(Translated by https://www.hiragana.jp/)
注文 - Wikipedia コンテンツにスキップ

注文ちゅうもん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

注文ちゅうもん(ちゅうもん/しるしぶみ)とは、日本にっぽん古文書こもんじょのひとつ。

人名じんめい物品ぶっぴん種類しゅるい数量すうりょうひと形式けいしきしるしたもの。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

おも依頼いらいけて物事ものごと調査ちょうさするさいひかえもしくは明細めいさいなどのふくすすむ文書ぶんしょとして作成さくせいされるもので、注進ちゅうしんじょうちが正式せいしき提出ていしゅつされることを前提ぜんていにした文書ぶんしょではない。

中世ちゅうせい発達はったつし、人名じんめいしるした「交名注文ちゅうもん」や調達ちょうたつすべき物資ぶっし明細めいさいしるした「支度したく注文ちゅうもん」、合戦かっせん負傷ふしょうしたもの負傷ふしょう状況じょうきょうしるした「合戦かっせん手負ておい注文ちゅうもん」、ったてきくびについてしるした「分捕ぶんど注文ちゅうもん」などがあった。

文献ぶんけんてきには軍記ぐんきぶつである『源平げんぺい盛衰せいすい』27かん14世紀せいき)に「おのおの聞書ききがきの注文ちゅうもんに~」としるされ、確認かくにんされる。

注文ちゅうもんによる研究けんきゅう

[編集へんしゅう]

軍事ぐんじ

[編集へんしゅう]

合戦かっせん手負ておい注文ちゅうもん」の研究けんきゅうによって、中世ちゅうせい当時とうじ戦傷せんしょうりつ解明かいめいでき、南北なんぼくあさ14世紀せいき)の合戦かっせんにおいては、7 - 8わり弓矢ゆみやによる負傷ふしょうとわかっている[1][2]ぜん31とう軍馬ぐんば戦傷せんしょう記録きろくされているが、そのうち、61%は白兵戦はくへいせんによるきずは35%、きずは3%となっており、こちらもによる負傷ふしょうりつたかい。一方いっぽう致死ちしりつ場合ばあいひくく、太刀たち薙刀なぎなたによるきずやりによるきずたかくなっている[3]

また、後世こうせいぐんちゅうじょうとの比較ひかくによって、鉄砲てっぽう登場とうじょう戦傷せんしょうりつ変化へんかもわかり、えいろく6ねんから慶長けいちょう5ねんあいだ(1563ねん - 1600ねん)のぐんちゅうじょうによる分析ぶんせきでは、鉄砲てっぽうによる負傷ふしょうが45%、弓矢ゆみやいしつぶてが27%、やり[・かたなは28%[4]と、注文ちゅうもん記述きじゅつ合戦かっせんでの武器ぶき主流しゅりゅう変化へんか解明かいめい貢献こうけんしている。

しかし、がわのみの記録きろくであり、死因しいんはほとんど不明ふめいで、とく攻撃こうげきがわ状況じょうきょうかんしては一切いっさい不明ふめいである。そのため戦闘せんとうほう変化へんかなどを解明かいめいするのには不完全ふかんぜんであり、攻撃こうげきがわ状況じょうきょう把握はあくする必要ひつようがある[5]。また記録きろく対象たいしょう士分しぶん以上いじょうかぎられ、雑兵ぞうひょう足軽あしがる軍夫ぐんぷ対象たいしょうがいであること、亡国ぼうこく敗軍はいぐんがわ基本きほんてき合戦かっせん手負ておい注文ちゅうもんぐんちゅうじょう作成さくせいしない[6]など記録きろく内容ないようかたよりがある。

くび注文ちゅうもん」にかんしては、鎌倉かまくら終期しゅうきから南北なんぼくあさ(14世紀せいき)にかけての『毛利もうり文書ぶんしょ』を調しらべた本郷ほんごう和人かずとによれば、そのほとんどが「くびひとつ○○(人名じんめい誰々だれだれった)」とあり、「くびふたつ○○」といった注文ちゅうもんまれであり、例外れいがいちゅう例外れいがいとしており[7]、それが14世紀せいき実態じったいであったと個人こじんてき見解けんかいべている。ただし、中世ちゅうせいにおける首級しゅきゅうかずではなく、だれったかを重視じゅうししたてん頭部とうぶかぶとおもさ(わせて10kgはかるえる)を考慮こうりょすれば、おおはこべたとはかんがえにくい。[8][9]

軍事ぐんじ以外いがい

[編集へんしゅう]

中世ちゅうせいにおいて、なんらかの理由りゆう家財道具かざいどうぐさえられた場合ばあいさえたがわがどういったものをさえるかを検討けんとうし、目録もくろくとしてしるした文書ぶんしょ、または、さえられたがわ不当ふとうかんじて、どういったものをさえられたかをいた文書ぶんしょを、「ざつぶつ注文ちゅうもん」、「色々いろいろぶつ注文ちゅうもん」という[10]一種いっしゅ財産ざいさん目録もくろくであり、時代じだい時代じだい変化へんか研究けんきゅうできるが、近畿きんき周辺しゅうへんのものがのこり、東国とうごく九州きゅうしゅうにはほとんどられない[11]平安へいあん末期まっきから鎌倉かまくら初期しょき12世紀せいきすえ)では、烏帽子えぼしなどもしるされている[12]鎌倉かまくら末期まっきから室町むろまち初期しょき(14世紀せいき)では、注文ちゅうもんから若狭わかさこく女性じょせい名主なぬしおおいことなどがわかっている[13]。この時代じだいとなると農具のうぐ武具ぶぐ多様たようしている[14]網野あみの善彦よしひこ注目ちゅうもくしているてんとして、あわ記述きじゅつされていることであり、庶民しょみん常食じょうしょくとしての位置いち確認かくにんできる資料しりょうである[15]。また14世紀せいき中頃なかごろ百姓ひゃくしょう注文ちゅうもんなかには、太刀たちはないが、やりあらわれている一方いっぽう女性じょせい名主なぬし注文ちゅうもんほうには武具ぶぐく、この時期じきに(すくなくとも近畿きんきけんの)女性じょせい武装ぶそうくなった可能かのうせい示唆しさされている[16]

近代きんだい商業しょうぎょう

[編集へんしゅう]

注文ちゅうもんは、のちには動詞どうしして、特定とくてい物品ぶっぴん調達ちょうたつ依頼いらいする(結果けっかとして依頼いらいした相手あいてによって依頼いらいかんする注文ちゅうもん作成さくせいされる)ことを「注文ちゅうもんする」とうようになった。近代きんだいしょう取引とりひきでは、物品ぶっぴん調達ちょうたつ依頼いらいする一般いっぱん用語ようごとしてもちいられる。なお、注文ちゅうもんすことを「発注はっちゅう(はっちゅう)する」、注文ちゅうもんけることを「受注じゅちゅう(じゅちゅう)する」という。

広辞苑こうじえん』(岩波書店いわなみしょてん)には、「注文ちゅうもん生産せいさん」や「注文ちゅうもんちょう」の項目こうもくがある。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 近藤こんどう好和よしかず中世ちゅうせいてき武具ぶぐ成立せいりつ武士ぶし吉川弘文館よしかわこうぶんかん 
  2. ^ 鈴木すずき眞哉しんやなぞとき日本にっぽん合戦かっせん 日本人にっぽんじんはどうたたかってきたか』講談社こうだんしゃ 
  3. ^ トマス・D・コンラン『図説ずせつ 戦国せんごく時代じだい 武器ぶき防具ぼうぐ戦術せんじゅつ百科ひゃっかはら書房しょぼう、80ぺーじ 
  4. ^ 鈴木すずき眞哉しんや鉄砲てっぽう日本人にっぽんじんよういずみしゃ 
  5. ^ 近藤こんどう好和よしかず騎兵きへい歩兵ほへい中世ちゅうせい吉川弘文館よしかわこうぶんかん、99-100ぺーじ 
  6. ^ ささあいだ良彦よしひこ図説ずせつ 日本にっぽん戦陣せんじん作法さほう辞典じてん柏木かしわぎ書房しょぼう、280ぺーじ 
  7. ^ 本郷ほんごう和人かずと軍事ぐんじ日本にっぽん 鎌倉かまくら南北なんぼくあさ室町むろまち戦国せんごく時代じだいのリアル』〈朝日あさひ新書しんしょ〉2018ねん、31ぺーじ 
  8. ^ くん閲集』
  9. ^ 山口やまぐちひろし日本人にっぽんじん給与きゅうよ明細めいさい』〈角川かどかわソフィア文庫ぶんこ〉2015ねん、192ぺーじ 
  10. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、73ぺーじ 
  11. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、100ぺーじ 
  12. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、74ぺーじ 
  13. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、82ぺーじ 
  14. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、82,85ぺーじ 
  15. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、85ぺーじ 
  16. ^ 網野あみの善彦よしひこ中世ちゅうせい再考さいこう 列島れっとう地域ちいき社会しゃかい』〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉2000ねん、85-86ぺーじ 

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 高橋たかはし正彦まさひこ注文ちゅうもん」(『国史こくしだい辞典じてん 9』(吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1988ねんISBN 978-4-642-00509-8
  • 保立ほたて道久みちひさ注文ちゅうもん」(『日本にっぽんだい事典じてん 4』(平凡社へいぼんしゃ、1993ねんISBN 978-4-582-13104-8

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]