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海水かいすいじゅん変動へんどう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
地質ちしつがくてき安定あんていしている(隆起りゅうき沈降ちんこうちいさい23の潮位ちょうい観測かんそくてん計測けいそくされた海水かいすいじゅんとしやく2mmずつ上昇じょうしょうしている。
最終さいしゅうごおり以降いこう海水かいすいじゅん変化へんか

海水かいすいじゅん変動へんどう(かいすいじゅんへんどう)という言葉ことばは、おも地質ちしつ時代じだい世界せかいてき海水かいすいじゅん陸地りくちたいする海面かいめん相対そうたいてきたかさ)の変化へんかたいしてもちいられる。海水かいすいじゅん上昇じょうしょうすることはうみすすむ(かいしん)、下降かこうすることはうみ退すさ(かいたい)とばれる。

現在げんざいおよび未来みらい海水かいすいじゅん変化へんか予測よそくさいに、過去かこ海水かいすいじゅん変化へんかあきらかにすることの重要じゅうようせい認識にんしきされるようになった。気候きこう研究けんきゅうしゃ現在げんざい氷河ひょうが時代じだいとみなし、地質ちしつ時代じだいなかでも海水かいすいじゅん比較的ひかくてきひくく、海水かいすいじゅん上昇じょうしょう低下ていか頻繁ひんぱんこる時代じだい認識にんしきしている。過去かこ記録きろくから、およそ1まん8せんねんまえ最終さいしゅうごおり最盛さいせいから6せんねんまえまでのあいだにかけて、海水かいすいじゅんが120m以上いじょう上昇じょうしょうしたことがわかっている。3せんねんまえ以降いこう19世紀せいきまでの海水かいすいじゅん変動へんどうりつはほぼ一定いっていで0.1-0.2 mm/とし程度ていどであったが、1900ねん以降いこうは1-3 mm/とし上昇じょうしょうしている[1]みぎ)。

堆積たいせきぶつ記録きろく

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地質ちしつ学者がくしゃながあいだ堆積たいせきぶつあきらかな周期しゅうきせい見出みいだしその原因げんいん説明せつめいしようとしてきた。この周期しゅうきせいは、おも海水かいすいじゅん上昇じょうしょう低下ていかのプロセスを堆積たいせき過程かてい反映はんえいしているというせつ有力ゆうりょくである。その記録きろくから、海水かいすいじゅんおどろくほどひく時期じき現在げんざいよりかなりたかかった時期じきかえしがあり、このよう現象げんしょうはしばしば世界せかい規模きぼこったことがわかってきた。たとえば、1まん8せんねんまえ最終さいしゅうごおり最盛さいせいには地球ちきゅう全体ぜんたい気温きおん低下ていかしており、すうじゅうまん立方りっぽうkmのこおりが、北欧ほくおう北米ほくべい中心ちゅうしんとした大陸たいりく氷河ひょうがこおりゆかとしてかさなった。海水かいすい構成こうせいしていた水分すいぶん陸上りくじょうこおりとなったため、海水かいすいりょう減少げんしょうしたことにくわえ、水温すいおんひくいためにその体積たいせき収縮しゅうしゅくしたため、海面かいめんやく120m低下ていかサンゴ礁さんごしょう地上ちじょうのこされ、海岸かいがんせん現在げんざいよりもおきとおくなった。この海水かいすいじゅんもっと低下ていかした時代じだいりくつながったアジアとアラスカのあいだベーリング陸橋りっきょう)をとおってきたアメリカに人類じんるい移住いじゅうしたとしんじられている。

海水かいすいじゅん変動へんどう気温きおん変化へんかよこじくせんねんたてじく現在げんざい比較ひかくした相対そうたいてき海水かいすいじゅんうえ過去かこ90まんねんした過去かこ14まんねん

およそ12まんねんまえのひとつまえあいだごおりみじかあいだだが海水かいすいじゅん今日きょうよりもやく6mたかかった時期じきがあった。その証拠しょうこバハマがけ沿ってなみきざまれたノッチ(隆起りゅうきサンゴ礁さんごしょう海岸かいがん根元ねもとが、なみちから海中かいちゅう生物せいぶつによりなが年月としつきをかけてけずられた地形ちけい)の存在そんざいである。また、イギリスりょう西にしインド諸島しょとうにある西にしカイコスとう沿岸えんがん南西なんせいには、更新こうしんサンゴ礁さんごしょう現在げんざい海水かいすいじゅんより3mたか位置いちのこされているという事実じじつもある。これらの海水かいすいめんしずんでいたはずのサンゴ礁さんごしょうサンゴ海岸かいがん堆積たいせきぶつは、そのサンゴ礁さんごしょう成長せいちょうできる十分じゅうぶん時間じかん海水かいすいじゅんたかかったことをしめす(この上昇じょうしょうしたぶん海水かいすいが、融解ゆうかいした南極なんきょくごおりゆか由来ゆらいなのかグリーンランド由来ゆらいなのかはまだわかっていない)。このように過去かこ海水かいすいじゅん位置いちしめたような証拠しょうこは、世界せかい豊富ほうふつかっている。

また、水分すいぶん蒸発じょうはつさいしては、大気たいき海洋かいよう酸素さんそ同位どういたいδでるた18O)も変化へんかする。海水かいすい蒸発じょうはつするとき、よりかる酸素さんそ16O )で構成こうせいされるみず分子ぶんし割合わりあい水蒸気すいじょうきなかおおくなり、蒸発じょうはつした水蒸気すいじょうき降雪こうせつしてこおりゆか固定こていされると海水かいすいちゅうにはおも酸素さんそ18O)を水分すいぶん割合わりあいたかくなる。つまり、酸素さんそ同位どういからだ変動へんどうは、気温きおん変動へんどうおよび大陸たいりくごおりゆかりょうしめすものとなる。こおりとこ堆積たいせきぶつのコア、珊瑚礁さんごしょう化石かせきなどにふくまれている酸素さんそ同位どうい対比たいひ解析かいせきすることによって「こおりゆか規模きぼ変化へんか地球ちきゅう規模きぼ海水かいすいじゅん変化へんか」として連続れんぞくてきあきらかにすることが可能かのうとなっている。

海水かいすいじゅん変動へんどう原因げんいん

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ぜん地球ちきゅう規模きぼ平均へいきん海水かいすいじゅんは、固体こたいである地殻ちかく表面ひょうめん形状けいじょう液体えきたいであるぜん海水かいすい体積たいせきによりさだまる。たとえば近年きんねん地球ちきゅう温暖おんだん問題もんだい考慮こうりょすべきすうせんねんからすうまんねん時間じかんスケールでは地殻ちかく形状けいじょう変化へんかちいさいとかんがえられるので、海水かいすいじゅん変動へんどうのほとんどはぜん海水かいすい体積たいせき変化へんかによるとなせる。そしてぜん海水かいすい体積たいせき変化へんかは、ぜん海水かいすいりょう変化へんかと、温度おんどによる体積たいせき変化へんかすなわちねつ膨張ぼうちょう効果こうかの2つからなる。ぜん海水かいすいりょう変化へんかおも陸上りくじょうこおりとの相互そうご変換へんかんによる。流氷りゅうひょう北極ほっきょくかい氷山ひょうざんのように海面かいめん完全かんぜんいているこおりは、融解ゆうかいしてもぜん海水かいすい体積たいせきえないので、正確せいかくにはぜん海水かいすいりょうとは液体えきたいである海水かいすい完全かんぜんいているこおりとの合計ごうけいりょうというべきである。

なが時間じかんじくでは海洋かいようかたち変化へんか陸海りくかい分布ぶんぷ海水かいすいじゅんめる要因よういんになる。また地球ちきゅう内部ないぶから地表ちひょうへのみず出入でいりによる、地表ちひょうすいぜん質量しつりょう変化へんか要因よういんとなることもある。

過去かこ5おくねん海水かいすいじゅん復元ふくげん(2つの研究けんきゅう結果けっか)。くろぼうせんしめしているのが最後さいごこおりあいだごおり変動へんどう。ほとんどの地質ちしつ時代じだいで、なが時間じかん平均へいきん海水かいすいじゅん現在げんざいよりもたかいことに注目ちゅうもくたてじく現在げんざい比較ひかくした相対そうたいてき海水かいすいじゅんよこじく単位たんいひゃくまんねんおよび地質ちしつ区分くぶん

地球ちきゅうなが歴史れきしあいだでは、大陸たいりく移動いどうによりりく配置はいち現在げんざいとはかなりちがった形状けいじょうであった。またプレートテクトニクス観点かんてんからは、海洋かいようプレート生産せいさん活発かっぱつになると海洋かいようそこ拡大かくだいするため(現在げんざいインド大陸たいりくユーラシア大陸たいりくのように大陸たいりく同士どうし衝突しょうとつきた場合ばあい海洋かいよう面積めんせきえ、相対そうたいてき海水かいすいじゅんひくくなるというせつもある。
大陸たいりく地殻ちかくごく付近ふきん大量たいりょうあつまった時代じだいは、堆積たいせきぶつ記録きろくからこおりあいだいちじるしく海水かいすいじゅんひくかったことがわかる。これはごくいき陸上りくじょうにはゆきこおり集積しゅうせきできるからである。りくかたまり赤道あかみち付近ふきん密集みっしゅうしている時期じきには、こおり寒冷かんれい)が海水かいすいじゅんあたえる影響えいきょうちいさい。しかしほとんどの地質ちしつ時代じだい長期間ちょうきかん平均へいきんてき海水かいすいじゅん現在げんざいよりたかい(グラフ参照さんしょう)。たとえば、はく亜紀あき(グラフの記号きごうでは"K")には現在げんざいよりも200m以上いじょうたか時期じきがあったことがわかる。現在げんざいよりも平均へいきんてき海水かいすいじゅんひくかったのは、2おく5せんまんねんまえP-T境界きょうかいペルムさんじょう境界きょうかい付近ふきんあいだのみである。

過去かこすうひゃくまんねん新生代しんせいだい氷河ひょうが時代じだいにおけるこおり-あいだごおりサイクルでは、海水かいすいじゅんは100m以上いじょう変動へんどうしめしている。おもうみから蒸発じょうはつしたみずが(ほとんどは北半球きたはんきゅうで)こおりゆかとして固定こていされ成長せいちょうするとき海水かいすいじゅん低下ていか後退こうたいするときに融解ゆうかいすい海洋かいよう供給きょうきゅうされることによって海水かいすいじゅん上昇じょうしょうするからである。現在げんざいグリーンランド南極なんきょくこおりゆかけると、海水かいすいじゅんはおよそ80m上昇じょうしょうすると予測よそくされている。

日本にっぽんられている海水かいすいじゅん上昇じょうしょう

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だいよん後期こうきかんしんきただい規模きぼ海水かいすいじゅん上昇じょうしょううみしん現象げんしょう)が、日本にっぽん列島れっとうでもられている。ひとまえあいだごおり(エーミアンあいだごおり)のときこったのが下末しもずえ吉海よしうみすすむ現在げんざいあいだごおりになってからきた6000ねんまえのものが縄文じょうもんうみすすむ8世紀せいきから12世紀せいきにかけてのものが平安へいあんかいすすむ(ロットネストうみすすむ)とばれている。縄文じょうもん時代じだい後期こうきから古墳こふん時代じだい初頭しょとうにかけて海水かいすいじゅんひく時期じき可能かのうせいがあり、きた陸海りくかい退すさ提唱ていしょうされている[1]

ローズ・フェアブリッジ教授きょうじゅen)の海水かいすいじゅん曲線きょくせんによると、8世紀せいき初頭しょとう海水かいすいめんは、現在げんざい海水かいすいめんよりやく1メートルひくかった。10世紀せいき初頭しょとうには現在げんざい海水かいすいめんまで上昇じょうしょうした。11世紀せいき前半ぜんはんには現在げんざい海水かいすいめんよりやく50センチメートルひくくなった。12世紀せいき初頭しょとう現在げんざい海水かいすいめんよりやく50センチメートルたかくなった[2]。『更級さらしな日記にっき』で真野まの長者ちょうじゃいえげん千葉ちばけん市川いちかわ)が水没すいぼつした原因げんいんはこのうみしんであるとされる。またこのころヨーロッパ中世ちゅうせい温暖おんだんであった。

その海水かいすいめん14世紀せいき後半こうはんパリアうみ退すさにより、現在げんざい海水かいすいめんから1メートル以上いじょうひくくなった。16世紀せいき中頃なかごろ中世ちゅうせいうみすすむにより上昇じょうしょうしたが、それでも現在げんざい海水かいすいめんよりはひくかった[2]江戸えど時代じだい現在げんざい海水かいすいめんよりやく50センチメートルひくく、小野おのただしひろし江戸えどかい退すさんだ。このパリアうみ退たいから江戸えどかい退すさ時期じきしょうこおりとされる[3]

最終さいしゅうごおり以降いこう海水かいすいじゅん変動へんどう

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過去かこ12まんねん海水かいすいじゅん変動へんどうのグラフ[4]ると

  • およそ2まんねんまえ最終さいしゅうごおり以降いこう海水かいすいじゅんだい規模きぼごおりゆか融解ゆうかい結果けっか120m以上いじょう上昇じょうしょうした(とし平均へいきん6mm)。
  • 急激きゅうげき海水かいすいじゅん上昇じょうしょうが1まん5せんねんまえから6せんねんまえまでのあいだこり90m(上昇じょうしょうりつ平均へいきん10mm/とし上昇じょうしょうした。現在げんざいから過去かこ2まんねん平均へいきんすると3mm/としである(急激きゅうげき変化へんかのぞく)。
  • やく1まん4せん200ねんまえ前後ぜんご500年間ねんかんほどで、融解ゆうかいすいのパルス(Meltwater Pulse 1A、mwp-1A), という重要じゅうよう出来事できごとこった。このとき海水かいすいじゅんはおよそ20m上昇じょうしょうし、上昇じょうしょうりつはおよそ40mm/としである。
    近年きんねん研究けんきゅうでは北半球きたはんきゅうヤンガードリアスよりもはや南半球みなみはんきゅう寒冷かんれい影響えいきょうあらわれており(Huelmo/Mascardi Cold Reversal)、寒冷かんれい南極なんきょく融解ゆうかいすいおも原因げんいんとしてみなみからきたつたわったということをしめしている。
  • 地質ちしつがくてきデータから、世界せかいてき海水かいすいめん過去かこ6せん年間ねんかん人類じんるい文書ぶんしょ記録きろくのこすようになるずっとまえ)、徐々じょじょ現在げんざいのレベルまで上昇じょうしょう平均へいきんでおよそ0.5mm/とし過去かこ3せん年間ねんかん平均へいきんして0.1-0.2mm/としのペースで上昇じょうしょうした。
  • なお、ローマ時代じだい文献ぶんけんからは、イタリアでは紀元きげんすうひゃくねん海水かいすいじゅん安定あんていしていたということがわかっている。

英語えいごばんSea level rise 12:18, 29 Mar 2005 より、地質ちしつ時代じだい部分ぶぶん抜粋ばっすい翻訳ほんやくさい編集へんしゅう加筆かひつした。

出典しゅってん

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  1. ^ ふじ則雄のりお, 2002, きた陸海りくかい退すさ the Holeurileu Regression : 縄文じょうもん後期こうき古墳こふん初頭しょとう海水かいすいめん低下ていか提唱ていしょう , 金沢かなざわ星稜せいりょう大学だいがく論集ろんしゅう, だい36かん, だい2ごう, p72.
  2. ^ a b UNESCO, 1963, CHANGES OF CLIMATE (PDF) Proceedings of the Rome Symposium orgunized by Unesco und the World Meteorological Orgunization, p238.
  3. ^ ふじ則雄のりお, 2004, 縄文じょうもん時代じだいにおける自然しぜん環境かんきょう (3)自然しぜん環境かんきょう要因よういん相関そうかんせい, 金沢かなざわ星稜せいりょう大学だいがく論集ろんしゅう1, だい37かんだい3ごう, p17.
  4. ^ IPCC TAR, figure 11.4(2002ねん3がつ20日はつか時点じてんアーカイブ

関連かんれん項目こうもく

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