有料ゆうりょう老人ろうじんホーム

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有料ゆうりょう老人ろうじんホーム(ゆうりょうろうじんホーム)とは、老人ろうじん福祉ふくしほう根拠こんきょとして、常時じょうじ1にん以上いじょう老人ろうじん入所にゅうしょさせ、介護かいごとうサービスを提供ていきょうすることを目的もくてきとした施設しせつ老人ろうじんホーム)で、老人ろうじん福祉ふくし施設しせつでないものである。設置せっち届出とどけでせいとなっている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

提供ていきょうされる介護かいごサービスには、入浴にゅうよくはいせつ、食事しょくじ介護かいご食事しょくじ提供ていきょうなどがふくまれる。老人ろうじん福祉ふくしはかるため、その心身しんしん健康けんこう保持ほじおよ生活せいかつ安定あんていのために必要ひつよう措置そちとしてもうけられている制度せいどである。ちなみに、老人ろうじん福祉ふくしほうじょう、「老人ろうじん」の定義ていぎはない。

平均へいきんてき有料ゆうりょう老人ろうじんホームは居室きょしつすう50しつほどをち、やく18平方へいほうメートルほどのトイレづけ個室こしつ標準ひょうじゅんである。リビング・ダイニングや機械きかいよくふく浴室よくしつ共用きょうようとなっている。民間みんかん企業きぎょう経営けいえいしているケースがおおく、料金りょうきん設定せってい様々さまざますうひゃくまんえん - すうせんまんえん)で入居にゅうきょいちきん支払しはらう(終身しゅうしん利用りようけん方式ほうしき賃貸借ちんたいしゃく方式ほうしき終身しゅうしん建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく方式ほうしきがある。

2000ねん介護かいご保険ほけんほう施行しこう以後いご介護かいご分野ぶんや以外いがい様々さまざま業種ぎょうしゅ民間みんかん事業じぎょうしゃによる設立せつりつ相次あいつぎ、2013ねん現在げんざい全国ぜんこくで8,499施設しせつ設立せつりつされている。厚生こうせい労働省ろうどうしょう統計とうけいで、2000ねんは349施設しせつで、2018ねんは13,354施設しせつである[1]

設置せっち[編集へんしゅう]

設置せっちたっては都道府県とどうふけん知事ちじ政令せいれい指定してい都市とし長又ながまた中核ちゅうかく市長しちょうへの届出とどけで必要ひつようである(だい29じょうだい1こう)。ただし、サービス高齢こうれいしゃ住宅じゅうたくとして都道府県とどうふけん政令市せいれいし中核ちゅうかく登録とうろくしていれば、届出とどけで不要ふようである(高齢こうれいしゃまいほうだい23じょう)。

いわゆる住所じゅうしょ特例とくれい対象たいしょうである。建築けんちく基準きじゅんほうによる用途ようと規制きせいにより、12しゅある用途ようと地域ちいきのうち工業こうぎょう専用せんよう地域ちいきでは建築けんちくできない。そのの11の用途ようと地域ちいきにおいて建築けんちく可能かのうである。

定義ていぎ変遷へんせん[編集へんしゅう]

1963ねん制定せいていされた老人ろうじん福祉ふくしほう昭和しょうわ38ねん法律ほうりつだい133ごう)により有料ゆうりょう老人ろうじんホームは、老人ろうじん収容しゅうようし、給食きゅうしょくその日常にちじょう生活せいかつじょう必要ひつよう便宜べんぎ供与きょうよすることを目的もくてきとする施設しせつとして法的ほうてき位置付いちづけられ、どうほうにおいて、設置せっちしゃたいし、有料ゆうりょう老人ろうじんホーム設置せっち届出とどけで義務付ぎむづけられた。このときは、常時じょうじ10にん以上いじょう老人ろうじん収容しゅうようするものが有料ゆうりょう老人ろうじんホームとしての届出とどけで対象たいしょうとされていた。

その有料ゆうりょう老人ろうじんホームの経営けいえい悪化あっかとうによる入居にゅうきょしゃ処遇しょぐうかんする問題もんだい発生はっせいしていたことから、行政ぎょうせいによる指導しどうをより実効じっこうてきにするために、1990ねん老人ろうじん福祉ふくしほう一部いちぶ改正かいせいされ、(1)施設しせつ設置せっちとどけについて従来じゅうらい事後じご届出とどけでから事前じぜん届出とどけであらためる規定きていだい29じょうだい1こう)、(2)都道府県とどうふけん知事ちじ改善かいぜん命令めいれいけん付与ふよする規定きていだい29じょうだい8こう)、(3)設置せっちとどけがなされない場合ばあい罰則ばっそく規定きていだい40じょうだい3ごうとうあらたな規制きせいとしてもうけられた。

しかし、その有料ゆうりょう老人ろうじんホームのかず年々ねんねん増加ぞうかする一方いっぽうで、「食事しょくじ提供ていきょう」をみずかおこなわないことから有料ゆうりょう老人ろうじんホームには該当がいとうしないと主張しゅちょうする小規模しょうきぼ施設しせつえたため、2005ねんにも老人ろうじん福祉ふくしほう改正かいせいされ、入居にゅうきょ人数にんずう要件ようけん撤廃てっぱいなど定義ていぎ見直みなおしが実施じっしされるとともに、有料ゆうりょう老人ろうじんホーム設置せっちしゃたいする帳簿ちょうぼ作成さくせいとう義務付ぎむづけ、都道府県とどうふけん知事ちじたいする立入検査たちいりけんさ権限けんげん付与ふよとう規定きていまれた。

2015ねん現在げんざい老人ろうじん福祉ふくしほうだい29じょうだい1こうにおいて、有料ゆうりょう老人ろうじんホームとは、(1)老人ろうじん入居にゅうきょさせ(いわゆる「入居にゅうきょサービス」)、(2)当該とうがい老人ろうじんたいして「入浴にゅうよくはいせつまた食事しょくじ介護かいご」、「食事しょくじ提供ていきょう」、「洗濯せんたく掃除そうじとう家事かじまたは「健康けんこう管理かんり」のすくなくともひとつのサービス(いわゆる「介護かいごとうサービス」であり、かならずしも介護かいご保険ほけんじょうのサービスをふくむものではない。)を供与きょうよする施設しせつとして定義ていぎされている。また、委託いたく契約けいやくにより第三者だいさんしゃ介護かいごとうサービスを提供ていきょうする場合ばあいであっても、有料ゆうりょう老人ろうじんホーム事業じぎょう該当がいとうするが、入居にゅうきょサービス提供ていきょうしゃ介護かいごとうサービス提供ていきょうしゃとのあいだ直接ちょくせつ委託いたく関係かんけいがない場合ばあい一律いちりつ排除はいじょしているものではなく、介護かいごとうサービス提供ていきょうしゃは、入居にゅうきょサービス提供ていきょうしゃ委託いたく契約けいやくをしたものからさい委託いたくをされたものなど、すべての第三者だいさんしゃのうち、実質じっしつてきにサービスの提供ていきょうおこなっているものふくむとほぐされる。なお、都道府県とどうふけん知事ちじとうへの届出とどけで有無うむにかかわらず、入居にゅうきょサービスと介護かいごとうサービスの実施じっしみとめられるものは、定義ていぎじょうは「有料ゆうりょう老人ろうじんホーム」としてあつかわれるため、届出とどけでがなくとも都道府県とどうふけん知事ちじとう老人ろうじん福祉ふくしほうもとづく指導しどうけることとなる。

問題もんだい[編集へんしゅう]

入居にゅうきょいちきん介護かいごサービスのしつとうかんし、有料ゆうりょう老人ろうじんホームにかんする苦情くじょうが、国民こくみん生活せいかつセンターなどにおおせられるようになった。とくに、入居にゅうきょして90にち以内いない退すさところ死亡しぼうによって解約かいやくする場合ばあいに、一定いっていがくきつつ利用りようりょう返還へんかんする、いわゆる「90にちルール」の法制ほうせい目指めざされている[2]。しかし、法制ほうせいしたとしても90にちえてからの退すさしょ死亡しぼうにより解約かいやくする場合ばあい入居にゅうきょいちきん保護ほご問題もんだいはなおのこ[2]東京大学とうきょうだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ会計かいけいがく専門せんもん醍醐だいごさとしは、入居にゅうきょいちきん保護ほご徹底てっていすべきだと指摘してきしている[2]

なお、2011ねん通常つうじょう国会こっかい老人ろうじん福祉ふくしほう改正かいせいされ、有料ゆうりょう老人ろうじんホームの「短期たんき解約かいやく特例とくれい」が法制ほうせいされた[3]公布こうふ同年どうねん6月22にち法律ほうりつ72ごう

有料ゆうりょう老人ろうじんホームの種別しゅべつ[編集へんしゅう]

介護かいごづけ有料ゆうりょう老人ろうじんホーム(一般型特定施設入居者生活介護)[編集へんしゅう]

介護かいごとうのサービスがいた高齢こうれいしゃけの居住きょじゅう施設しせつであり、介護かいご必要ひつようとなっても、当該とうがい有料ゆうりょう老人ろうじんホームが提供ていきょうする特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご利用りようしながら当該とうがい有料ゆうりょう老人ろうじんホームの居室きょしつ生活せいかつ継続けいぞくすることが可能かのうである。介護かいごサービスは有料ゆうりょう老人ろうじんホームの職員しょくいん提供ていきょうすることとなっており、特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご指定していけていない有料ゆうりょう老人ろうじんホームについては介護かいごづけ表示ひょうじすることはできない。

2006ねんより、介護かいごサービス情報じょうほう公表こうひょう制度せいど導入どうにゅうされ、介護かいごづけ有料ゆうりょう老人ろうじんホーム(特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご)の基本きほん情報じょうほう項目こうもく自主じしゅ申告しんこく情報じょうほう)、調査ちょうさ情報じょうほう項目こうもく調査ちょうさいんにより客観きゃっかんてき確認かくにんされた情報じょうほう)がインターネットじょうることが出来できるようになっている。

介護かいごづけ有料ゆうりょう老人ろうじんホーム(外部がいぶサービス利用りようがた特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご[編集へんしゅう]

介護かいごとうのサービスがいた高齢こうれいしゃけの居住きょじゅう施設しせつであり、介護かいご必要ひつようとなっても、当該とうがい有料ゆうりょう老人ろうじんホームが提供ていきょうする特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご利用りようしながら当該とうがい有料ゆうりょう老人ろうじんホームの居室きょしつ生活せいかつ継続けいぞくすることが可能かのうである。有料ゆうりょう老人ろうじんホームの職員しょくいん安否あんぴ確認かくにん計画けいかく作成さくせいとう実施じっしし、介護かいごサービスは委託いたくさき介護かいごサービス事業じぎょうしょ提供ていきょうする。特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいご指定していけていない有料ゆうりょう老人ろうじんホームについては介護かいごづけ表示ひょうじすることはできない。

住宅じゅうたくがた有料ゆうりょう老人ろうじんホーム[編集へんしゅう]

生活せいかつ支援しえんとうのサービスがいた高齢こうれいしゃけの居住きょじゅう施設しせつであり、介護かいご必要ひつようとなった場合ばあい入居にゅうきょしゃ自身じしん選択せんたくにより、地域ちいき訪問ほうもん介護かいごとう介護かいごサービスを利用りようしながら当該とうがい有料ゆうりょう老人ろうじんホームの居室きょしつでの生活せいかつ継続けいぞくすることが可能かのうである。よう介護かいご重度じゅうどになった場合ばあい特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいごより介護かいご保険ほけん費用ひようがかかるとされている。

健康けんこうがた有料ゆうりょう老人ろうじんホーム[編集へんしゅう]

食事しょくじとうのサービスがいた高齢こうれいしゃけの居住きょじゅう施設しせつであるが、介護かいご必要ひつようとなった場合ばあいには、契約けいやく解除かいじょ退去たいきょしなければならない。全国ぜんこくてきにもかず非常ひじょうすくない。

特定とくてい有料ゆうりょう老人ろうじんホーム[編集へんしゅう]

老人ろうじん福祉ふくしほうだい29じょう規定きていする有料ゆうりょう老人ろうじんホームであって(1)医療いりょうほう規定きていする病院びょういん老人ろうじん福祉ふくしほう規定きていする養護ようご老人ろうじんホーム特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームけい老人ろうじんホームまた介護かいご保険ほけんほう規定きていする介護かいご老人ろうじん保健ほけん施設しせつ隣接りんせつした場所ばしょ設置せっちするもの。(2)定員ていいんが50にん未満みまんのもの。(3)利用りようりょう比較的ひかくてき低廉ていれんであり、かつ、入居にゅうきょしゃからは原則げんそくとして利用りようりょう以外いがい金品きんぴん徴収ちょうしゅうしないもの、の要件ようけんをすべてたすもの。独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん福祉ふくし医療いりょう機構きこうから融資ゆうし対象たいしょうとなる。

サービス高齢こうれいしゃ住宅じゅうたく[編集へんしゅう]

有料ゆうりょう老人ろうじんホームの定義ていぎてはまるかぎり、有料ゆうりょう老人ろうじんホームとしてもあつかわれる。

業界ぎょうかい団体だんたい[編集へんしゅう]

有料ゆうりょう老人ろうじんホームの業界ぎょうかい団体だんたいとして、公益社こうえきしゃだん法人ほうじん全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかいゆうろうきょう)と、介護かいごきホームの業界ぎょうかい団体だんたいとして、一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん全国ぜんこく介護かいごきホーム協会きょうかいかいきょう)がある。
全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかい老人ろうじん福祉ふくしほうだいさんじゅうじょうおよさんじゅういちじょう規定きていされた団体だんたいであり、業務ぎょうむ指定していほか名称めいしょう使用しよう制限せいげんせられている。「てる(かがやき)・ともかい」への入会にゅうかいきんねん会費かいひ無料むりょう[4]。『有料ゆうりょう老人ろうじんホーム標準ひょうじゅん入居にゅうきょ契約けいやくしょおよ標準ひょうじゅん管理かんり規程きてい』『特定とくてい施設しせつ入居にゅうきょしゃ生活せいかつ介護かいごとう標準ひょうじゅん利用りよう契約けいやくしょおよ解説かいせつ』などの図書としょもこの協会きょうかい出版しゅっぱんしている[5]。この協会きょうかい事業じぎょうとして、入居にゅうきょきん保全ほぜんのための入居にゅうきょしゃ基金ききん制度せいどおこなっている[6]
全国ぜんこく介護かいごきホーム協会きょうかいは、厚生こうせい労働省ろうどうしょうをはじめとする行政ぎょうせい機関きかんへの意見いけん表明ひょうめい要望ようぼうや、介護かいごきホームの運営うんえいとくした研修けんしゅうかい・セミナーの開催かいさいなどをおこなっている[7]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ “(介護かいごとわたしたち 保険ほけん制度せいど20ねんうえ)「介護かいご社会しゃかい実現じつげんできたか:朝日新聞あさひしんぶんデジタル:朝日新聞あさひしんぶんデジタル:朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. (2020ねん3がつ1にち). https://www.asahi.com/articles/DA3S14385413.html 
  2. ^ a b c 2011ねん2がつ1にち 朝日新聞あさひしんぶん朝刊ちょうかん 17めん
  3. ^ 社団しゃだん法人ほうじん全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかいへんてる(かがやき)ニュース」2011vol.92、社団しゃだん法人ほうじん全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかい、2011ねん9がつ1にち、p.1 - 2
  4. ^ てるともかい案内あんない - 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん 全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかい
  5. ^ 出版しゅっぱん図書としょのご紹介しょうかい - 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん 全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかい
  6. ^ 協会きょうかい概要がいよう - 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん 全国ぜんこく有料ゆうりょう老人ろうじんホーム協会きょうかい
  7. ^ 全国ぜんこく介護かいごきホーム協会きょうかいとは - 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 全国ぜんこく介護かいごきホーム協会きょうかい

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 金融きんゆう財政ざいせい事情じじょう研究けんきゅうかいへん業種ぎょうしゅべつ審査しんさ事典じてん だい11 だい8かん』「有料ゆうりょう老人ろうじんホーム」のこう金融きんゆう財政ざいせい事情じじょう研究けんきゅうかい、2008ねん、p.578 - 584
  • 中村なかむら寿美子すみこ『こんな介護かいごしあわせですか?--らなければ絶対ぜったい後悔こうかいするおわり(つい)の棲家(すみか)のえらかた小学館しょうがくかん101新書しんしょ、2009ねん
  • 中村なかむら寿美子すみこぬまで安心あんしん有料ゆうりょう老人ろうじんホームのえらかた--おやも「ろうかつ!」時代じだい講談社こうだんしゃ+αあるふぁ新書しんしょ、2010ねん
  • 長岡ながおか美代みよ介護かいごビジネスのわな講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ、2015ねん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]