生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくてき循環じゅんかん

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生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくてき循環じゅんかん(せいぶつちきゅうかがくてきじゅんかん、えい: Biogeochemical cycle)は、生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくにおいて、地球ちきゅううえ物質ぶっしつ生物せいぶつおよび無生物むせいぶつあいだ移動いどうし、循環じゅんかんしていることを用語ようご単一たんいつおおきな循環じゅんかん経路けいろがあるという意味いみではなく、なが時間じかんスケールでたとき、地球ちきゅうじょうかく物質ぶっしつ様々さまざまなルートで循環じゅんかんし、さい利用りようされているということを総称そうしょうしてあらわ言葉ことばである。全体ぜんたいとして物質ぶっしつさい利用りようされるが、循環じゅんかん経路けいろ途中とちゅうには物質ぶっしつ長時間ちょうじかんわたって蓄積ちくせきされる場合ばあいもある。

みず循環じゅんかんのモデル

地球ちきゅうじょうのすべての元素げんそおよびそれらから構成こうせいされる個々ここ分子ぶんし鉱物こうぶつ化学かがく物質ぶっしつ生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくてき循環じゅんかん一部いちぶである。生体せいたい構成こうせいする物質ぶっしつ生体せいたい物質ぶっしつ)も、このおおきな循環じゅんかん経路けいろ一部いちぶをなしている。循環じゅんかん経路けいろには、生物せいぶつてきなもの(生物せいぶつけん)とともに、みず水圏すいけん)やりく岩石がんせきけん)、大気たいき大気圏たいきけん)といった無生物むせいぶつてきなものがふくまれる。

地球ちきゅうじょう物質ぶっしつりょう厳密げんみつには一定いっていではない。なく隕石いんせき宇宙塵うちゅうじんとして少量しょうりょう物質ぶっしつ地球ちきゅうがいから集積しゅうせきつづけており、一方いっぽう大気たいきちゅうからは水素すいそヘリウム宇宙うちゅう空間くうかん放出ほうしゅつされつづけている。合計ごうけいでは地球ちきゅう質量しつりょうはわずかながら減少げんしょうつづけている[1]。しかしこれは地球ちきゅうそう質量しつりょうからすればごく微量びりょうであり、生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがく議論ぎろん考慮こうりょされることは基本きほんてきにはない。したがって、地球ちきゅうじょう物質ぶっしつ実質じっしつてきには閉鎖へいさけい構成こうせいしており、ながればすべて循環じゅんかんすることとなる。

たいして、エネルギー太陽光たいようあきらかたち外部がいぶから随時ずいじ地球ちきゅう供給きょうきゅうされており、一方いっぽう地球ちきゅうからはねつ輻射ふくしゃなどによってエネルギーがえず宇宙うちゅう空間くうかん放出ほうしゅつされている[2]地球ちきゅうのエネルギー収支しゅうし記事きじ参照さんしょう)。地球ちきゅうのエネルギー収支しゅうし基本きほんてきにはゼロで、平衡へいこう状態じょうたいたもっている。ただし、その平衡へいこう位置いち短期たんきてき長期ちょうきてきにずれることはしばしばこっており、その原因げんいんとしては太陽たいようがわ変動へんどうたとえば太陽たいようの11ねん活動かつどう周期しゅうき)および地球ちきゅうがわ変動へんどうたとえばごくいきこおりゆか崩壊ほうかい温室おんしつ効果こうかガス増加ぞうか)がある。

現在げんざい地球ちきゅうについてだけでなく、過去かこから現在げんざいいたるまでの地球ちきゅうじょう物質ぶっしつ循環じゅんかん進化しんか、およびその知見ちけんもとづく未来みらい予測よそく考察こうさつ対象たいしょうである。

構成こうせい領域りょういき[編集へんしゅう]

生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくでは地球ちきゅうおおきく5つの領域りょういきけん)にけてかんがえる。

ただし、土壌どじょうけん生物せいぶつけんまたは岩石がんせきけんふくめられる場合ばあいおおい。生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくてき循環じゅんかんは、かく圏内けんないでの物質ぶっしつ移動いどう蓄積ちくせき、およびかくけんあいだ物質ぶっしつ移動いどうからなる。

物質ぶっしつ交換こうかん速度そくど[編集へんしゅう]

ある化学かがく物質ぶっしつが1つの場所ばしょ保持ほじされる期間きかん滞留たいりゅう時間じかんresidence time)で表現ひょうげんされ、長期間ちょうきかんにわたり保持ほじされる場合ばあいから短時間たんじかんのうちに交換こうかんされる場合ばあいまで幅広はばひろい。たとえば石炭せきたん鉱床こうしょう炭素たんそおくねん単位たんい貯蔵ちょぞうしており、このように長期ちょうきてき滞留たいりゅうする場所ばしょはリザーバー(reservoir)とばれる。これにたいして比較的ひかくてき短期間たんきかんしか滞留たいりゅうしないような場所ばしょ交換こうかんプール(exchange pools)とばれる。一般いっぱんにリザーバーは生物せいぶつてき要素ようそで、たいして交換こうかんプールは生物せいぶつてき要素ようそ構成こうせいされる。動物どうぶつ植物しょくぶつなどの生物せいぶつ交換こうかんプールのれいであり、生物せいぶつ炭素たんそ元素げんそ利用りようして各種かくしゅ生体せいたい物質ぶっしつタンパク質たんぱくしつ脂質ししつなど)を合成ごうせいする。生体せいたい物質ぶっしつは、生体せいたいない代謝たいしゃにより様々さまざまに(化学かがく物質ぶっしつとしての)かたちえつつ、最終さいしゅうてきには周囲しゅうい環境かんきょうちゅうふたた放出ほうしゅつされる。生体せいたい物質ぶっしつ構成こうせいしていたかく元素げんそ生体せいたいないとどまっている期間きかんは、石炭せきたん鉱床こうしょう比較ひかくするとはるかにみじかい。

モデル[編集へんしゅう]

物質ぶっしつ循環じゅんかんのモデルには、通常つうじょうボックス・モデル(box model)がもちいられる[3]。ボックスは物質ぶっしつのリザーバーをあらわし、大気圏たいきけん生物せいぶつけん海洋かいよう上部じょうぶマントル海洋かいようせい地殻ちかくなど様々さまざま場合ばあいがありうる。かくボックスのあいだ物質ぶっしつなが(flux)をあらわ矢印やじるしむすばれる。ボックスない物質ぶっしつ分布ぶんぷ均一きんいつであると仮定かていする。もっと単純たんじゅんな1ボックスモデルは1個いっこのボックスと2ほん矢印やじるし構成こうせいされ、ボックスにながれこむ矢印やじるし供給きょうきゅう(source)、ボックスからなが矢印やじるし放出ほうしゅつ(sink)をあらわす。

ボックス・モデルにしたがえば、ある物質ぶっしつ生物せいぶつ地球ちきゅう化学かがくてき循環じゅんかんは、相互そうごむすばれたリザーバーの集合しゅうごうとしてあらわされる。ある時刻じこくにおける循環じゅんかん様子ようすは、かくリザーバーのサイズ(molまたはkg)およびりゅうたばのサイズ(単位たんい時間じかんあたりの物質ぶっしつ移動いどうりょう、mol y-1またはkg y-1)であらわされる[3]

主要しゅよう循環じゅんかん[編集へんしゅう]

物質ぶっしつ循環じゅんかんは、個々ここ元素げんそ化学かがく物質ぶっしつごとに研究けんきゅうされる。れいとして、

がある。ここにげた元素げんそはすべて生体せいたい構成こうせい元素げんそとして、生物せいぶつにとってきわめて重要じゅうよう役割やくわりになっている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Is the Earth Gaining or Losing Mass?”. Astronomy. 2021ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ The Earth-Atmosphere Energy Balance”. National Weather Service. 2021ねん9がつ26にち閲覧えつらん
  3. ^ a b Encyclopedia of ocean sciences. John H. Steele, S. A. Thorpe, Karl K. Turekian. San Diego: Academic Press. (2001). ISBN 0-12-227430-X. OCLC 47355548. https://www.worldcat.org/oclc/47355548 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]