監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ

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監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ(かんさとういいんかいせっちがいしゃ)とは、2015ねん平成へいせい27ねん5月1にち施行しこう平成へいせい26ねん会社かいしゃほう改正かいせいによりあらたに導入どうにゅうされた株式会社かぶしきがいしゃ機関きかん設計せっけいであり、監査かんさやくかいわって過半数かはんすう社外しゃがい取締役とりしまりやくふく取締役とりしまりやく3めい以上いじょう構成こうせいされる監査かんさとう委員いいんかいが、取締役とりしまりやく職務しょくむ執行しっこう組織そしきてき監査かんさになうというもの。監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃ指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃなかあいだてき性格せいかくびただいさん会社かいしゃ形態けいたいとして、上場じょうじょう会社かいしゃあいだ急速きゅうそくひろまりつつある。

導入どうにゅう経緯けいい[編集へんしゅう]

2003ねん平成へいせい15ねん制定せいてい株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつ(のち会社かいしゃほう)によって、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく制度せいど参考さんこうとした指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ当時とうじ委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ制度せいど導入どうにゅうされた。従前じゅうぜん監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃして、迅速じんそく意思いし決定けっていおよ業務ぎょうむ執行しっこう機能きのう執行しっこうやく)と監督かんとく機能きのう取締役とりしまりやくかい)の分離ぶんりはかったものである。しかしながらこの機関きかん設計せっけいによると、さん委員いいんかいのそれぞれが過半数かはんすう社外しゃがい取締役とりしまりやく構成こうせいされなければならない。ほう制度せいどじょうさん委員いいんかいすべてを兼任けんにんさせることで、社外しゃがい役員やくいんすう最低さいてい2めい確保かくほすれば成立せいりつはするものの、実務じつむじょう相当そうとうすう社外しゃがい役員やくいん要求ようきゅうされる、機関きかん構成こうせいふくらみやすい制度せいどである。とりわけ日本にっぽん硬直こうちょくした経営けいえいしゃ市場いちばにおいては社外しゃがい役員やくいん確保かくほ苦慮くりょしがちであり、導入どうにゅうから10ねん以上いじょう経過けいかしても指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ移行いこうした企業きぎょうはわずか68しゃとどまっていた[1]。このほかにも、人事じんじ報酬ほうしゅう決定けっていけん社外しゃがい役員やくいん掌握しょうあくされることへの抵抗ていこうかんつよいことが普及ふきゅうさまたげるおおきな理由りゆうとしてげられている[2]

かねてよりこのさん委員いいんかいをめぐって、経済けいざいかいからはより柔軟じゅうなん機関きかん設計せっけい可能かのうとする要請ようせいもあり[3]社外しゃがい取締役とりしまりやく活用かつよう推進すいしんしてコーポレート・ガバナンス強化きょうかする観点かんてんから、2014ねん平成へいせい26ねん)に会社かいしゃほう改正かいせいされ監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ制度せいど導入どうにゅうされた[4]ほん制度せいどとの区分くぶんのため、従来じゅうらい委員いいんかい設置せっち会社かいしゃという名称めいしょう指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃあらためられた。

ほう規定きてい[編集へんしゅう]

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃでは、取締役とりしまりやくかいなか監査かんさとう委員いいんかいかれる。一方いっぽう監査かんさやく監査かんさやくかい)を設置せっちすることはできない(327じょう4こう)。またつね会計かいけい監査かんさじん設置せっち必要ひつようである(327じょう5こう)。

取締役とりしまりやくかい[編集へんしゅう]

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃにおいては、取締役とりしまりやくかいなか監査かんさとう委員いいんかい設置せっちしなければならない。監査かんさとう委員いいんかいは3めい以上いじょう監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく構成こうせいされ、その過半数かはんすう社外しゃがい取締役とりしまりやくでなければならない(331じょう6こう)。

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃにおける取締役とりしまりやくかい権限けんげん通常つうじょう取締役とりしまりやくかい類似るいじするが、取締役とりしまりやく過半数かはんすう社外しゃがい取締役とりしまりやくである場合ばあいには、399じょうの13だい5こう各号かくごうさだめる事項じこうのぞ重要じゅうよう業務ぎょうむ執行しっこう決定けってい取締役とりしまりやく委任いにんすることができる。これは指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ類似るいじする、意思いし決定けってい迅速じんそくせい重視じゅうししたものである。社外しゃがい取締役とりしまりやく過半数かはんすうたない場合ばあいであっても、定款ていかんさだめれば取締役とりしまりやくかい決議けつぎによって同等どうとう効果こうか発揮はっきすることが可能かのうとなる(399じょうの13だい6こう)。重要じゅうよう業務ぎょうむ執行しっこう決定けってい取締役とりしまりやく委任いにんしない場合ばあいにおいては、監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃ同様どうよう特別とくべつ取締役とりしまりやくによる議決ぎけつ制度せいど存在そんざいする(373じょう)。

取締役とりしまりやく任期にんきは、後述こうじゅつする監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやくのぞき、選任せんにん1ねん以内いない終了しゅうりょうする事業じぎょう年度ねんどのうち最終さいしゅうのものにかんする定時ていじ株主かぶぬし総会そうかい終結しゅうけつときまでとなる(332じょう3こう)。このてん指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ類似るいじする。

監査かんさとう委員いいんかい[編集へんしゅう]

監査かんさとう委員いいんかいかく監査かんさとう委員いいん招集しょうしゅうする(399じょうの8)。招集しょうしゅう通知つうちいち週間しゅうかん(これを下回したまわ期間きかん定款ていかんさだめた場合ばあいはその期間きかんまえまでにはっするが、監査かんさとう委員いいん全員ぜんいん同意どういによって招集しょうしゅう通知つうち不要ふようとなる。必要ひつようおうじて取締役とりしまりやく会計かいけい参与さんよ出席しゅっせき要求ようきゅうすることもできる(399じょうの9)。

決議けつぎ議決ぎけつくわわることができる監査かんさとう委員いいん過半数かはんすう出席しゅっせきし、その過半数かはんすうをもっておこなう(399じょうの10)。当該とうがい決議けつぎ特別とくべつ利害りがい関係かんけいゆうする監査かんさとう委員いいん議決ぎけつくわわることができないてん399じょうの10だい2こう)、およ定足数ていそくすう存在そんざいするてん取締役とりしまりやくかい類似るいじする(ただし定足数ていそくすう加重かじゅう不可ふかであり取締役とりしまりやくかいとはことなる)。その監査かんさやくかい同様どうよう規定きていかれている。決議けつぎ要件ようけん加重かじゅうすることができないてん、みなし決議けつぎ制度せいど存在そんざいしないてん監査かんさやくかい同様どうようである。

監査かんさとう委員いいんかい監査かんさとう委員いいん)は、つぎかかげる職務しょくむおこなう(399じょうの2だい3こう)。

  • 取締役とりしまりやく会計かいけい参与さんよおよ支配人しはいにんその使用人しようにん職務しょくむ執行しっこう監査かんさおよ監査かんさ報告ほうこく作成さくせい
    • 業務ぎょうむおよ財産ざいさん状況じょうきょう調査ちょうさ399じょうの3)。
    • 取締役とりしまりやく不正ふせい取締役とりしまりやくかいへの報告ほうこく399じょうの4)。
    • 株主かぶぬし総会そうかい提出ていしゅつ議案ぎあん瑕疵かし株主かぶぬし総会そうかいへの報告ほうこく399じょうの5)。
  • 株主かぶぬし総会そうかい提出ていしゅつする会計かいけい監査かんさじん選任せんにんおよ解任かいにんならびに会計かいけい監査かんさじん再任さいにんしないことにかんする議案ぎあん内容ないよう決定けってい
  • 監査かんさとう委員いいん以外いがい取締役とりしまりやくかんする以下いか事項じこうについての、監査かんさとう委員いいんかい意見いけん決定けってい
    • 株主かぶぬし総会そうかいにおける取締役とりしまりやく選任せんにんとうについての意見いけん監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやくについては「かく監査かんさとう委員いいん」が、それ以外いがい取締役とりしまりやくについては「監査かんさとう委員いいんかい選定せんていする監査かんさとう委員いいん」が、それぞれ選任せんにん解任かいにん辞任じにんについての意見いけん陳述ちんじゅつけんゆうする(342じょうの2)。監査かんさやく類似るいじ
    • 株主かぶぬし総会そうかいにおける取締役とりしまりやく報酬ほうしゅうとうについての意見いけん監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやくについては「かく監査かんさとう委員いいん」が、それ以外いがい取締役とりしまりやくについては「監査かんさとう委員いいんかい選定せんていする監査かんさとう委員いいん」が、それぞれ報酬ほうしゅうとうについての意見いけん陳述ちんじゅつけんゆうする(361じょう)。監査かんさやく類似るいじ

監査かんさとう委員いいんかい以下いか権限けんげんつ。

  • 取締役とりしまりやく株主かぶぬし総会そうかい提出ていしゅつする監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく選任せんにんかんする議案ぎあんについての同意どういけん344じょうの2だい1こう)。
  • 監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく選任せんにん株主かぶぬし総会そうかい目的もくてきとすること、またはそれにかんする議案ぎあん株主かぶぬし総会そうかい提出ていしゅつすることの請求せいきゅうけん344じょうの2だい2こう)。
  • 会計かいけい監査かんさじん解任かいにんけん340じょう)。当該とうがい解任かいにんは、監査かんさとう委員いいん全員ぜんいん同意どういによっておこなわなければならず、監査かんさとう委員いいんかい選定せんていした監査かんさとう委員いいんは、そのうまおよ解任かいにん理由りゆう解任かいにん最初さいしょ招集しょうしゅうされる株主かぶぬし総会そうかい報告ほうこくしなければならない(340じょう2こう3こう5こう)。
  • 会計かいけい監査かんさじん報酬ほうしゅうとうかんして同意どういする権限けんげんをもつ(399じょう)。
  • 監査かんさとう委員いいん以外いがい取締役とりしまりやく利益りえき相反あいはん取引とりひき356じょう1こう2ごう3ごう)の事前じぜん承認しょうにん当該とうがい承認しょうにんけた利益りえき相反あいはん取引とりひきは、当該とうがい会社かいしゃ損害そんがいしょうじた場合ばあい当該とうがい取締役とりしまりやく任務にんむ懈怠けたい推定すいてい排除はいじょされる(423じょう4こう)。監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ特有とくゆう規定きていである。
  • 株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎによる取締役とりしまりやく責任せきにん一部いちぶ免除めんじょへの同意どういけん当該とうがい議案ぎあん提出ていしゅつにあたり「かく監査かんさとう委員いいんの」同意どういなければならない(425じょう3こう2ごう)。
  • 定款ていかんによる「監査かんさとう委員いいん以外いがい取締役とりしまりやく」の責任せきにん一部いちぶ免除めんじょへの同意どういけん株主かぶぬし総会そうかいへの定款ていかん変更へんこう議案ぎあん提出ていしゅつ取締役とりしまりやくかいへの当該とうがい議案ぎあん提出ていしゅつないし取締役とりしまりやく同意どういるにあたり「かく監査かんさとう委員いいんの」同意どういなければならない(426じょう2こう425じょう3こう2ごう)。
  • 責任せきにん限定げんてい契約けいやくによる取締役とりしまりやく責任せきにん一部いちぶ免除めんじょへの同意どういけん株主かぶぬし総会そうかいへの定款ていかん変更へんこう議案ぎあん提出ていしゅつにあたり「かく監査かんさとう委員いいんの」同意どういなければならない(427じょう3こう425じょう3こう2ごう)。

監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく[編集へんしゅう]

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃにおいては、監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやくはその取締役とりしまりやく体系たいけいてき区別くべつされている。具体ぐたいてきには、役員やくいん選任せんにんけんづけ種類しゅるい株式かぶしき108じょう1こう9ごう)・選任せんにん329じょう)・累積るいせき投票とうひょう制度せいど342じょう)・株主かぶぬし総会そうかいさだめる報酬ほうしゅうとう361じょう)などにおいて両者りょうしゃ区別くべつされる。

資格しかく制限せいげん
当該とうがい会社かいしゃまたはその子会社こがいしゃ」の業務ぎょうむ執行しっこう取締役とりしまりやく支配人しはいにんその使用人しようにん、「当該とうがい会社かいしゃまたはその子会社こがいしゃ」の会計かいけい参与さんよ兼任けんにんすることはできない(331じょう3こう、333じょう3こう1ごう)。また、当該とうがい会社かいしゃ子会社こがいしゃ執行しっこうやく兼任けんにんすることもできない(331じょう3こう
選任せんにん解任かいにん
株主かぶぬし総会そうかいによる。監査かんさとう委員いいん以外いがい取締役とりしまりやくとは区別くべつして選任せんにんする(329じょう2こう)。また解任かいにんにあたっては監査かんさやく同様どうように、株主かぶぬし総会そうかい特別とくべつ決議けつぎ要求ようきゅうされている(309じょう2こう7ごう)。
任期にんき
選任せんにん2ねん以内いない終了しゅうりょうする事業じぎょう年度ねんどのうち最終さいしゅうのものにかんする定時ていじ株主かぶぬし総会そうかい終結しゅうけつときまで(332じょう)。監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃ取締役とりしまりやく同様どうようであるが、監査かんさとう委員いいん以外いがい取締役とりしまりやく任期にんきは1ねんであり、また監査かんさとう委員いいん任期にんき短縮たんしゅくができない(332じょう4こうてん監査かんさやく同様どうよう独立どくりつせい趣旨しゅしまえたものといえる。
権限けんげん
  • 当該とうがい会社かいしゃたいし、①費用ひよう前払まえばらい請求せいきゅう・②支出ししゅつをした費用ひようおよびその支出ししゅつ以降いこう利息りそく償還しょうかん請求せいきゅう・③負担ふたんした債務さいむ弁済べんさい担保たんぽ提供ていきょう)の請求せいきゅうおこなうことができる。当該とうがい会社かいしゃ委員いいん職務しょくむ執行しっこう必要ひつようでないことを証明しょうめいしないかぎり、これをこばむことができない(399じょうの2だい4こう)。
  • 株主かぶぬし総会そうかい招集しょうしゅうけんしゃさだめがある場合ばあいであっても、「監査かんさとう委員いいんかい選定せんていする監査かんさとう委員いいん」は、取締役とりしまりやくかい招集しょうしゅうすることができる(399じょうの14)。

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃへの移行いこう[編集へんしゅう]

委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ定款ていかん変更へんこうして監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃとなることができる(915じょう1こう911じょう3こう22ごう参照さんしょう)。この場合ばあい監査かんさやく監査かんさやくかいいている場合ばあい廃止はいししなければならず(327じょう4こう)、監査かんさやく任期にんき満了まんりょうにより退任たいにんする(336じょう4こう2ごう)。また、取締役とりしまりやくかいいていない場合ばあい取締役とりしまりやくかい設置せっち会社かいしゃとなり(327じょう1こう3ごう)、会計かいけい監査かんさじんいていない場合ばあい会計かいけい監査かんさじん設置せっち会社かいしゃとなる(327じょう5こう)。なお、監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃとなった場合ばあい従前じゅうぜん取締役とりしまりやくおよ会計かいけい参与さんよ任期にんき満了まんりょうにより退任たいにんする(332じょう7こう1ごう・334じょう1こう)。会計かいけい監査かんさじん退任たいにんしないので注意ちゅうい必要ひつようである。なお、特例とくれい有限ゆうげん会社かいしゃには委員いいんかいくことができない(整備せいびほう17じょう1こう)。

監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃさだめの新設しんせつ定款ていかん変更へんこうであるから、株主かぶぬし総会そうかい特別とくべつ決議けつぎによらなければならない(309じょう2こう11ごう466じょう)。

登記とうき事項じこう以下いかとおりである(911じょう3こう22ごう)。

  • 監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃであるむね
  • 監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやくおよびそれ以外いがい取締役とりしまりやく氏名しめい
  • 取締役とりしまりやくのうち社外しゃがい取締役とりしまりやくであるものについて、社外しゃがい取締役とりしまりやくであるむね
  • 重要じゅうよう業務ぎょうむ執行しっこう決定けってい取締役とりしまりやくへの委任いにんについての定款ていかんさだめ(399じょうの13だい6こう)があるときは、そのむね

採用さいよう利点りてん欠点けってん[編集へんしゅう]

監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃ対比たいひした場合ばあい監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃには以下いか利点りてんげられる。

  • 監査かんさやく任期にんきが4ねんであるのにたいし、監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく任期にんきは2ねんであるため、より柔軟じゅうなん改選かいせん可能かのうとなる。
  • 従来じゅうらい取締役とりしまりやくかい議決ぎけつけん行使こうしできなかった社外しゃがい役員やくいん社外しゃがい監査かんさやく)が、取締役とりしまりやくかい議決ぎけつけん行使こうしできるようになり、ガバナンス強化きょうかする。
  • 業務ぎょうむ執行しっこうかんする迅速じんそく意思いし決定けっていができるようになる。
  • 従来じゅうらい社外しゃがい監査かんさやく横滑よこすべりで監査かんさとう委員いいん社外しゃがい取締役とりしまりやくとすることはきんじられていないため、これにより成立せいりつ要件ようけん簡単かんたんたすことができる。
  • コーポレートガバナンス・コードの要求ようきゅうたすにあたり、社外しゃがい役員やくいんすうが2めいすくなくてむ(後述こうじゅつ)。
  • 株主かぶぬし総会そうかいにおける「社外しゃがい取締役とりしまりやくくことが相当そうとうでない理由りゆう」の説明せつめい不要ふようになる(後述こうじゅつ)。

一方いっぽう以下いか欠点けってんげられる。

  • 社外しゃがい取締役とりしまりやく確保かくほ困難こんなん可能かのうせいがある。社外しゃがい取締役とりしまりやく社外しゃがい監査かんさやくよりももとめられる責任せきにんおもく、社外しゃがい監査かんさやく横滑よこすべ就任しゅうにん承服しょうふくしない可能かのうせいがあるからである。
  • 社外しゃがい監査かんさやくには従来じゅうらい監査かんさとくした専門せんもん知識ちしきゆうするものくことが期待きたいされており、弁護士べんごし公認こうにん会計士かいけいしなどがえらばれるケースもおおかった。社外しゃがい取締役とりしまりやくにはかならずしも監査かんさかんする専門せんもん知識ちしきだけが要求ようきゅうされるわけではなく、こうした高度こうど資格しかくゆうするものえらばれにくくなる。

批判ひはん[編集へんしゅう]

  • 指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃことなり執行しっこうやく存在そんざいせず、業務ぎょうむ執行しっこう機能きのう監督かんとく機能きのう分離ぶんりがない。従来じゅうらい監査かんさやくかい監査かんさとう委員いいんかいってわり、監査かんさとう委員いいんである取締役とりしまりやく取締役とりしまりやくかい議決ぎけつけん行使こうしすることは、自己じこ監査かんさにつながる。従前じゅうぜん監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃよりも監査かんさ機能きのう低下ていかするという指摘してきもある[5]。ただし、自己じこ監査かんさ問題もんだい監査かんさ委員いいんである取締役とりしまりやく取締役とりしまりやくかい参加さんかする指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃにおいても共通きょうつうする問題もんだいである。また代表だいひょう執行しっこうやく執行しっこうやく取締役とりしまりやく兼務けんむする指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃも2018ねん現在げんざいにおいてすくなくない。
  • 従来じゅうらい監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃとはことなり、常勤じょうきん監査かんさやく設置せっち義務付ぎむづけられていないこと、および監査かんさとう委員いいんどくにんせいでなく監査かんさとう委員いいんかい決定けっていしたがわなければならないことも問題もんだいされている[6]。なお指名しめい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ共通きょうつう問題もんだいかかえている。
  • アメリカではさん委員いいんかい機関きかん構成こうせいたりまえであり、人事じんじおよ報酬ほうしゅうへの社外しゃがい役員やくいん関与かんよけるようなほん制度せいど見劣みおとりするものである。指名しめい委員いいんかいおよ報酬ほうしゅう委員いいんかいともなわないほん制度せいどはコーポレート・ガバナンスじょう問題もんだいがあるとして、監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃへの移行いこう海外かいがい機関きかん投資とうし反対はんたいするケースが見受みうけられる[7]。ただし、監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃおよび監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃでは任意にんい諮問しもん機関きかんとして指名しめい委員いいんかい報酬ほうしゅう委員いいんかい両方りょうほう機能きのうわせた指名しめい報酬ほうしゅう委員いいんかい設置せっち可能かのうである。
  • グローバル潮流ちょうりゅう社外しゃがい取締役とりしまりやく導入どうにゅう推進すいしんしているにもかかわらず、結果けっかとして日本にっぽん独自どくじのガラパゴス制度せいど出来上できあがっているともわれている[8]
  • 前述ぜんじゅつのとおり、監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃのみ利益りえき相反あいはん取引とりひきについて有利ゆうりあつかいがなされている。しかし、これは政策せいさくてきなものであって、とく理論りろんてき根拠こんきょはないとかんがえられている[9]

採用さいようじょうきょう[編集へんしゅう]

2015ねん平成へいせい27ねん)5がつ導入どうにゅう以降いこう監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ移行いこうした企業きぎょう地域ちいきわず急増きゅうぞうしている。2かげつの7がつ時点じてんはやくも190しゃ程度ていど移行いこう表明ひょうめい[10]2016ねん平成へいせい28ねん)6がつまつ株主かぶぬし総会そうかいシーズンには600しゃ前後ぜんこうたっした。これは上場じょうじょう会社かいしゃ全体ぜんたいやく2わり相当そうとうする規模きぼである[11]

ここまで急速きゅうそくほん制度せいどひろまった最大さいだい理由りゆうは、改正かいせい会社かいしゃほう施行しこうされた1かげつの2015ねん平成へいせい27ねん6月1にち運用うんよう開始かいしされた東京とうきょう証券しょうけん取引とりひきしょ企業きぎょう統治とうち指針ししん(コーポレートガバナンス・コード)[12]である。「原則げんそく4-8. 独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやく有効ゆうこう活用かつよう」にて、以下いかのようなさだめがある。

独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやく会社かいしゃ持続じぞくてき成長せいちょう中長期ちゅうちょうきてき企業きぎょう価値かち向上こうじょう寄与きよするように役割やくわり責務せきむたすべきであり、上場じょうじょう会社かいしゃはそのような資質ししつ十分じゅうぶんそなえた独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやくすくなくとも2めい以上いじょう選任せんにんすべきである。また、業種ぎょうしゅ規模きぼ事業じぎょう特性とくせい機関きかん設計せっけい会社かいしゃをとりまく環境かんきょうとう総合そうごうてき勘案かんあんして、自主じしゅてき判断はんだんにより、すくなくとも3ぶんの1以上いじょう独立どくりつ社外しゃがい取締役とりしまりやく選任せんにんすることが必要ひつようかんがえる上場じょうじょう会社かいしゃは、上記じょうきにかかわらず、そのための取組とりく方針ほうしん開示かいじすべきである。

東証とうしょうほん指針ししん運用うんよう開始かいし最初さいしょ開催かいさいする定例ていれい株主かぶぬし総会そうかいから6かげつ経過けいかするおおくの場合ばあい12がつまつとなる)までに「コーポレート・ガバナンスにかんする報告ほうこくしょ」の提出ていしゅつもとめ、当該とうがい原則げんそく実施じっししない場合ばあいにその理由りゆう記載きさいしなければならないとした[13]さら改正かいせい会社かいしゃほうは、有価ゆうか証券しょうけん報告ほうこくしょ提出ていしゅつ会社かいしゃ社外しゃがい取締役とりしまりやくいていない場合ばあいに、くことが相当そうとうでない理由りゆう定時ていじ株主かぶぬし総会そうかい説明せつめいする義務ぎむ取締役とりしまりやくした(327じょうの2[注釈ちゅうしゃく 1]。コーポレートガバナンス・コードはあくまで要請ようせいにすぎないものであるが、ほう規定きていうえにおいても、社外しゃがい取締役とりしまりやく設置せっちするか設置せっちしない理由りゆう株主かぶぬしたいして説明せつめいするか、のどちらかをこうずる必要ひつようしょうじたのである。監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃにおいては従来じゅうらいより社外しゃがい監査かんさやく最低さいてい2めい設置せっちする必要ひつようがあり、監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃへの移行いこう同時どうじにこれらを横滑よこすべりで社外しゃがい取締役とりしまりやくとすれば、コーポレートガバナンス・コードを形式けいしきじょうたすことができる。前述ぜんじゅつとおり、監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃよりも社外しゃがい役員やくいんすうすくなく監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ公開こうかい大会たいかいしゃにとってメリットがおおきいのである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 会社かいしゃほう要求ようきゅうされているのは、社外しゃがい取締役とりしまりやくを「くことが相当そうとうでない」理由りゆうであって必要ひつようがない」理由りゆうではないてん注意ちゅうい必要ひつようである。それゆえ「社外しゃがい監査かんさやくが2めいいること」とう説明せつめいは「相当そうとうでない」理由りゆうたりない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ ファンドがオプトの監査かんさとう委員いいんかい移行いこう反発はんぱつ(2016ねん3がつ22にち東洋とうよう経済けいざいOnline)
  2. ^ 監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ概要がいよう導入どうにゅうじょうきょう (PDF) (2015ねん10がつ清和せいわ監査かんさ法人ほうじん
  3. ^ 監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃ創設そうせつとその課題かだい (PDF) - 村田むらた敏一としいち立命館大学りつめいかんだいがくちょ、2015ねん
  4. ^ 法務省ほうむしょうだよりVol.47(2014ねん11月、法務省ほうむしょう大臣だいじん官房かんぼう秘書ひしょ広報こうほうしつ
  5. ^ 監査かんさとう委員いいんかい制度せいどの5月施行しこう実務じつむじょう利点りてんなに(2015ねん1がつ23にちほう経済けいざいのジャーナル Asahi Judiciary)
  6. ^ ビジネス法務ほうむ部屋へや (2015ねん1がつ30にち山口やまぐち利昭としあき)
  7. ^ 昭文社しょうぶんしゃ監査かんさとう委員いいんかい設置せっち会社かいしゃへの移行いこう反対はんたい=RMBキャピタル〔BW〕(2016ねん6がつ10日とおか時事じじドットコムニュース)
  8. ^ ガラパゴスする日本にっぽんのコーポレート・ガバナンス〜なぜいま海外かいがい投資とうし懸念けねんするような独自どくじ制度せいどを?(2016ねん3がつ23にち現代げんだいビジネス)
  9. ^ 伊藤いとうやすし『LEGALQUEST会社かいしゃほう だい3はん有斐閣ゆうひかく、2015ねん、p214。
  10. ^ 監査かんさやくかい設置せっち会社かいしゃという「選択せんたく(2015ねん7がつ21にち日経にっけいビジネスONLINE)
  11. ^ 監査かんさとう設置せっち会社かいしゃ移行いこう、600しゃに 上場じょうじょう企業きぎょうの2わり(2016ねん4がつ25にち日本経済新聞にほんけいざいしんぶん
  12. ^ コーポレートガバナンス・コード (PDF) (2015ねん6がつ1にち日本にっぽん取引とりひきしょグループ
  13. ^ コーポレート・ガバナンスにかんする報告ほうこくしょ記載きさい要領ようりょう (PDF) (2015ねん10がつ改訂かいてい日本にっぽん取引とりひきしょグループ)

参考さんこう資料しりょう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]