武たけ寧やすし王おう

武たけ寧やすし王おう
各種かくしゅ表記ひょうき
ハングル：	무령왕/무녕왕
漢字かんじ：	武たけ寧やすし王おう
発音はつおん：	ムリョンワン/ムニョンワン
日本語にほんご読よみ：	ぶねいおう
ロろーマ字まじ：	Muryeong-wang/; Munyeong-wang
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武たけ寧やすし王おう
	百済くだら
	25代だい王おう
	武たけ寧やすし王おうの肖像しょうぞう
王朝おうちょう	百済くだら
在位ざいい期間きかん	502年ねん - 523年ねん
姓せい・諱いみな	扶余斯摩
生年せいねん	462年ねん
没年ぼつねん	523年ねん
父ちち	東城とうじょう王おう
子女しじょ	聖王せいおう
陵墓りょうぼ	武たけ寧やすし王おう陵りょう
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武たけ寧やすし王おう（ぶねいおう/ムリョンワン、462年ねん - 523年ねん）は、百済くだらの第だい25代だいの王おう（在位ざいい：502年ねん - 523年ねん）。『三さん国史こくし記き』百済くだら本紀ほんぎ・武たけ寧やすし王おう紀おさむによれば先代せんだいの牟大王おう（東城とうじょう王おう）の第だい2子しであり、諱いみなを斯摩、分ぶん注ちゅうでは隆たかしとする。『梁はり書しょ』では余よ隆たかし、『日本書紀にほんしょき』雄略天皇ゆうりゃくてんのう紀き5年ねん条じょうでは、加須かぞ利とし君くん（かすりのきし、第だい21代だい蓋ぶた鹵王）の子こ、名なを嶋しま君くんとする。また、武たけ烈れつ天皇てんのう紀き4年ねん条じょうでは『百済くだら新撰しんせん』の引用いんようとして、「諱いみなは斯麻王おうという。これは昆こん支ささえ王おうの子こである。則のりち末まつ多た王おう（東城とうじょう王おう）の異母いぼ兄けいである」としながらも、「今いま考かんがえるに、島しま王おうは蓋ぶた鹵王の子こである。末すえ多た王おうは昆こん支ささえ王おうの子こである。これを異母いぼ兄けいというのはまだ詳くわしく判わからない^[1]」としている。『三さん国こく遺のこ事こと』王おう暦れきでは『三さん国史こくし記き』と同おなじく、諱いみなを斯摩とする。

旧都きゅうと漢かん城じょう（ソウル特別とくべつ市し）を高句麗こうくりに奪うばわれ混乱こんらんした百済くだらの安定あんていを回復かいふくした王おうとされる。

生涯しょうがい

武たけ寧やすし王おうの生年せいねんは武たけ寧やすし王おう陵墓りょうぼ誌しから462年ねんと判明はんめいしており、この年としは雄略天皇ゆうりゃくてんのう6年ねん、蓋ぶた鹵王8年ねんである。

『三さん国史こくし記き』の記述きじゅつ

東城とうじょう王おうが501年ねん12月に暗殺あんさつされた後のち、首都しゅと熊くま津つ（忠清ただきよ南道みなみどう公おおやけ州しゅう市し）で即位そくいした。暗殺あんさつ者しゃの衛士えじ佐平さへい（禁きん軍ぐんを司つかさどる1等とう官かん）の苩加は加か林りん城じょう（忠清ただきよ南道みなみどう扶余郡ぐん林はやし川面かわも）に拠よって抵抗ていこうしたが、すぐに鎮圧ちんあつされた。武たけ寧やすし王おうはしばしば漢江かんこう流域りゅういきに対たいする高句麗こうくり・靺鞨の侵入しんにゅうを撃退げきたいし、512年ねんには高句麗こうくりに壊滅かいめつ的てき打撃だげきを与あたえている。521年ねんには中国ちゅうごく南朝なんちょうの梁りょうに入朝にゅうちょうして「百済くだらはかつて高句麗こうくりに破やぶられ何なん年ねんも衰弱すいじゃくしていたが、高句麗こうくりを破やぶって強国きょうこくとなったので朝貢ちょうこうできるようになった。」と上表じょうひょうした。これにより梁はりからは、もとの〈都みやこ督ただし百済くだら諸しょ軍事ぐんじ・寧やすし東大とうだい将軍しょうぐん・百済くだら王おう〉から〈使つかい持じ節ぶし・都みやこ督ただし百済くだら諸しょ軍事ぐんじ・寧やすし東大とうだい将軍しょうぐん・百済くだら王おう〉に爵号を進すすめられた。523年ねん5月がつに死去しきょし、武たけ寧やすし王おうと諡おくりなされた。

『日本書紀にほんしょき』の記述きじゅつ

武たけ寧やすし王おうの出生しゅっしょうの話はなしとして雄略天皇ゆうりゃくてんのう紀き5年ねん（461年ねん）条じょうに、百済くだらの加須かぞ利とし君くん（蓋ぶた鹵王）が弟おとうとの昆こん支ささえ王おうを倭国わのくにに貢みつげる際さい、自身じしんのすでに妊娠にんしんした婦ふを与あたえて、途中とちゅうで子こが生うまれれば送おくり返かえせと命めいじた。一行いっこうが筑紫つくしの各かく羅ら嶋しま（かからのしま・加唐島かからしま）まで来きたところ、一いち児じが生うまれたので嶋しま君くんと名付なづけて百済くだらに送おくり返かえした。これが武たけ寧やすし王おうであるとしている^[2]。また、即位そくいについては武たけ烈れつ天てん皇紀こうき4年ねん（502年ねん）是ぜ歳とし条じょうには百済くだらの末すえ多た王おう（牟大、東城とうじょう王おう）が暴虐ぼうぎゃくであったので、百済くだらの国人くにびとは王おうを殺ころし、嶋しま王おうを立たてて武たけ寧やすし王おうとしたとしている。

継つぎ体たい天皇てんのう6年ねん（512年ねん）に、任にん那なの上うえ哆唎（オコシタリ、現在げんざいの全羅北道ぜんらほくどう鎮安郡ぐん及および完かん州しゅう郡ぐん）・下しも哆唎（アロシタリ、忠清ただきよ北道ほくどう錦山にしきやま郡ぐん及および論山ろんざん市し）・娑しゃば陀（サダ、全羅南道ぜんらなんどう求もとめ礼れい郡ぐん）・牟婁むろ（ムロ、全羅北道ぜんらほくどう鎮安郡ぐん竜りゅう潭面）の四よん県けん、7年ねん（513年ねん）に己おのれ汶（コモン、全羅北道ぜんらほくどう南原なんばら市し）・滞とどこお沙すな（タサ、慶尚南道けいしょうなんどう河東かとう郡ぐん）の地ちをそれぞれ、倭国わのくにから百ひゃく済ずみに譲渡じょうとした。これに応こたえて百済くだらは516年ねんに、日本にっぽんに送おくっていた博士はかせ段だん楊爾に代かえて五経ごきょう博士はかせ漢かん高安たかやす茂しげるを貢みつげ上じょうした。

王妃おうひ

朝鮮ちょうせん古代こだい史し学者がくしゃの盧の重しげる国こく^[3]、金きむ鉉球^[4]、洪ひろし性せい和わ（朝鮮ちょうせん語ご: 홍성화、建国けんこく大学だいがく）^[5]^[6]、金きむ起おこり燮（朝鮮ちょうせん語ご: 김기섭、公おおやけ州しゅう大学だいがく）^[7]など韓国かんこくの研究けんきゅう者しゃたちは、百済くだらの第だい18代だいの王おう・腆支王おうの王妃おうひである八須はちす夫人ふじんは倭人わじんだったと主張しゅちょうしており、関連かんれんして、金きむ鉉球などは、昆こん支ささえ王おう、東城とうじょう王おう、武たけ寧やすし王おうの王妃おうひも倭人わじんであり、倭国わのくに王家おうけが政策せいさく的てきに婚姻こんいんさせたと主張しゅちょうしている。

子孫しそん

523年ねんの武たけ寧やすし王おう没後ぼつご、百済くだら王おうを継承けいしょうしたのは聖王せいおう（余よ明あきら）であるが、『日本書紀にほんしょき』は513年ねんに百済くだら太子たいし淳じゅん陀が倭国わのくにで死去しきょしたと伝つたえる。武たけ寧やすし王おうの本来ほんらいの太子たいしは淳じゅん陀であるが、倭国わのくにで死去しきょしたために余よ明あかりが代かわって太子たいしとなったという解釈かいしゃくも可能かのうである。この淳じゅん陀太子こがいつ倭国わのくにに来きたのか記載きさいはないが、武たけ寧やすし王おうは41歳さいに至いたるまで倭国わのくにで生活せいかつしていたとして、淳あつし陀は倭国わのくにで生うまれ、そのまま倭国わのくにに留とどまっていたと主張しゅちょうする説せつがある。

桓武かんむ天皇てんのう（今日きょうの皇室こうしつの祖そ）の生母せいぼである高野たかの新しん笠かさは、武たけ寧やすし王おうを遠祖えんそとする渡来とらい人じん系けいの和かず氏しの出身しゅっしんという記述きじゅつが『続ぞく日本にっぽん紀き』にあるものの、武たけ寧やすし王おうの没年ぼつねん(523年ねん）および純じゅん陁太子この没年ぼつねん（513年ねん？）と高野たかの新しん笠かさの推定すいてい生年せいねん（720年ねん頃ごろ）には約やく200年ねんの開ひらきがあり、実際じっさいに武たけ寧やすし王おうの子孫しそんであったかどうかは朝鮮ちょうせん側がわの資料しりょうから見みても不明瞭ふめいりょうであるため、疑問ぎもん視しする学説がくせつもある（詳細しょうさいは高野たかの新しん笠かさの項目こうもくを参照さんしょう）。新しん笠かさは皇后こうごうではなかったが（皇后こうごうは井上いのうえ内親王ないしんのう）、桓武かんむ天皇てんのうの生母せいぼとして皇すめらぎ太夫たゆう人じんとされ、死後しごに皇太后こうたいごうと追贈ついぞうされた。