(Translated by https://www.hiragana.jp/)
水門 - Wikipedia コンテンツにスキップ

水門すいもん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ドラムゲートの構造こうぞう
ヒンジ式しき水門すいもん
ヒューズゲート

水門すいもん（すいもん）とは、河川かせんまたは水路すいろを横断おうだんする形かたちで設もうけられる流水りゅうすいを制御せいぎょするための構造こうぞう物ぶつのうち河川かせん堤防ていぼうを分断ぶんだんする形かたちで設置せっちされるもの[1]。河口かこう付近ふきんを含ふくむ河川かせんや運河うんが、用水路ようすいろ、湖沼こしょう、貯水池ちょすいち、港湾こうわんなどに設もうけられる。水門すいもんは流水りゅうすいを制御せいぎょするとともに高水たかみず時じには堤防ていぼうとしての機能きのうをもつ[1]。古ふるくは「水みずの門もん（ミナト）」として「港湾こうわん」の意味いみも持もち、『古事記こじき』や『日本書紀にほんしょき』では「水門すいもん」と書かかれている。

なお、河川かせんまたは水路すいろを横断おうだんする形かたちで設もうけられる流水りゅうすいを制御せいぎょするための構造こうぞう物ぶつには水門すいもんのほかに樋とい門もんがあり[1]、本ほん項こうでは樋とい門もんも扱あつかう。

流水りゅうすいの制御せいぎょ施設しせつ

[編集へんしゅう]
水門すいもん（釜口かまぐち水門すいもん）

流水りゅうすいの制御せいぎょ施設しせつには水門すいもんのほか樋とい門もんや堰せきがある。

水門すいもんの機能きのう

[編集へんしゅう]

河川かせんまたは水路すいろを横断おうだんする形かたちで設もうけられる流水りゅうすいを制御せいぎょするための構造こうぞう物ぶつのうち河川かせん堤防ていぼうを分断ぶんだんする形かたちで設置せっちされるもので、水門すいもんは堤防ていぼう機能きのうを有ゆうする[1]。

水門すいもんには役割やくわりに応おうじて、河川かせんなどの計画けいかく的てきな分流ぶんりゅうのために設もうけられる分流ぶんりゅう水門すいもん、湖沼こしょうの水位すいい操作そうさや塩害えんがいの防止ぼうしのために設もうけられる調節ちょうせつ水門すいもん、高潮こうちょうによる河川かせんの水位すいい上昇じょうしょうや津波つなみを防ふせぎ氾濫はんらん（洪水こうずい）を防ふせぐために設もうけられる防潮ぼうちょう水門すいもん、支ささえ川かわに本川ほんがわの水みずが逆流ぎゃくりゅうしてくるのを防ふせぐために設もうけられる制せい水門すいもんなどの種類しゅるいがある。ただし、実際じっさいに設置せっちされる水門すいもんは複数ふくすうの目的もくてきをもつことが多おおく、実際じっさいにある水門すいもんを厳密げんみつに分類ぶんるいすることにはあまり意味いみがない。

樋とい門もんとの区別くべつ

[編集へんしゅう]

樋とい門もん（ひもん）も水門すいもんと同おなじく河川かせん（合流ごうりゅうする河川かせんの支ささえ川かわ。水門すいもんが架かかる河川かせんに比くらべ小規模しょうきぼ）または水路すいろを横断おうだんする形かたちで設もうけられる流水りゅうすいを制御せいぎょするための構造こうぞう物ぶつ（主おもには河川かせん水すいの逆流ぎゃくりゅう防止ぼうし機能きのう）であるが、樋とい門もんは堤つつみ体内たいないに樋とい管かん（ひかん）という暗渠あんきょを挿入そうにゅうして設置せっちされるものをいい[1]、普段ふだんは河川かせんから農業のうぎょう用水ようすいなどを取とり込こむための門もんである。

樋とい門もんの設計せっけいは、従来じゅうらいは剛つよし構造こうぞうでなされたが、これでは下したに軟弱なんじゃくな地層ちそうがある場合ばあいなどは基礎きそ工こうを施工しこうして樋とい門もんの安定あんていを図はかるため、樋とい門もんと周辺しゅうへん堤防ていぼうの土どとのなじみが悪わるくなりやすく、亀裂きれつや空洞くうどうの発生はっせいがみうけられた。 平成へいせい10年ねん11月に（財）ざいだんほうじん国土こくど開発かいはつ技術ぎじゅつセンターから『柔やわら構造こうぞう樋とい門もん設計せっけいの手引てびき』が発行はっこうされ、それ以降いこうの樋とい門構もんがまえ造物ぞうぶつはすべてこの手引てびきに従したがい、柔やわら構造こうぞうで設計せっけいすることとなっている。

樋とい門もん・樋とい管かんにはフラップゲートの他ほか、よく見みかけられるローラーゲート及およびスルースゲートが設置せっちされ、開閉かいへい方式ほうしきには手動しゅどうと電動でんどうがある。軸じく構造こうぞうはラックとスピンドル式しきがあり、前者ぜんしゃは閉止へいし速度そくどが速はやいため水密すいみつゴムが適てきし、ゴムが破断はだんしないよう戸と当あたりが直線ちょくせん状じょうの四角よつかど型がたのゲートになる。後者こうしゃは閉止へいし速度そくども遅おそく金属きんぞく面めんによる水密すいみつとなるため丸まる型がたのゲートもある。材質ざいしつもSS製せいからSUS、強度きょうど向上こうじょうした二に相そうSUS製せいもある。

樋とい門もんとして設置せっち後ごにその役割やくわりを終おえ、堤つつみ体からだ部分ぶぶんを道路どうろとして転用てんようし、樋とい門もん部分ぶぶんの構造こうぞう物ぶつを道路どうろ橋きょうとして活用かつようする場合ばあいもある。主おもな樋とい門もんを参照さんしょう。

堰せきとの区別くべつ

[編集へんしゅう]

堰せき（せき）とは河川かせんの流水りゅうすいを制御せいぎょするための構造こうぞう物ぶつのうち堤防ていぼう機能きのうをもたないものをいう[2]。

ただし、水門すいもんには河川かせん付近ふきんに設置せっちされる防潮ぼうちょう水門すいもんのように外見がいけん上じょうは堰せき（河口かこう堰せき）と判別はんべつしにくいものがある[3]。例たとえば、隣となり合あって設置せっちされている常陸ひたち川がわ水門すいもんと利根川とねがわ河口かこう堰せきは、その外見がいけんが非常ひじょうに類似るいじしているが、洪水こうずい時じ、常陸ひたち川がわ水門すいもんは扉とびらを閉とじて水みずの往来おうらいを止とめて利根川とねがわ本川ほんがわから常陸利根川ひたちとねがわ（霞ヶ浦かすみがうら）への逆流ぎゃくりゅうを阻止そしする（堤防ていぼうとしての機能きのう）一方いっぽう、利根川とねがわ本川ほんがわにかかる利根川とねがわ河口かこう堰せきは扉とびらを開放かいほうして水みずをなるべく多おおく流ながそうとする（堤防ていぼうとしては機能きのうしていない）。

水門すいもんの構造こうぞう

[編集へんしゅう]

現在げんざい日本にっぽんで設置せっちされている水門すいもんの多おおくは、ローラーゲートといわれる門扉もんぴ方式ほうしきを採用さいようしている。ローラーゲートは、鋼鉄こうてつなどでできた開閉かいへい用ようゲートの板いたに、ローラが付ついたもので、それをワイヤロープなどによって垂直すいちょくに持もち上あげて上下じょうげに開閉かいへいする。ローラーが付ついているため、摩擦まさつ抵抗ていこうが少すくなく大おおきな水圧すいあつがかかる大だい規模きぼな水門すいもんにも利用りようできるほか、構造こうぞう上じょう止とめ水すいが容易よういで信頼しんらい性せいが高たかいため河川かせん構造こうぞう物ぶつではよく用もちいられている。

このほかには、スルースゲート（ローラーがなく単純たんじゅんに板いたを上下じょうげに動うごかすだけ）、マイターゲート（観音開かんのんびらき式しきで上部じょうぶ構造こうぞう物ぶつがなくても良よいため、運河うんがなどで利用りようされる）、セクターゲート（蒲鉾かまぼこ型がたの扉とびら体たいが回転かいてんする方式ほうしき。ラジアルゲートともいう）などの方式ほうしきがある。

2011年ねんの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいにおいて、三陸さんりく地方ちほうでは津波つなみを防ふせごうと防潮ぼうちょう堤つつみの水門すいもん操作そうさに駆かけ付つけた消防しょうぼう団だん員いんに多おおくの犠牲ぎせい者しゃ(岩手いわて県けん内うちで48人にん)が出でた。このため岩手いわて県けんは計画けいかく中ちゅうを含ふくむ水門すいもん・門扉もんぴ約やく520基きのうち4割わり程度ていど（約やく220基き）をJアラートに連動れんどうした自動じどう閉鎖へいさ式しきとする。こうしたシステムは南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしんによる津波つなみ襲来しゅうらいが想定そうていされている和歌山わかやま県けんや三重みえ県けんでも一部いちぶ導入どうにゅうされている[4]。

こうした人ひとによる操作そうさを必要ひつようとしない水門すいもんでは、水みずの浮力ふりょくや津波つなみ、高潮こうちょうの力ちからを利用りようして陸上りくじょう・海底かいていから自動的じどうてきに起おき上あがるフラップゲート式しきも実用じつよう化かされている[5][6]。

主おもな水門すいもん

[編集へんしゅう]

主おもな樋とい門もん

[編集へんしゅう]
東西とうざい用水ようすい酒津さかづ樋とい門もん（岡山おかやま県けん倉敷くらしき市し）
旧きゅう土砂どしゃ吐樋門もんと旧きゅう中ちゅう樋とい取水しゅすい口こう
百太郎ももたろう堰せき旧きゅう樋とい門もん

水門すいもんに係かかわる出来事できごと

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう・出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d e 高橋たかはし裕ひろし『河川かせん工学こうがく』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい 1990年ねん 223頁ぺーじ
  2. ^ 高橋たかはし裕ひろし『河川かせん工学こうがく』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい 1990年ねん 225頁ぺーじ
  3. ^ 高橋たかはし裕ひろし『河川かせん工学こうがく』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい 1990年ねん 235頁ぺーじ
  4. ^ 岩手いわて 水門すいもん閉鎖へいさを自動じどう化か／「津波つなみ」発令はつれい時じ 現地げんち作業さぎょう不要ふように『読売新聞よみうりしんぶん』朝刊ちょうかん2017年ねん7月がつ21日にち(社会しゃかい面めん)
  5. ^ フラップゲート式しき水すい災害さいがい対策たいさく設備せつび日立造船ひたちぞうせん（2018年ねん4月がつ17日にち閲覧えつらん）
  6. ^ フラップゲート式しき水門すいもん 海底かいてい設置せっち型がたを初はつ受注じゅちゅう 日立ひたち造づくり、岩手いわて県けんから『日刊にっかん工業こうぎょう新聞しんぶん』2017年ねん10月がつ31日にち（機械きかい・ロボット・航空機こうくうき面めん）
  7. ^ 「寝耳ねみみに水みず ゼロメートル地帯ちたい」『中國ちゅうごく新聞しんぶん』昭和しょうわ46年ねん9月がつ6日にち 15面めん

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]
ウィキメディア・コモンズには、水門すいもんに関連かんれんするメディアがあります。
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=水門すいもん&oldid=100587087」から取得しゅとく