稲城いなぎの親友しんゆう）
  • 田中たなか稲城いなぎ：1890年ねん（明治めいじ23年ねん）文科ぶんか大学だいがく教授きょうじゅ・東京とうきょう図書館としょかん長ちょう兼任けんにん・帝国ていこく大学だいがく図書館としょかん管理かんり、1893年ねん（明治めいじ26年ねん）東京とうきょう図書館としょかん長ちょう専任せんにん、1897年ねん（明治めいじ30年ねん）帝国ていこく図書館としょかん長ちょう（初代しょだい）
  • 松本まつもと喜一きいち；1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）帝国ていこく図書館としょかん長ちょう事務じむ取扱とりあつかい、1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）帝国ていこく図書館としょかん長ちょう（2代だい）
  • 岡田おかだ温あつし：1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）帝国ていこく図書館としょかん長ちょう（3代だい）
  • 加藤かとう宗そう厚あつし：1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）国立こくりつ図書館としょかん長ちょう[16]
  • 中根なかね粛治：書誌しょし学者がくしゃ。明治めいじ39年ねんまで東京とうきょう図書館としょかんの司書ししょを務つとめる[17]。

建築けんちく家か[編集へんしゅう]

  • 久留くる正道せいどう：1897（明治めいじ30）年ねん4月がつに帝国ていこく図書館としょかん新築しんちく設計せっけい委員いいんに任命にんめいされ、技師ぎしとして真水しみず英夫ひでおを招まねく。
  • 真水しみず英夫ひでお：帝国ていこく図書館としょかんの設計せっけい原案げんあんを作成さくせいしたが、着工ちゃっこうから2年ねん後ごの1902（明治めいじ35）年ねん7月がつに辞任じにん。
  • 岡田おかだ時太郎ときたろう：真水まみずの後任こうにんであったが、日にち露ろ戦争せんそう勃発ぼっぱつのため職しょくを辞じして満州まんしゅうへ渡わたり、軍ぐんの倉庫そうこ建設けんせつなどに従事じゅうじ。

蔵書ぞうしょ[編集へんしゅう]

1872年ねん設置せっちの書籍しょせき館かんは旧きゅう幕府ばくふの昌平しょうへい坂ざか学問がくもん所しょ、和学わがく講談こうだん所しょ、蕃しげる書しょ調ちょう所しょなどの所蔵しょぞうしていた貴重きちょうな古こ典籍てんせきを蔵書ぞうしょの基礎きそとしていたが、博覧はくらん会かい事務じむ局きょくから文部省もんぶしょうへの再さい移管いかん時じに蔵書ぞうしょは内務省ないむしょう管轄かんかつ下かの博物館はくぶつかん事務じむ局きょくに残のこされたため、東京書籍とうきょうしょせき館かんは文部省もんぶしょうから改あらためて譲渡じょうとされた省しょうの所蔵しょぞう図書としょ約やく1万まん冊さつをもって発足ほっそくした。文部省もんぶしょう所蔵しょぞうの図書としょは洋書ようしょが中心ちゅうしんであったので、文部省もんぶしょうは各かく府県ふけんに命めいじて旧きゅう藩校はんこうの蔵書ぞうしょを集あつめさせ、その良書りょうしょ3183部ぶ43630冊さつを選えらんで東京書籍とうきょうしょせき館かんに収おさめたが、これらがのちの帝国ていこく図書館としょかんの蔵書ぞうしょの基礎きそとなった。一方いっぽう、太政官だじょうかん博覧はくらん会かい事務じむ局きょくに残のこされた旧きゅう幕府ばくふ系けいの蔵書ぞうしょは内務省ないむしょう所管しょかんの浅草あさくさ文庫ぶんこを経へて内閣ないかく文庫ぶんこ（現げん・国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん内うち）、帝室ていしつ博物館はくぶつかん（現げん・東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん）などに移うつって現在げんざいに至いたっている。

東京書籍とうきょうしょせき館かん時代じだい以来いらい、この図書館としょかんは日本にっぽんの法定ほうてい納本のうほん図書館としょかんでもあった。すなわち、出版しゅっぱん条例じょうれい・出版しゅっぱん法ほうにより義務付ぎむづけられた納本のうほん制度せいどに基もとづき、発行はっこうの3日にち前まえまでに内務省ないむしょうに納本のうほんされた出版しゅっぱん物ぶつ2部ぶは、1部ぶが検閲けんえつ事務じむに用もちいられて内務省ないむしょうに保存ほぞんされ、もう1部ぶが改あらためて帝国ていこく図書館としょかんに交付こうふされてその蔵書ぞうしょとなった。帝国ていこく図書館としょかんは公布こうふされた出版しゅっぱん物ぶつを3種類しゅるいに区分くぶんし、学術がくじゅつ的てきに価値かちが高たかいとみなされた資料しりょうを甲かぶと部ぶとして閲覧えつらんに供きょうした。残のこる出版しゅっぱん物ぶつのうち閲覧えつらんの必要ひつよう無なしとみなされた資料しりょうを乙おつ部ぶとして保存ほぞんのみ行おこない、保存ほぞんの必要ひつようが認みとめられなかったチラシや日記にっき帳ちょうなどの出版しゅっぱん物ぶつは丙へい部ぶとして1年ねんの保存ほぞんの後のち廃棄はいきしていた。また、1937年ねん以降いこうは発禁はっきん図書としょも交付こうふを受うけて保存ほぞんしていた。

その他た、購入こうにゅうや国際こくさい交換こうかんによって入手にゅうしゅした洋書ようしょや東京とうきょう府ふから寄託きたくされた江戸えど町まち奉行ぶぎょう所しょ文書ぶんしょ、国内こくないの蒐書家かから寄贈きぞうされた特殊とくしゅコレクション類るいを多おおく所蔵しょぞうしていた。1906年ねんの新館しんかん移転いてん時じの蔵書ぞうしょは約やく47万まん冊さつ、1949年ねんの国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんとの統合とうごう時点じてんでの蔵書ぞうしょは約やく107万まん冊さつであった。

国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん支部しぶ上野うえの図書館としょかんとなった後のちも、107万まん冊さつの歴史れきしある蔵書ぞうしょは上野うえの図書館としょかんで所蔵しょぞう、公開こうかいされていたが、1961年ねんになって永田町ながたちょうで新築しんちくされた国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんの中央ちゅうおう館かん（東京とうきょう本館ほんかん）に統合とうごうされ、帝国ていこく図書館としょかんが残のこした遺産いさんは国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんへと受うけ継つがれて現在げんざいに至いたっている。

参考さんこう事務じむ[編集へんしゅう]

レファレンスサービスは上野うえの図書館としょかんの頃ころから係員かかりいんにより提供ていきょうされた。稲村いなむら[14]は国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんに併合へいごうされた時期じきに参考さんこう事務じむに携たずさわった館員かんいんの述懐じゅっかいとして、1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん[18]）、1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん[19]）の2資料しりょうを紹介しょうかいした。

庁舎ちょうしゃ[編集へんしゅう]

明治めいじ建設けんせつ部分ぶぶん。左ひだり・閲覧えつらん室しつ、右みぎ・書庫しょこ

帝国ていこく図書館としょかんの庁舎ちょうしゃは移転いてんを経へて上野公園うえのこうえんの東京とうきょう音楽おんがく学校がっこう（現げん・東京芸術大学とうきょうげいじゅつだいがく）敷地しきち内ないに用地ようちが確保かくほされ、1908年ねんに第だい一いち期き工事こうじが完成かんせいした。設計せっけいは久留くる正道せいどうらによるもので[20]、鉄骨てっこつ補強ほきょうの煉瓦れんが造つくり、規模きぼは地下ちか1階かい地上ちじょう4階かい建だてである。現存げんそんし、東京とうきょう都と選定せんてい歴史れきし的てき建造けんぞう物ぶつに指定していされている。

当初とうしょ計画けいかくでは、広大こうだいな中庭なかにわを内側うちがわに取とり込こんだロの字じ型がたの広大こうだいな建造けんぞう物ぶつで、全体ぜんたいが完成かんせいすれば東洋とうよう一いちの規模きぼを誇ほこる大だい図書館としょかんとなる予定よていであった。しかし、日にち露ろ戦争せんそう直後ちょくごの当時とうじの財政ざいせい状況じょうきょうから計画けいかく通どおりの完成かんせいは見送みおくられ、当初とうしょ計画けいかくの4分ぶんの1が完成かんせいしたのみで終おわった。和風わふう要素ようそを入いれる案あんもあったが実行じっこうされていない。

昭和しょうわ増築ぞうちく部分ぶぶん

明治めいじの庁舎ちょうしゃは1923年ねんの関東大震災かんとうだいしんさいを、蔵書ぞうしょの一部いちぶが焼失しょうしつ、破損はそんする被害ひがいを受うけたものの乗のり切きる。ただし建物たてものの疲弊ひへいは著いちじるしく[15]、1927年ねん増築ぞうちく工事こうじに着工ちゃっこう、構造こうぞうを鉄筋てっきんコンクリートに改修かいしゅうした。第だい二に期き工事こうじは1929年ねんに竣工しゅんこうし、左ひだり（北側きたがわ）部分ぶぶんの一部いちぶが完成かんせい、依然いぜんとして当初とうしょ計画けいかくの3分ぶんの1にも満みたないものの[21]、現在げんざいまで見みられる姿すがたが完成かんせいする。

現存げんそん庁舎ちょうしゃは、当初とうしょ計画けいかくのロの字じのうちの正面しょうめんにあたる東側ひがしがわの閲覧えつらん室しつ部分ぶぶんと南側みなみがわの書庫しょこの一部いちぶにあたる。閲覧えつらん室しつ部分ぶぶんは3階かいに目録もくろく室しつと一般いっぱん閲覧えつらん室しつがあり、男性だんせいの一般いっぱん閲覧えつらん者しゃはここで図書としょを閲覧えつらんした。2階かいは女子じょし閲覧えつらん室しつと登録とうろくした研究けんきゅう者しゃのみに開放かいほうされる特別とくべつ閲覧えつらん室しつにあてられ、1階かいには貴賓きひん室しつや館長かんちょう室しつ、職員しょくいんのための作業さぎょう室しつがあった。しかし、大正たいしょう期きには早はやくも手狭てぜまとなり、敷地しきち内ないに木造もくぞう館かん舎しゃを建たてて事務じむ室しつなど一部いちぶを移うつさねばならなかった。第だい二に期き工事こうじで追加ついかされた左側ひだりがわ（北側きたがわ）は事務じむ室しつ・ホールなどである。

2000年ねんから2002年ねんに段階だんかい的てきに行おこなわれた国際こくさい子こども図書館としょかん開館かいかんにあたり大だい規模きぼな改修かいしゅうが行おこなわれ、地下ちか部分ぶぶんが免めん震ふるえ層そうに改あらためられた。建物たてものは建築けんちく遺産いさんとして極力きょくりょく保全ほぜんが図はかられ、空調くうちょうなどの機械きかい動どう線せんと廊下ろうか・エレベーター・階段かいだんなどの閲覧えつらん者しゃ動どう線せんを兼かねたガラス張がらすばりのラウンジ棟とうが背面はいめん部分ぶぶんを覆おおうように加くわえられた。これにより、歴史れきし的てき建造けんぞう物ぶつの部分ぶぶんはほとんど保全ほぜんされ、明治めいじの雰囲気ふんいきを色濃いろこく残のこす正面しょうめん東側ひがしがわから見みた外観がいかんや内装ないそうはほとんど残のこされたまま、現在げんざいの建築けんちく基準きじゅんに適合てきごうした近代きんだい的てきな図書館としょかんに生うまれ変かわった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 江戸えど時代じだいの資料しりょう[3]を閲覧えつらんする幸田こうだ成友しげともの写真しゃしん[4]が伝つたわる。
  2. ^ 当時とうじ、同おなじ湯島ゆしま聖堂せいどうの敷地しきちにあった東京とうきょう師範しはん学校がっこう附属ふぞく小学校しょうがっこう（旧きゅう東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく、現げん・筑波大学つくばだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう）に通学つうがくしていた幸田こうだ成友しげとも（幸田こうだ露伴ろはんの弟おとうと）は同館どうかんを利用りようし、その様子ようすを書かき残のこしている
    小学しょうがくの上級じょうきゅうの頃ころから東京とうきょう図書館としょかんへ出入でいりした。これは現在げんざい上野公園うえのこうえん内ないにある帝国ていこく図書館としょかんの前身ぜんしんで、御茶おちゃの水みずの旧きゅう聖堂せいどう（大成たいせい殿どの）を文庫ぶんこに充あて、バラック式しきの仮かり閲覧えつらん室しつが設もうけられてあつた
    —[9]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん 2003, p. 1
  2. ^ 行あるき村むら 建けん、小野おの 浩之ひろゆき、明石あかし 周平しゅうへい、今井いまい 貴文たかふみ、村上むらかみ 寛ひろし「蔵書ぞうしょの宝庫ほうこ 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん関西かんさい館かん」『電気でんき学会がっかい誌し』第だい125巻かん第だい9号ごう、2005年ねん、553-556頁ぺーじ、ISSN 1340-5551、NAID 130000082198。 
  3. ^ 幸田こうだ 1954, pp. 1–29
  4. ^ 三田みた史し学会がっかい 1954, 挿絵さしえ
  5. ^ 東京とうきょう市し市し史し編纂へんさん係がかり 編へん「12 下谷しもたに区く」『東京とうきょう案内あんない』 下巻げかん、裳も華はな房ぼう、1911年ねん4月がつ、444-446頁ぺーじ。doi:10.11501/900276。https://dl.ndl.go.jp/pid/900276/1/238。2023年ねん7月がつ28日にち閲覧えつらん。 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション、インターネット公開こうかい。
  6. ^ 岩井いわい千華ちか『わが国くにの公共こうきょう図書館としょかんにおける1960年代ねんだい以降いこうの〈文化ぶんか活動かつどう〉の成立せいりつと普及ふきゅうに関かんする研究けんきゅう』 九州大学きゅうしゅうだいがく〈博士はかせ（芸術げいじゅつ工学こうがく） 甲かぶと第だい15574号ごう〉、2021年ねん。hdl:2324/4475134。NAID 500001464002。https://hdl.handle.net/2324/4475134。 
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  20. ^ 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん 2003, p. 2
  21. ^ 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん 2003, p. 5

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

主おもな執筆しっぴつ者しゃの順じゅん。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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